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#navi(ゼロと波動)
#setpagename( ゼロと波動 BONUS STAGE① )
ゼロと波動 BONUS STAGE①
「あのときは助けてくれてありがとね」
シエスタの注いでくれたワインでほろ酔いになったルイズは、普段なら言えないことが言えるようになっていた。
”土くれのフーケ”に襲われたとき、飛んできた大木からルイズを助けてくれたのは、今隣でワインを注いでくれているシエスタだった。
彼女はリュウに勝るとも劣らない、信じがたいほどの腕力を発揮してルイズに直撃するはずだった10メイルにも及ぶ大木を受け止めてくれたのだ。
それ以来シエスタはルイズが心を許す数少ない人物のうちの一人になっていた。
「いえ、とんでもないです。わたし、ちょっと人より力が強いみたいで・・・
力の強い女の子なんていやだなと思ってたんですけど、ミス・ヴァリエールのお役に立てたし、
そのおかげでミス・ヴァリエールには仲良くしてもらえるようになりましたし、今では良かったと思ってます」
はにかんだ笑みを見せるシエスタ。
――いやいやいや、アンタの怪力はちょっとどころの騒ぎじゃないから――
思わず口にしそうになるが、かろうじて自重する。
命の恩人であるシエスタを傷つけない程度の常識はルイズにもあった。
「それにしても、なんであんな場所にいたの?」
使用人であるシエスタは朝が早い。にもかかわらずあんな真夜中に外にいたことが不思議だった。
「あれ?ミス・ヴァリエールは気づいてらっしゃらなかったんですね」
シエスタが恥ずかしそうに続ける。
「わたし、毎晩建物の陰からリュウさんの『カタ』を見様見真似で練習してたんですよ。
そしたら突然大きな音がして、皆さんが走っていっちゃうんで、こっそり後をつけてたんです。
そしたらミス・ヴァリエール目掛けて木が飛んできてたんで、無我夢中で止めたんです」
「そうだったんだ・・・っていうか、なんで隠れて練習なんてしてたの?わたしたちと一緒に練習すればいいじゃない」
ルイズが疑問に思う。
「だって、女の子が”ブドー”だなんて恥ずかしいじゃないですか」
シエスタがもじもじしながら言う。
ルイズはさらに不思議に思った。
「ねえシエスタ、あんた、なんか”ブドー”について詳しそうね?なんでリュウのいた国にしかない”ブドー”に詳しいの?」
もしや自分の知らないところでリュウとなにかあったんじゃないのかこのおっぱいメイドめ!とシエスタにジト目を向ける。
「わたし、始めてリュウさんが”ブドー”してるのを見たとき、驚いたんです。だって、わたしのおじいちゃんも”ブドー”してたんですもの」
死んだ祖父を思い出したのだろう、寂しそうな笑顔を見せるシエスタは話始めた。
ある日、突如としてタルブの村に現れ、そのまま居座った筋骨隆々な壮年の男。
はじめ、怪しげなこの男を家に泊めてやる親切な村人は一人もいなかった。
男は気にすることもなく村のすぐ傍に野宿すると、毎日毎日『カタ』と『メイソウ』を続けた。
村人も始めの頃は気味悪がっていたが、やがて変わり者ではあるが害はないと判断すると徐々に男に警戒心を抱かなくなった。
いつ頃からか、村人は男に食べ物を分けてやるようになった。
食べ物を分けてやると男は深く感謝し、率先して村の仕事を手伝ってくれた。
男は村人のどんな頼みでも聞いた。
子守から畑仕事、なんでもやった。
男は10人がかりでもびくともしないような岩をあっさりと運んだし、野盗の一団が現れたときも簡単に追い払った。
いつしか、村人が協力して村の中に一軒の家を建てた。
男のために建てた家だった。
男は深く頭を下げ、村の中で生活するようになった。
男は村の中で生活するようになっても、毎日暇さえ見つけては『カタ』と『メイソウ』を続けていた。
あるとき、村人の一人がいつもやってるそれは何だと尋ねた。
男は”ブドー”だと答えた。
また別の村人は男が強いのは何故かと訊いた。
男は自分が強いかどうかは知らないが、もしそうだとしたら”ブドー”のおかげだと答えた。
だが村人は同じ動作をただひたすら繰り返す『カタ』という踊りと、ただ座って目を瞑るだけの『メイソウ』で本当に強くなれるのか信じられなかった。
あるとき、村を十数匹にも及ぶオーク鬼の集団が襲った。
こんな小さな村など、1匹のオーク鬼にでも潰されてしまいかねない。
村人は村が全滅することを覚悟しながらも、女子供を家の中に押し込み、若い衆は皆、手に鍬や鍬を持って迎え撃とうと玉砕する覚悟をした。
そんな村人たちとオーク鬼の間に、男が立ちはだかった。
男が静かに睨み付けると、オーク鬼の集団は恐慌状態に陥った。
やがて、男に向かって突撃してくる十数匹のオーク鬼。
男はそれを素手で迎え撃った。
闘う男の姿はまるで舞いを舞っているようだった。
それはいつも繰り返していた『カタ』という踊りと寸分違わない華麗な、しかしあまりにも荒々しい舞。
瞬く間にオーク鬼が倒れていく。
ほんの僅かな時間で全てのオーク鬼たちが倒れ伏した・・・
「その後、村の若い男の人たちは皆こぞっておじいちゃんに『ブドー』を教わるようになったんだそうです。
で、村の若い女の人と結婚して、わたしのお母さんが生まれたんですよ」
とはいっても、おじいちゃんとリュウさんの強さは別格ですけどね。
そう付け加えると、シエスタは祖父を思い出したのだろう、一筋流れた涙を拭うと満面の笑みで誇らしげに言った。
「それ以来、タルブと言えば”ブドー”なんです」
