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#navi(ゲーッ!熊の爪の使い魔)
第八話 使い魔からの期待
「ウ、ウォーズマン、それがあんたの名前?」
使い魔の新たなる名を聞いたルイズは、むしろ自分の中で反芻し確認するために彼の名を口にしてみた。
「そうだ」
「え、えーと、ウォーズマン、その、いろいろ聞きたいことがあるんだけどいいかしら」
「ああ、構わない。だが、少しだけ待ってくれないか」
「え、ええ、いいけど」
未だに調子が出ず、どうにか受け答えをしたルイズからの返事を聞くと、
ウォーズマンはもう一人のほうへ向き、話しかけた。
「シエスタ、頼みがある」
「え、あの、はい、何でしょうか?」
突然話が降られ、こちらも戸惑いながら返事を返すシエスタ。
そんな彼女にウォーズマンは脱ぎ捨てたベルモンドの着ぐるみを差し出した。
「さっきの戦いでボロボロになってしまった。すまないが修繕を頼めないだろうか?
俺はそういうことが得意なほうじゃないんだ」
「え、ええ、そういうことなら任せてください、きちんと直して見せます」
かわいいクマちゃんとの幻想をぶち壊されたし正直爪をもった黒ずくめの男ということで正直怖くもあるが、 ふと気付くと怖い手の爪もいつの間にかなくなっている、引っ込んだのだろうか?
とにかく実際助けられたこともありシエスタの親切心も相まって彼女はそれを引き受けた。
「そうか、すまない。またこの礼は今度する」
「そんな、先ほど助けてくださったわけですし、この程度じゃまだまだ恩を返していませんよ。
また、何かあったら何でもおっしゃってください」
「ありがとう、その言葉に甘えるつもりはないが場合によっては頼むこともあるかもしれない」
「はい、そのときはまかせてください。それじゃ、きちんと直しておきますので」
そう言ってシエスタは着ぐるみを抱え駆けて行った。
クマちゃんじゃなくなって怖そうになっちゃったけど、 何だか優しくていい人かもしれない、そう感じられた。
「えーと、じゃあいいかしら?」
「ああ、かまわない」
話が終わったため、ルイズは中断されていた自分の質問を再開する。
「ねえウォーズマン、あんた、その、なんで、クマの格好なんかしてたの?」
「ああ、もといたところで少々正体を隠してベルモンドとして演じていたからだ」
「もといた場所の都合なら、なんで召喚されてからもずっとそんなことしてたのよ」
「ベルモンドとしてクマの姿で召喚されたからな、そうふるまうのはあたりまえだろう」
「大体さっきの決闘でクマの格好の時たくさん血を流していたのにどうして今は傷一つないのよ!?」
「それはあくまでオーバーボディの時に受けた傷だからな」
「なんか全然キャラが違うんだけど?」
「先ほど言ったようにベルモンドを演じていたからな」
「なに、それで今までくうーんとか言ってたの、変だと思わないの!?」
「すまないルイズ、お前が何を問題にしているのか、何がおかしいのか正直よくわからない」
「いやいやいや、どう考えてもおかしいでしょ!」
はっきりいって話が噛み合っていなかった。
それもそのはず、ウォーズマンが元いた世界ではそんなことを問題にするものはいなかった。
オーバーボディを着ていれば性格が変わってもおかしくはない、 例えばヒカルドという超人などは善悪すら変っていた。
それに中身が出てもそこまでショックを受けられることもなかった。
クマの中から彼や象が出ても取り立ても正体に驚かれたことはあれど、 クマから中身が出たということで騒ぎになったことはなかった。
ついでにいえばオーバーボディを脱げばそれまでのダメージがリセットされるのも当然だった。
だがこの世界では違う。
そう、このハルケギニアは「ゆでだから」の通じない世界だったのだ。
結局二人の押し問答はこの後しばらく続いたのだった。
その日の晩、ルイズたちが食堂へ行くと、なぜはウォーズマンがコックたちから熱烈な歓迎を受けた。
「ウォーズマンさん、クマの修繕はまだですが、それとは別に昼間のお礼があるんです。
どうかこちらに来てください」
そう言ってシエスタがウォーズマンを厨房へ引っ張っていく。
それが気になったルイズは食事を後回しにして少し離れた所から様子を覗うことにした。
「おお、よく来てくれたな、我らの爪」
厨房では、コックのマルトーがそう言ってウォーズマンを迎えた。
ついで回りの者たちからも賛辞が述べられる。
それらの内容は要約すると、 シエスタを助けてくれてありがとう、同じ平民の身でありながら貴族を倒したあんたの姿に感動した、御馳走を用意したから食べてくれ、というものだった。
だが、ウォーズマンは彼らに水を差す事実を告げた。
「すまない、感謝してくれるのはうれしいが俺は平民どころか人間ですらない。
俺は超人、いわゆるこちらで言う亜人のようなものだ」
ウォーズマンは210サントの身長をもち鍛えられた大きい体格であるとは言えまだ人間の範疇と言えるし、 彼らにはマスクをかぶった平民と捉えられていたのだった。
「え、じゃあなんで貴族の使い魔がわざわざ平民を助けたんだ?」
彼らはその事実に対し、そう疑問を持った。
貴族の使い魔とはいえ同じ平民だからこそシエスタを助けたのだと彼らは思っていたのだった。
だが、そうでないのならなぜ平民の上に立つ貴族の使い魔が平民を助けたりするのか?
