「のんきな使い魔」(2008/12/20 (土) 13:38:33) の最新版変更点
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「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ 神聖で美しく強力な使い魔よ
私は心より求め訴えるわ 我が導きに答えなさい!」
BOGOOOOOOOON!
ルイズの必死の思いを込めた詠唱は、実に漫画チックな爆発の前に掻き消された。
「バッカヤロー 殺す気か!?」
「いい加減にしろ ゼロのルイズ!」
立ち込める黒煙の中、周囲の罵倒が徐々に拡大していく。
屈辱に身を震わせるルイズ……と、その時、
「あり~? もしかして、また迷子かな」
爆発の中心から響いてきた謎の声に、不意に喧騒が止む。
やがて、煙が晴れた先に、銀色のゲートが姿を見せた。
「使い魔のゲート」
「サモン・サーヴァントは成功していたのね」
「やった! スゴイ スゴイわ!
言葉がしゃべれる使い魔なんて、もしかして韻獣! それとも亜人!」
「韻獣だって?」「あの、ゼロのルイズが……」
呆然とする周囲をよそに、子供のように跳ねまわるルイズ。
――が、肝心の使い魔は、声こそ聞こえるものの、いつまで経っても出てこない。
「まいったなあ、全然出られないぞ。
仕方ない、お昼にするか」
「ル、ルイズの使い魔が!?」「ゲートの中で弁当広げ始めたぞ!」
「コ、コラ~! 馬鹿やってないでとっとと出てきなさいよ!」
「ムニャ、もう食べられないよ……」
「寝るなァー!!」
「ミスタ・コルベール、どうなさるの? アレ……」
「……まぁ、召喚自体は成功しているみたいですし、出てくるまで待ちますか」
・
・
・
―― 一週間後、
「……」
「ねぇ、お姉さん、ここは学校?」
ルイズの眼前には、野球帽を逆にかぶり、Nの文字がプリントされたトレーナーを着た、半ズボン姿の少年がいた。
「ゼロのルイズが平民を召還したぞ」「一週間も待たせてそれかよ!」
「ミッ、ミスタ・コルベールッ! やり直しを……」
「いいですよ。明日の授業開始まで間に合わなければ、問答無用で留年ですが?」
「……」
ルイズは大きくため息をつくと、改めてランドセルを背負った少年と向かい合った。
「アンタ、名前は何て言うの?」
「ん? ぼくはのんきだよ」
「それは知ってるわ。で、名前は?」
「だからのんきだよ」
「それは知ってるってば!私が聞いてるのは」
「だからのんきなんだって」
「知ってるって言ってるでしょ!」
―― 一時間後、
「……五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
チュッ
「ル、ルイズさん! 何を……」
突然のファーストキスに慌てる少年。
やがて、その左手が、まばゆい輝きを放ち始めた。
「うわっ! ボクの左手が」
「おお、少年の左手に契約のルーンが!」
パァアアァァ
「……全然、刻まれないわね」
「光ってる、だけ」
「まあ、契約自体は成功しているみたいですし、
ルーンが浮かび上がった時点で、正式に合格としましょう」
「そ、そんな……」
「まあまあ、人生は長いよルイズさん、そう落ち込まないで」
「アンタが言うんじゃないわよ!」
――かくして、ゼロのルイズと、のんきな少年の生活が始まった。
・
・
・
――夏。
「あらヴァリエール、三か月もどこ行ってたの?」
「……のんちゃんの為に、護身用の武器を買いに行ってたのよ」
「しゃべる剣が売ってるなんて、やっぱりここは凄い国だね」
「コッチもおでれーたさ、帰り道を間違えてアルビオンに行っちまうほどの
方向オンチな虚無なんて、初めて見たぜ」
「ウ、ウルサい! アレは絶対、のんちゃんのせいよ!」
「ウェールズさん、おみやげ沢山くれたね」
「……で、その後、間違って実家に帰っちまうしよぉ」
「だから、絶対絶対、のんちゃんのせいだってば!」
「カトレアさんの作ったケーキ、おいしかったね」
「結局アンタら、どうやって帰ってきたの?」
「……聖地を目指すつもりで旅をしていたら、道に迷って学院に到着していたわ」
・
・
・
――秋。
「大変です! オールド・オスマン」
「なんだねコルベール君、騒々しい」
「じ、実は、のんきくんのルーンが一向に刻まれない事を疑問に思い
あれ以来、図書室で文献を当たっていたのですが……」
「フム、それで?」
「そうしたら、本棚の奥から…… いかがわしい本がこんなに!」
「……キミ、半年以上もかけて、そんな物を探していたのかね?」
「え! あ、あれ? 興味ありませんか?
