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「ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-03」(2008/10/29 (水) 23:01:11) の最新版変更点
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#navi(ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア)
3,悪夢と失敗を越えて
ここはどこだろうか。空は赤くて雷が鳴ってるし、なんだか凄い叫び声がする。
夢の中のルイズは全く見たことのない街を歩いていた。街、といっても家が燃え、家屋は潰されている為廃墟というべきかも知れない街が。
嫌だわ、一体何かしらここ。そう思っていると前で何かが動くのが見えた。
「人かしら?」
正確には人だった物だ。しかも現在進行形で人からそうでなくなっていると言うべきか。赤黒い鎧に身を包んだ身の丈190サントはありそうな
黒い顔の亜人が片手で人を掴み上げそのまま潰している。肉がちぎれ骨の砕ける音がする。その亜人は低い声でおそらく笑っているのだろう
楽しそうな表情だった。
ペタン、とお尻が地面に付いた。その亜人の恐ろしさに腰を抜かしてしまったらしい。
ひとしきり、それで遊んだ後に亜人はその、肉塊をそこらに投げ捨てどこかへ歩いていった。
「何よ、なによ。これは。」
目の前にそれが落ちた。現実の世界で間違いなく濡らしてしまうルイズであった。
クヴァッチ――マーティンが暮らしていた街にして16人いるデイドラ王の一人メイルーンズ・デイゴンの私兵集団に所属するドレモラ
という亜人達によって壊滅させられた街。
彼はこの地獄から生還するどころか逆に不死であるデイドラ達に占領されていたクヴァッチを取り返す
一端を担った。何故彼らは死なないデイドラから街を取り返すことができたのか?
デイドラにも種類がある。これらはオブリビオンと呼ばれるあの世としてタムリエルに知られる異世界に住む生物の総称である。
考え無しに動く動物のようなデイドラがいれば、人間のように思考し、自分たちで決めた規則や規律の下に動く者もいる。
そういった知あるデイドラにとっての恐怖とは痛みであり、恥であり、損失であり、闇である。
考える頭がそんなにないおばかさんは怖い物がないのだ。その分あまり強くもない物が多いが、稀に人を軽くひねり殺すのもいる。
彼らは皆不死である。しかし死なないと言っても肉体の損傷によって身体を捨て、彼らの故郷であるオブリビオンに魂のみで戻り
そこで再び身体を構築しなければならない。彼らとしても肉体が傷つけば当然痛い。数あるデイドラでも知性があり、話そうと思えば
普通に人と話すことが出来るドレモラ達は、自分と人間の関係を狩人と獲物、と表現している。狩られろ、いずれ死ぬ者どもが!というわけである。
最も、その傲慢さが原因で逆に人間に狩られて仲間内に笑われる者がいるのもしばしば見受けられるが、
それをされて自分を撃退した獲物を褒め称えるか、激して弱い人間を襲うかは、倒されたドレモラ次第である。
デイドラの王達――彼らはまた殊更に変わった理で動く。ああ、彼女が目覚めるらしい。もうこのような夢を見ないように
悪夢を司るデイドラ王、ヴァーミルナにお願いしなくては――嗚呼魔女が笑う。その内また見せる気のようだ。
不死の存在の事のことについて定命の存在が何か考えるのは不毛な事だと誰かが言った。
うっすらと目を開ける。自分の部屋だ。良かったあの怖い亜人はいない。ルイズはほっとすると共にはっとして下を見る。
「不可抗力よ、アレ見たら誰だってこうなるわ」
開き直り脱ぎ捨てる。ふと気づけば昨日は話し込んでいる内に寝てしまったのか、制服を着たままになっていた。
ベッドで眠っていることから考えるとそこで、こらマーティン。何その毛布を使ってんのよ!たかいんだかんね。ふんとに。
デイドラ――不死なのに様々なことを怖がる連中。そのドレモラについて確かに昨日聞いたけれど、まさかいきなり夢に出るとは誰が思うだろうか。
ああ、全く目覚めが悪い。しかし良い感じに日が昇っている。二度寝はまずかった。
着替えが終わった頃にマーティンは目を覚ました。ある意味ちょうど良いタイミングだ。
「ああ、おはようご主人様。気分はいかがかな?」
「おはようマーティン。昨日聞いた話のおかげで悪夢を見たわよ」
それは仕方がない。気にする方が悪いのだとマーティンは笑った。
ルイズは何ともこう、マーティンに対しどうにか責任を負わせたかったが、しかし正論を返されてはどうしようもない。
マーティンはにこにこしている。朝食を取りに行きましょうとルイズが言ったので彼は扉を開いた。
「おはよう。ルイズ」
件の赤毛、いや、どこぞの海賊よろしく赤髪とでも名乗れるだろう燃えるような色合いの髪の女性と鉢合わせした。
実はいつルイズが出るかと待っていたのだが、そこら辺は気にしてはいけない。結局似たもの同士なのだ。全てにおいて反対なのに。
「おはよう。キュルケ」
「あなたの使い魔って、あらなかなか。ねぇ貴方、情熱ってご存じ?」
もう50歳だが未だに30台後半から40台前半として見られることの多いマーティンは、知りすぎているとも。少なくとも君よりは、と返した。
昔、快楽の為なら何だってするサングインというデイドラ王を信仰していたことがあった。恥ずべき過去なのは間違いないが、
おかげで火遊びの危険性は十二分に理解している。キュルケとしてみれば最近年若い同輩達と遊んでいたから、こうした包容力と教養の
ありそうな大人の男性と過ごしてみるのも悪くはない。それに、なかなか穏やかそうな顔の奥に獣が潜んでそうじゃないの――と
狩人としての目を光らせる。
「へぇ、それは是非聞いてみたいわ。おじさま、お名前の方は何とおっしゃいますの?」
「マーティン・セプティムだ。火傷を知らぬ君よ」
なにか、いい感じの雰囲気が気にくわない。とりあえずだだっ子の考え方でルイズは邪魔に入った。
「なれなれしいのよ、あんた。大体何?なんでいきなり口説くのよ」
途中からどっちに言ってるのか分かり難いが、本星だろうキュルケは言った。
「いいじゃないの、愛があれば、年の差なんて。ねぇ、ミスタ」
「いや、やめておこう。愛の炎は常に移ろい変わるものだ、明日を知らぬ陽炎のように。特に君のような方とは何度か経験があってね」
なかなかどうして、恋多き女性は何も知らぬ男を狂わせるものだ。そう言って、マーティンはキュルケの隣でのんびりしている火トカゲを見た。
じっと目が合うと何故かトカゲはマーティンにすり寄った。
「あら、珍しいわね。サラマンダーが飼い主以外に懐くなんて。やはりこれも運命かしら?ダーリン」
「いや、結構。私の一族は、その、何だ。まぁそういう一族なんだ。」
苦しい言い訳である。おそらく自身に流れる正統な皇帝の血――竜の神アカトシュに認められた血がかの神の眷属だろうこいつに
反応して懐かれてしまったのだろう。悪い気はしないが、正直暑苦しい。
「ああ、そんな事より朝食だったな。行こうか、ご主人様。」
火トカゲのフレイムから離れ食堂の方へ行こうとするとトカゲは名残惜しそうに鳴いた。ついでにキュルケも。
「ええ、全く、キュルケもそうだけど、マーティンもマーティンよ。あいつと受け答えなんかしたらだめなんだからね」
「仲が良さそうだと思ったが…ああ、仇敵か何かかい?」
家同士で仲が悪いというのはあるだろう。果たしてその通りだとルイズは言った。