「確かに俺はお前たちの一員ではない。
だが俺のこの力は理不尽な者たちから弱き人々を守るためにある。
俺はずっとそうやって生きてきた。シエスタを助けるのは当然のことだ」
「で、でも今は貴族の使い魔なんだろ」
「ああ、今の俺はルイズの使い魔となった身だ。
だが、彼女に力を貸すのはそれだけが理由ではない。
まだ召喚されて日は浅いがルイズは立派な貴族になろうと志し、そのために努力している人間だ。
立派な行いによって自然に尊敬されるような、そんな真の貴族に。
俺はその手助けをしたいと思っているし、道を踏み外すようなら止めるつもりだ」
そう、当初は使い魔にならなければルイズが困るという理由で契約をしたウォーズマンだったが、 ベルモンドとして過ごしたわずかな時間の中にも、多少高慢な部分が見えたことがあるものの、 魔法の勉学にはげみ、欠点を克服して向上しようとするルイズの姿を見てきた。
だからこそ真に力を貸し、戦ってもいこうと思ったのだった。
「というわけでもし、これ以降も平民だからと言って理不尽に苦しめられるようなことがあったら遠慮せずに言ってくれ。
貴族の使い魔がどうとかいうことは関係なしにいつでも力を貸そう」
それを聞くとマルトーは感極まったように震え、再び話し出した。
「……いいねえ、感動した!亜人だか超人だか知らないがやっぱりあんたは我らの爪、だ。
ほら、あんたのために腕によりをかけたからじゃんじゃん食べてくれ」
「いや、用意してもらって悪いが、俺は食事を必要とはしないんだ」
「そ、そうなのか、残念だな」
「これだけの立派な料理を無駄にするのは忍びない、料理はみんなで食べるといい。
その代りに俺には、そうだな。酒をくれないか」
「おう、そういうことならとっておきを用意するぜ。
一緒に飲み明かそうや!」
そう盛り上がる厨房を横に、ルイズは頭を抱えていた。
ルイズはウォーズマンの先ほどの話を思い返していた。
ウォーズマンて私にとても期待してる。真の貴族を目指す立派な人間だって。
それでもって道を外したら止めるって。
ということはなにか?私が貴族だからってウォーズマンや平民に偉そうな態度をとったりしたら……
「平民の分際で逆らうんじゃないの、貴族には従いなさいよ」
「……貴族であることを鼻にかけるなど、お前には失望したぜ、ルイズー!」
そう言ってウォーズマンはルイズに飛びかかる。そして、
グサ!
ウォーズマンの爪がルイズのこめかみにつきたてられる。
数日後、ルイズは車椅子に乗り物言わぬ身となって父、ヴァリエール公の前に現れた。
「残念ですがお嬢さんは植物メイジになってしまわれたのです」
「おおルイズ、何という姿に」
数ヵ月後、そこにはマスク(霊命木製)をつけて元気に走り回るルイズの姿が。
「もう二度と貴族にふさわしくない行いはしないわ」
「……はっ、いったい何を?」
なんだか妙な未来図を幻視してしまったルイズは正気に戻ると頭を振った。
とにかく、もう今後下手な行動はとれないということだ。
かといってウォーズマンに文句をつけることもできない。
主人に、驕らず偉ぶらず向上心を持った立派な貴族であることを期待する。
素晴らしいことだ。文句をつけるべき点はない。あと反論するのも怖い。
い、いやでも大丈夫、私はまさに立派魔貴族でありそんなことだできて当然、心配することはない。
あー、でもあいつコックやメイドとも仲良くなってるし何かやってしまったらそこからウォーズマンの耳に入るわよね。
もう一時も気が抜けないんじゃ、いやいや私なら大丈夫よ、で、でももしかしたら……
厨房で盛り上がる彼らを尻目にルイズは頭を抱えていたのだった。
#navi(ゲーッ!熊の爪の使い魔)
#navi(ゲーッ!熊の爪の使い魔)
第九話 使い魔からの期待
「ウ、ウォーズマン、それがあんたの名前?」
使い魔の新たなる名を聞いたルイズは、むしろ自分の中で反芻し確認するために彼の名を口にしてみた。
「そうだ」
「え、えーと、ウォーズマン、その、いろいろ聞きたいことがあるんだけどいいかしら」
「ああ、構わない。だが、少しだけ待ってくれないか」
「え、ええ、いいけど」
未だに調子が出ず、どうにか受け答えをしたルイズからの返事を聞くと、
ウォーズマンはもう一人のほうへ向き、話しかけた。
「シエスタ、頼みがある」
「え、あの、はい、何でしょうか?」
突然話が降られ、こちらも戸惑いながら返事を返すシエスタ。
そんな彼女にウォーズマンは脱ぎ捨てたベルモンドの着ぐるみを差し出した。
「さっきの戦いでボロボロになってしまった。すまないが修繕を頼めないだろうか?
