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#navi(THE GUN OF ZERO)
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは杖を突き出した体勢のまま、震えていた。
場所は、トリステイン魔法学院のすぐ側。
進級試験の一環として、使い魔の召喚と契約の義が行われていたのだが、自身はことごとく失敗を続け、担当教官のコルベールより最後のワンチャンスという宣告を受けていたのにも関わらず、突き出した杖の先で起きたのは、爆発。
「ハハハハハ!」
「やっぱり、ゼロはゼロだな!」
「これで留年だな、留年!」
(そんな……)
脱力し、力なく腕を下ろす。……後ろから投げつけられる罵声が痛い。
うっすらと、涙ぐむ鳶色の瞳が、爆発跡に立ち上る爆煙を睨み付けていた。
そこに、動く者が居る。
「へ?」
何とも間抜けな声を上げてしまったが、煙が晴れるより先にそいつは近づいてきて、ルイズの前に立った。
「俺を呼んだのは、お前か」
そこにいたのは銀髪で翠色の瞳を備え、銀色銀色を基調とした全身を覆う奇妙な服を着た少年だった。
「え……え?」
「助けを呼ぶ声が聞こえた。窮状に陥っていて、どうしようもないから助けて欲しいと懇願していて、ゲートを開いたのは、お前か」
「げ、ゲート?ていうかそれは……」
確かに、助けを請うたかも知れない。他の生徒にバカにされるのが悔しくて、もはや何でも良いから自分の所に来てくれと願ったかも知れない。
「見ろよ!ルイズの奴、平民を召喚しやがったぜ!」
「あはは!流石はゼロのルイズだな!」
「ルイズにはお似合いの使い魔だ!」
散々に笑い飛ばす面々に、ルイズはハッとして担当教官を振り返った。
「ミスタ・コルベール!召喚のやり直しを!平民を使い魔にするなど、前例がありません!」
ルイズの言葉に、ゆっくりとコルベールは首を振った。
「ミス・ヴァリエール。使い魔の召喚は神聖なモノだ。やり直しをする訳にはいかない。それに何より、今の口ぶりでは彼は正に君のために召喚に応じたと言うことになる」
言われて、銀髪の少年に向き直る。
当の彼は首をひねっていた。
「済まない。正直あまり事情が飲み込めていないんだが……」
「君は呼ばれたんだよ。この、ミス・ヴァリエールの使い魔としてね。そしてここは、トリステイン魔法学院だ」
「魔法?そうか、ここは魔法がある世界か」
よく分からない言い回しを少年は口にした。
「だが、必死に助けを求めていたにしては、ここは平和に見えるが」
「うむ。ミス・ヴァリエールにしてみれば必死だっただろう。何しろ、使い魔を呼び出すことが出来なければ、彼女は進級出来ないのだから」
「そうか。話には聞いていたが、大変なんだな、学生は」
しみじみと頷く。
「……では、俺がここに来たと言うことは彼女の危機はもう去ったということか?」
「いや」
コルベールが首を左右に振る。
「使い魔を呼び出した上契約まで果たすことによって初めて、召喚の儀式は完成する」
「契約……つまり、俺が彼女に仕えるということか?」
うむ、とコルベールが頷くと、少年はじっと考えこんだ。
「……わかった。少々条件は欲しいがお前の使い魔に成ろう」
顔を上げ、ルイズの方を見る。コルベールも促すようにルイズを見た。
だが、ルイズの方はそう簡単ではない。そりゃあ、せっぱ詰まったせいで何でも良いから来てくれと願ってしまったが、平民だなんてのは考えの外だ。
第一、契約の方法が方法である。
(そんな……私のファーストキスよ!?ファーストキス!それが……)
平民などに奪われるなど、全くもって冗談ではない。
「うううううぅぅぅ……」
小さくうなり声を上げつつ少年を睨み付けてやる。
「どうした?何か調子が悪いのか?」
全くこちらの葛藤を理解もせずに、脳天気にもこちらの心配などしてきている。
「ええ、そうよ!調子が悪いのよ!アンタみたいな平民を呼んじゃうだなんて!」
「嘘付くなよ『ゼロのルイズ』!」
「失敗ばかりなのはいつものことだろう!?」
「煩いわね!?」
外野のヤジに噛み付く。
「『ゼロ』?」
少年が、その言葉を繰り返した。
「な、何よ……」
「ルイズ、というのがお前の名前か。それに『ゼロ』……えらく強そうな呼び名だな」
「はぁ……?」
何とも的外れな少年の言葉に、怒るよりも先に呆れてしまう。
「それで、契約とはどうするんだ?どうすれば成立する?」
「う……」
唐突に本題を振られ、苦い表情になるルイズ。再び少年を睨み付ける。
「……どうした?」
せめてもの救いなのは、顔は良いことか。
