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「こ……これがキョーシツですか……」
教室の前まで来たわたしと、やや青ざめた表情で教室のドアを見つめるダネット。
「ほら、入るわよ。」
わたしがそう言って教室のドアを開けると、ダネットは表情を硬くし、パンと顔を叩いてわたしに付いてくる。
そして、教室の中に入った瞬間に叫んだ。
「な…何ですかこれは!!怪物だらけじゃないですか!!」
そして、懐から短刀を抜き放ち、瞬時にわたしを庇うような体制になる。
「くっ…!迂闊でした。まさかジュギョーとやらが、私達をハメる罠だったなんて!!お前!!一旦引きます!!」
「落ち着きなさい。」
平手で打ち据えたダネットの頭から、スパーンといい音がした。
「な…何をするのですか!!はっ…!!もしやお前……グルだったのですか!!」
「違うわよ。」
ダネットの頭をスパーンスパーンと二度はたく。
おお、結構いい音がするわね。
「あれは怪物じゃなくて、他の生徒の使い魔よ。害は無いから安心しなさい。」
教室の中には、生徒の他に、昨日の召喚の儀で召喚された使い魔達がいた。
若干生徒よりも少ないのは、教室の中に入る大きさの使い魔だけ教室に入っていて、大型の使い魔は別の場所で待機させているからだろう。
でもまあ、初めてこの光景を目にしたら、少しは驚くかもしれない。
わたしも少しだけ驚いたのは内緒だ。
「ルイズー、ほら、こっち空いてるから来なさいよ。」
この声はツェルプストーだ。
わたしが声の方を見ると、周りに男子生徒をはべらせたツェルプストーが、手をひらひらさせてこっちを見ていた。
確かにツェルプストーの前の席は空いている。でも、ツェルプストーの傍で授業を受けるのは気に入らない。でも席が空いているのはあそこぐらいだ。
わたしが思案していると、横で頭をさすっていたダネットがツェルプストーに気付いたらしく、人差し指をツェルプストーのバストに向けながらこう言った。
「あ!!お前は朝の乳でか女!!」
この言葉に、言われたツェルプストーではなく、横の男子生徒が顔を赤くしている。
「恥ずかしいわね!ちょっと黙りなさい!」
わたしはそう言ってダネットを制した後、取り合えずダネットを座らせて黙らせようと考え、仕方なくツェルプストーの前に移動する。
その間、生徒達の小さなクスクスという笑い声が聞こえたが無視した。
「で?わざわざわたし達を呼んだのは、席が空いてただけっていう訳じゃないんでしょツェルプストー。」
わたしがそう言うと、ツェルプストーは豊満なバストをぷるんと揺らしてダネットの方を見て言った。
「まあね。朝はあんなだったから、ロクに挨拶もしてなかったでしょ?自己紹介ぐらいはしといて損はないって思ってね。」
言われたダネットは、少し警戒しながらツェルプストーに返事をする。
「ダネットです。また火を出したら、今度は首根っこへし折りますよ乳でか女。」
ツェルプストーは少し肩をすくめ、不敵な笑みを浮かべながら返事を返す。
「あなた達が騒がなけりゃ大丈夫よ。それと、あたしの名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。二つ名は微熱。微熱のキュルケよ。」
すると、ダネットが指を頬に当て、首を傾げて思案しだす。
何だか頭から煙が出ているように見えるのは気のせいだろうか?
