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#navi(虚無と金の卵)
プロローグ/???にて
自閉し、外部との接触を絶った多次元構造の自己の中で、金の卵と呼ばれた鼠はまどろんでいた。
虚無にあがく良心の存在を夢見ていた。
『“苦痛する価値”がかつて果たした役割は、今も全ての犠牲者に宿っている』
自己が濫用される悪夢を見ていた。
『自分がどんどん小さくなっていく……俺が消えてしまいそうだ……』
自己の存在を訴える夢を見ていた。
『俺もいつか必ず死ぬ。
それがいつかはわからない。
それまでに俺は見つけ出さなければいけないんだ。俺自身の有用性を』
信頼する相棒に裏切られ、忌むべき凶器として操られた悪夢を見ていた。
『何故だ。何故俺を濫用した……ボイルド』
相棒は、良心を振り切って加速し、虚無の権化と化してしまった。
その裏切りの苦痛と果てない悪夢の狭間の中、あるとき、呼び声が聞こえた。
虚無という属性に愛でられ、しかし不屈の輝きを秘めた少女の呼び声が。
金の卵は、少女の呼び声に応えた。
己の有用性を見出すために。
何処かで泣く誰かのか細い手を、そっと握るために。
プロローグ/マルドゥック市 西三十二丁目五番地 ロビンプラント・グランドハウスの一室にて――
「これでメンテ終了、と。
ウフコック、これで次に目覚めるときは“ターン”しても、十分な外部情報を認識できるはずさ。
これで、使い手に騙されることも無いだろう。
……って、ぐっすり眠っているか」
ここは、マルドゥック市における、“マルドゥック・スクランブル09”メンバーのオフィス。
髪を七色に染め分けた奇矯な男は、外見に似合わぬ寂しげな声で愚痴りつつ情報端末を操っていた。
「しかし、随分広くなってしまったな……。一人と一匹じゃ、広すぎるよ」
戦争による飛躍的な科学技術の進歩。
それは余りにも凄まじく、既存の法律・倫理では制御しきれない、まさに社会にとって
檻から放たれた猛獣であった。
例えば、重力を操り、如何なる場所へでも移動することが可能な技術。
容姿と声を自在に変化させ、あらゆる人間への変身が可能な技術。
亜空間に物質を蓄え、あらゆる道具を出現させる技術。
それらの恩恵を受けた人間と開発した研究者達を、戦争終結後に如何に扱うべきか。
――いやむしろ、そもそも存在を許して良いのか。
喧々諤々の議論が行われた。
ある集団は、閉鎖を望んだ。
政府以外からの外界との直接的な接触を一切廃し、社会への影響を最小限に留めた。
ある集団は、社会という階段を登ることを望んだ。
科学技術による成果を活用し、都市の重要な役割を担う。
やがては社会における高度な存在となることを目指した。
ある集団は、社会という階段を降りることを選んだ。
科学技術による成果を民衆の前に差し出し、その有用性の判断を民衆に任せることを選んだ。
そして、無力な人間の楯となることを有用性の証明とした。
証明できなかった場合、楯となれなかった場合のリスク――廃棄処分というペナルティを背負いつつ。
有用性の証明――それこそがマルドゥック・スクランブル09である。
事件における証人保護のための生命保全プログラムと、証人保護の成功と事件解決による利益の獲得。
その執行者、09メンバーとして10人と2匹の人間と実験動物が、マルドゥック市に巣食う闇と戦ってきた。
だがそれは果てしない艱難辛苦の旅路でもあった。
カトル・カール――異国の言葉で「4分の1」を示す言葉。
マルドゥック市に巣食うダークタウンの住人。
拷問、暗殺、誘拐、脅迫の4つを生業とする異形の巡回牧師達が、
09メンバーに対し敢然と闘いを挑んできた。
彼らと、そして彼らを操るバックの戦いの果て、有用性の証明の果てに生存したのは、
2人と一匹。
科学者のイースター博士。
あらゆる機器/武器への変身が可能な鼠、“万能道具存在”、ウフコック。
無睡眠処置を受け、また重力操作の能力を得た元パイロット、“徘徊者”、ボイルド。
ボイルドは、ウフコックの相棒であった。
ボイルドの要求に即応してあらゆる道具に変身し、都市を駆け抜けた。
逃げる容疑者を捕らえ、武装し襲撃してきた敵を撃ち、狼狽し恐怖する被害者を慰撫してきた。
多くの仲間が斃れる過酷な戦いの中で、ボイルドとウフコックとのその絆を、誰も疑うことはなかった。
だが、とある事件において09メンバーの存在そのものが危ぶまれた瞬間、