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ゼロと波動 BONUS STAGE①
「あのときは助けてくれてありがとね」
シエスタの注いでくれたワインでほろ酔いになったルイズは、普段なら言えないことが言えるようになっていた。
”土くれのフーケ”に襲われたとき、飛んできた大木からルイズを助けてくれたのは、今隣でワインを注いでくれているシエスタだった。
彼女はリュウに勝るとも劣らない、信じがたいほどの腕力を発揮してルイズに直撃するはずだった10メイルにも及ぶ大木を受け止めてくれたのだ。
それ以来シエスタはルイズが心を許す数少ない人物のうちの一人になっていた。
「いえ、とんでもないです。わたし、ちょっと人より力が強いみたいで・・・
力の強い女の子なんていやだなと思ってたんですけど、ミス・ヴァリエールのお役に立てたし、
そのおかげでミス・ヴァリエールには仲良くしてもらえるようになりましたし、今では良かったと思ってます」
はにかんだ笑みを見せるシエスタ。
――いやいやいや、アンタの怪力はちょっとどころの騒ぎじゃないから――
思わず口にしそうになるが、かろうじて自重する。
命の恩人であるシエスタを傷つけない程度の常識はルイズにもあった。
「それにしても、なんであんな場所にいたの?」
使用人であるシエスタは朝が早い。にもかかわらずあんな真夜中に外にいたことが不思議だった。
「あれ?ミス・ヴァリエールは気づいてらっしゃらなかったんですね」
シエスタが恥ずかしそうに続ける。
「わたし、毎晩建物の陰からリュウさんの『カタ』を見様見真似で練習してたんですよ。
そしたら突然大きな音がして、皆さんが走っていっちゃうんで、こっそり後をつけてたんです。
そしたらミス・ヴァリエール目掛けて木が飛んできてたんで、無我夢中で止めたんです」
「そうだったんだ・・・っていうか、なんで隠れて練習なんてしてたの?わたしたちと一緒に練習すればいいじゃない」
ルイズが疑問に思う。
「だって、女の子が”ブドー”だなんて恥ずかしいじゃないですか」
シエスタがもじもじしながら言う。
ルイズはさらに不思議に思った。
「ねえシエスタ、あんた、なんか”ブドー”について詳しそうね?なんでリュウのいた国にしかない”ブドー”に詳しいの?」
もしや自分の知らないところでリュウとなにかあったんじゃないのかこのおっぱいメイドめ!とシエスタにジト目を向ける。
「わたし、始めてリュウさんが”ブドー”してるのを見たとき、驚いたんです。だって、わたしのおじいちゃんも”ブドー”してたんですもの」
死んだ祖父を思い出したのだろう、寂しそうな笑顔を見せるシエスタは話始めた。
ある日、突如としてタルブの村に現れ、そのまま居座った筋骨隆々な壮年の男。
はじめ、怪しげなこの男を家に泊めてやる親切な村人は一人もいなかった。
男は気にすることもなく村のすぐ傍に野宿すると、毎日毎日『カタ』と『メイソウ』を続けた。
村人も始めの頃は気味悪がっていたが、やがて変わり者ではあるが害はないと判断すると徐々に男に警戒心を抱かなくなった。
いつ頃からか、村人は男に食べ物を分けてやるようになった。
食べ物を分けてやると男は深く感謝し、率先して村の仕事を手伝ってくれた。
男は村人のどんな頼みでも聞いた。
子守から畑仕事、なんでもやった。
男は10人がかりでもびくともしないような岩をあっさりと運んだし、野盗の一団が現れたときも簡単に追い払った。
いつしか、村人が協力して村の中に一軒の家を建てた。
男のために建てた家だった。
男は深く頭を下げ、村の中で生活するようになった。
男は村の中で生活するようになっても、毎日暇さえ見つけては『カタ』と『メイソウ』を続けていた。
あるとき、村人の一人がいつもやってるそれは何だと尋ねた。
男は”ブドー”だと答えた。
また別の村人は男が強いのは何故かと訊いた。
男は自分が強いかどうかは知らないが、もしそうだとしたら”ブドー”のおかげだと答えた。
だが村人は同じ動作をただひたすら繰り返す『カタ』という踊りと、ただ座って目を瞑るだけの『メイソウ』で本当に強くなれるのか信じられなかった。
あるとき、村を十数匹にも及ぶオーク鬼の集団が襲った。
こんな小さな村など、1匹のオーク鬼にでも潰されてしまいかねない。
村人は村が全滅することを覚悟しながらも、女子供を家の中に押し込み、若い衆は皆、手に鍬や鍬を持って迎え撃とうと玉砕する覚悟をした。
そんな村人たちとオーク鬼の間に、男が立ちはだかった。
男が静かに睨み付けると、オーク鬼の集団は恐慌状態に陥った。
やがて、男に向かって突撃してくる十数匹のオーク鬼。
男はそれを素手で迎え撃った。
闘う男の姿はまるで舞いを舞っているようだった。
それはいつも繰り返していた『カタ』という踊りと寸分違わない華麗な、しかしあまりにも荒々しい舞。
瞬く間にオーク鬼が倒れていく。
ほんの僅かな時間で全てのオーク鬼たちが倒れ伏した・・・
「その後、村の若い男の人たちは皆こぞっておじいちゃんに『ブドー』を教わるようになったんだそうです。
で、村の若い女の人と結婚して、わたしのお母さんが生まれたんですよ」
とはいっても、おじいちゃんとリュウさんの強さは別格ですけどね。
そう付け加えると、シエスタは祖父を思い出したのだろう、一筋流れた涙を拭うと満面の笑みで誇らしげに言った。
「それ以来、タルブと言えば”ブドー”なんです」
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