「ゼロの使い悪魔」(2008/08/17 (日) 13:11:58) の最新版変更点
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使い魔召喚の儀式の日、ルイズが召喚したのは1人の男だった。
ルイズとその友人達は聞いた事も無いような男の奇妙な本名よりも、悪魔を意味する男の故郷でのふたつ名“ディアボロス”の名で呼んだ。
“ディアボロス”は魔法を使いこなそうとするルイズの世話を、何くれとなく焼いていた。
なぜそこまでするのかというルイズの問いに、“ディアボロス”は自分も故郷では失敗を繰り返し挫折と転落を繰り返してきたのだと語った。
“ディアボロス”はルイズの姿から、自身が無くしていた希望を見たのかもしれなかった。
召喚から数日後、“ディアボロス”は些細な事からギーシュと決闘するはめになった。
“ディアボロス”はギーシュのワルキューレを見てもまったく動じる事無く、
「ブラム=ストーカー/モルフェウスといったところか……。まあこんな小僧、油断しなければ負けは無いな」
と笑みと共に謎の言葉を呟いたのみだった。
戦いは一方的の一言だった。
ワルキューレの攻撃は“ディアボロス”にはまったく通用しなかった。……いや、命中し手傷も受けるがそれが即座に完治してしまうのだ。
逆に“ディアボロス”は素手で次々ワルキューレを引き裂いていく。メイジ殺しなどというものではない、明らかな異能の力だった。
最後の一撃がそれをよりいっそう見せつける事となった。
1体のみ残ったワルキューレの不意打ちの斬撃が切り落とした“ディアボロス”の手首が、ギーシュのすぐ傍にまで飛んでいった。
片手を奪った事で一転優位に立ったと見たギーシュの降伏勧告に、“ディアボロス”が不敵な笑みで返した次の瞬間、
――ドッカアアン!
突然発生した爆発にギーシュは回避を考える間も無く吹き飛ばされた。ルイズも自分の魔法によらない正体不明の爆発に唖然としている。ただ1人“ディアボロス”のみが再生した手首で眼鏡を押し上げ勝者の笑みを浮かべていた。
結論から言えば、この爆発もまた“ディアボロス”の異能だった。不意打ちが回避しきれないと確信した彼はタイミングを合わせて自身の手首を外し、爆弾としてギーシュめがけて射出したのだ。
ルイズは自身の使い魔が持つ恐るべき異能の力に戦慄した。
そして程なくして、ルイズも“ディアボロス”の持つ異能の力を得る事となった。
学院の宝物庫を襲撃し、秘宝「賢者の石」を強奪した怪盗“土くれの”フーケ。
自身の命を惜しむ教師達に代わってフーケ討伐に向かったルイズ達は、首尾よく「賢者の石」を奪還したもののゴーレムによる急襲を受けた。
自らの誇りのためゴーレムに立ち向かったルイズは、ゴーレムによる一撃を受けて瀕死の重傷を負った。
“ディアボロス”は躊躇しなかった。故郷にいた時の冷酷だった自分とは別人のように涙し、彼女の生命を繋ぐために手段を選ばなかった。
自身と同じ異能者と化す、理性を失った獣と化す危険性を承知の上で彼女に2つの故郷の業を使った。
「同族食い」の名を持つ自身の血で回復力を高める業と、「賢者の石」。
その2つの力によってルイズは死の淵から復活した。――メイジとしての生を代償に異能者としての生を。
ルイズの異能もまた凄まじいものだった。杖の一振りで大地から蠢く砂の手が無数に伸びたかと思うと、一瞬のうちにゴーレムは指1本動かせない巨大な石像になりはてた。
しぶとくもフーケは抵抗を試みるも、“ディアボロス”怒りの一撃によって(そう、本当に腕の一振りで)両腕両脚を切断されて捕縛されたのだった。
レコン・キスタはその奇妙な2人の前に恐慌状態に陥っていた。
対抗可能な軍は現れず、侵攻するのみという時に先陣を切る竜騎兵隊の前に竜に乗った1組の男女。
「今すぐ撤退しろ。死にたくはないだろう」
