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#navi(デュッデュワ~ピンク髪)
&setpagename(第3話 寝不足アンリエッタがアンアンアン )
私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール。この前使い魔品評会ではれぶたと一緒に歌ったよ。
私の歌唱力についてはノーコメントだ。もう一度言う。ノーコメントだ。
突然ですが、私の魔法の属性は虚無っぽいそうです。
最近プラカードのデルやんがよくブルってるので訳を聞いたら「あの相棒のルーンルーンが」とぶるぶるるーんるーん呟いてたのよ。
使い魔とは言うまでもなく我がスーパーベイビースーパースター・はれぶたの事である。
はれぶたのズルパゥワーで実質的に魔法通り越して何でもありの私だが、社会的にはないも同然でそれでは困る。
という事で、学院一光る男・コルベールせんせぇに訊いてみる事にした。冠詞に他意は本当はめちゃくちゃあるけど一応ないぞ。
ともかく、はれぶたのルーンやら動向を観察していたのだから色々掴んでいるだろうという事で、
悪友のキュルケ・性欲と頭髪にゃ因果関係ないと思うぞ・ツェルプストーと実は需要の高いボディ・タバサとそして当事者のはれぶたと
共に、コルベール先生のあばら家、もとい研究室に怒鳴り込んでみた。
当初はのらりくらりと追及をかわした先生だった。だが私の、いっそ髪の毛「錬金」して差し上げますわよとの脅しもとい提案に、
この世の終末でも迫るかのような悲鳴を上げまくり、側頭部を庇いながらようやく語ってくれた。
で、ぶっちゃけた話、はれぶたの胸にあるルーンは始祖ブリミルが従えた第四の使い魔のそれっぽいという事らしい。
「じゃルイズは始祖ブリミルみたいに虚無の属性かもしれないんじゃない?」とはキュルケの弁。
「その可能性は考えました。しかし如何せん虚無が何かすらさっぱり資料が残っていないのです。確信が持てるまでは生徒にぬか喜び
させる訳にはいきません」
調査は続けています、申し訳ないと頭を下げるコルベール先生であった。教職って大変なのねぇ。いや、他人事じゃない。
よし、この件は保留だ。
と言いたかったところだが、この件を、通りがかりで秘書のミス・ロングビルというかマチルダさんについ愚痴ってみたところ、
意外な返事が返ってきた。
「あぁ、虚無ですね。そういえばうちのテファが虚無っぽいんですよ」
「にゃんですとー!!」
妹分のテファは四系統のどれにも属さない魔法を使いこなすのだそうな。以前は私と同じように使えもしなかったという。
どういうからくりで魔法が使えるようになったかは謎だが、つまりはテファさんとやらが私と同じ体質の可能性がある訳だ。
魔法だけでなく特に胸。あの爆乳になれる可能性があるって事じゃないですか?そうだよねそうですよね!?
「何だか人生に希望が持ててきました」
ミス・ロングビルが何か言いたそうだったが、まぁいいか。
よってこの件は前向きに保留だ!
さて、先程から述べているように、キュルケとはキュルケルイズで呼び合う間柄になった。悪友というか、タバサも入れて
悪事を共有する仲だ。人それを悪友と言う。まんまやん。
例えば、メイドを妾にする非常識万年発情変態貴族紳士・モット伯がシエスタちんを持ち帰りやがったので、皆してモット伯邸に急襲し、
あのオヤジを私の妄想力&はれぶたの能力で必殺・デブショタ・サルガッソーに沈めてシエスタちんを救い上げたり。
ビジュアル的にあまりにおぞましいので詳細は秘すが、敢えて語るなら性癖転換を促す技とだけ述べておこう。少なくとももはやモット伯が
『メイドに』欲情しなくなったのは確実だ。あとマリコルヌという存在が至高らしいと吹き込んでおいた。
ときに、レアというかアレな使い魔ははれぶただけではないと判明した。具体的にはタバサのとこのシルフィードとか。風竜かと
思ったら実は韻竜だった。早い話が人語を喋る竜だ。
何で判ったかって?そりゃ使い魔が自分で喋ったからよ。というか歌ってた。こんな風に。
「きゅっきゅっきゅ~ きの~にーちゃんと寝たときに~ へーんなところにイもはぶごっ!」
どこからともなくエア・ハンマーがぶち当てられてひっくり返ったけどね。変なところに何だ?変なところに何なんだ!?
