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#navi(SnakeTales Z 蛇の使い魔)
ここはニューカッスル。
かつてのアルビオン王党派の最後の砦だ。
しかし、今ではそこも彼らが敵として憎んだ貴族派の根城となっていた。
その貴族派の長であるクロムウェルの足元に亡骸を横たえるのはかつての王子、ウェールズ。
いや、亡骸を“横たえていた”というべきか。
今彼はクロムウェルの“虚無”とやらによって蘇生させられていた。
その目はかつての目と違い、虚ろで、何も見ていないかのようだ。
顔色には精気が満ちている。だが、どこか儚げであった。
生きていてながら死んでいる。所謂生ける屍といったところだ。
「アンリエッタ…。」
口から漏れたその言葉は彼女に届くことはなかった。
スネークの朝は早い。決して老人だから早く起きるというわけではない。
使い魔としての仕事と、訓練のために早く起きる必要があるからだ。
日が昇り始めたころに藁束で目を覚ますスネーク。
今来ているのはマルトーから譲ってもらった寝巻き。
枕元でくるくる回っているアイテムボックスを引っ掴み、衝立の裏へ直行。
シュル シュルシュルシュル ジー
一瞬で着替えが完了した。
テーブルの上に置かれた長く青いバンダナを頭に締める。
やはりこれがないと締まらん。
「まだわがまま姫はお休み中か。」
わかってはいたが口にしてみる。
少しルイズの眉間にしわがよった。夢見が悪くなりますように、と呪いをかけておく。
まず行うのは洗濯。
シエスタに教えてもらった場所で選択を行う。
時々ここでシエスタに出会うこともあるのだが、今日は会うことは無かった。
少しがっかりする。
洗濯を終えて部屋に戻る。
そろそろルイズを起こす時間だ。
さて、どうやって起こすか…決めたぞ。
「ルイズ、朝だ。おきろ。」
「…う~ん、うるさい~。」
「朝飯、持ってきてやったぞ。」
もちろん嘘だ。
「めにゅーは~?」
「オットンガエルの姿焼きだ。ほら、いいにおいだろう?」
ガバッ!とルイズが跳ね起きた。作戦通り、効果覿面。
「ああああ、あんたね!なんて物を朝食に持ってくるのよ!
そんなものを主人に食べさせようなんて使い魔失格よ!
いや、変態だわ!変態!ド変態!変態オヤジ!」
ルイズが目をさましてわめき散らす。
朝から元気な奴だ。
「おはよう、お嬢さん。今日も元気だな。」
「おはよう、娘っ子。今日もいい天気だぜ。」
壁に立てかけられたデルフもカタカタと体を震わせて笑っている。
ようやくだまされたことに気が付いたらしい。
だんだん顔に血が上っていく。まずい、と気が付いたときは既に手遅れで、
ルイズは杖を振り下ろしながら怒鳴っていた。
「ここここ、この馬鹿蛇ーーーー!!!!」
スネークとデルフが強烈な爆発を食らって、今日も騒がしく一日が始まる。
「まったく、最悪の朝だわ。」
「こっちも酷い朝だ。おかげで体中痛いぞ。」
「そうだそうだ。さすがの俺ですらばらばらになるかと思ったぜ。」
デルフがスネークに同意して囃し立てる。
しかし、そんな言葉には耳も貸さずに、すたすたとスネークに背を向けて歩くルイズ。
「自業自得。主をバカにする使い魔には朝ごはんをあげないわよ?」
少しやりすぎた、と反省する。
だが、ルイズがそれほど本気で怒っていないのがなぜかわかった。
ようやくこの娘の扱いに慣れてきたということだろうか?