男は恐怖の欠片も無く言い放った。
先頭の隊長が嘲笑しつつ2人と1匹に戦闘態勢を取った時、
「残念だわ」
竜の口から吐き出された砂嵐に覆い尽くされた視界、それが隊長の最後に見たものだった。
次の瞬間、隊長は竜もろとも石像と化して落下していった。
ホーキンスは胸騒ぎを感じていた。
人間はおろか竜をも石化させる吐息を吐く魔竜を使うメイジが相手と知り、本来占領した都市の警備や威嚇に使う兵を全部隊呼び寄せた7万の軍勢。
「将軍! 例のメイジと男が現れました! 魔竜はいません!」
「よし、一斉攻――うわあああっ!!」
その言葉をホーキンスは言い終える事ができなかった。
時間はわずかに遡る。
ルイズ・“ディアボロス”は、7万の大兵団のごく一部(それでも500は超えていたが)に完全包囲されていた。
「魔竜を呼ぶか? もっとも間に合わないだろうがな」
「間に合うわよ。しないけどね」
そう言い終えるか否かのうちに、ルイズの杖がみるみる太く長くなり、胸元の「賢者の石」も輝き始めた。
兵士達はそれに驚愕し、ルイズに恐るべき異能の力を振るう時間を与えてしまった。
「さようなら」
戦場の大地から砂の手が伸び、7万の兵士全てに襲いかかった。
7万人の悲鳴が止んだ時、大地には1人として倒れている者はいなかった。
しかし動いている者もルイズ達以外にはまたいなかった。7万の兵士は7万の石像にその姿を変えていたのだ。
戦場から去っていくルイズが作り上げた魔竜、その背でルイズ・“ディアボロス”は楽しげに会話をしていた。
「これからどうする、ルイズ?」
「そうね、命令で動かされるのには飽きたわ。しばらくどこかでこっそり動いて、伝説のメイジと使い魔として名前を轟かせるっていうのはどう?」
「悪くない。……それならふたつ名を考えなければな。もうお前は“ゼロ”ではないのだからな」
「そうね……、何かいい名前は無いかしら?」
「……“マスターレイス”。俺が故郷にいた頃所属していた組織で、指折りの強者に付けられるふたつ名だ」
「“マスターレイス”ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……、悪くないわね。それじゃ行きましょう、キョウジ」
「了解しました、“マスターレイス”」
使い魔召喚の儀式の日、ルイズが召喚したのは1人の男だった。
ルイズとその友人達は聞いた事も無いような男の奇妙な本名よりも、悪魔を意味する男の故郷でのふたつ名“ディアボロス”の名で呼んだ。
“ディアボロス”は魔法を使いこなそうとするルイズの世話を、何くれとなく焼いていた。
なぜそこまでするのかというルイズの問いに、“ディアボロス”は自分も故郷では失敗を繰り返し挫折と転落を繰り返してきたのだと語った。
“ディアボロス”はルイズの姿から、自身が無くしていた希望を見たのかもしれなかった。
召喚から数日後、“ディアボロス”は些細な事からギーシュと決闘するはめになった。
“ディアボロス”はギーシュのワルキューレを見てもまったく動じる事無く、
「ブラム=ストーカー/モルフェウスといったところか……。まあこんな小僧、油断しなければ負けは無いな」
と笑みと共に謎の言葉を呟いたのみだった。
戦いは一方的の一言だった。
ワルキューレの攻撃は“ディアボロス”にはまったく通用しなかった。……いや、命中し手傷も受けるがそれが即座に完治してしまうのだ。
逆に“ディアボロス”は素手で次々ワルキューレを引き裂いていく。メイジ殺しなどというものではない、明らかな異能の力だった。
最後の一撃がそれをよりいっそう見せつける事となった。
1体のみ残ったワルキューレの不意打ちの斬撃が切り落とした“ディアボロス”の手首が、ギーシュのすぐ傍にまで飛んでいった。
片手を奪った事で一転優位に立ったと見たギーシュの降伏勧告に、“ディアボロス”が不敵な笑みで返した次の瞬間、
――ドッカアアン!