アルヴィーズの食堂の前でルイズは止まった。
「ここ、貴族しか入っちゃいけないのよね。ねぇ、マーティン。あなたって貴族なの?」
単刀直入に聞き入る。草原では見た目だけを判断材料にしたが、どうもそれは違うというのが昨日の語りから理解できた。
「ふむ、そうだな。司祭だと言っただろう?それは本当なんだが、ある日使いがやってきて、実は私はタムリエル帝国のセプティムという
地方の領主を父に持っているというのが分かったんだ。そしてはやり病で父と兄たちが死に、私が継がねばならぬとその使いは言ったんだよ」
うん?とルイズは首をかしげた。
「地方領主なら、別に真っ当な他の人を持ってくればいいじゃない。司祭なんだから貴族についてそんなに知らないでしょ?」
もっともな意見だ。これが皇帝だと言ったら納得するだろう。面倒だから絶対に言わないが――マーティンはため息を吐くフリをした。
「セプティム家の私兵集団、ブレイズが騒いだらしくてね」
「へぇ?物騒ね」
全くだ。彼らの忠誠には恐れ入る。ブレイズは皇帝直属の部隊にして、恐れを知らぬ戦士達である。皇帝の命令以外では決して動かぬ彼らは
マーティンの為に命の限りを尽くすつもりだった。マーティンからしてみたらなかなかどうして、頼むからもう少しくだけた態度で
接してくれるとこちらとしても心が休まり、デイゴンへの追撃の為の研究もはかどったに違いないと思う程度のとても重い忠誠を誓ってくれて
寝ても覚めても曇王の神殿では心休まる日が無かった。皇帝とはそうした職務なのだろうとは分かっているが、またやれ。と言われると
今は遠慮したい気分である。
マーティンはすっかりクヴァッチでのんびりと司祭をやっていた頃の精神状況に戻っていた。
ここ4年程非日常ばかりだったから久しぶりの日常なのである。できればのんびりと過ごしたかった。
自分の命と秘宝を用いて信奉する九大神の長、竜の神アカトシュを現世に呼び出し、帝国は崩壊を免れた。少しくらいこうしていても罰はなかろうと考える。
帝都にて新皇帝探しに苦労している評議会の凄腕バトルメイジ、オカートが聞いたら杖で頭をぶん殴られても文句は言えないだろう。
俺がこんなに苦労しているのに、と大事な決戦の時に兵をケチった奴に言われたくはないが、おそらく言われるだろう。
「まぁそういうわけで貴族にならねばならぬと言われて、さぁてどうしたものかと考えていると、
気が付いたらあの草原に倒れていたと言うわけだ。」
何故かこう嘘が豊富に出るのは神に仕える身としてどうなのだと思うところはあるが、
私はタムリエル帝国の皇帝である。というよりは説得力もある。嘘の方が説得力があるというのも変な話だが。
「わたし、ちょっとマズイ事をしたかしら?」
冷や汗をかくルイズにいやいや、そんな事はないと笑ってマーティンは言う。
実際の所は死んだはずの自分をどういうわけかエセリウス以外の所へ連れてきたのだ。
ここがオブリビオンならそれはそれで、もしかしたらいまや伝説となったニルンのどこかにあるという
大陸の一つなら新たな発見と共に帰る事が出来る。まぁなんにせよ今しばらくはここにいる事になるのは間違いなかった。
「久しく遠出をしていなかったのだ。異国に行くのは悪くない。そしてそこで食べる飯もまた格別な物だ。
それにかのセプティム領には優秀な賢者であらせられるオカート殿がいる。ブレイズも彼には逆らわないさ。
軋轢はあるかもしれないが」
自分で持ってきた椅子に座り、ちゃっかり貴族用の朝食を食べる。初めて食べる上等な飯は九大神からもたらされた恵みだと、
マーティンは彼らに今の状況を感謝した。帝都にてせわしなく働くオカートはおもいっきりクシャミした。
授業と聞いてマーティンはほう、と教室を見てため息をもらした。自分が学んだシロディールのメイジギルド総本山であるアルケイン大学は
青空教室であった。栽培の月(5月)は良かったが、冬の星霜の月(12月)や暁星の月(1月)
等は寒くて仕方がなかったな――そんなメイジ時代を思い出しながら周りを見る。笑われている。私とルイズが。
何かこう、とりあえずお前達はもう少しマナーを知るべきだと言おうか、しかし魔法を使えない平民と思われているから
それはそれでまぁ仕方ないと思っておくべきか。
それらから視線をそらすと、あまり知らないモンスター達が見えた。彼らは一体なんだろうか。
滞在中の楽しみが時間を増す毎に増えている現状にマーティンはどこかに落とし穴が無いか少し心配になった。
おそらくここ数年のタムリエルの人間の中では上位5人に入るだろう極限状態下で一般人からしてみるととても不幸だったのだ。
そう考えると今の何とも言えない普通という幸せをかみしめるマーティンにとって、何か起きないかと思うのは普通だろう。
ちなみに今は皇帝の世継ぎが居なくてとても困っているオカートさんがランクインしている。寝る間もないらしい。可哀想に。
後少ししたら気が触れて帝都に自分を皇帝として祭り上げかねないくらいだ。
「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを
見るのがとても楽しみなのですよ」
どこにでもいそうなメイジの女性が言った。大学で見たことがある気がする。気のせいだろうか。
「変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
教室が笑いに包まれる。気に入らないな。こういう笑いの取り方は。マーティンはそう思いながら黙っていた。
「ゼロのルイズ!召喚できないからって、その辺歩いてた平民連れて来るなよ!」
ルイズは立ち上がった。しかし、一度激情を殺すようにコホンと咳をして先ほど言った少々ふとっちょの少年に凄みを効かせる。
「それは彼への侮辱よ?風上の。こんなナリしてるけど東方はロバ・ウル・カリイエよりさらに東、人間と亜人の住むタムリエルという
所から来たメイジなのよ」
昨日の一件で、赤髪の挑発以外には乗らないようになったらしいルイズは誰から教わったのか氷点下のにらみでふとっちょの少年
マリコルヌを睨んでいた。出身については口裏を昨日の内に合わせておいた。そうそう信じられるものではないと、彼女は少し寂しそうに言っていた。
おぉ、とどよめきがあがる。東方はやはり怖いのだろうか。タムリエルの東方にある、人食いヘビ人が住むアカヴィリは確かに怖いが。
「しょ、証拠を見せてみろよ。いくらなんでもゼロがメイジなんて呼べる訳ないだろう?」
どもりながらも口にする。マーティンは立ち上がり、さて、何をしたものかと思案する。
氷魔法はなぁ。当たると冷たいし、やはり自己の回復。いや、派手さがない。では召喚…スキャンプは臭うな。
「あんまり使いたくはないのだがね。」
力をひけらかしてこれを自慢していた昔を思い出す。能力は優秀だったがその分モラルが全くなかった。だからこそあんな事になったのだが――
自制し、これはそうではないのだ。自分が何者かを証明する為に呼ぶのだと心の中で言う。
右手を上げて呪文を唱え、モンスターを召喚する。クランフィアというデイドラモンスターは二足歩行で敵に高速で向かい、
両手の鋭いかぎ爪を使ったり、勢いを殺さぬまま突撃したりして相手を倒す、デイドラの突撃兵ともいえる大きな黄色いは虫類に見える彼は
他の知恵あるデイドラの一人、ズィヴィライという種に可愛がられている。
おおと歓声が上がる。これが先住なのか、とか一体どうなっているんだ、とか可愛いらしい等が聞こえた。
決して青い髪の少女の口から美味しそうという声が聞こえてこなかった事を追記しておく。いや、なかったんだよ?
