「使い魔の炎-05」(2008/10/10 (金) 09:54:26) の最新版変更点
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#navi(使い魔の炎)
ある日、ルイズは烈火を廊下にほっぽりだした。どうやら、烈火がルイズお気に入りの下着を破ってしまったことがお気に召さなかったようである。
「アンタ、今日は罰として外で寝なさい!! いいわね!?」
「ひ、姫! ちょっと待…はべっ!!」
バタン!と閉じられたドアに烈火は顔面からぶつかった。
「寒い…炎だして暖まるか…いやさすがにここで炎だすのはマズいか…」
烈火はドアの前に座り込んだ。
「やっぱ黙ってたの悪かったかな…」
初めて烈火の前で魔法を失敗したとき、ルイズは泣いてしまった。
それほどに、ルイズにとっては魔法が使えないことは大きなコンプレックスなのだろう。
自分は努力しても、魔法が全然うまくならない。
しかし自分が召喚した貴族でもすらない人間は、炎を操れる。 そんなのイヤに決まっている。
だから、ルイズは烈火に冷たい態度をとるのだろう…それが烈火の考えだった。
いったいどうすりゃいいんだろうな…
烈火はドアの前で凍えそうになりながら考えていた。
その時、キュルケの部屋の扉が開き、サラマンダーのフレイムが姿を現した。
フレイムはちょこちょこと烈火に近づいてくる。
「よおフレイム。 どうしたんだ?」
すでにフレイムに慣れていた烈火は、気さくに声をかけた。
すると、きゅるきゅると人なつこい声をあげながらフレイムは烈火の服の裾を引っ張った。
「おいこら。 何処に連れていくんだよ?」
烈火は言った。
しかしサラマンダーは烈火の言葉を無視しぐいぐいと強い力で烈火を強引に引っ張った。
キュルケの部屋のドアは開けっ放しだ。 あそこに俺を引っ張り込む気か?
烈火は考えた。
キュルケ、俺に用でもあるのかな? でも、あんま喋ったことないんだけどな…
烈火は何故自分が引っ張られるのか良くわからないまま、キュルケの部屋のドアをくぐった。
部屋の中は真っ暗で、キュルケがいる場所どころか、足下すら良く見えなかった。
「扉を閉めて?」
キュルケの声が聞こえたので、烈火は言うとおりにした。
「ようこそ。こっちにいらっしゃい」
「真っ暗で何も見えねえよ」
キュルケが指を弾く音がする。
すると、部屋の中に立てられたロウソクが一つずつ灯っていき、悩ましい姿のキュルケ腰掛けたベッドまでの道のりを作り上げた。
彼女は、烈火が見たことのないような形の下着を身につけていた。 明らかに異性を誘惑するための下着である。
キュルケのメロンのような胸に、烈火は思わず目が釘付けになってしまう。
「そんなところに突っ立ってないで、いらっしゃいな」
キュルケは色っぽい声で言った。
「いや、ち、ちょっとそれは…」
困惑する烈火に痺れをきらしたキュルケは、立ち上がって自ら烈火に近寄ってきた。
「ななな、何のようだ?」
この状況に烈火は、ギーシュとの決闘のときよりも遙かに緊張していた。
キュルケは優雅に髪をかきあげ、野性的な魅力を放ちながら烈火に歩み寄ってくる。
「あなたは、あたしをはしたない女だと思うでしょうね」
「はい?」
「思われても、しかたがないわ。 わかる? あたしの二つ名は『微熱』」「はい」
「あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。 いけないことよ」
「ああ、あの、とにかく、先にその格好を、そのはしたない格好、お父さんは許しません!!」
烈火はまったく話を聞いていない。 というか冷静に聞けるほど落ち着いていない。
「でもね、あなたはきっとお許しくださると思うわ」
キュルケも烈火の話を聞いていない。潤んだ瞳で烈火を見つめた。
理性が飛びそうなり、烈火の目はぐるぐる回っていた。
「おい、おま、何の話だよ!?」
キュルケはすっと烈火の手を握り、胸に手をあててきた。
「恋してるのよ。あたし。 あなたに。 恋はまったく、突然ね」
「は、はあ…はあああ!? 恋って俺に!?」
烈火は混乱した。
「あなたが、炎でギーシュを倒した時の姿…かっこよかったわ。
私、自分以外の炎であんなに痺れたの初めてよ。信じられる! 痺れたのよ! 情熱! あああ、情熱だわ!」
キュルケは肉感的な体を烈火に押しつけてくる。
しかし烈火は必死に目を背けながら、キュルケの肩を押し戻した。
「ええっと、一回落ち着け。 お前は、ちょっと惚れっぽいんだ」