ボイルドは暴走した。
09メンバーにとって有用性を損なう20数名の関係者の命を奪い、事件の『制圧』を
迅速かつ確実に実行した。
その結果、09メンバーは生存し、ボイルドは姿を消した。
「……ボイルドが勝手に操ったとはいえ、何人もの無辜の人間を撃ってしまったんだからね。
今は、何も考えず休んでくれ、ウフコック……」
髪を七色に染めた男、イースター博士は、ガラス管の如き、医療器具に似た大きな機材を撫でた。
そのガラス管の中には、銀色の巨大な金属が浮かんでいる。
その奥底で何かが深く眠る繭のように、ただそこに佇んでいる。
第一章 使い魔は金の卵
味方は一人もいない。
貴族足り得たいという思い、屈辱を跳ね返したいという願い――どれも成し遂げるに足る力がない事実。
絶望に囚われ、だがルイズは一人、諦めずに唱える。
「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
魔法を使えることが『貴族』の条件である。
だがルイズには、魔法の才が無い。
押しも押されもせぬ公爵家に生まれ、だが魔法が成功したことは一度として無かった。
詠唱――誰よりも神聖で、美しく、強力な使い魔がほしい。
自分を侮る誰も彼も見返してやりたい。
召喚の儀は失敗した。
これまでルイズは何度と無く、フライの呪文、ファイアボールの呪文、あるいは水の治癒の呪文等々を
唱えようとした。
コモンスペル、四大属性の系統呪文――種類を問わず全て成功することは無く、ただ爆発を引き起こした。
詠唱――空駆ける風竜がほしい。
自分を背に乗せて縦横無尽に飛び回りたい。
召喚の儀は失敗した。
実家の使用人、領地の平民にすら噂された公爵家の公然の秘密。
かの公爵家の三女様は魔法が使えない。
公爵様や公爵夫人様、他のご家族の方々はあんなに魔法がお出来になるのに――と。
詠唱――火竜山脈のサラマンダーがほしい。
灼熱の大地を踏みしめたサラマンダーを連れて、火の息をもって悪党を蹴散らしたい。
召喚の儀は失敗した。
トリステイン魔法学院に入学した。
己の魔法への才覚の無さが、日々暴露され証明され続けた。
詠唱――森の賢者たる梟がほしい。
深い思索と知恵を授けて貰い、仕える人を導く貴族の中の貴族となりたい。
召喚の儀は失敗した。
魔法を習熟し、実力とプライドを獲得する同級生を、ただ眺めていた。
焦燥がただ駆り立てられる日々を送ってきた。
詠唱――目も当てられない失敗の繰り返しの果てに。
ぶしつけな好奇の目を投げていた学生も、続けざまの失敗に飽き飽きとして野次を投げることすら止めた。
ただ、倦怠と無関心に包まれている。
教師は溜息混じりに場の沈黙を守る。
「……五つの力を司るペンタゴン
我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」
ルイズは思った。
味方は一人もいない。
それでも良い。
でも――宇宙の果てのどこかにいる誰か。
もし叶うならば、私の前に姿を見せて――!
これまでとは段違いに大規模な爆発――爆心地には黄金の輝き。
うっすらとした輝きは、爆発のもやが晴れるにつれて明らかとなっていく。
黄金色の毛並みの、小さな鼠が横たわっていた。
「……けほ、げほっ……っせ、成功したぞ! ゼロのルイズが!」
「小さいな……?」
「普通のネズミじゃないわね……? ……何処の幻獣かしら」
「金色、綺麗ね……ルイズの癖に……」
驚きと興奮の匂い。
そして誰よりも大きな、とても大きな歓喜の匂い。
驚きに紛れた、かすかな揶揄とやっかみの匂い。
召喚された衝撃に混乱しながらも、嗅ぎ慣れない多くの若い人間の匂いが充満しているのを、
ウフコックは感じた。
「や……やったの!? ……遂に……やったんだわ!」
心の底から喜ぶ少女の声が聞こえた。
無力感からくる自身へのかすかな疑いと、飛び上がらんばかりの喜びを放出している。
そして、落ち着きのある中年の男性が祝いの言葉を描ける。
「おめでとう、ミス・ヴァリエール。成功したようだね。
……ふむ、私も初めて見る幻獣だ。実に興味深い。
では、儀式を続けたまえ」
「はい、コルベール先生。……初めまして、ネズミさん。
よろしくね。わたしの使い魔……」
緊張した面持ちで、壊れ物を扱うような丁寧なしぐさで、ルイズは目の前の鼠を自分の手に促した。
ウフコックは混乱冷めやらぬ中、促されるままに少女の手に乗った。
(ここは一体……? 使い魔?)