俺はそういうことが得意なほうじゃないんだ」
「え、ええ、そういうことなら任せてください、きちんと直して見せます」
かわいいクマちゃんとの幻想をぶち壊されたし正直爪をもった黒ずくめの男ということで正直怖くもあるが、 ふと気付くと怖い手の爪もいつの間にかなくなっている、引っ込んだのだろうか?
とにかく実際助けられたこともありシエスタの親切心も相まって彼女はそれを引き受けた。
「そうか、すまない。またこの礼は今度する」
「そんな、先ほど助けてくださったわけですし、この程度じゃまだまだ恩を返していませんよ。
また、何かあったら何でもおっしゃってください」
「ありがとう、その言葉に甘えるつもりはないが場合によっては頼むこともあるかもしれない」
「はい、そのときはまかせてください。それじゃ、きちんと直しておきますので」
そう言ってシエスタは着ぐるみを抱え駆けて行った。
クマちゃんじゃなくなって怖そうになっちゃったけど、 何だか優しくていい人かもしれない、そう感じられた。
「えーと、じゃあいいかしら?」
「ああ、かまわない」
話が終わったため、ルイズは中断されていた自分の質問を再開する。
「ねえウォーズマン、あんた、その、なんで、クマの格好なんかしてたの?」
「ああ、もといたところで少々正体を隠してベルモンドとして演じていたからだ」
「もといた場所の都合なら、なんで召喚されてからもずっとそんなことしてたのよ」
「ベルモンドとしてクマの姿で召喚されたからな、そうふるまうのはあたりまえだろう」
「大体さっきの決闘でクマの格好の時たくさん血を流していたのにどうして今は傷一つないのよ!?」
「それはあくまでオーバーボディの時に受けた傷だからな」
「なんか全然キャラが違うんだけど?」
「先ほど言ったようにベルモンドを演じていたからな」
「なに、それで今までくうーんとか言ってたの、変だと思わないの!?」
「すまないルイズ、お前が何を問題にしているのか、何がおかしいのか正直よくわからない」
「いやいやいや、どう考えてもおかしいでしょ!」
はっきりいって話が噛み合っていなかった。
それもそのはず、ウォーズマンが元いた世界ではそんなことを問題にするものはいなかった。
オーバーボディを着ていれば性格が変わってもおかしくはない、 例えばヒカルドという超人などは善悪すら変っていた。
それに中身が出てもそこまでショックを受けられることもなかった。
クマの中から彼や象が出ても取り立ても正体に驚かれたことはあれど、 クマから中身が出たということで騒ぎになったことはなかった。
ついでにいえばオーバーボディを脱げばそれまでのダメージがリセットされるのも当然だった。
だがこの世界では違う。
そう、このハルケギニアは「ゆでだから」の通じない世界だったのだ。
結局二人の押し問答はこの後しばらく続いたのだった。
その日の晩、ルイズたちが食堂へ行くと、なぜはウォーズマンがコックたちから熱烈な歓迎を受けた。
「ウォーズマンさん、クマの修繕はまだですが、それとは別に昼間のお礼があるんです。
どうかこちらに来てください」
そう言ってシエスタがウォーズマンを厨房へ引っ張っていく。
それが気になったルイズは食事を後回しにして少し離れた所から様子を覗うことにした。
「おお、よく来てくれたな、我らの爪」
厨房では、コックのマルトーがそう言ってウォーズマンを迎えた。
ついで回りの者たちからも賛辞が述べられる。
それらの内容は要約すると、 シエスタを助けてくれてありがとう、同じ平民の身でありながら貴族を倒したあんたの姿に感動した、御馳走を用意したから食べてくれ、というものだった。
だが、ウォーズマンは彼らに水を差す事実を告げた。
「すまない、感謝してくれるのはうれしいが俺は平民どころか人間ですらない。
俺は超人、いわゆるこちらで言う亜人のようなものだ」
ウォーズマンは210サントの身長をもち鍛えられた大きい体格であるとは言えまだ人間の範疇と言えるし、 彼らにはマスクをかぶった平民と捉えられていたのだった。
「え、じゃあなんで貴族の使い魔がわざわざ平民を助けたんだ?」
彼らはその事実に対し、そう疑問を持った。
貴族の使い魔とはいえ同じ平民だからこそシエスタを助けたのだと彼らは思っていたのだった。
だが、そうでないのならなぜ平民の上に立つ貴族の使い魔が平民を助けたりするのか?