どれもこれも、百年以上前の貴重な資料ばかりですよ?
もちろん、私もやましい気持ちなんてありませんが、これは風俗史を研究する上で……」
「ミスタ・コルベールッ!!」
「ハ、 ハイッ!」
「そのエロ本は、ワシのコレクションじゃ!」
ドピューッ
「まったく、この学院の教師達ときたら……」
「ま、読書の秋、だな」
「ルイズさん、そんな事よりボク、もうお腹ペコペコだよ」
「ハハハ、相棒は食欲の秋ってとこか」
「……いや、そんなオチはいらないわ」
・
・
・
――冬。
「……フム、すると学院の秘宝【破壊の杖】は、怪盗フーケに奪われてしまったというわけじゃな?」
「のんきくん、この犯行文を見つけた時の事を覚えているかい?」
「もちろんだよ! 学院に来た最初の夜の事だからね」
ドドドド
「……て、事は、もう九か月以上も前?」
「とっくに逃げてるわね。フーケ」
「どうやら破壊の杖は、諦めるしかなさそうじゃの。
各自、これを反省として、防犯対策を心がけるように。以上じゃ」
「あら、そういえば学院長、ミス・ロングビルは?」
「ロング……ビル……? 居たっけ? そんな職員」
-その頃、学院から馬車でい時間ほどの距離にある、とある森では……。
「ぶえっくしょんっ!
うう……、この時期にほったて小屋暮らしは堪えるねぇ
犯行から九か月、いい加減、探しにこないかしら……」
・
・
・
――そして、季節は巡り、再び春。
「見ろ! のんきくんの左手に使い魔のルーンが!」
「おお、これは珍しい形のルーンだ! メモしておこう」
「やったわ! 召喚より一年、遂に契約に成功したわ!」
「よく頑張ったのう。ミス・ヴァリエール」
「学院長!」
「異例続きじゃった、春の使い魔召喚の儀式も、これにて無事終了じゃ
諸君達は全員合格、明日からは一人もかけることなく二年に進級じゃ!」
「おめでとう、ルイズさん!」
「あなたなら出来ると思っていたわ。ヴァリエール!」
「ようし! みんな、ルイズを胴上げだ!」
「ありがとう…… ありがとう、みんな!」
(やったわ、お父様、お母様。
召喚から一年もかかってしまったけど、留年することなく、無事に進級することが出来ました。
これもみんな、身近でささえてくれた友人たち、先生たちのおかげ……
ありがとうのんきくん、ありがとうみんな……!)
・
・
・
―― 一方その頃、ガリア。
「チェックメイト!」
「わわっ! ま、待った!」
「ハハ、いくら考えても無駄だな。これで697回目の待っただよ? パパさん」
「ううっ、負けた…… さすがジョゼフさん」
「あら、三か月で決着なんて、随分早かったのね」
「やあママさん、前回は駒の動かし方を教えながらやったから、半年かかったんだよ」
「ところでママ、おやつは」
「ええ、パパとジョゼフさんの大好物のケーキが……」
「「やった!」」
「出来てないわ」
ドドドド
「そんな、どうして?」「三か月も前から準備していたのに……」
「ええ、三か月かけて、ケーキの作り方を読破したわ」
「……」
「それじゃあ、今から材料を買ってくるから、仲良くお留守番しててね」
「……まだ時間がかかりそうだな、迷子にならねばいいが」
「もう一局、指しますか」
のんきくんと言うかのんき時空召喚
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「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ 神聖で美しく強力な使い魔よ
私は心より求め訴えるわ 我が導きに答えなさい!」
BOGOOOOOOOON!