「これは失礼しましたわ。異国のメイジ様」
異形が元いた世界に帰って後、シュヴルーズが申し訳なさそうに頭を下げる。
先ほどまで間違いなくこちらを見下していたようだった。
ただそれは、いわゆる貴族が平民を見るときに何も考えずにする習慣的な物で、そういったどこにでもあることに
異を唱えてもどうしようも無いことくらい、マーティンは知っていた。
「いえ、いいのですミセス・シュヴルーズ、それに私はこの国のメイジと違い貴族ではありませんから。」
竜の神に仕える司祭です。と簡単な紹介と共に名を名乗ると、なるほど、おそらく位の高い異教の司祭様なのだろうと生徒達と教師は思った。
「さて、授業に戻りますわよ。あなた様のご参考になるかと思いますわ。ミスタ・セプティム」
「ええ、是非聞かせて下さいミセス。新たな知識は様々な事を教えてくれますから。」
本当に何も知らないが、優秀であろうメイジが見ている。シュヴルーズとしては自身の魔法をアピールしたいが、
しかし、他の事も触りくらいは教えるべきだろう。そう思って講義を始めた。
結論から言うと、おそらく成り立ちから違うのだろう。全く知らない構成だったとマーティンは思った。
『火』の魔法はとても分かりやすい。シロディールに住むなかなかしたたかなバトルメイジの一人がこう言っていたのを思い出す。
破壊の魔法のどこがいいって?そりゃ――そこらの物をぶっ壊すときの爽快感よ。
おそらくシロディールにおける「破壊」の魔法と呼ばれる物にもっとも近いのだろう。ただ、この魔法は名の通り
火しか扱えず、例えば敵の体力を奪ったり一時的に本来の力が出せないように彼らの技量そのものを低下させたりするような魔法は使えない。
また、残念ながら耐性の低下という概念もこれの中には無いらしい。
『水』の魔法は傷を癒す魔法である。しかしこれには何らかの触媒が無いと素早く治らないし、重傷者の治療が出来ない。
「回復」の魔法に比べ、使いづらさを感じる。また人の感情等を操る「幻惑」系統の魔法もこれに該当するようだ。
この時マーティンは、初めてこの国には教会での無料で病気を癒す神々の恵みが無いことを知る。
考えてみれば当然の話なのだが、実際に神が存在し、時折気まぐれに現れるタムリエルの人間である彼にとって、
神格化したはずの始祖ブリミルが何故何もしないのかをとても不思議がった。
『風』の魔法は、ふむ、何というか。まるで知らないな、これに該当する物とすれば、
おそらく古代エルフ、アイレイドの失われた術式くらいだろう。そういえば、このハートランドのハイエルフ達は
ニルンを地、水、空気、そして光から構成されていると考えていた。火は光の弱まった状態だとも。
まるでこの世界の魔法の要素ではないか、とマーティンは一人考えていた。見えずとも身を守る盾となり
また敵を薙ぐ矛となる…私が知らぬ破壊の魔法と変性の魔法が組み合わさっているのだろうか?
興味は尽きない。前の黒板に書かれてある文字が読めないことが恨めしかった。あとで
ルイズに字を教えてもらわねば。
『虚無』の魔法。それが何かは伝説のみに記されているという。一般的に言うと奇跡の業らしい。
奇跡か、私が起こした事も、奇跡と呼べるのだろうな。と帝都の神殿で竜の神アカトシュを呼び出したことを思い出す。
始祖ブリミルが使ったというそれは既に呪文が現存していないという。
一度消え去った呪文を探すのは大変だ。アイレイドの魔法を探すトレジャーハンター達からそういった話を聞いた事もある
マーティンだが、そういった魔法は大抵普通の人間には唱えられないから消えたのだと分かっていた。
アイレイドはとても凄まじい力を持つ、生まれながらの魔法使い達である。天候すら造作もなく操る彼らの魔法は
普通のメイジが扱うことが出来なかったのだ。意味のない物は消えていく。おそらくここの虚無も、そうしたものだろう。
さて、最後にと、かの教諭がふふんと誇らしげにしているのを見ながらマーティンはそんなことを考えた。
「『土』系統の魔法は万物の組成を司る、重要な魔法であるのです。
この魔法が無ければ、重要な金属を作り出す事もできないし、加工することもできません――」
少々耳を疑う。おいおい、鍛冶屋はいないのか?いや、この魔法があるから製鉄技術が発達しないのか――
はるか昔、未だドワーフというエルフ達と種を同じとする存在がタムリエルにいた頃、彼らは各々が持つ
魔法の力ばかりに頼らず、自分たちで様々な物を造ろうと試みた。謎の消滅からもう何千年と経つが
未だその技術の全貌はまるで明らかにされていない。彼らに比べて、ここのメイジは面倒くさがりなのだなと
感想をこぼした。
彼らが何故居なくなったかと言えば、神の禁忌に触れたからだが、それを知るのは今亡き3人の現人神と
タムリエルの一地方であるモロウウィンドで活躍したかの地の英雄のみである。
「さて、今日は『土』系統の魔法の基本である『錬金』を覚えてもらいます。一年生の時にできるようになった
人もいるでしょうが、基本は大事です。もう一度、おさらいすることに致します。」
杖を持ち、短くルーンを呟くと石ころが光り、光を放つ金属へと変わっていた。
「ゴゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ!」
それを否定し、真ちゅうだといった後、もったいぶったように自分をトライアングルと言った。
何だろうか、授業の際に話すことはいけないが質問は許される。手をあげ、かの『土』のトライアングルに聞いてみた。
「系統を足せる数でございますわ。この地のメイジはそれで格が分かるのです。ミスタ・セプティム」
ドット・ライン・トライアングル・スクウェア、この地のメイジは生まれながらに使える呪文がだいたい決まっていて、
最低が一つの系統しか属していないドット、最高が4つの系統に目覚めているスクウェアである。と彼女は言う。
同じ系統ならばより強力になり、違う系統なら二つを合わせた呪文が使えるという事らしい。
全ての魔法をマスターできないのか、この地のメイジエルフは少々退屈していそうだな。
タムリエルでは1000年の時を生きる彼らの中でも優秀なメイジは晩年、大抵今の所解明されている全ての系統
『召喚』『幻惑』『破壊』『回復』『神秘』『変性』の6つの系統と器具を使って薬の作成を行う『錬金術』を全てマスターしている。
そこで尚名誉に走るなら破壊と変性について研究し、後生の事を思うなら神秘の魔法を根気よく研究する。
敵対しているとルイズに聞いたが、マーティンは当然彼らも杖を持ってこのスクウェアのメイジとなるのだと考えていた。
先住魔法の使い手と勘違いしていたルイズはそこの詳細を教えていなかったのだ。
しかし引っかかるような気もする。何故知られるのは五つなのに四つまでしか足せないのだ?