ふかーくため息をつき、ルイズは一歩、少年に近づいた。
「ちょっと屈みなさい」
「こうか?」
片膝を付く少年の頬を掴み、こちらの顔を近づける。
「感謝しなさいよね。普通ならこんな事、されることは無いんだから」
「なに?」
心中、必死に「これは使い魔だからノーカン、これは使い魔だからノーカン」と唱えながら口では契約の呪を紡ぐ。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そっと交わされる口付け。
少年は一瞬面食らったような顔をしていたが、ルイズが離れる時には元の表情に戻っていた。
「成る程、キスが契約のキーか……っつ!」
ルイズが立ち上がったところで、少年は左手を掴んで呻く。
「何だ、これは……っ」
「契約のルーンが刻まれているのよ。すぐに痛みも止むわ」
「ルーン……?」
怪訝な顔で尋ね返しつつ、自身の胸の辺りを弄る少年。するとその体から空気の抜けるような音がし、ガバと彼は胸元を開いた。
「ちょ、ちょっとあんた何考えてんのよ!?」
顔を手で覆いながら、それでも指の間から意外と厚い胸板をしっかり見つつ、批難する。
後ろの女生徒達からも悲鳴が上がっていた。
「ルーンとは、これか?」
袖から腕を引き抜き、調度遠山桜を晒すような姿になりつつ、左手を掲げた。
「随分と脱ぎにくそうな服だね。……それにしても、珍しいルーンだ。私も見たことがない。スケッチしてもよろしいかな」
コルベールがしげしげとそれを見つめる。少年が頷き返すと、そそくさと書き写した。
「ふむ。ではこれにて、春の使い魔召喚の義は終了とする。各自、次の授業に向かうように」
コルベールから解散の礼を受け、教師と生徒達は召喚したばかりの使い魔を伴って学院の方へと飛ぶ。
「ルイズ!お前は後から歩いて来いよ!」
「そうそう!お前はフライもレビテーションも使えないんだからな!」
「その平民の使い魔と一緒にな!」
わざわざ言わずもがなの事を言い残しつつ遠くなっていく生徒達を睨みながら、ルイズは奥歯を噛み締めていた。
服を着直しつつ、ルイズの見ている方向を一緒に見ていた少年は、ルイズが振り返ると少し間を空けて語りかけた。
「――自己紹介がまだだったな。俺の名はクォヴレー、クォヴレー・ゴードンだ」
#navi(THE GUN OF ZERO)
#navi(THE GUN OF ZERO)
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは杖を突き出した体勢のまま、震えていた。
場所は、トリステイン魔法学院のすぐ側。
進級試験の一環として、使い魔の召喚と契約の義が行われていたのだが、自身はことごとく失敗を続け、担当教官のコルベールより最後のワンチャンスという宣告を受けていたのにも関わらず、突き出した杖の先で起きたのは、爆発。
「ハハハハハ!」
「やっぱり、ゼロはゼロだな!」
「これで留年だな、留年!」
(そんな……)
脱力し、力なく腕を下ろす。……後ろから投げつけられる罵声が痛い。
うっすらと、涙ぐむ鳶色の瞳が、爆発跡に立ち上る爆煙を睨み付けていた。
そこに、動く者が居る。
「へ?」
何とも間抜けな声を上げてしまったが、煙が晴れるより先にそいつは近づいてきて、ルイズの前に立った。
「俺を呼んだのは、お前か」
そこにいたのは銀髪で翠色の瞳を備え、銀色銀色を基調とした全身を覆う奇妙な服を着た少年だった。
「え……え?」
「助けを呼ぶ声が聞こえた。窮状に陥っていて、どうしようもないから助けて欲しいと懇願していて、ゲートを開いたのは、お前か」
「げ、ゲート?ていうかそれは……」
確かに、助けを請うたかも知れない。他の生徒にバカにされるのが悔しくて、もはや何でも良いから自分の所に来てくれと願ったかも知れない。
「見ろよ!ルイズの奴、平民を召喚しやがったぜ!」
「あはは!流石はゼロのルイズだな!」
「ルイズにはお似合いの使い魔だ!」
散々に笑い飛ばす面々に、ルイズはハッとして担当教官を振り返った。
「ミスタ・コルベール!召喚のやり直しを!平民を使い魔にするなど、前例がありません!」
ルイズの言葉に、ゆっくりとコルベールは首を振った。
「ミス・ヴァリエール。使い魔の召喚は神聖なモノだ。やり直しをする訳にはいかない。それに何より、今の口ぶりでは彼は正に君のために召喚に応じたと言うことになる」
言われて、銀髪の少年に向き直る。
当の彼は首をひねっていた。
「済まない。正直あまり事情が飲み込めていないんだが……」
「君は呼ばれたんだよ。この、ミス・ヴァリエールの使い魔としてね。そしてここは、トリステイン魔法学院だ」