食堂に到着し、いつもどおりに粗末な食事が出されるのを待つ。
どうせこの後厨房に行くのだから、ここの食事など大して興味は無い。
ほとんど今日のメニューの確認程度にしか興味を持っていない。
だが、今日はどうしたことか椅子に座るように言われたのだ。
「…オットンガエルがそんなに効いたのか?」
「その名前を出さないで。いやなら地べたに座りなさい。」
「いや、座らせてもらおう。」
ルイズの隣の席に座る。
料理も前にあるものを食べていいらしい。
いったいどういう風の吹き回しだ?と少し警戒したが、すぐにやめて目の前の料理に集中することにした。
そんな気まぐれだってあるだろう。
その程度に考えていたのだ。
だが、そんなスネークを快く思わない人もいる。
もともとこの席だった生徒―マリコルヌだ。
精一杯の虚勢を張ってスネークに文句を言う。
「お、おい使い魔!そこは僕の席だ!さっさとどけ!」
ため息をつく。また貴族貴族ってそんな話か。
まあ、彼の言うことは正論だし、間違っているのは明らかにこっちだ。
別に貴族だと主張しなくてもこの席くらい空ける。
立ち上がって椅子を取りにいこうとするが、腰に鈍く重い痛みが走る。
「…。」
痛みに耐えかねて、上げた腰を思わず下ろしてしまった。
その表情には鬼気迫るものがあったのだが、それをマリコルヌはスネークが怒っていると思ったらしい。
マリコルヌの体が強張る。
その瞬間を見逃さず、ルイズがマリコルヌに文句を言う。
「あんたが椅子を持ってきなさいよ。」
「貴族が椅子をとりに行って、使い魔が椅子に座る?そ、そんな馬鹿な法は無い!」
「スネーク、やっていいわよ。」
それだけ命じて顔を正面に戻すルイズ。
俺の平和的な和解案はルイズには聞き入れてもらえるだろうか。
「若い者はすぐに武力で解決しようとする。
ルイズ、お前に必要なものは穏健さだ。」
もう腰は痛まない。一体なんだったんだ?
ルイズの命令を無視して椅子を取りに行った。
後ろでくすくす笑い声が聞こえる。
見なくてもわかる。今頃ルイズは真っ赤だろう。
すれ違ったマリコルヌが安堵の溜息をついた。
なんとか平和的に終わって良かった。
俺がルイズの怒りを買って朝飯を抜かれた事を除けば、平和に朝食は終わった。
ルイズ曰く、「ご老人に朝からこんな塩辛い食事をとらせるわけにはいかない。」だそうだ。
俺はまだそんなに年寄りじゃあない。
当初の予定通りに厨房で朝食を終え、装備をすべて装備して外へ出る。
今日もトレーニングを欠かすことはできない。
フル装備で学院の周りを走りこむ。
下半身には持久力をつける必要があるためだ。
その後は上半身の筋力トレーニング。
上半身には瞬発力をつける。
「頑張ってください♪」
背中の上からシエスタのエールが聞こえる。
そう、こうして背中に乗ってもらい、腕立て伏せだ。
いつもこうしているわけではないが、今日は暇をもてあましているらしく、トレーニングに付き合ってもらっていた。
なかなかどうして気分が良い。
背中のやわらかい感触を楽しみながらの腕立てなら何時間でも出来そうな気がする。
むしろ、何時間でも楽しみたい。素直にそう思う。
「すごいですね。力持ちです。」
「軍人は、力が、命だからな。」
腕立てをとめずに答える。
「スネークさんは軍人なんですよね?」
「そう考えてもらって、構わない。」
そろそろ400の壁が見えてきた。
それと同時に腕がしびれてくる。
さあて、シエスタの前で無様な姿を見せたくはないものだ。
500までは持ってもらいたいものだ。
この老体め、少しは根性見せろ。
「大変な職業ですね。」
「怖く、ないのか?」
「戦争は怖いです。大嫌いです。
…でも、スネークさんは怖くありません。」
シエスタがころころと笑う。
「どうして?」
「だってあんなにおいしそうにご飯食べてくれる人ですもの。
悪い人なわけないじゃないですか。」
そこまで言われると返す言葉がない。
「そんなに信用しないでくれ。」
「うふふ。ほら、やっぱり良い人です。」
頭を上からなでられた。
今、俺が弱いのは「気の強い女性」ではなく「女性」全般、という事を悟った。
午後はルイズに捕まってしまい、授業に参加させられるスネーク。
魔法について知っておくのは世界について知る事になるから無駄とは思わないのだが、
なにせ魔法については基本の「き」の字すら知らないのだ。
いくらIQ180の天才スネークであっても理解など出来るはずがない。
色々ルイズに質問すれば迷惑がかかるのもわかるし、黙っているほかないのが常だった。
ただし、この人の授業は別だった。
「さて、皆さん!楽しい授業の時間です!」
ぴかりと頭と顔を輝かせるコルベール。
彼は授業が好きで好きでたまらないのだ。
なにせ合法的に給料を貰いながら自分の研究について話せるのだから。
だが、生徒は誰もまじめに聞いていない。
それでもいい。話しているだけでも心が躍るのだ。
いつもこの授業だけはスネークがついていく事が出来た。
彼の授業はスネークの言葉で表すなら「科学」だ。
ふと、かつての友人を思い出す。
ずいぶんと長くここにいるな…。奴は今頃何をしているだろうか?