シュヴルーズはかの虚無は伝説であるからと答えた。存在していたのが疑わしいのだろう。
見たこともない奇跡を信じるほど純真な子供でないのは、見れば分かるが。
「では、ミス・ヴァリエール。ここにある石ころを、望む金属に変えてみなさい。」
刹那、時が止まった。特徴的な擬音も、機械技術で造られた疑似時間停止装置もなく、
極彩色の服を着たいかにも狂気の様相を呈した老人もいなかったが、しかし皆の身体は
確かにに凍るように動かなくなった。
「先生、やめた方が良いと思いますわ」
危険ですからと加えるキュルケは困ったように言った。教室の皆が遅れて時を動かし、首を縦に振る。
指定されたご主人様の方を見る。さて、どうしたものかと思案しているような顔であった。
「彼女が努力家ということは聞いています。失敗を恐れていては何も出来ませんよ?」
優しく語りかけるそれは、教育者として誉められるべき事だろう。
現状の認識が出来ないというのは致命的な所だが、それに気づくには彼女もマーティンもまだ何も見ていない。
ルイズは立つと申し訳なさそうに言った。
「すいません、先生。その、そちらでやりたそうにしているツェルプストーにさせてあげた方がよろしいのではないでしょうか」
「何を言うのです。大丈夫ですとも。さぁ、こちらに来なさいミス・ヴァリエール」
うわぁ、とキュルケは呻いた。こうなったら行くしかなかろう。しかし珍しい、指定されたらとりあえず自分から爆発させに行くのに。
あの意地っ張りに何が起こったか知らないけれど、自分が何やってるのかをようやく認めたらしい。
前はあんなにツンとすまして泣きそうなのをこらえていた子供は、一晩でどうやら階段を駆け上がったようだ。
言われた後いつものように緊張もせず、とても普通に教壇へ向かう彼女の後ろ姿を見る。ゾク、とした。嗚呼、この感覚はあれだ。
こう、何というかとりあえず――同格?いやもっと違う、違う何かだが分からない。理性で考えていると
『火』の系統の本質たる破壊の本能がキュルケを呼びかける。『アレ』は良い。獲物から何かに成った、いや、これから成るのだ、と。
フフーフとキュルケは鼻歌でも歌うかのように笑う。これはこれは、それでこそ我が宿敵になれそうじゃない?
蛇がカエルをからかっていた関係は終わり、いずれ戦場で世界蛇と対する時彼女は何になっているのか、皆目見当はつかないが、
せいぜい何かをとがらせておいて下さいな。そう思いながらとりあえず爆風を受けるのはいやなので机の下に隠れるキュルケだった。
教壇に上がるルイズは一度目を閉じ、カっと開いた。覚悟は既に済ませてある。震えは、もうない。そして二度とこさせない。
「ひとり言よ。今日はひどく調子が良いわ。何が起きるかわかったもんじゃないから、ここに残るのなら覚悟しなさいね」
元々、彼女は美しい側である。学院の中、少なくともこの中で同格をはれるのは真逆の性格をしたツェルプストー
くらいだ。そこでルイズを選んでも本来何もおかしくはない。しかし、その性格がわざわいし激烈な口調で自ら
他人を寄せ付けなかった。もう少し器用だったならば、魔法が使えなくても皆が暖かく迎え入れてくれる方法くらい分かったかも知れないが。
今、彼女の凛とした顔には何の迷いもない、昨日、貴族として前向きに生きると決めた。もはや未来永劫失敗を続けようとも頑張ってみようと
思う。魔法を使える平民がいたのだ。魔法を使えぬ名門侯爵家の令嬢がいてもいいだろう。出来ることを出来る者がやればいい。
ならば私は敵に後を見せぬ貴族となろう。いずれ守るべき民の為に。ただ、あきらめるのではない、続けるのだ。できるまで。
かぶろうではないか「ゼロ」の汚名。人々を守る事ができるようになれば、勝手にあっちが見る目を変えてくれるでしょう?
手柄が欲しくて「ゼロ」をやめたかった心の中では泣き虫の少女は今、確かに崇高な精神を持つ、まごうことなき貴族となった。
ルイズのただならぬ気配とその普段からはあり得ぬ物言い。それと精神の成長によってもたらされた見たことのないルイズの
美しさに皆驚きを隠せないが、しかし言っていることはとても物騒だ。これはさっさと逃げるに越したことはない。と
使い魔を連れて外に出た。
ふむ、とマーティンは空っぽになった教室と外に出て窓からこわごわとこちらを眺める生徒達、そしてしくじった!という顔で
ようやく彼女は毎度何かをやらかしているという事に気づいたシュヴルーズを見た。
「外、出といた方が良いわよ?」
ルイズがぶっきらぼうに言い放つ。はははとマーティンは笑った。
「何を言う?昨日言っていたじゃないか。使い魔と主人は一心同体なのだろう?ならば例え貴方が死地に赴いたとしても
私はそれについて行かねばなるまい。ならばたかが魔法の一つ、受けていなくてどうしようと言うのだね」
彼もただならぬ事が今から起きることは理解した。しかし、先ほどの覚悟の決まった顔と言葉は、なかなかに小気味良い。
落とし穴とはこれだったか?しかし、これなら大歓迎だ。マーティンはじっと先ほどから座っている中程の席から
ルイズを見ていた。不敵に笑い、呪文を詠唱する。杖を振り下ろすと同時に爆発が起こった。ルイズとシュヴルーズは黒板まで
吹き飛ばされて叩きつけられ、マーティンも衝撃と爆風に身をよじる。
なるほど、これは――凄い「破壊」の魔法だ。マーティンは爆心地の二人を見る。双方とも気絶していた。
これだけの破壊力で、よくもまぁこの程度ですんだものだと彼は思う。多少の傷はあるがこの程度なら回復の魔法ですぐに治せる。
生徒達と騒ぎに駆けつけた教師、それとどこからか見物していた見知らぬ使用人が見守る中、二人の傷を治し、
起きあがるのを待つマーティンであった。
#navi(ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア)
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3,悪夢と失敗を越えて
ここはどこだろうか。空は赤くて雷が鳴ってるし、なんだか凄い叫び声がする。
夢の中のルイズは、全く見たことのない街を歩いていた。
街、といっても家が燃え、家屋は潰されている為、
廃墟というべきかも知れない街が。
嫌だわ、一体何かしらここ。そう思っていると前で何かが動くのが見えた。
「人かしら?」
正確には人だった物だ。しかも現在進行形で人からそうでなくなっていると言うべきか。
赤黒い鎧に身を包んだ、身の丈190サントはありそうな、
黒い顔の亜人が片手で人を掴み上げ、そのまま潰している。
肉がちぎれ骨の砕ける音がする。
その亜人は低い声でおそらく笑っているのだろう。楽しそうな表情だった。
ペタン、とお尻が地面に付いた。
その亜人の恐ろしさに腰を抜かしてしまったらしい。
ひとしきり、それで遊んだ後に亜人はその、
肉塊をそこらに投げ捨てどこかへ歩いていった。
「何よ、なによ。これは。」
目の前にそれが落ちた。現実の世界で間違いなく濡らしてしまうルイズであった。
クヴァッチ――マーティンが暮らしていた街にして、
16人いるデイドラ王の一人、
メイルーンズ・デイゴンの私兵集団に所属する、
ドレモラという亜人達によって壊滅させられた街。
彼はこの地獄から生還するどころか、
逆に不死であるデイドラ達に占領されていた、
クヴァッチを取り返す一端を担った。
何故彼らは死なないデイドラから街を取り返すことができたのか?