ちなみにはれぶたは隣で振り付けを編み出していた。律儀なぶただ。
そんな緊張感あるのかないのかよく判らない学園生活に、いきなり緊張感がやってきた。アンリエッタ姫殿下がこの魔法学園に
行幸なさるという。学院は上へ下へ右へ左へと大騒ぎになった。しかも通達は当日ときた。酷い話だ。VIPの急な訪問は大変なんだよ。
特に事務関係が。物事は段取りとか準備とかそうポンポン決まるもんじゃないんだよ。どんなに遅くとも1週間前には通達が欲しい。
誰の代弁してんだ私は。
しかして姫殿下はやって来る。我ら一同、正門で整列してお出迎えをせねばなるまい。姫殿下とは幼馴染なんだけど、それはそれ、
これはこれ。
「アンリエッタ姫殿下の、おな~りーぃ!」
衛兵の号令と共に私らは杖を掲げる。視界の奥に我関せずと本を読んでるガリアっ子を認めた気がするが見なかった事にしよう。
魔法衛士隊が操るグリフォンに守られて、白くて前後に超長い馬車「ハマー」が進入してきた。誰だこんな威圧感バキバキのゴツイ馬車
考えたの。
先導するグリフォン隊隊長はよく見ると何とワルド様だった。自慢じゃないが実家同士が決めた私のイケメン婚約者である。
今の今まですっぱりこっきり忘れていたけどね。
昔知り合った頃のワルド様は魔法の使えない私を馬鹿にしなかった。それどころか励ましてくれた。イケメンの鑑のような人物であった。
あとは性的に特殊な趣味の持ち主なら完璧だ。仮になくてもいっそ変えてしまえばいいさ。
つまり何だ、私は既に勝ち組だったんだ。アルビオンの方言で言うとビクトリーだ。光の翼を広げた青白のゴーレムが親指を立てて
応援する幻想を大空に見た気がした。ありがとう何だか知らないけど四本角ゴーレムのヴィクトリー2何とかさん。
突如、轟音というか破壊音が響いた。馬車の扉が吹っ飛んできたのだ。やたら頑丈だった筈の扉は生徒の間に飛び込んで、
マリコルヌに直撃した。幸い犠牲者はいなかったようだ。
私ら生徒教師一同は杖を掲げたまま、あぅ?と一斉に体を傾げてしまう。今私達の心は一つになった。ちなみにデルやんを掲げていた
はれぶたは、デルやんを落としてしまった。隣に転がっていた扉がデルやんにぶつかって真っ二つになる。
扉のなくなった馬車からは脚が突き出ていた。ハイヒールを履いた見事な脚線だ。蹴破ったのは女性という事になる。いや該当者は
1名しかいないけど。
一歩一歩踏み締めて降り立った女性の雰囲気を喩えるなら、ド迫力の作風で定評のある人気挿絵作家サルバドーレ・ハラテツオの描く、
怒れるバイヲレンスなお兄さんといったところだ。
今にもサイバービーイングとか言いそうな形相でアンリエッタ姫殿下は学院に降臨した。左手には何とマザリーニ枢機卿を
鷲掴みにして引き摺っている。枢機卿ぐったりしているけど生きてるよね?生きてるよね?
「わ~た~し~寝てないのよー!もう3日~!!」
宮廷随一のヒマ人とも称される姫様が寝られないとは、余程の事態のようだ。
「あんたのせいよマザリーニ!ゲルマニア皇帝に嫁げなんて、あなた何考えてるのよ正気正気正気ィ!?」
まずあなたが正気に戻ってくださいと突っ込みたかったが、寝不足でハイになりまくった人間の判断力に常識的なものを果たして期待
出来るのだろうか?この時点ではそう考えておりました。
姫様は枢機卿の両肩をがっしり掴んで揺すぶりまくって喚きまくっている。枢機卿の首が物凄い勢いで回転していた。姫様、国の屋台骨を
殺す気ですか!?
「おぉ姫殿下、しばし落ち着きなさいませ」
皆が唖然としている中で止めに入ったオールド・オスマンはさすが年長者といったところだ。
が、
「邪魔よ!」
速攻で振り返った姫様がオールド・オスマンの頭と髭を掴むと、
「むふん!」
「おごわ!?」
オールド・オスマンの首を真横に捻じ曲げた。ご老体は一発で崩れた。生きてるよね?生きてるよね?