自分を助けようと必死になっているに違いない。
…救出をあきらめてジャパニメーションなんて見ていないだろうか。
そういえば、この前何かジャパニメーションを見ていたな。
珍しくロボット物ではなかった。
なんといったかな…確か、ニッポンの普通の男子高校生が魔法使いの世界に召喚されて、
魔法使い達と協力して巨大な敵を倒していくと言うファンタジーな話だったか。
…どっかで聞いたような話だ。
そんな記憶に思いをはせた後、今日の授業に耳を傾ける。
今日コルベールが持ち出したのは奇妙な筒。
筒の上にはさらに金属のパイプが伸びている。
パイプはふいごのようなものにつながり、筒の頂にはクランクがついている。
そしてそれは円筒の脇に立てられた車輪につながっていた。
そしてさらにその車輪はギアを通して箱につながっている。
いったい何なのやら。
「それは何ですか、ミスタ・コルベール?」
生徒の一人が質問する。
コルベールは待ってました!といわんばかりだ。
「誰か、この私に『火』系統の特徴を開帳してくれないかね?」
もったいぶるな!といつだか、あの友人に言った事を思い出す。
あの時と同じく言ってやりたい衝動に多少駆られたが、キュルケの方を見ることにした。
爪を磨いている。
元の世界には授業中に化粧をする女子高生もいるのだから大して驚きもしないが、どこも同じだなと思う。
まったく若いもんは。
「情熱と破壊ですわ。」
そっけなく答える。
彼女はどうやらこの授業には価値を見出せないらしい。
授業に出ているだけまだまし、と思えるような態度だ。
だが彼はそんなこと意には介さず、授業を続けた。
「そうとも!だが、君たち、その火系統が破壊だけでは寂しいとは思わないかね?
私は常日頃から、『火』を戦い以外に活用する術を探求してきたのだ。」
「トリステインの貴族は頭が『火』の熱でやられているみたいですわね?」
「きっつい冗談だが、私はすこぶる正常さ!」
コルベールは既に自分のペースで授業を進めている。
そこにちょっとしたキュルケの皮肉が入ったところで、そのペースが乱されるわけがなかった。
そこまで話し終えて、ようやく発明品の説明に入った。
ふいごを踏んで油を気化させて火をつける。
その圧力でクランクを動かし、車輪を回転させる。
するとギアを解して箱から蛇がぴょこぴょこと顔を出した。
―空気が凍った
「これは一体?」
「これこそ、『愉快な蛇くん』さ!面白いだろう?」
隣でルイズが盛大に吹いた。
キュルケとギーシュがスネークを見ながら笑いをこらえている。
タバサですらスネークを見つめていた。
教室中の目がスネークを見ていた。
だが、そんなことより目の前のもののほうがスネークの心をつかんでいた。
間違いない。どこからどう見ても『エンジン』だ。
これを自分で考案したと言うのだろうか?だとしたらとんでもない天才だ。
「ミスタ・コルベール。」
たまらず手を上げていた。
これでこの教室のすべての目が俺に向いていることになる。
「なにかね?」
「それは自分で考えたのか?」
「もちろんだが?」
何を言おうとしているかわからないようだ。
「あんた天才だ。たいしたもんだよ。」
「はて?」
「そいつの発展型は俺の故郷で動力として使われていた。
そいつの力は折り紙つきだ。それをたった一人で考え出したとはたいした科学者だ。」
その言葉を聴いてまるで子供のような顔をするコルベール。
スネークは、大人でもこんな顔ができるのだな、と少し羨んだ。
そんな風に考えていたら、いつの間にか手を握られていた。
「もっと詳しく話を聞かせてくれ!授業は自習にします!」
「ちょ、ま、待て―」
言うが早いか、コルベールは火のような速さで研究室までスネークを拉致していく。
教室にはスネークの悲しい悲鳴が響いていた。
「俺はあんたの知っていること以上の事はわからない。」
知らないと言うのは真実だ。スネークは技術者ではないのだから。
構造については何をを質問されても、スネークはそれ以外答えることができなかった。
残念だがコルベールに話すことは何もなかった。
「そうか…残念だよ。」
「ああ。力になれなくてすまない。」
本当に残念そうな顔だ。
少し心が痛む。
「東か…。どんなところだね?」
コルベールの言葉で、スネークはしばらく帰っていない故郷に思いをはせる。…いや、故郷などなかったか。
自分が帰る場所はどこだろうか?