デイドラにも種類がある。
これらは、オブリビオンと呼ばれる、
あの世としてタムリエルに知られる異世界に住む生物の総称である。
考え無しに動く動物のようなデイドラがいれば、
人間のように思考し、自分たちで決めた規則や規律の下に動く者もいる。
そういった知あるデイドラにとっての恐怖とは、
痛みであり、恥であり、損失であり、闇である。
考える頭がそんなにないおばかさんは怖い物がないのだ。
その分あまり強くもない物が多いが、稀に人を軽くひねり殺すのもいる。
彼らは皆不死である。しかし死なないと言っても、
肉体の損傷によって身体を捨て、
彼らの故郷であるオブリビオンに魂のみで戻り、
そこで再び身体を構築しなければならない。
彼らとしても肉体が傷つけば当然痛い。
数あるデイドラでも知性があり、話そうと思えば、
普通に人と話すことが出来るドレモラ達は、
自分と人間の関係を狩人と獲物、と表現している。
狩られろ、いずれ死ぬ者どもが!というわけである。
最も、その傲慢さが原因で逆に人間に狩られて、
仲間内に笑われる者がいるのもしばしば見受けられるが。
それをされて自分を撃退した獲物を褒め称えるか、
激して弱い人間を襲うかは、倒されたドレモラ次第である。
デイドラの王達――彼らはまた殊更に変わった理で動く。
ああ、彼女が目覚めるらしい。もうこのような夢を見ないように、
悪夢を司るデイドラ王、ヴァーミルナにお願いしなくては――嗚呼魔女が笑う。
その内また見せる気のようだ。
不死の存在の事のことについて定命の存在が何か考えるのは不毛な事だと誰かが言った。
うっすらと目を開ける。自分の部屋だ。
良かったあの怖い亜人はいない。
ルイズはほっとすると共にはっとして下を見る。
「不可抗力よ、アレ見たら誰だってこうなるわ」
開き直り脱ぎ捨てる。ふと気づけば、
昨日は話し込んでいる内に寝てしまったのか、
制服を着たままになっていた。
ベッドで眠っていることから考えるとそこで、
こらマーティン。何その毛布を使ってんのよ!たかいんだかんね。ふんとに。
デイドラ――不死なのに様々なことを怖がる連中。
そのドレモラについて確かに昨日聞いたけれど、
まさかいきなり夢に出るとは誰が思うだろうか。
ああ、全く目覚めが悪い。しかし良い感じに日が昇っている。
二度寝はまずかった。
着替えが終わった頃にマーティンは目を覚ました。
ある意味ちょうど良いタイミングだ。
「ああ、おはようご主人様。気分はいかがかな?」
「おはようマーティン。昨日聞いた話のおかげで悪夢を見たわよ」
それは仕方がない。気にする方が悪いのだとマーティンは笑った。
ルイズは何ともこう、マーティンに対しどうにか責任を負わせたかったが、
しかし正論を返されてはどうしようもない。
マーティンはにこにこしている。
朝食を取りに行きましょうとルイズが言ったので彼は扉を開いた。
「おはよう。ルイズ」
件の赤毛、いや、どこぞの海賊よろしく、
赤髪とでも名乗れるだろう燃えるような色合いの髪の女性と鉢合わせした。
実はいつルイズが出るかと待っていたのだが、
そこら辺は気にしてはいけない。結局似たもの同士なのだ。全てにおいて反対なのに。
「おはよう。キュルケ」
「あなたの使い魔って、あらなかなか。ねぇ貴方、情熱ってご存じ?」
もう50歳だが未だに30台後半から40台前半として、
見られることの多いマーティンは、知りすぎているとも。
少なくとも君よりは、と返した。
昔、快楽の為なら何だってするサングイン、
というデイドラ王を信仰していたことがあった。
恥ずべき過去なのは間違いないが、
おかげで火遊びの危険性は十二分に理解している。
キュルケとしてみれば、最近年若い同輩達と遊んでいたから、
こうした包容力と教養のありそうな、
大人の男性と過ごしてみるのも悪くはない。
それに、なかなか穏やかそうな顔の奥に獣が潜んでそうじゃないの――と、
狩人としての目を光らせる。
「へぇ、それは是非聞いてみたいわ。おじさま、お名前の方は何とおっしゃいますの?」
「マーティン・セプティムだ。火傷を知らぬ君よ」
なにか、いい感じの雰囲気が気にくわない。
とりあえずだだっ子の考え方でルイズは邪魔に入った。
「なれなれしいのよ、あんた。大体何?なんでいきなり口説くのよ」
途中からどっちに言ってるのか分かり難いが、本星だろうキュルケは言った。
「いいじゃないの、愛があれば、年の差なんて。ねぇ、ミスタ」
「いや、やめておこう。愛の炎は常に移ろい変わるものだ、
明日を知らぬ陽炎のように。特に君のような方とは何度か経験があってね」
なかなかどうして、恋多き女性は何も知らぬ男を狂わせるものだ。
そう言って、マーティンはキュルケの隣でのんびりしている火トカゲを見た。
じっと目が合うと何故かトカゲはマーティンにすり寄った。
「あら、珍しいわね。サラマンダーが飼い主以外に懐くなんて。
やはりこれも運命かしら?ダーリン」
「いや、結構。私の一族は、その、何だ。まぁそういう一族なんだ。」
苦しい言い訳である。おそらく自身に流れる正統な皇帝の血、
――竜の神アカトシュに認められた血が、
かの神の眷属だろうこいつに、
反応して懐かれてしまったのだろう。
悪い気はしないが、正直暑苦しい。
「ああ、そんな事より朝食だったな。行こうか、ご主人様。」
火トカゲのフレイムから離れ食堂の方へ行こうとすると、
トカゲは名残惜しそうに鳴いた。ついでにキュルケも。
「ええ、全く、キュルケもそうだけど、マーティンもマーティンよ。
あいつと受け答えなんかしたらだめなんだからね」
「仲が良さそうだと思ったが…ああ、仇敵か何かかい?」
家同士で仲が悪いというのはあるだろう。果たしてその通りだとルイズは言った。
アルヴィーズの食堂の前でルイズは止まった。
「ここ、貴族しか入っちゃいけないのよね。ねぇ、マーティン。あなたって貴族なの?」
単刀直入に聞き入る。草原では見た目だけを判断材料にしたが、
どうもそれは違うというのが昨日の語りから理解できた。
「ふむ、そうだな。司祭だと言っただろう?それは本当なんだが、
ある日使いがやってきて、実は私はタムリエル帝国のセプティムという
地方の領主を父に持っているというのが分かったんだ。
そしてはやり病で父と兄たちが死に、私が継がねばならぬとその使いは言ったんだよ」
うん?とルイズは首をかしげた。
「地方領主なら、別に真っ当な他の人を持ってくればいいじゃない。
司祭なんだから貴族についてそんなに知らないでしょ?」
もっともな意見だ。これが皇帝だと言ったら納得するだろう。
面倒だから絶対に言わないが――マーティンはため息を吐くフリをした。
「セプティム家の私兵集団、ブレイズが騒いだらしくてね」
「へぇ?物騒ね」
全くだ。彼らの忠誠には恐れ入る。ブレイズは皇帝直属の部隊にして、
恐れを知らぬ戦士達である。皇帝の命令以外では決して動かぬ彼らは、