また振り返り、馬車を牽いていたユニコーンの頭を勢い良く挟むと、眼を三角にして睨みつけながら姫様は延々繰言を述べていた。
ユニコーンが脂汗を流す場面を初めて見た。あれだけビビればそのうち一本角が割れて人の顔が現れそうだ。
実は姫様と幼馴染の私としては、姫様は昔からアレだな~と思える節は色々あり過ぎていたが、成長した今となってもやっぱアレだな~
…と思わざるを得ない。
しかも相手はザ・国家権力だから迂闊に諌める訳にもいかない。
諌める立場にないのは衛士隊長のワルド様も同じだった。替わりに、風の魔法で遍在、要は分身を生み出し計5人のワルド様が
姫様の周囲に陣取った。そして外側でどっ引いてる教師生徒一同に向かってキツツキのように頭を下げまくっていた。
これ以上ないくらい憐憫を誘う遍在の使い方だった。管理職がいかに大変か思い知らされたよ。後でワルド様には胃に効く薬を
プレゼントするとしよう。
引きつった表情でキュルケが私に話しかけてきた。
「何か…トリステインのお姫様って凄い方なのねルイズ」
「あー…ははは…」
乾いた笑いしか出てきません。
「ル、イ、ズ…!?」
地獄の底から響いてくるようなボイスが聞こえてきた。目の前の国家権力から。
姫様はこちらに振り返った。目が光ってる気がした。そうか人間って頭以外にも光るところあるんだ。
姫様はこちらに向かってくる。きっちり発見されていた。アレですか、サーチアンドデストロイとかそんな物騒な表現ですか。
当然ながら止められる者はいない。何の障害もなく姫様は私の前に立った。私達から同心円状に一斉に人が引いていた。たった今まで
私の傍にいたキュルケも含めて。そりゃ関わりたくないだろう。私もその輪の中に逃げたい。
「そうだわ、私にはルイズがいましたわ。あぁルイズ、私のお友達」
こっち向きながらあっちの世界に向けて語る姫様にまともな会話を期待するのは無理な相談でしょうか始祖ブリミルよ。
「ひ、姫様、お久しぶりです」
「イヤイヤイヤ姫様なんて他人行儀な呼び方!」
立場と状況を考えて叫んで下さい。いやマジで。
「昔のようにアンとかエッタとか!いっそアンリとかリエとかリリアン・ギッシュとかクワシマホーコとかアンダーテイカーとか
リオンネッターとかCATシャノンでもいいわ!」
女優はともかくレスラーとカニと傭兵の名前をあだ名にどうぞって示されても、非常に困る。いや突っ込むべきはそこじゃない。
病んデターだ。あなたのあだ名は病んデターに決めた。たった今決めた。私の脳内限定で。
「ルイズは小さかったあの頃からお変わりありませんのね。あぁ素敵な事ですわ、私のルイズ」
残念ながら今日から突っ込み体質に変わりました。主に目の前の国家権力のお陰で。
「楽しかったあの頃を思い出しますわ。あなたと一緒に遊んだあの日々…」
「えぇ、パラパラマンガとか」
つい突っ込みを口に出してしまった。
「パラパラマンガ!そうですわ、カックイイ騎士様を描いた私の傑作ね!今でも大事に保管してありますの!」
そりゃ大事に国家レベルで保管されているでしょう。落書きしたのが始祖の祈祷書なんですから。
「あのー、何かおっしゃりたい事があっていらしたのではないですか?」
あっちの世界で大回転しかけるのも結構だが、そろそろ本題に入って欲しい。そしてさっさとお帰りになって欲しい。
「そうでしたわ私のルイズ!実は私、結婚する事になったのです」
「えーと、ゲルマニア皇帝とですね」
「何故お判りになったのです!あぁ何て聡明なルイズ」
「いえ、皆知ってます」
「まぁ!魔法学院の方々は情報に聡い方が揃っておいでですのね!」
あなたさっきからウマ相手に延々そう愚痴ってましたやん。
「結婚といっても実はアルビオン王家を潰しに掛かっている逆賊レコン・キスタを抑える為のものなのです」
つまりは同盟だ。軍事的なものも含んでいるだろう。まぁ政略結婚は王家の義務だから議論の余地はない。こんなのを嫁にする
ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世陛下が不憫に思えてきた。