キュルケは顔を赤らめた。
「そうね…人よりちょっと恋ッ気は多いのかもしれないわ。
でもしかたないじゃない。恋は突然だし、あなたの炎が私に火をつけてしまったんだもの」
キュルケがそう言ったとき、窓の外に恨めしげな顔をした一人のハンサムな男があらわれた。
「キュルケ…。待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば…」
「ペリッソン! ええと、二時間後に」
「話が違う!」
キュルケはうるさそうに、杖をふるった。
炎が大蛇のように伸び、窓ごと男を吹き飛ばした。
「おいおい…」
さすがに烈火は唖然とした。
「今のはただのお友達。私が今一番恋してるのはあなたよ、レッカ」
キュルケが烈火にせまる。
すると、今度は精悍な顔立ちの男たちが窓枠を叩いた。
「キュルケ! そいつは誰なんだ! 恋人はいないっていったじゃないか!」
「スティックス! マニカン! エイジャックス! ギムリ! …ええと、六時間後に」
「朝だよ!」
男たちは仲良く唱和した。
「フレイムー」
キュルケがうんざりした声で呼ぶと、フレイムの火炎が四人を吹き飛ばした。
「いやいや…」
烈火は驚きを通り越して、あきれかえっていた。
「今のいったい、誰だったかしら? とにかく!愛してる!」
キュルケは烈火の顔を両手で挟もうとした。が、烈火はその手を避けた。
「あら、どうして?」
キュルケが悲しそうな声で言った。
「いや、やっぱそういうのはダメだろ…」
烈火はキュルケの肩に手を置き、言い聞かせるように言った。
その時、物凄い勢いでドアが開いた。
「またかよ…」
思わず烈火はそう呟いたが違った。 ドアの前には、物凄い形相のルイズが立っていた。
「ツェルプストー!誰の使い魔に手を出してんのよ!!」
ルイズが怒鳴る。
誤解だ!そう思いながら烈火は慌てて手を引っ込めた。
「しかたないじゃない。好きになっちゃったんだもん」
「来なさい。レッカ」
ルイズは有無を言わさぬ目で烈火を睨んだ。
烈火は素直にルイズに従う。
「あら、お戻りになるの?」
悲しそうな目でキュルケは烈火を見つめた。
「姫の言いつけは忍にとって絶対だからな」
そう烈火は返す。
キュルケは残念そうな顔をした後、ルイズに向き直った。
「ルイズ。レッカはすごくあなたに忠実みたいだけど、彼にだって意思はあるのよ。そこを尊重してあげなさい。
じゃあね、レッカ。おやすみ」
烈火はキュルケに返事をしようと思ったが、ルイズがすごい力で引っ張るため、言葉を発せないままキュルケの部屋をあとにした。
部屋に戻ったルイズは、部屋の鍵をかけるやいなや怒鳴り始めた。
「まるでサカリのついた野良犬じゃないの~ッ!」
「い、いや俺なんもしてねえだろ!? あと俺は野良犬じゃなくて、忍…」
「問答無用!! ツェルプストーの女に尻尾をふるなんてぇーッ!」
「だから何もしてねえっつうんだよ!! 落ち着け!
何でキュルケをそこまで目の仇にするんだ?」
少し落ち着きを取り戻したルイズは、ヴァリエールとツェルプストーの、戦いの歴史を語り始めた。
「武器? 俺のか?」
「なんで私のを買うのよ」
キュルケとのゴタゴタがあった次の日、烈火はルイズに連れられて、城下町を歩いていた。
なんでも、ルイズは烈火に身を守るための武器を買ってくれるらしい。
「でも、俺剣なんてあんま使ったことないし。
最悪、戦うときは炎使えばいいじゃん」
一度みんなの前で使ってしまったんだし、姫を守るためなら人前で炎を使うのもいとわない、そう烈火は考えていた。
しかし、ルイズは違った。
「アンタね…どれだけの人がその力を怖がってると思ってるの?」
「昨日の授業で、何人も炎だしてたじゃん。 杖使って」
「杖があるのとないのじゃ大違いなの!! 下手したらアンタ、異端審問を受けることになるわよ!!」
「異端…? なんだそれ?」
ルイズは、異端審問の内容を烈火に説明した。
烈火の顔が青くなる。
「マジかよ…釜茹でなんて、絶対イヤだぞ」
「まあ、異端審問をしようとするヤツがいても、アンタの力は『ディテクト・マジック』には反応しないみたいだし、見た目もどう見たってただの平民だから教会から許可が下りないだろうけど…
それでも、アンタのことを良く思っていないヤツもたくさんいるんだから」
「ケンカふっかけてくるヤツがいたら、ぶっ飛ばせばいいじゃん」
「ケンカをふっかけてくる人と毎回炎でドンパチやってたらみんな余計怖がっちゃうでしょ!?
