「ゼロの平面-3」(2007/07/27 (金) 02:47:14) の最新版変更点
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ゲーム&ウオッチがひしっとルイズに抱きつく。
比較的背の低いルイズだったが、さらに一回り小さいぺらぺらの体は丁度ヘソ辺りに擦り寄った。
「ちょっとキュルケ! 人の使い魔に何してくれるのよ!?」
ルイズが辺り気にせず声を荒立てた。
といっても、今は朝食の時間。
皆食堂に集まっていて人が居ないため
特に周りに気を使う必要も無いといえば無いのだが。
「誤解しないで頂戴。私はただこの使い魔くんと仲良くお話してただけよ」
「何がお話よ、何が。……大体こいつ、『ビ――ッ』ってしかしゃべれないのに何がわかったって言うのよ?」
全く悪びれた様子も無く、髪を掻きあげて余裕の態度を見せるキュルケに対し、
ルイズは額にデフォルメで血管が浮き出るほど怒っていた。
~ゼロの平面3~
「とにかく、こんなのでも私の使い魔なのよ。金輪際こいつには近寄らないで!」
猫のように毛を逆立てる気迫のルイズに、キュルケは肩をすくめてけだるげに答えた。
毛頭、そんな約束を守る気などないのだろう。
「じゃあさ、ルイズ。それ守ってあげるけど、代わりに一つ、教えてくれない?」
「…………何よ?」
あくまで妖艶に微笑むキュルケになんとなくに苛立ちを感じた。
ルイズはこの、いつでも余裕を保って人(特に自分)の揚げ足をとるとき態度が
少し嫌いだった。
だからつい、口が強くなって怒りっぽくなってしまう。
「彼の……あの使い魔くんの名前、なんて言うの?」
「…………えっ!?」
反射的に戸惑い、素の声が漏れた。
「あ、あいつの名前? 名前…………」
正直、考えたことが無かった。
恥ずかしい限りだが、今のルイズは自分の使い魔の名前すら知らないのだ。
そりゃああいつが使い魔として現れたことのショックや、
あいつ自体に時折見える、ある種の不気味さを無意識に感じ取ってたからなのか、
まともに考えたことが無かった。ふと気づけば、『あいつ』『こんなの』扱いしていた。
「知らないのかしら、まさか? いくら『ゼロ』のアナタでも、使い魔の名前ぐらいは把握してるわよね?」
「あ、あたりまえよっ! ……でも、あ、アンタなんかに教えてやるもんですかっ!!」
負けん気だけで支えた言葉はしどろもどろだ、動揺丸出しである。
ふん反り返る様に背を向けるが、実際には顔に浮き出た焦りを
キュルケに悟られないようにするための、ささやかな抵抗だ。
当たり前のことを、よりにもよってあの“ツェルプストー”に教えられたのだ。
“ヴァリエール家”の人間ルイズにとって、これほど屈辱的なことは無い。
「そ、なら別にいいわ」
すかしたように息をつくなり、彼女にしては珍しくやけにあっさりと身を引いた。
意外なほど、あっさりとだ。
ルイズが思わず呆けた顔になってしまうのも無理はない。
ゲーム&ウオッチはとっくにルイズの腰から離れていた。
「ほんとは私の使い魔を紹介してあげようかと思ったんだけど……気が変わったからまた今度にするわね」
「丁重にお断りするわ。紹介と名ばっかりで、人の自慢話なんて聞いてるほど暇じゃないから」
言い終わると同時に背を向けたまま来た道を辿る。
まだ朝食を食べてない、いろいろ考えていると、おなかも空いてきた。
「あ! 待って、ルイズ」
「今度は何? ……ってあいつはどこ行ったの!?」
ようやく気づいて見れば、いつの間にやらあのぺらぺらの姿がどこへなりと消えていた。
また縦になっているかもしれないと目を細めて辺りを見回すも、
それらしい者は一つとして無かった。
「また……、あんのバカ―――――ッ!」
二度目の叫び、
今度は『ビ――ッ』と言う音(声)は、聞こえてこなかった。
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