実はさっきからずっと、姫様改め病んデターに抱きつかれたまま会話を続けている。胸に頬擦りまでしてくる始末だ。逃げられません。
「あぁ!駄目ですわ!あなたにこんな事頼めません!でも決めました。やはりあなたにお願いするわ」
出来れば社会的に可能な範囲でお願いしたい。昔やらされた嫌味たらしい女官の部屋を爆破とかそんな方面ではなく。
「実は私、心に決めた人がいるのです」
唐突に何言い出すのかと思ったが、不倫になりかねない話なのでただ事ではない。というか病んデターにロックオンされていた犠牲者が
私以外にもいた事実におでれーた。
「それはアルビオンのウェールズ殿下なのです。あぁウェールズ私のウェールズ」
今戦火的な意味でホットな国の王子様というか病んデターの従兄が犠牲者であったか。
「実はそのウェールズと恋文を交わしていたのです。愛を始祖の名で誓っていますのあぁ私のウェールズ」
つまり結婚宣言をした証拠がバッチリ残ったラブレターと。
「それ、物凄~くマズいですね?」
「えぇ、物凄~くマズいのです。手紙がレコン・キスタに渡れば間違いなくバクロされてしまいます。そうなれば結婚はおしまいです。
本当はちょっと嬉しいけど同盟がなかった事になるからやっぱりマズいのです」
始祖ブリミルの名でやっちまっては、それウッソ~…なんて言えない。超罰当たりですから。いっそシソの葉にでも誓っておけば、
こんなややこし~ぃ事にはならなかったのに。
「ですから私のルイズ、私のウェールズに会って恋文を取り戻してください!」
あぁ、そう来たか。ずっと落ち着いた状況で言われたなら、たとえ火の中だろうと水の中だろうと男風呂の中だろうと
謹んで行かせて頂きますくらいは言えたかもしれない。だがこれではどうしても引く。
「あの、そういう荒事なら魔法衛士隊とかの役目なんじゃないでしょうか?」
「いえ無理無理無理無理無理なのよ!今宮廷にはレコン・キスタに与する輩で溢れぼっくりなのよ!リッシュモンとワルドが
レコン・キスタの間諜と話してるのも見たわ!」
「ひひ姫様今さらっとやばい具体名出しませんでした!?」
「だーか~ら!姫様じゃなくて!アンリとかリエとかリリアン・ギッシュとかクワシマホーコとかアンダーテイカーとかリオンネッターとか
キャット・シャノンとかアンドーモモフクとかアビタニレイジとか!」
あだ名の候補に偉人と奇人が加わった。あなた自分を何だと思ってるんですかという突っ込みは置いといて、さらっとやばい具体名の
当事者であるワルド様を見たら、
…青い顔をしてました。図星ですか、図星ですね。
どの道逃げ道はありません。ここはもう腹を括ろう。
「…謹んでお受けいたします」
「ありがとう私のルイズ!あなたは最高のお友達だわ!」
ていうかあなた私以外友達いないやん。
「この書簡をと水の指輪を私のウェールズに渡してください。私のウェールズ様へ向けた証明書です。秘密の任務をお願いします。
あなたは希望なのです。アルビオンの方言で言うとフリーダムなのです私のルイズ」
「希望はアルビオンの方言で言うとホープです」
大空に10枚の羽根を背負った白黒のゴーレムが大股開きで決めていた。すみません今ちょっと引っ込んでてください何だか知らないけど
フリーダム何とかさん。
それはそれとして、公衆の面前でここまでおおっぴらにでかでかと語られる「秘密」の任務もちょっとないだろう。
姫様は指にはめた指輪を抜き、スカートの下から封入りの書簡を抜いて、その2つを私に差し向けた。実に用意がいい。
いやそれよりも、その書簡が妙に生暖かいしで、物理的な意味で扱いに困る。しかも私の頬に押し当てられてる。
しかもかの権力の権化は頬が上気しまくってて息が荒い。
一瞬の隙を狙って拘束から抜け出し、書簡をむしり取ると高速でダッシュ!して距離を取った。今はもうこの場を逃げる事ばかり
考えてしまう。
「あぁ駄目よ私のルイズ。折角だから親交を暖めましょう!」
病んデターの両手の指が恐ろしく艶かしくくねりまくっている。まな板ショーか?まな板ショーやる気か!?
「いかん!早く眠りの鐘を!」
さすがにここに来てようやくワルド様が止めに動いた。たーすーけーてー!