マーティンの為に命の限りを尽くすつもりだった。
マーティンからしてみたらなかなかどうして、
頼むから、もう少しくだけた態度で接してくれると、
こちらとしても心が休まり、
デイゴンへの追撃の為の研究もはかどったに違いない、
と思う程度のとても重い忠誠を誓ってくれて、
寝ても覚めても曇王の神殿では心休まる日が無かった。
皇帝とはそうした職務なのだろうとは分かっているが、
またやれ。と言われると今は遠慮したい気分である。
マーティンは、すっかりクヴァッチでのんびりと、
司祭をやっていた頃の精神状況に戻っていた。
ここ4年程非日常ばかりだったから久しぶりの日常なのである。
できればのんびりと過ごしたかった。 自分の命と、
秘宝を用いて信奉する九大神の長、竜の神アカトシュを現世に呼び出し、
帝国は崩壊を免れた。少しくらいこうしていても罰はなかろうと考える。
帝都にて、新皇帝探しに苦労している評議会の凄腕バトルメイジ、
オカートが聞いたら杖で頭をぶん殴られても文句は言えないだろう。
俺がこんなに苦労しているのに、と大事な決戦の時に、
兵をケチった奴に言われたくはないが、おそらく言われるだろう。
「まぁそういうわけで貴族にならねばならぬと言われて、
さぁてどうしたものかと考えていると、 気が付いたらあの草原に倒れていたと言うわけだ。」
何故かこう嘘が豊富に出るのは、
神に仕える身としてどうなのだと思うところはあるが、
私はタムリエル帝国の皇帝である。
というよりは説得力もある。
嘘の方が説得力があるというのも変な話だが。
「わたし、ちょっとマズイ事をしたかしら?」
冷や汗をかくルイズにいやいや、
そんな事はないと笑ってマーティンは言う。
実際の所は、死んだはずの自分をどういうわけかエセリウス以外の所へ連れてきたのだ。
ここがオブリビオンならそれはそれで。
もしかしたらいまや伝説となった、
ニルンのどこかにあるという大陸の一つなら、
新たな発見と共に帰る事が出来る。
まぁなんにせよ今しばらくはここにいる事になるのは間違いなかった。
「久しく遠出をしていなかったのだ。異国に行くのは悪くない。
そしてそこで食べる飯もまた格別な物だ。それにかのセプティム領には、
優秀な賢者であらせられるオカート殿がいる。
ブレイズも彼には逆らわないさ。軋轢はあるかもしれないが」
自分で持ってきた椅子に座り、ちゃっかり貴族用の朝食を食べる。
初めて食べる上等な飯は九大神からもたらされた恵みだと、
マーティンは彼らに今の状況を感謝した。
帝都にてせわしなく働くオカートはおもいっきりクシャミした。
授業と聞いてマーティンはほう、と教室を見てため息をもらした。
自分が学んだシロディールのメイジギルド総本山であるアルケイン大学は、
青空教室であった。栽培の月(5月)は良かったが、
冬の星霜の月(12月)や暁星の月(1月)等は寒くて仕方がなかったな
――そんなメイジ時代を思い出しながら周りを見る。笑われている。私とルイズが。
何かこう、とりあえずお前達はもう少しマナーを知るべきだと言おうか、
しかし魔法を使えない平民と思われているから、
それはそれでまぁ仕方ないと思っておくべきか。
それらから視線をそらすと、あまり知らないモンスター達が見えた。
彼らは一体なんだろうか。滞在中の楽しみが、
時間を増す毎に増えている現状にマーティンは、
どこかに落とし穴が無いか少し心配になった。
おそらく、ここ数年のタムリエルの人間の中では、
上位5人に入るだろう極限状態下で一般人からしてみるととても不幸だったのだ。
そう考えると、今の何とも言えない普通という幸せをかみしめるマーティンにとって、
何か起きないかと思うのは普通だろう。
ちなみに、今は皇帝の世継ぎが居なくて、
とても困っているオカートさんがランクインしている。
寝る間もないらしい。可哀想に。
後少ししたら気が触れて帝都に自分を皇帝として祭り上げかねないくらいだ。
「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。
このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、
様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
どこにでもいそうなメイジの女性が言った。
大学で見たことがある気がする。気のせいだろうか。
「変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
教室が笑いに包まれる。気に入らないな。
こういう笑いの取り方は。マーティンはそう思いながら黙っていた。
「ゼロのルイズ!召喚できないからって、その辺歩いてた平民連れて来るなよ!」
ルイズは立ち上がった。しかし、
一度激情を殺すようにコホンと咳をして、
先ほど言った少々ふとっちょの少年に凄みを効かせる。
「それは彼への侮辱よ?風上の。こんなナリしてるけど、
東方はロバ・ウル・カリイエよりさらに東、
人間と亜人の住むタムリエルという所から来たメイジなのよ」
昨日の一件で、赤髪の挑発以外には乗らないようになったらしい。
ルイズは誰から教わったのか氷点下のにらみでふとっちょの少年、
マリコルヌを睨んでいた。出身については口裏を昨日の内に合わせておいた。
そうそう信じられるものではないと、彼女は少し寂しそうに言っていた。
おぉ、とどよめきがあがる。東方はやはり怖いのだろうか。
タムリエルの東方にある、人食いヘビ人が住むアカヴィリは確かに怖いが。
「しょ、証拠を見せてみろよ。いくらなんでもゼロがメイジなんて呼べる訳ないだろう?」
どもりながらも口にする。マーティンは立ち上がり、
さて、何をしたものかと思案する。
氷魔法はなぁ。当たると冷たいし、
やはり自己の回復。いや、派手さがない。
では召喚…スキャンプは臭うな。
「あんまり使いたくはないのだがね。」
力をひけらかしてこれを自慢していた昔を思い出す。
能力は優秀だったがその分モラルが全くなかった。
だからこそあんな事になったのだが――
自制し、これはそうではないのだ。自分が何者かを証明する為に呼ぶのだと心の中で言う。
右手を上げて呪文を唱え、モンスターを召喚する。
クランフィアというデイドラモンスターは二足歩行で敵に高速で向かい、
両手の鋭いかぎ爪を使ったり、勢いを殺さぬまま突撃したりして相手を倒す。
デイドラの突撃兵ともいえる大きな黄色いは虫類に見える彼は、
他の知恵あるデイドラの一人、ズィヴィライという種に可愛がられている。
おおと歓声が上がる。これが先住なのか、
とか一体どうなっているんだ、とか可愛いらしい等が聞こえた。
決して青い髪の少女の口から美味しそう。
という声が聞こえてこなかった事を追記しておく。いや、なかったんだよ?