硝煙と血、反吐、そして腐臭の交じり合う不快な、あの世界のどこにでもあるあの場所が思い浮かんだ。
自分は所詮あそこに縛られる身。あの世界にいる限り、それから逃れることはできない。
この世界にいるとそれを少しだけ忘れることができる。
だからこそ、ここでは戦いは避けたいとココロのそこから願う。
「どうかしたかね?」
「いや…、なんでもない。」
「そうか。」
スネークの表情を見て、コルベールは何かを感じ取ったようだ。
沈黙が部屋に満ちる。
「…俺のいたところもここと同じだ。
人々が生き、死んで、愛し合い、殺しあう。
違うところと言えば魔法がなく、科学技術が発展しているくらいだ。」
お互いに人の作り出した恐ろしい業を相手にしてきた。
そのことは言葉を介さずとも、お互いに感じ取ることができた。
「…いろいろ聞いてすまなかったね。」
「いや、また何かあったら伝える。」
「助かるよ。いつでもきてくれ。」
すこしコルベールに対する印象が変わった日であった。
コルベールから解放されて部屋に戻る。
装備品のかさばり、重いものを装備からはずす。
フル装備でいる必要はあまり無い。ただ重いだけだ。
「おい、相棒。俺まで置いていかないでくれや。」
「…重いんだが。」
「何千年にもわたる歴史の重ささね。」
仕方なくデルフを背負いなおし、図書室へ向かう。
情報は武器になる。元の世界に帰る為にも情報は必要だ。
図書室の本なら何かつかめるかもしれないと踏んだ。
だが、司書が簡単に通してくれるとも思えない。
どうしたものか、とダンボールを見つめるスネーク。
進入経路を考えてみたが、どうにも少し難しい。
不可能ではないがやりたくない。どうして任務中でもないのにかくれんぼをしなきゃならんのか。
ふと、隣の人影に気がつく。タバサだ。
「…?」
小首をかしげるしぐさがマッチしている。
少し癒された。女の子と言うものはこう、おしとやかであって欲しいものだ。
どうしたの?と聞いているのだろう。
「あ、いや。本が読みたくてな。」
「どんな?」
「ここの地理や歴史、特殊な兵器などについて知りたい。」
「待ってて。」
そういってタバサが図書室へ向かった。
数分後ふらふらになるほど重そうな本を持ってタバサが戻ってきた。
「本。」
「ありがとう。」
「いい。」
持ってきてもらった本を早速開く。
「…。」
いったいなんだ?
文字がぼやける。
少し目をこする。
遠近を調節してみる。
何とか見えるようになった。…老眼だろうか?