眼前の少女からは、歓喜と、未来へ向かおうとする希望の匂いを感じる。
ウフコックは現状に疑問を感じつつも、朦朧としたまま本能的に身を委ねた。
そしてルイズはウフコックに口づけ――契約の証明を与えた。
#navi(虚無と金の卵)
#navi(虚無と金の卵)
プロローグ/???にて――
自閉し、外部との接触を絶った多次元構造の自己の中で、金の卵と呼ばれた鼠はまどろんでいた。
虚無にあがく良心の存在を夢見ていた。
『“苦痛する価値”がかつて果たした役割は、今も全ての犠牲者に宿っている』
自己が濫用される悪夢を見ていた。
『自分がどんどん小さくなっていく……俺が消えてしまいそうだ……』
自己の存在を訴える夢を見ていた。
『俺もいつか必ず死ぬ。
それがいつかはわからない。
それまでに俺は見つけ出さなければいけないんだ。俺自身の有用性を』
信頼する相棒に裏切られ、忌むべき凶器として操られた悪夢を見ていた。
『何故だ。何故俺を濫用した……ボイルド』
相棒は、良心を振り切って加速し、虚無の権化と化してしまった。
その裏切りの苦痛と果てない悪夢の狭間の中、あるとき、呼び声が聞こえた。
虚無という属性に愛でられ、しかし不屈の輝きを秘めた少女の呼び声が。
金の卵は、少女の呼び声に応えた。
己の有用性を見出すために。
何処かで泣く誰かのか細い手を、そっと握るために。
プロローグ/マルドゥック市 西三十二丁目五番地 ロビンプラント・グランドハウスの一室にて――
「これでメンテ終了、と。
ウフコック、これで次に目覚めるときは“ターン”しても、十分な外部情報を認識できるはずさ。
これで、使い手に騙されることも無いだろう。
……って、ぐっすり眠っているか」
ここは、マルドゥック市における、“マルドゥック・スクランブル09”メンバーのオフィス。
髪をまだらに染め分けた奇矯な男は、外見に似合わぬ寂しげな声で愚痴りつつ情報端末を操っていた。
「しかし、随分広くなってしまったな……。一人と一匹じゃ、広すぎるよ」
戦争による飛躍的な科学技術の進歩。
それは余りにも凄まじく、既存の法律・倫理では制御しきれない、まさに社会にとって
檻から放たれた猛獣であった。
例えば、重力を操り、如何なる場所へでも移動することが可能な技術。
容姿と声を自在に変化させ、あらゆる人間への変身が可能な技術。
亜空間に物質を蓄え、あらゆる道具を出現させる技術。
それらの恩恵を受けた人間と開発した研究者達を、戦争終結後に如何に扱うべきか。
――いやむしろ、そもそも存在を許して良いのか。
喧々諤々の議論が行われた。
ある集団は、閉鎖を望んだ。
政府以外からの外界との直接的な接触を一切廃し、社会への影響を最小限に留めた。
ある集団は、社会という階段を登ることを望んだ。
科学技術による成果を活用し、都市の重要な役割を担う。
やがては社会における高度な存在となることを目指した。
ある集団は、社会という階段を降りることを選んだ。
科学技術による成果を民衆の前に差し出し、その有用性の判断を民衆に任せることを選んだ。
そして、無力な人間の楯となることを有用性の証明とした。
証明できなかった場合、楯となれなかった場合のリスク――廃棄処分というペナルティを背負いつつ。
有用性の証明――それこそがマルドゥック・スクランブル09である。
事件における証人保護のための生命保全プログラムと、証人保護の成功と事件解決による利益の獲得。
その執行者、09メンバーとして10人と2匹の人間と実験動物が、マルドゥック市に巣食う闇と戦ってきた。
だがそれは果てしない艱難辛苦の旅路でもあった。
カトル・カール――異国の言葉で「4分の1」を示す言葉。
マルドゥック市に巣食うダークタウンの住人。
拷問、暗殺、誘拐、脅迫の4つを生業とする異形の巡回牧師達が、
09メンバーに対し敢然と闘いを挑んできた。
彼らと、そして彼らを操るバックの戦いの果て、有用性の証明の果てに生存したのは、
2人と一匹。
科学者のイースター博士。
あらゆる機器/武器への変身が可能な鼠、“万能道具存在”、ウフコック。
無睡眠処置を受け、また重力操作の能力を得た元パイロット、“徘徊者”、ボイルド。
ボイルドは、ウフコックの相棒であった。
ボイルドの要求に即応してあらゆる道具に変身し、都市を駆け抜けた。
逃げる容疑者を捕らえ、武装し襲撃してきた敵を撃ち、狼狽し恐怖する被害者を慰撫してきた。
多くの仲間が斃れる過酷な戦いの中で、ボイルドとウフコックとのその絆を、誰も疑うことはなかった。
だが、とある事件において09メンバーの存在そのものが危ぶまれた瞬間、
ボイルドは暴走した。
09メンバーにとって有用性を損なう20数名の関係者の命を奪い、事件の『制圧』を