「きゅ…きゅきゅ?きゅ……」
動物の鳴き声みたいな声を出し、固まるダネット。
そして、頭からだけではなく、耳からも煙が出ているように見えた後、頭のてっぺんからボンという音が聞こえそうな感じになった後、勢いよく机に突っ伏した。
「ちょっと!大丈夫!?」
驚いたわたしが倒れたダネットの体を揺すると、ダネットは頭を押さえながら立ち上がり、またもやびしっとツェルプストーのバストに指を突きつけ宣言する。
「お前は乳でか女です!!それ以外の名前なんて言ってやりません!!お、覚えられないのではありません!言わないだけです!!」
そう言った後、憮然とした表情で席に座りなおした。
それを見たツェルプストーは、あっけにとられた顔をした後、笑いを堪えきれないといった感じの笑顔で笑い出した。
「あっはっは!!あんた面白いわねダネット。気に入ったわ。名前はいずれ覚えればいいわよ。」
そして「そう言えば」と言った後に、自分の足元に向かって呼びかける。
「フレイム、あんたも挨拶しとく?」
わたしが視線を落とすと、そこには尻尾に炎を灯した真っ赤な火トカゲがいた。
「これってサラマンダー?」
少し悔しかったが、別にダネットを召喚した事は後悔してなかった(まあ多々問題はあったが)ので、興味本意だけで尋ねてみる。
「そうよー。火トカゲよー。見て?この……って、ダネット?どうしたのよ?」
多分、自慢をしようとしていたと思われるツェルプストーが、変なものを見る目でダネットの方を見ていた。
わたしも見てみると、ダネットは何故か目を輝かせながらぺたぺたと火トカゲを触っている。
気のせいか、少し火トカゲが怯えているようにも見える。
しばらく「おー」とか「これは……」などと言いながら火トカゲを触った後、わたしとツェルプストーを見ながら、満面の笑顔でこう言った。
「凄く美味しそうです!!」
「食うな!!」「食べるんじゃないわよ!!」
とまあ、わたしとツェルプストーが二人でツッコミを入れた時、教室のドアがガラリと開き、先生が入ってきた。
あの先生の授業は始めてだ。
名前は確かミセス・シュヴルーズで、土の属性のメイジだったはずだ。
そんな事を考えていると、ダネットがわたしの袖をくいくいと引いて尋ねてきた。
「お前、あいつも焔術師ですか?」
「あいつじゃなくて先生と言いなさい。それで、エンジュツシだっけ?朝も言ってたけど、それってあんたの土地でのメイジの呼び方なの?」
質問を質問で返すのもどうかと思ったが、エンジュツシとやらが何なのかわからないと、どう返していいかわからない。
そんなわたしの問いに、指を頬に当て、考え込むダネット。
「めいじ…それって焔術師なんですか?」
「いや、だからそれがわからないから聞いてるんだけど。ちなみにメイジっていうのは……」
このままじゃ話が続かないので、わたしがメイジの説明をしようとした時、ミセス・シェヴルーズの声が響き渡った。
何やら、使い魔召喚が大成功で嬉しいとか、その使い魔を見るのが楽しみだといった内容だ。
そして、ぐるっと教室を見渡した後、わたしとダネットの方をじっと見て言った。
「おやおや。変わった使い魔を召喚したのですね。ミス・ヴァリエール。」
それを言った途端、教室がどっと笑いに包まれる。
その笑いの中で、少し小太りのマリコルヌが立ち上がり、わたしを指差しながらこう言った。
「ゼロのルイズ!その亜人、本当はどっかを歩いてた平民に角付けただけだろ!平民を連れてくるなよ!」
これにカッとなったわたしが立ち上がり、マリコルヌに反撃しようとした時、横のダネットがダンと音を立てて席を立った。
「私はセプー族です!」
それを見てあっけにとられたマリコルヌが、キッと表情を変え、ダネットに向かって反撃する。
「嘘つくな!どうせゼロのルイズが『サモン・サーヴァント』ができなくて、その辺の平民を連れて来たに決まってる!!」
それを聞いていた回りの生徒が笑い出し、口々にわたしとダネットを馬鹿にする。
絶えかねたわたしが、立ち上がってダネットに加勢しようとすると、それをツェルプストーが手で制した。