いやいやまだそんな歳じゃない筈だが…。
「…どう?」
「…持ってきてもらってすまないんだが、読めない。」
今度は言語的な意味で、だ。
元の世界なら六ヶ国語に精通、さらにサル語も理解できるのだが、
ハルケギニア語は見るのも初めて。当然、理解できない。
ちょっとだけタバサがあきれる。
「…意外。」
閉口せざるをえない。
「教える。」
「いいのか?」
こくんと頷くタバサ。今後のためにも覚えておきたい。
「負担にならないならよろしく頼む。」
その日からタバサのハルケギニア語レッスンが始まった。
タバサの教え方は見事なものだった。
一方タバサもスネークの語学学習能力に驚愕していた。
さすがに六ヶ国語も話せると習得も早い。
だが、それ以外にも理由があった。
「文字というより、何か別のものとして解釈しているみたいだ。気味が悪い。」
露骨にいやそうな顔をするスネーク。
今まで努力で数々の言語を学んだ彼にとってこれは面白くない。
今までの努力を無かったことにされている気分だ。
「ルーン。」
「これが原因か?」
タバサはこくり、と頷いた。
ルーンによっては猫や犬がしゃべるというのだ。
これも似たようなものだろう、というのが二人の解釈だった。
「うんにゃ、そりゃ違うと思うぜ。」
デルフが肩越しから会話に割り込む。
「そのルーンにそんな力はねえよ。多分こっちに召喚されている最中になんかあったんだろ。」
「さすがは伝説の魔剣。で、いままで何で黙ってた?」
「忘れてただけだ。」
「次からは覚えていてくれ。」
後ろで騒がしい魔剣を黙らせ、また勉強に戻るスネーク。
ただ、そう簡単に物事はうまくいかない。
なぜだか文章は読めるのだが、いざ書こうと筆を執ると初級文法すら間違う始末だ。
「けけけ、いい親父がそんな初歩的な文法間違えるんじゃねえよ。」
「…無様。」
「初めての言語だ。間違わないわけないだろう。」
負けず嫌いのスネークはすかさず反論する。
「でも文章は読める。」
そう、読むのに苦労はしないのである。
少し寂しそうな顔をするタバサ。
「無様とまで言われて黙ってるわけないだろう。
完全にマスターしてやるさ。見てろ、すぐに使いこなしてやる。」
ムキになってそう言うスネークを見て、少しタバサの表情が輝いた…気がした。
さて、そろそろ日が傾いたころ。
今日の授業も全て終わった。
夕食までまだ時間がある。
中庭へでも行こうか、と考えていると、ふとスネークの姿が目に入った。
何か手元の本を読んでいるようだ。
少し気になり、中庭へ向かう。
「何してるの?」
声をかけられたことでようやくルイズの存在に気がついたようだ。
黙ってくわえていた煙草を携帯灰皿とか言うものにしまった。
そういえば煙草は体に悪い物だとスネークに聞いた。
体に悪いものを何故わざわざ吸うのか理解に苦しむ。
前にそういったら酷く哀しそうな顔をしていた。
あんまり見れない表情だったが、あまり見たくもない表情だった。
そんなに煙草が好きなのか。
そういえば彼は室内で煙草をすった事はなかった。
彼なりの気遣いだろうか。
「見ればわかるだろう?」
「あんた字、読めたのね?」
「どうだ、見直したか。」
「ばか。」
軽く小突いてルイズはストンと隣に腰を下ろした。
「…朝はごめんね。」
「気にしちゃいない。どうせ厨房に行っている。」
「あのメイドね。いつかお礼でも言いに行こうかしら。名前は?」
「シエスタだ。」
「覚えておくわ。」
そんなたわいもない話をして時間をつぶす。
夕日が西の空を紅く染める。
心地よい沈黙だ。風が頬をなぜる。
「スネーク。」
「なんだ。」
「私も、スネークみたくなれる?」
「俺みたいになるもんじゃないぞ。ろくな事がない。」
うはは、と笑いとばした。
私は結構本気なのに。
「ま、信じるものは自分で見つけろ。
どんなものを信じて、何を目指すかはルイズが決めることだ。」
ぽん、と頭の上に乗せられたものがスネークの大きな掌であったことに気がつくのに少し時間がかかった。
大きな掌―
なぜだかわからないが、ルイズの心は安心感に満ちていた。
きっと気のせい。
そう思うことにした。
使い魔にこんな気持ちを持つなんて何か癪だもの。
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