眠りの鐘が発動した。国家権力の頭上に間抜けな金属音が響き渡る。直接落ちてきたのだ。…ていうかそれ金だらい。
アレですか。はれぶた・ザ・ワールドの影響ですね。周りの皆様、眠りの鐘がすり変わった事に気付きもしません。
病んデターはふらつきながら馬車に戻り、水差しを取り出した後、実に優雅に飲み干し、実に実に優雅に倒れた。
かくして病んデターはアンリエッタ姫殿下へと戻られた。
「と、トリステインの姫様って、凄い方なのね。違う意味で」
キュルケの呆れ顔に応えるには勇気がいった。
「いえ、本当は姫殿下は見目麗しい方なのよ。黙っていれば」
すかさず金髪アフロのギーシュが何故かフォローする。
「そうだよ、姫殿下は本当は美しい方なんだ。黙っていれば」
微妙な雰囲気とはこの事でしょうか。
そんなこんなで、あっという間に秘密の任務の実行部隊が編成された。そして学院の正門では実行部隊と見送りの野次馬が集まっている。
「頑~張~れよ~!秘密の任務を成功させるんだぞ~!」
そんな声援が聞こえてくる。しかも横断幕まで用意する始末だ。どの辺が秘密だ、と突っ込む気ももはや失せた。
「はーい、皆さん整列ー」
「「「はーい」」」
ミス・ロングビルが手を叩きながら実行部隊を統括してくれる。一度「はーい」で皆の注意を惹いてから本題を切り出す手腕はさすがだ。
ここでメンバーを整理しよう。まず、直接依頼を受けた私、ルイズ。当然はれぶたも一緒だ。アルビオンに詳しくてというか出身の引率者
ミス・ロングビル。超速い使い魔を擁するタバサ。運転手は君だ。腕っ節の強い火の属性のキュルケ。本当は「面白そうだから」だとさ。
そして何でお前がいるアフロのギーシュ。見目麗しい姫様の云々言ってたがよく判らん。ただ軍人の息子という肩書きと本人の実力は
関係ないぞ。
そのアフロ野郎はモンモランシーと別れの挨拶を交わしていた。いちゃいちゃしやがってこの野郎ども。
「無事に帰ってきてねギーシュ。私たちの子供のためにも」
今凄く聞き捨てならない事を聞いた気がするが、全力で無視する。
「せんせー、全員揃いましたー」
キュルケが報告する。ミス・ロングビルは秘書であって教師じゃないんだけど、何故かついそう呼んでしまう。能力的に
いっそ教職に転職してもいいんじゃないか?寧ろ美味しくないか?とは学園中の生徒が概ね一致する見解だったりする。
そういやテファさんのいる隠れ里では孤児をわんさか集めて養っていたのよね。子供の扱いはお手の物という訳か。
「そういえば…魔法衛士隊の隊長さん、捕まったそうね?」
「まぁ、そうでしょーね…」
キュルケの世間話に、苦笑いで返すしかない。
そうなのだ。ワルド様はあの後逮捕されてしまったのだ。言うまでもなく国家反逆罪だ。しかもあの眠りの鐘というか金だらいを
姫様に直撃させた事が、姫様へのテロと受け取られたらしい。酷いものだ。あの場面に限って言えば、衛士隊としての職務を果たしたに
過ぎないというのに。
疑わしいからそれっぽい容疑も付けちゃおうっていう事なのだろう。レコン・キスタに与する連中がスケープゴウトにしたとも
囁かれている。逆説的だが、そりゃこんな国に仕えてられるかー、てなるよなぁ。
さようならワルド様、マイイケメン婚約者。今頃杖もベルトも取り上げられて、牢屋で臭い飯を食ってる事だろうなぁ。
ついでに婚約者の件を周りに語りそびれたお陰で、「男殺し」のルイズなんてふざけた二つ名に拍車を掛ける事だけはなかった。
「それでは皆さん、シルフィードに乗ってくださーい」
5人&1匹乗れるんか?と疑問も持ったが、人間何とかなるようだ。韻竜だけど。
そして秘密の御一行は魔法学院を飛び立った。きゅいきゅい、もといシルフィードでアルビオンまでひとっ飛びだ。いや、ルートの
途上にあるラ・ロシェール辺りで休憩を兼ねた情報収集をすべきだとはミス・ロングビルの弁。魔法学園ってぶっちゃけ田舎だから
情報に疎いんです。
道中、はれぶたは踊り、シルフィードが歌う。
「きゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅっ、とぉっとこ~回すよゲンゴロー、滑車を~回すよゲンゴロー
だ~い好きなのは~ オ~ジサマのタレうごぎゃぼ!」
哀れきゅいきゅいは、タバサに杖のフルスイングでぶん殴られた。渾身の一撃だ。お陰で墜落しかけて、死ぬかと思った。ていうか
ゲンゴローって誰だ?オジサマの何なんだ~!
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