「魔法?そうか、ここは魔法がある世界か」
よく分からない言い回しを少年は口にした。
「だが、必死に助けを求めていたにしては、ここは平和に見えるが」
「うむ。ミス・ヴァリエールにしてみれば必死だっただろう。何しろ、使い魔を呼び出すことが出来なければ、彼女は進級出来ないのだから」
「そうか。話には聞いていたが、大変なんだな、学生は」
しみじみと頷く。
「……では、俺がここに来たと言うことは彼女の危機はもう去ったということか?」
「いや」
コルベールが首を左右に振る。
「使い魔を呼び出した上契約まで果たすことによって初めて、召喚の儀式は完成する」
「契約……つまり、俺が彼女に仕えるということか?」
うむ、とコルベールが頷くと、少年はじっと考えこんだ。
「……わかった。少々条件は欲しいがお前の使い魔に成ろう」
顔を上げ、ルイズの方を見る。コルベールも促すようにルイズを見た。
だが、ルイズの方はそう簡単ではない。そりゃあ、せっぱ詰まったせいで何でも良いから来てくれと願ってしまったが、平民だなんてのは考えの外だ。
第一、契約の方法が方法である。
(そんな……私のファーストキスよ!?ファーストキス!それが……)
平民などに奪われるなど、全くもって冗談ではない。
「うううううぅぅぅ……」
小さくうなり声を上げつつ少年を睨み付けてやる。
「どうした?何か調子が悪いのか?」
全くこちらの葛藤を理解もせずに、脳天気にもこちらの心配などしてきている。
「ええ、そうよ!調子が悪いのよ!アンタみたいな平民を呼んじゃうだなんて!」
「嘘付くなよ『ゼロのルイズ』!」
「失敗ばかりなのはいつものことだろう!?」
「煩いわね!?」
外野のヤジに噛み付く。
「『ゼロ』?」
少年が、その言葉を繰り返した。
「な、何よ……」
「ルイズ、というのがお前の名前か。それに『ゼロ』……えらく強そうな呼び名だな」
「はぁ……?」
何とも的外れな少年の言葉に、怒るよりも先に呆れてしまう。
「それで、契約とはどうするんだ?どうすれば成立する?」
「う……」
唐突に本題を振られ、苦い表情になるルイズ。再び少年を睨み付ける。
「……どうした?」
せめてもの救いなのは、顔は良いことか。
ふかーくため息をつき、ルイズは一歩、少年に近づいた。
「ちょっと屈みなさい」
「こうか?」
片膝を付く少年の頬を掴み、こちらの顔を近づける。
「感謝しなさいよね。普通ならこんな事、されることは無いんだから」
「なに?」
心中、必死に「これは使い魔だからノーカン、これは使い魔だからノーカン」と唱えながら口では契約の呪を紡ぐ。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そっと交わされる口付け。
少年は一瞬面食らったような顔をしていたが、ルイズが離れる時には元の表情に戻っていた。
「成る程、キスが契約のキーか……っつ!」
ルイズが立ち上がったところで、少年は左手を掴んで呻く。
「何だ、これは……っ」
「契約のルーンが刻まれているのよ。すぐに痛みも止むわ」
「ルーン……?」
怪訝な顔で尋ね返しつつ、自身の胸の辺りを弄る少年。するとその体から空気の抜けるような音がし、ガバと彼は胸元を開いた。
「ちょ、ちょっとあんた何考えてんのよ!?」
顔を手で覆いながら、それでも指の間から意外と厚い胸板をしっかり見つつ、批難する。
後ろの女生徒達からも悲鳴が上がっていた。
「ルーンとは、これか?」
袖から腕を引き抜き、調度遠山桜を晒すような姿になりつつ、左手を掲げた。
「随分と脱ぎにくそうな服だね。……それにしても、珍しいルーンだ。私も見たことがない。スケッチしてもよろしいかな」
コルベールがしげしげとそれを見つめる。少年が頷き返すと、そそくさと書き写した。
「ふむ。ではこれにて、春の使い魔召喚の義は終了とする。各自、次の授業に向かうように」
コルベールから解散の礼を受け、教師と生徒達は召喚したばかりの使い魔を伴って学院の方へと飛ぶ。
「ルイズ!お前は後から歩いて来いよ!」
「そうそう!お前はフライもレビテーションも使えないんだからな!」
「その平民の使い魔と一緒にな!」
わざわざ言わずもがなの事を言い残しつつ遠くなっていく生徒達を睨みながら、ルイズは奥歯を噛み締めていた。
服を着直しつつ、ルイズの見ている方向を一緒に見ていた少年は、ルイズが振り返ると少し間を空けて語りかけた。
「――自己紹介がまだだったな。俺の名はクォヴレー、クォヴレー・ゴードンだ」
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