迅速かつ確実に実行した。
その結果、09メンバーは生存し、ボイルドは姿を消した。
「……ボイルドが勝手に操ったとはいえ、何人もの無辜の人間を撃ってしまったんだからね。
今は、何も考えず休んでくれ、ウフコック……」
髪をまだらに染め分けた男、イースター博士は、ガラス管の如き、医療器具に似た大きな機材を撫でた。
そのガラス管の中には、銀色の巨大な金属が浮かんでいる。
その奥底で何かが深く眠る繭のように、ただそこに佇んでいる。
第一章 使い魔は金の卵
味方は一人もいない。
貴族足り得たいという思い、屈辱を跳ね返したいという願い――どれも成し遂げるに足る力がない事実。
絶望に囚われ、だがルイズは一人、諦めずに唱える。
「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
魔法を使えることが『貴族』の条件である。
だがルイズには、魔法の才が無い。
押しも押されもせぬ公爵家に生まれ、だが魔法が成功したことは一度として無かった。
詠唱――誰よりも神聖で、美しく、強力な使い魔がほしい。
自分を侮る誰も彼も見返してやりたい。
召喚の儀は失敗した。
これまでルイズは何度と無く、フライの呪文、ファイアボールの呪文、あるいは水の治癒の呪文等々を
唱えようとした。
コモンスペル、四大属性の系統呪文――種類を問わず全て成功することは無く、ただ爆発を引き起こした。
詠唱――空駆ける風竜がほしい。
自分を背に乗せて縦横無尽に飛び回りたい。
召喚の儀は失敗した。
実家の使用人、領地の平民にすら噂された公爵家の公然の秘密。
かの公爵家の三女様は魔法が使えない。
公爵様や公爵夫人様、他のご家族の方々はあんなに魔法がお出来になるのに――と。
詠唱――火竜山脈のサラマンダーがほしい。
灼熱の大地を踏みしめたサラマンダーを連れて、火の息をもって悪党を蹴散らしたい。
召喚の儀は失敗した。
トリステイン魔法学院に入学した。
己の魔法への才覚の無さが、日々暴露され証明され続けた。
詠唱――森の賢者たる梟がほしい。
深い思索と知恵を授けて貰い、仕える人を導く貴族の中の貴族となりたい。
召喚の儀は失敗した。
魔法を習熟し、実力とプライドを獲得する同級生を、ただ眺めていた。
焦燥がただ駆り立てられる日々を送ってきた。
詠唱――目も当てられない失敗の繰り返しの果てに。
ぶしつけな好奇の目を投げていた学生も、続けざまの失敗に飽き飽きとして野次を投げることすら止めた。
ただ、倦怠と無関心に包まれている。
教師は溜息混じりに場の沈黙を守る。
「……五つの力を司るペンタゴン
我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」
ルイズは思った。
味方は一人もいない。
それでも良い。
でも――宇宙の果てのどこかにいる誰か。
もし叶うならば、私の前に姿を見せて――!
これまでとは段違いに大規模な爆発――爆心地には黄金の輝き。
うっすらとした輝きは、爆発のもやが晴れるにつれて明らかとなっていく。
黄金色の毛並みの、小さな鼠が横たわっていた。
「……けほ、げほっ……っせ、成功したぞ! ゼロのルイズが!」
「小さいな……?」
「普通のネズミじゃないわね……? ……何処の幻獣かしら」
「金色、綺麗ね……ルイズの癖に……」
驚きと興奮の匂い。
そして誰よりも大きな、とても大きな歓喜の匂い。
驚きに紛れた、かすかな揶揄とやっかみの匂い。
召喚された衝撃に混乱しながらも、嗅ぎ慣れない多くの若い人間の匂いが充満しているのを、
ウフコックは感じた。
「や……やったの!? ……遂に……やったんだわ!」
心の底から喜ぶ少女の声が聞こえた。
無力感からくる自身へのかすかな疑いと、飛び上がらんばかりの喜びを放出している。
そして、落ち着きのある中年の男性が祝いの言葉を描ける。
「おめでとう、ミス・ヴァリエール。成功したようだね。
……ふむ、私も初めて見る幻獣だ。実に興味深い。
では、儀式を続けたまえ」
「はい、コルベール先生。……初めまして、ネズミさん。
よろしくね。わたしの使い魔……」
緊張した面持ちで、壊れ物を扱うような丁寧なしぐさで、少女はウフコックを自分の手に促した。
ウフコックは混乱冷めやらぬ中、促されるままに身を寄せた。
(ここは一体……? 使い魔?)
眼前の少女からは、歓喜と、未来へ向かおうとする希望の匂いを感じる。
ウフコックは現状に疑問を感じつつも、朦朧としたまま本能的に身を委ねた。
そして少女はウフコックに口づけ――契約の証明を与えた。
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