ルイズの必死の思いを込めた詠唱は、実に漫画チックな爆発の前に掻き消された。
「バッカヤロー 殺す気か!?」
「いい加減にしろ ゼロのルイズ!」
立ち込める黒煙の中、周囲の罵倒が徐々に拡大していく。
屈辱に身を震わせるルイズ……と、その時、
「あり~? もしかして、また迷子かな」
爆発の中心から響いてきた謎の声に、不意に喧騒が止む。
やがて、煙が晴れた先に、銀色のゲートが姿を見せた。
「使い魔のゲート」
「サモン・サーヴァントは成功していたのね」
「やった! スゴイ スゴイわ!
言葉がしゃべれる使い魔なんて、もしかして韻獣! それとも亜人!」
「韻獣だって?」「あの、ゼロのルイズが……」
呆然とする周囲をよそに、子供のように跳ねまわるルイズ。
――が、肝心の使い魔は、声こそ聞こえるものの、いつまで経っても出てこない。
「まいったなあ、全然出られないぞ。
仕方ない、お昼にするか」
「ル、ルイズの使い魔が!?」「ゲートの中で弁当広げ始めたぞ!」
「コ、コラ~! 馬鹿やってないでとっとと出てきなさいよ!」
「ムニャ、もう食べられないよ……」
「寝るなァー!!」
「ミスタ・コルベール、どうなさるの? アレ……」
「……まぁ、召喚自体は成功しているみたいですし、出てくるまで待ちますか」
・
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―― 一週間後、
「……」
「ねぇ、お姉さん、ここは学校?」
ルイズの眼前には、野球帽を逆にかぶり、Nの文字がプリントされたトレーナーを着た、半ズボン姿の少年がいた。
「ゼロのルイズが平民を召還したぞ」「一週間も待たせてそれかよ!」
「ミッ、ミスタ・コルベールッ! やり直しを……」
「いいですよ。明日の授業開始まで間に合わなければ、問答無用で留年ですが?」
「……」
ルイズは大きくため息をつくと、改めてランドセルを背負った少年と向かい合った。
「アンタ、名前は何て言うの?」
「ん? ぼくはのんきだよ」
「それは知ってるわ。で、名前は?」
「だからのんきだよ」
「それは知ってるってば!私が聞いてるのは」
「だからのんきなんだって」
「知ってるって言ってるでしょ!」
―― 一時間後、
「……五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
チュッ
「ル、ルイズさん! 何を……」
突然のファーストキスに慌てる少年。
やがて、その左手が、まばゆい輝きを放ち始めた。
「うわっ! ボクの左手が」
「おお、少年の左手に契約のルーンが!」
パァアアァァ
「……全然、刻まれないわね」
「光ってる、だけ」
「まあ、契約自体は成功しているみたいですし、
ルーンが浮かび上がった時点で、正式に合格としましょう」
「そ、そんな……」
「まあまあ、人生は長いよルイズさん、そう落ち込まないで」
「アンタが言うんじゃないわよ!」
――かくして、ゼロのルイズと、のんきな少年の生活が始まった。
・
・
・
――夏。
「あらヴァリエール、三か月もどこ行ってたの?」
「……のんちゃんの為に、護身用の武器を買いに行ってたのよ」
「しゃべる剣が売ってるなんて、やっぱりここは凄い国だね」
「コッチもおでれーたさ、帰り道を間違えてアルビオンに行っちまうほどの
方向オンチな虚無なんて、初めて見たぜ」
「ウ、ウルサい! アレは絶対、のんちゃんのせいよ!」
「ウェールズさん、おみやげ沢山くれたね」
「……で、その後、間違って実家に帰っちまうしよぉ」
「だから、絶対絶対、のんちゃんのせいだってば!」
「カトレアさんの作ったケーキ、おいしかったね」
「結局アンタら、どうやって帰ってきたの?」
「……聖地を目指すつもりで旅をしていたら、道に迷って学院に到着していたわ」
・
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――秋。
「大変です! オールド・オスマン」
「なんだねコルベール君、騒々しい」
「じ、実は、のんきくんのルーンが一向に刻まれない事を疑問に思い
あれ以来、図書室で文献を当たっていたのですが……」
「フム、それで?」
「そうしたら、本棚の奥から…… いかがわしい本がこんなに!」
「……キミ、半年以上もかけて、そんな物を探していたのかね?」
「え! あ、あれ? 興味ありませんか?