「これは失礼しましたわ。異国のメイジ様」
異形が元いた世界に帰って後、シュヴルーズが申し訳なさそうに頭を下げる。
先ほどまで間違いなくこちらを見下していたようだった。
ただそれは、いわゆる貴族が平民を見るときに、
何も考えずにする習慣的な物で、
そういったどこにでもあることに、
異を唱えてもどうしようも無いことくらい、
マーティンは知っていた。
「いえ、いいのですミセス・シュヴルーズ、
それに私はこの国のメイジと違い貴族ではありませんから」
竜の神に仕える司祭です。と簡単な紹介と共に名を名乗ると、
なるほど、おそらく位の高い異教の司祭様なのだろうと生徒達と教師は思った。
「さて、授業に戻りますわよ。あなた様のご参考になるかと思いますわ。ミスタ・セプティム」
「ええ、是非聞かせて下さいミセス。新たな知識は様々な事を教えてくれますから。」
本当に何も知らないが、優秀であろうメイジが見ている。
シュヴルーズとしては自身の魔法をアピールしたいが、
しかし、他の事も触りくらいは教えるべきだろう。そう思って講義を始めた。
結論から言うと、おそらく成り立ちから違うのだろう。
全く知らない構成だったとマーティンは思った。
『火』の魔法はとても分かりやすい。
シロディールに住むなかなかしたたかなバトルメイジの一人がこう言っていたのを思い出す。
破壊の魔法のどこがいいって?そりゃ――そこらの物をぶっ壊すときの爽快感よ。
おそらくシロディールにおける「破壊」の魔法と呼ばれる物に、
もっとも近いのだろう。ただ、
この魔法は名の通り火しか扱えず、
例えば敵の体力を奪ったり、
一時的に本来の力が出せないように、
彼らの技量そのものを低下させたりするような魔法は使えない。
また、残念ながら耐性の低下という概念もこれの中には無いらしい。
『水』の魔法は傷を癒す魔法である。
しかしこれには何らかの触媒が無いと素早く治らないし、
重傷者の治療が出来ない。「回復」の魔法に比べ、
使いづらさを感じる。また人の感情等を操る、
「幻惑」系統の魔法もこれに該当するようだ。
この時マーティンは、初めてこの国には、
教会での無料で病気を癒す、神々の恵みが無いことを知る。
考えてみれば当然の話なのだが、実際に神が存在し、
時折気まぐれに現れる、タムリエルの人間である彼にとって、
神格化したはずの始祖ブリミルが、何故何もしないのかをとても不思議がった。
『風』の魔法は、ふむ、何というか。
まるで知らないな、これに該当する物とすれば、
おそらく古代エルフ、アイレイドの失われた術式くらいだろう。
そういえば、このハートランドのハイエルフ達は、
ニルンを地、水、空気、そして光から構成されていると考えていた。
火は光の弱まった状態だとも。まるでこの世界の魔法の要素ではないか、
とマーティンは一人考えていた。
見えずとも身を守る盾となり、
また敵を薙ぐ矛となる…
私が知らぬ破壊の魔法と、
変性の魔法が組み合わさっているのだろうか?
興味は尽きない。前の黒板に書かれてある文字が、
読めないことが恨めしかった。あとでルイズに字を教えてもらわねば。
『虚無』の魔法。それが何かは伝説のみに記されているという。
一般的に言うと奇跡の業らしい。奇跡か、私が起こした事も、
奇跡と呼べるのだろうな。と帝都の神殿で竜の神アカトシュを呼び出したことを思い出す。
始祖ブリミルが使ったというそれは既に呪文が現存していないという。
一度消え去った呪文を探すのは大変だ。
アイレイドの魔法を探すトレジャーハンター達から、
そういった話を聞いた事もあるマーティンだが、
そういった魔法は大抵普通の人間には唱えられないから消えたのだと分かっていた。
アイレイドはとても凄まじい力を持つ、
生まれながらの魔法使い達である。
天候すら造作もなく操る彼らの魔法は、
普通のメイジが扱うことが出来なかったのだ。
意味のない物は消えていく。おそらくここの虚無も、
そうしたものだろう。
さて、最後にと、かの教諭がふふんと、
誇らしげにしているのを見ながらマーティンはそんなことを考えた。
「『土』系統の魔法は万物の組成を司る、重要な魔法であるのです。
この魔法が無ければ、重要な金属を作り出す事もできないし、加工することもできません――」
少々耳を疑う。おいおい、鍛冶屋はいないのか?
いや、この魔法があるから製鉄技術が発達しないのか――
はるか昔、未だドワーフというエルフ達と種を同じとする存在が、
タムリエルにいた頃、彼らは各々が持つ魔法の力ばかりに頼らず、
自分たちで様々な物を造ろうと試みた。謎の消滅からもう何千年と経つが、
未だその技術の全貌はまるで明らかにされていない。
彼らに比べて、ここのメイジは面倒くさがりなのだなと感想をこぼした。
彼らが何故居なくなったかと言えば、
神の禁忌に触れたからだが、
それを知るのは今亡き3人の現人神と、
タムリエルの一地方であるモロウウィンドで活躍したかの地の英雄のみである。
「さて、今日は『土』系統の魔法の基本である『錬金』を覚えてもらいます。
一年生の時にできるようになった人もいるでしょうが、
基本は大事です。もう一度、おさらいすることに致します。」
杖を持ち、短くルーンを呟くと石ころが光り、光を放つ金属へと変わっていた。
「ゴゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ!」
それを否定し、真ちゅうだといった後、
もったいぶったように自分をトライアングルと言った。
何だろうか、授業の際に話すことはいけないが質問は許される。
手をあげ、かの『土』のトライアングルに聞いてみた。
「系統を足せる数でございますわ。この地のメイジはそれで格が分かるのです。
ミスタ・セプティム」
ドット・ライン・トライアングル・スクウェア。
この地のメイジは生まれながらに使える呪文がだいたい決まっていて、
最低が一つの系統しか属していないドット、
最高が4つの系統に目覚めているスクウェアである。と彼女は言う。
同じ系統ならばより強力になり、
違う系統なら二つを合わせた呪文が使えるという事らしい。
全ての魔法をマスターできないのか、
この地のメイジエルフは少々退屈していそうだな。
タムリエルでは、1000年の時を生きる彼らの中でも優秀なメイジは晩年、
大抵、今の所解明されている全ての系統 『召喚』『幻惑』『破壊』『回復』『神秘』『変性』、
の6つの系統と、器具を使って薬の作成を行う『錬金術』を全てマスターしている。
そこで尚名誉に走るなら破壊と変性について研究し、
後生の事を思うなら神秘の魔法を根気よく研究する。
敵対しているとルイズに聞いたが、
マーティンは当然彼らも杖を持って、
このスクウェアのメイジとなるのだと考えていた。
先住魔法の使い手と勘違いしていたルイズは、
そこの詳細を教えていなかったのだ。
しかし引っかかるような気もする。
何故知られるのは五つなのに四つまでしか足せないのだ?