「確かに俺はお前たちの一員ではない。
だが俺のこの力は理不尽な者たちから弱き人々を守るためにある。
俺はずっとそうやって生きてきた。シエスタを助けるのは当然のことだ」
「で、でも今は貴族の使い魔なんだろ」
「ああ、今の俺はルイズの使い魔となった身だ。
だが、彼女に力を貸すのはそれだけが理由ではない。
まだ召喚されて日は浅いがルイズは立派な貴族になろうと志し、そのために努力している人間だ。
立派な行いによって自然に尊敬されるような、そんな真の貴族に。
俺はその手助けをしたいと思っているし、道を踏み外すようなら止めるつもりだ」
そう、当初は使い魔にならなければルイズが困るという理由で契約をしたウォーズマンだったが、 ベルモンドとして過ごしたわずかな時間の中にも、多少高慢な部分が見えたことがあるものの、 魔法の勉学にはげみ、欠点を克服して向上しようとするルイズの姿を見てきた。
だからこそ真に力を貸し、戦ってもいこうと思ったのだった。
「というわけでもし、これ以降も平民だからと言って理不尽に苦しめられるようなことがあったら遠慮せずに言ってくれ。
貴族の使い魔がどうとかいうことは関係なしにいつでも力を貸そう」
それを聞くとマルトーは感極まったように震え、再び話し出した。
「……いいねえ、感動した!亜人だか超人だか知らないがやっぱりあんたは我らの爪、だ。
ほら、あんたのために腕によりをかけたからじゃんじゃん食べてくれ」
「いや、用意してもらって悪いが、俺は食事を必要とはしないんだ」
「そ、そうなのか、残念だな」
「これだけの立派な料理を無駄にするのは忍びない、料理はみんなで食べるといい。
その代りに俺には、そうだな。酒をくれないか」
「おう、そういうことならとっておきを用意するぜ。
一緒に飲み明かそうや!」
そう盛り上がる厨房を横に、ルイズは頭を抱えていた。
ルイズはウォーズマンの先ほどの話を思い返していた。
ウォーズマンて私にとても期待してる。真の貴族を目指す立派な人間だって。
それでもって道を外したら止めるって。
ということはなにか?私が貴族だからってウォーズマンや平民に偉そうな態度をとったりしたら……
「平民の分際で逆らうんじゃないの、貴族には従いなさいよ」
「……貴族であることを鼻にかけるなど、お前には失望したぜ、ルイズー!」
そう言ってウォーズマンはルイズに飛びかかる。そして、
グサ!
ウォーズマンの爪がルイズのこめかみにつきたてられる。
数日後、ルイズは車椅子に乗り物言わぬ身となって父、ヴァリエール公の前に現れた。
「残念ですがお嬢さんは植物メイジになってしまわれたのです」
「おおルイズ、何という姿に」
数ヵ月後、そこにはマスク(霊命木製)をつけて元気に走り回るルイズの姿が。
「もう二度と貴族にふさわしくない行いはしないわ」
「……はっ、いったい何を?」
なんだか妙な未来図を幻視してしまったルイズは正気に戻ると頭を振った。
とにかく、もう今後下手な行動はとれないということだ。
かといってウォーズマンに文句をつけることもできない。
主人に、驕らず偉ぶらず向上心を持った立派な貴族であることを期待する。
素晴らしいことだ。文句をつけるべき点はない。あと反論するのも怖い。
い、いやでも大丈夫、私はまさに立派魔貴族でありそんなことだできて当然、心配することはない。
あー、でもあいつコックやメイドとも仲良くなってるし何かやってしまったらそこからウォーズマンの耳に入るわよね。
もう一時も気が抜けないんじゃ、いやいや私なら大丈夫よ、で、でももしかしたら……
厨房で盛り上がる彼らを尻目にルイズは頭を抱えていたのだった。
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