突然発生した爆発にギーシュは回避を考える間も無く吹き飛ばされた。ルイズも自分の魔法によらない正体不明の爆発に唖然としている。ただ1人“ディアボロス”のみが再生した手首で眼鏡を押し上げ勝者の笑みを浮かべていた。
結論から言えば、この爆発もまた“ディアボロス”の異能だった。不意打ちが回避しきれないと確信した彼はタイミングを合わせて自身の手首を外し、爆弾としてギーシュめがけて射出したのだ。
ルイズは自身の使い魔が持つ恐るべき異能の力に戦慄した。
そして程なくして、ルイズも“ディアボロス”の持つ異能の力を得る事となった。
学院の宝物庫を襲撃し、秘宝「賢者の石」を強奪した怪盗“土くれの”フーケ。
自身の命を惜しむ教師達に代わってフーケ討伐に向かったルイズ達は、首尾よく「賢者の石」を奪還したもののゴーレムによる急襲を受けた。
自らの誇りのためゴーレムに立ち向かったルイズは、ゴーレムによる一撃を受けて瀕死の重傷を負った。
“ディアボロス”は躊躇しなかった。故郷にいた時の冷酷だった自分とは別人のように涙し、彼女の生命を繋ぐために手段を選ばなかった。
自身と同じ異能者と化す、理性を失った獣と化す危険性を承知の上で彼女に2つの故郷の業を使った。
「同族食い」の名を持つ自身の血で回復力を高める業と、「賢者の石」。
その2つの力によってルイズは死の淵から復活した。――メイジとしての生を代償に異能者としての生を。
ルイズの異能もまた凄まじいものだった。杖の一振りで大地から蠢く砂の手が無数に伸びたかと思うと、一瞬のうちにゴーレムは指1本動かせない巨大な石像になりはてた。
しぶとくもフーケは抵抗を試みるも、“ディアボロス”怒りの一撃によって(そう、本当に腕の一振りで)両腕両脚を切断されて捕縛されたのだった。
レコン・キスタはその奇妙な2人の前に恐慌状態に陥っていた。
対抗可能な軍は現れず、侵攻するのみという時に先陣を切る竜騎兵隊の前に竜に乗った1組の男女。
「今すぐ撤退しろ。死にたくはないだろう」
男は恐怖の欠片も無く言い放った。
先頭の隊長が嘲笑しつつ2人と1匹に戦闘態勢を取った時、
「残念だわ」
竜の口から吐き出された砂嵐に覆い尽くされた視界、それが隊長の最後に見たものだった。
次の瞬間、隊長は竜もろとも石像と化して落下していった。
ホーキンスは胸騒ぎを感じていた。
人間はおろか竜をも石化させる吐息を吐く魔竜を使うメイジが相手と知り、本来占領した都市の警備や威嚇に使う兵を全部隊呼び寄せた7万の軍勢。
「将軍! 例のメイジと男が現れました! 魔竜はいません!」
「よし、一斉攻――うわあああっ!!」
その言葉をホーキンスは言い終える事ができなかった。
時間はわずかに遡る。
ルイズ・“ディアボロス”は、7万の大兵団のごく一部(それでも500は超えていたが)に完全包囲されていた。
「魔竜を呼ぶか? もっとも間に合わないだろうがな」
「間に合うわよ。しないけどね」
そう言い終えるか否かのうちに、ルイズの杖がみるみる太く長くなり、胸元の「賢者の石」も輝き始めた。
兵士達はそれに驚愕し、ルイズに恐るべき異能の力を振るう時間を与えてしまった。
「さようなら」
戦場の大地から砂の手が伸び、7万の兵士全てに襲いかかった。
7万人の悲鳴が止んだ時、大地には1人として倒れている者はいなかった。
しかし動いている者もルイズ達以外にはまたいなかった。7万の兵士は7万の石像にその姿を変えていたのだ。
戦場から去っていくルイズが作り上げた魔竜、その背でルイズ・“ディアボロス”は楽しげに会話をしていた。
「これからどうする、ルイズ?」
「そうね、命令で動かされるのには飽きたわ。しばらくどこかでこっそり動いて、伝説のメイジと使い魔として名前を轟かせるっていうのはどう?」
「悪くない。……それならふたつ名を考えなければな。もうお前は“ゼロ”ではないのだからな」
「そうね……、何かいい名前は無いかしら?」
「……“マスターレイス”。俺が故郷にいた頃所属していた組織で、指折りの強者に付けられるふたつ名だ」
「“マスターレイス”ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……、悪くないわね。それじゃ行きましょう、キョウジ」
「了解しました、“マスターレイス”」
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