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#navi(ゲーッ!熊の爪の使い魔)
第三話 クマのいる生活
さて、部屋に戻ってきた。夜は長い。気を取り直してルイズはベルモンドに質問してみることにした。
「改めて聞くけどあんたって一体何なの?」
「? ボクはベルモンドだよ」
「それはもう聞いたわよ!私が聞きたいのは名前じゃなくてあんたが何者かっていうこと。
着ぐるみみたいな格好のくせにその上からでも契約できるしあんたもしかして変な種類の亜人か何か?」
「ルイズの言う亜人っていうのが何のことかわからないけど違うよ、ボクは『超人』だよ
ところでボクからも聞きたいんだけどここの人たちってみんな魔法っていうものが使えるの?
コルベールのおじさんはそんなことを言っていたし、他の子たちも空飛んで帰ってたよね」
「チョージン?聞いたこともないわね。それに魔法が珍しい?あんた何言ってんの?」
「え、でもボクのいたとこじゃ魔法なんて見たこともなかったよ。
まあ、悪魔霊術とかピラミッドパワーとかオプティカルファイバーパワーとかなんかそれっぽいのを使う人も少しはいたなあ。
そういえば月が二つもあるんだね、ここ。すごいや」
そう言ってベルモンドは考え込むポーズをとる。
ルイズはそれを聞いて頭が痛くなるのを感じていた。
着ぐるみだか亜人だかチョージンだか知らないが録に魔法も知らないとはとんでもないド田舎から呼んでしまったということか?
というか月が二つってどういうことだ、頭おかしいのかこいつ?
こんな常識知らずが私の使い魔として務まるのか?
そう感じ、何か言ってやろうと抱えた頭を上げベルモンドを見やった。頭に手をやり考え込むクマちゃんを。
「か、かわいい…」
だが、文句の言葉が口を出ることはなかった。
「え、なにか言った?」
「言ってない、言ってない!何も言ってないわよ!」
だが口とは裏腹に眼はベルモンドから離せない。
確かにこいつは変な奴だが見た目はクマちゃんで、なんていうのかその、愛らしい。すごく。
抱きついてもふもふしてみたい。
ルイズは頭を振って今浮かんだ考えを打ち消した。
こいつは使い魔で私はその主人なのだ。もっと威厳あるしっかりした態度で接しなくては。
「こほん、まあいいわ。とにかくあんたは私の使い魔なんだからしっかりと務めを果たしてもらうわよ」
そうしてルイズは使い魔の務めを話し出した。
そうして役割を教えた後威厳たっぷりにその実行を命令しようと考えていたのだが、その目論見はあっさり外れてしまった。
感覚の共有はできないし何か探させようにもよほどの田舎から来たのかこっちのものは何も知らない。
もう期待などできなくなってしまったが、一応一通り言っておこうと思い最後の主人を守るという役目を話したとき意外な言葉が返ってきた。
「うんそれならまかせてよ。必ずルイズを守ってあげるよ」
「あのねえ、あんた、冗談はやめてよ。あんたみたいなのがそんなことできるわけないでしょ」
はっきりいってルイズにはベルモンドに戦闘力があるようには全く見えなかった。
そこいらの使用人のほうがまだこのクマちゃんよりは強そうだ。取り柄といったら可愛いことしかないんじゃないのか、こいつ。
ああ、かわいい。抱き枕にして寝てみたい。
ルイズは頭を振ってまたしても浮かんだ変な考えを打ち消した。
が、そんなルイズを気にしないでベルモンドは自信たっぷりにこういってのけた。
「大丈夫だよ。僕は正義超人だからね。みんなを守ることが使命なのさ」
いや、正義チョージンだからね、なんて言われてもちっとも理由になってない。さっぱりわけがわからない。
部屋に戻ってじっくり話を聞こうと思っていたが結局頭が痛くなるだけだった。
もう話を切るのはあきらめてせめて主人らしく振舞おうと自分を着替えさせるように命じた。威厳たっぷりに。
……いや、本人はそのつもりだったが女の子がクマちゃんに着替えを頼むというのはほほえましい光景でしかなかった。
「はーいじゃあじゃあ脱がすよー、腕上げてー。はい、じゃあこれ。服はどこへしまえばいいのかな」
ベルモンドは案外てきぱきと着替えさせてくれた。手がボタンにかかったときこの着ぐるみの手で細かいことができるのかと気になったがそれも器用にこなしてくれた。
さて、問題は寝るときだった。ベルモンドに寝る場所として床を指したのだがさすがにこれは不満そうだった。
それでもあんたは使い魔だからと強引に押し切ったら諦めたのか床の隅に向かっていった。
そこまではいい。だがベルモンドはそのまま膝を抱えて座り込んだのだ。
「うう」
部屋の隅で背中を丸めて膝を抱えるクマちゃん。
「うううう」
なぜか心が痛む光景だった。
「うううううう……あーー!もういいわよ、あんたもこっちで寝なさい!」
「え、いいの?」
「いいのよ!でもこれは得別なんだからね。あたしが寛大なご主人様なことに感謝しなさい!」
「わーい、ありがとう」
そうしてベルモンドもベッドにもぐりこんでくる。
ルイズはさっきベルモンドを抱き枕にしたいと考えたのを思い出した。でもプライドとかが邪魔をして結局抱きつきはしなかった、起きている間は。
眠った後ルイズは自然とベルモンドに抱きついていた。
この夜、ルイズはかつてないほど安眠できたという。
少女はその中身をいまだ、知らない。
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