どれもこれも、百年以上前の貴重な資料ばかりですよ?
もちろん、私もやましい気持ちなんてありませんが、これは風俗史を研究する上で……」
「ミスタ・コルベールッ!!」
「ハ、 ハイッ!」
「そのエロ本は、ワシのコレクションじゃ!」
ドピューッ
「まったく、この学院の教師達ときたら……」
「ま、読書の秋、だな」
「ルイズさん、そんな事よりボク、もうお腹ペコペコだよ」
「ハハハ、相棒は食欲の秋ってとこか」
「……いや、そんなオチはいらないわ」
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――冬。
「……フム、すると学院の秘宝【破壊の杖】は、怪盗フーケに奪われてしまったというわけじゃな?」
「のんきくん、この犯行文を見つけた時の事を覚えているかい?」
「もちろんだよ! 学院に来た最初の夜の事だからね」
ドドドド
「……て、事は、もう九か月以上も前?」
「とっくに逃げてるわね。フーケ」
「どうやら破壊の杖は、諦めるしかなさそうじゃの。
各自、これを反省として、防犯対策を心がけるように。以上じゃ」
「あら、そういえば学院長、ミス・ロングビルは?」
「ロング……ビル……? 居たっけ? そんな職員」
-その頃、学院から馬車でい時間ほどの距離にある、とある森では……。
「ぶえっくしょんっ!
うう……、この時期にほったて小屋暮らしは堪えるねぇ
犯行から九か月、いい加減、探しにこないかしら……」
・
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――そして、季節は巡り、再び春。
「見ろ! のんきくんの左手に使い魔のルーンが!」
「おお、これは珍しい形のルーンだ! メモしておこう」
「やったわ! 召喚より一年、遂に契約に成功したわ!」
「よく頑張ったのう。ミス・ヴァリエール」
「学院長!」
「異例続きじゃった、春の使い魔召喚の儀式も、これにて無事終了じゃ
諸君達は全員合格、明日からは一人もかけることなく二年に進級じゃ!」
「おめでとう、ルイズさん!」
「あなたなら出来ると思っていたわ。ヴァリエール!」
「ようし! みんな、ルイズを胴上げだ!」
「ありがとう…… ありがとう、みんな!」
(やったわ、お父様、お母様。
召喚から一年もかかってしまったけど、留年することなく、無事に進級することが出来ました。
これもみんな、身近でささえてくれた友人たち、先生たちのおかげ……
ありがとうのんきくん、ありがとうみんな……!)
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―― 一方その頃、ガリア。
「チェックメイト!」
「わわっ! ま、待った!」
「ハハ、いくら考えても無駄だな。これで697回目の待っただよ? パパさん」
「ううっ、負けた…… さすがジョゼフさん」
「あら、三か月で決着なんて、随分早かったのね」
「やあママさん、前回は駒の動かし方を教えながらやったから、半年かかったんだよ」
「ところでママ、おやつは」
「ええ、パパとジョゼフさんの大好物のケーキが……」
「「やった!」」
「出来てないわ」
ドドドド
「そんな、どうして?」「三か月も前から準備していたのに……」
「ええ、三か月かけて、ケーキの作り方を読破したわ」
「……」
「それじゃあ、今から材料を買ってくるから、仲良くお留守番しててね」
「……まだ時間がかかりそうだな、迷子にならねばいいが」
「もう一局、指しますか」
のんきくんと言うかのんき時空召喚
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