シュヴルーズはかの虚無は伝説であるからと答えた。
存在していたのが疑わしいのだろう。
見たこともない奇跡を信じるほど純真な子供でないのは、見れば分かるが。
「では、ミス・ヴァリエール。ここにある石ころを、望む金属に変えてみなさい。」
刹那、時が止まった。特徴的な擬音も、
機械技術で造られた疑似時間停止装置もなく、
極彩色の服を着たいかにも狂気の様相を呈した老人もいなかったが、し
かし皆の身体は 確かにに凍るように動かなくなった。
「先生、やめた方が良いと思いますわ」
危険ですからと加えるキュルケは困ったように言った。
教室の皆が遅れて時を動かし、首を縦に振る。
指定されたご主人様の方を見る。さて、どうしたものかと思案しているような顔であった。
「彼女が努力家ということは聞いています。失敗を恐れていては何も出来ませんよ?」
優しく語りかけるそれは、教育者として誉められるべき事だろう。
現状の認識が出来ないというのは致命的な所だが、
それに気づくには彼女もマーティンもまだ何も見ていない。
ルイズは立つと申し訳なさそうに言った。
「すいません、先生。その、そちらでやりたそうにしている。
ツェルプストーにさせてあげた方がよろしいのではないでしょうか」
「何を言うのです。大丈夫ですとも。さぁ、こちらに来なさいミス・ヴァリエール」
うわぁ、とキュルケは呻いた。こうなったら行くしかなかろう。
しかし珍しい、指定されたらとりあえず自分から爆発させに行くのに。
あの意地っ張りに何が起こったか知らないけれど、
自分が何やってるのかをようやく認めたらしい。
前はあんなにツンとすまして泣きそうなのをこらえていた子供は、
一晩でどうやら階段を駆け上がったようだ。
言われた後いつものように緊張もせず、
とても普通に教壇へ向かう彼女の後ろ姿を見る。
ゾク、とした。嗚呼、この感覚はあれだ。
こう、何というかとりあえず――同格?
いやもっと違う、違う何かだが分からない。理性で考えていると、
『火』の系統の本質たる破壊の本能がキュルケを呼びかける。
『アレ』は良い。獲物から何かに成った、いや、これから成るのだ、と。
フフーフとキュルケは鼻歌でも歌うかのように笑う。
これはこれは、それでこそ我が宿敵になれそうじゃない?
蛇がカエルをからかっていた関係は終わり、
いずれ戦場で世界蛇と対する時彼女は何になっているのか、皆目見当はつかないが、
せいぜい何かをとがらせておいて下さいな。
そう思いながらとりあえず爆風を受けるのはいやなので机の下に隠れるキュルケだった。
教壇に上がるルイズは一度目を閉じ、カっと開いた。
覚悟は既に済ませてある。震えは、もうない。そして二度とこさせない。
「ひとり言よ。今日はひどく調子が良いわ。何が起きるかわかったもんじゃないから、
ここに残るのなら覚悟しなさいね」
元々、彼女は美しい側である。学院の中、
少なくともこの中で同格をはれるのは、
真逆の性格をしたツェルプストーくらいだ。
そこでルイズを選んでも本来何もおかしくはない。
しかし、その性格がわざわいし激烈な口調で、
自ら他人を寄せ付けなかった。もう少し器用だったならば、
魔法が使えなくても皆が暖かく迎え入れてくれる方法くらい分かったかも知れないが。
今、彼女の凛とした顔には何の迷いもない、昨日、
貴族として前向きに生きると決めた。
もはや未来永劫失敗を続けようとも頑張ってみようと思う。
魔法を使える平民がいたのだ。
魔法を使えぬ名門侯爵家の令嬢がいてもいいだろう。
出来ることを出来る者がやればいい。
ならば私は敵に後を見せぬ貴族となろう。
いずれ守るべき民の為に。ただ、あきらめるのではない、
続けるのだ。できるまで。
かぶろうではないか「ゼロ」の汚名。人々を守る事ができるようになれば、
勝手にあっちが見る目を変えてくれるでしょう?
手柄が欲しくて「ゼロ」をやめたかった、
心の中では泣き虫の少女は今、確かに崇高な精神を持つ、
まごうことなき貴族となった。
ルイズのただならぬ気配とその普段からはあり得ぬ物言い。
それと精神の成長によってもたらされた見たことのない、
ルイズの美しさに皆驚きを隠せないが、
しかし言っていることはとても物騒だ。
これはさっさと逃げるに越したことはない。と
使い魔を連れて外に出た。
ふむ、とマーティンは空っぽになった教室と、
外に出て窓からこわごわとこちらを眺める生徒達、
そしてしくじった!という顔でようやく彼女は、
毎度何かをやらかしているという事に気づいたシュヴルーズを見た。
「外、出といた方が良いわよ?」
ルイズがぶっきらぼうに言い放つ。はははとマーティンは笑った。
「何を言う?昨日言っていたじゃないか。
使い魔と主人は一心同体なのだろう?ならば例え貴方が死地に赴いたとしても、
私はそれについて行かねばなるまい。ならばたかが魔法の一つ、
受けていなくてどうしようと言うのだね」
彼もただならぬ事が今から起きることは理解した。
しかし、先ほどの覚悟の決まった顔と言葉は、なかなかに小気味良い。
落とし穴とはこれだったか?しかし、これなら大歓迎だ。
マーティンはじっと先ほどから座っている中程の席から、
ルイズを見ていた。不敵に笑い、呪文を詠唱する。
杖を振り下ろすと同時に爆発が起こった。ルイズとシュヴルーズは、
黒板まで吹き飛ばされて叩きつけられ、マーティンも衝撃と爆風に身をよじる。
なるほど、これは――凄い「破壊」の魔法だ。
マーティンは爆心地の二人を見る。双方とも気絶していた。
これだけの破壊力で、よくもまぁこの程度ですんだものだと彼は思う。
多少の傷はあるがこの程度なら回復の魔法ですぐに治せる。
生徒達と騒ぎに駆けつけた教師、それと、
どこからか見物していた見知らぬ使用人が見守る中、二人の傷を治し、
起きあがるのを待つマーティンであった。
#navi(ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア)
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