「邪魔しないでよツェルプストー!」
「まあ見てなさいよルイズ。」
そして、視線をダネットに向ける。
わたしもダネットの方へ視線を向けた。
「上等です。なら、私がセプー族だという証拠を見せるまでです。」
そう言って、緑色の短剣を取り出し、マリコルヌに突きつける。
それを見たマリコルヌは、小さな悲鳴を上げてたじろいだ。
ダネットはそんなマリコルヌを見た後、教室をぐるりと見渡し、よく通る声ではっきりと言った。
「わたしとルイなんとかを笑ってたお前たちもかかってきなさい。疑うというなら証明してみせます。片っ端から首根っこへし折ってやります。」
相変わらず名前は覚えていないものの、それでもわたしを守ると言った事は忘れていない。
わたしはそれが嬉しくて、思わず目頭が熱くなる。
今まで、この学院で味方なんていなかった。
でも、昨日突然召喚されたばかりのこの使い魔は、わたしを守ってくれている。
たった一度、守ったから。それも、見方によっては無理やり使い魔にされたにもかかわらず、なのにだ。
そんなわたしを知ってか知らずか、ダネットは今もゆっくりと教室を見渡している。
いつの間にか、わたし達を笑う声は消えており、教室内が静寂に包まれる。
そんな静寂を破ったのは、ミセス・シェヴルーズだった。
「申し訳ありませんでしたミス・ヴァリエールの使い魔さん。ミスタ・マリコルヌも、他の生徒の方々もお静かになさい。」
それを聞いたダネットは、今も納得がいってなさそうな表情をしていたが、わたしが服を掴んでくいっと引くと、しぶしぶといった感じで腰を下ろした。
それを見ていたツェルプストーのニヤニヤした表情が気に入らなかったが、取り合えず無視しておく。
「それでは授業を始めたいと思います。」
そう言ってミセス・シェヴルーズが杖を振ると、小さな石ころがいくつか机に転がった。
それを見たダネットは「ほー」と言ってそれを興味深々に見つめる。
それから授業は進み、四大系統や失われた『虚無』の話をし、最後に『土』系統の講釈を始めた。
ドットやライン、トライアングルやスクウェアといったメイジのレベルの話をした後『錬金』の実演をして見せるミセス・シェヴルーズ。
隣のダネットは、最初の内はミセス・シェヴルーズの話す内容にコクコクと頷いたり、驚いたりしていたのだが、今では耳からぷすぷすと煙をあげていた…ようにも見えた。
こうして授業は終盤に差し掛かる。
その最後の内容は、生徒による『錬金』の実演。
わたしが最も嫌う内容だ。
そしてこの日は、運が悪いというか、ミセス・シェヴルーズがわたしを受け持ったのが始めてだった為か、実演する生徒にわたしが指名されてしまった。
騒ぎ出す生徒に、後ろの席で青ざめるツェルプストー。
それはそうだろう。
わたしが魔法を使うと、どんな魔法でも爆発してしまう。
そしてその爆発は、大爆発と言っても差し支えない範囲だったりもする。
それが自分でもわかっているから、わたしは辞退しようと考えた。
だって、また爆発してしまったら、隣のダネットにも被害が出てしまうかもしれない。
それにきっとわたしの事を軽蔑する。
所詮、魔法の使えない『ゼロ』だと馬鹿にする。
そんなのはきっと耐えられない。
そう思って、ダネットの方をちらりと見てみた。
「お前!頑張るのですよ!!」
ダネットは目を輝かせながらわたしに向かって言った。
その目を見て、わたしはぐっとこぶしを握る。
そうだ。最初から諦めていたらずっとゼロのままなんだ。
わたしはダネットを召喚できた。
だから、もしかしたら今日は成功するかもしれない。
いや、きっと成功するに決まってる。
そう思ってわたしは、強い決心をして教壇に向かった。
後ろからツェルプストーの「やめてルイズ」という声が聞こえたが、それでもわたしは止まらない。
机の上の石ころを見つめ、詠唱し、杖を振り下ろす。
大丈夫。きっと大丈夫。
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