だから、炎を使わないで身を守るために剣を買うのよ!!」
「いてて…わかったから、引っばらないでくで」
「それから! 非常時意外、炎を使うのは禁止! わかった!?」
「へいへー」
結局烈火はルイズに引きずられ、武器屋に向かった。
「で、どの剣にするの?」
ルイズにひきつられてやってきた烈火は、悩んでいた。 正直、武器のことなんてあんまり良くわからないのである。
日本刀や忍者の武器、せめて銃火器についてなら少しは知識があるのだが、生憎ここは異世界。そんなものが都合よくあるはずがなかった。
ルイズと烈火が最初に見せてもらった剣は、非常に見栄えもよくいい剣だった(らしい)のだが、値段が高すぎて買えなかった。
それどころか、ルイズの所持金で買える剣はボロボロの鉄くずのようなものしかないのである。
烈火はルイズの所持金の少なさは自分の治療に使われた秘薬のせいだとすぐにわかったので、ルイズを責めることはなかった。
しかし…
「いくらなんでも、ボロすぎるだろ…この剣、戦いにつかえるのか?」
一本の剣の刀身を目にした烈火は、思わずそう声に出してしまう。
そのとき、
「おめえの目は節穴か!? この生意気坊主!」
低く響く声が、烈火の握る剣から聞こえた。
「うおっ! なんだこの剣!? おもしれえ!」
「その剣…インテリジェンスソード?」
ルイズの問いに、武器屋の主人が揉み手をしながら答える。
「へえ、奥様。そいつは意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。
こいつ、やたら口は悪いわ、客にケンカは売るはで閉口してまして…」
「俺、これにする」
店主の言葉を遮り、烈火が宣言した。 ワクワクした顔をしている。
「え~、これ? もっといいのにしなさいよ」
剣のボロさとうるささに、不満を感じるルイズ。
「いいじゃん。剣が喋るなんて、いかにも魔法っぽくてさ」
烈火が返す。
「俺は花菱烈火だ。よろしくな」
「俺様はデルフリンガーさまだ! …おでれえた、お前、『使い手』か」
「『使い手』?」
「自分の力もわかんねえのか? …ま、いいや。俺を買いな」
「もち」
烈火は満面の笑みで頷き、持っていた財布をルイズに渡す。 渋々ルイズは財布を開けた。
こうして、烈火はデルフリンガーを購入したのだった。
「ちょっと、どういうことよ!」
デルフリンガー購入から数時間後、寮に戻ったルイズと烈火のもとに、キュルケがやってきた。
彼女の親友である小柄で青い髪の少女、タバサも一緒である。
「だから、あの店で一番いい剣を手に入れたから、烈火にはそっち使いなさいって言ってるのよ」
「おあいにくさま。使い魔の使う道具なら間に合ってるの。 ねえ烈火」
烈火はしばらくキュルケが手にいれた剣に夢中になっていたが、やがてそれをキュルケに返した。
「ごめん、キュルケ。悪いけど、俺には姫が買ってくれた剣があるから。…これは受け取れねえよ」
「え~、どうして? これ、とっつも高価なのよ」
実際には、キュルケが色仕掛けで店主を誘惑し、定価の四分の一ほどで購入したものだったが。
「いや、まあ知ってるけど…やっぱり、君主が買ってくれた剣を使わないと悪いしさ」
ルイズはすごい勢いでニヤニヤした。
キュルケに勝ったうえ、烈火の忠誠の厚さを感じたからである。
「ニヤニヤしないでよ」
「嫉妬はみっともないわよ? ツェルプストー」
ルイズはいつものキュルケの口調を真似ていった。
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