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「最『恐』の使い魔-02」(2008/07/31 (木) 23:13:05) の最新版変更点
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#navi(最『恐』の使い魔)
あらすじ
なんかこう、色々あってアンリエッタがトリステイン王国の女王に即位した。そしてル
イズは、その女王に謁見するために、王都トリスタニアへ使い魔の北野誠一郎と共に
赴くことになったのであるが…。
登場人物
ルイズ:貧乳、ツンデレの設定だが、なんか世話好きお姉さんっぽくなった。
北野誠一郎:ルイズの使い魔(サーヴァント)。天使のような心の優しさと悪魔のような
顔を持つ男。それゆえに、数々の誤解を受ける。
キュルケ:いつの間にかルイズの相談相手に。
エレオノール:ルイズの姉。性格は…。
プロローグ
ある晴れた日、トリステイン魔法学院の中庭。外に用意されたテーブルと椅子があり、
その椅子に座っていたルイズは悩んでいた。
「どうしたのルイズ。あんた、トリスタニアに行くんでしょう?ちゃんと準備しなくていいの?」
彼女に声をかけてきたのは同じ学年のキュルケである。
「あ、荷物の準備とかはできたんだけど…、彼が」
「ああ、北野くんのことね。それがどうしたの?」
「誠一郎をあのまま都に連れて行ったら、間違いなく大騒ぎになるわ」
「そうねえ…」
北野誠一郎。天使のように澄んだ心の持主である一方、その外見は悪魔の化身と思える
ほど怖かった。未だに彼のことを悪魔だと誤解している者は多い(ルイズの父親も含む)。
「あれ?どうしたのルイズちゃん」
噂をすれば影。件の北野誠一郎が現れた。
キュルケはじっと誠一郎の顔を見つめた後、急に立ち上がった。
「どうしたの?」とルイズ。
「ちょっと待ってて」そう言うとキュルケはどこかに走って行った。
しばらくすると、彼女は変な布のようなものを持ってくる。
「何それ」ルイズは聞く。
「ローブよローブ。修道士とかが着てるでしょう?あれでこうやって顔まで隠せば、目立たなく
て済むわ」
「なるほど!キュルケ頭いい」
「じゃあ早速来てみて、北野くん」
「え、はあ…」
誠一郎は、言われるままローブを身にまとい、フードをかぶった。
「…!」
こげ茶色のローブを着た北野誠一郎の姿は、まるで地獄からの使者のようでもあった。
筆者注:SIREN(サイレン)2の「闇人」を想像していただきたい。
※イメージ画像(グロ注意)
http://www.famitsu.com/game/coming/__icsFiles/artimage/2005/09/14/pc_fc_n_gs/104_43329_20050916siren2.jpg
最「恐」の使い魔2
~戦慄のトリスタニア~
トリステイン王国王都、トリスタニア。ルイズと誠一郎は、ある建物の前に立っていた。
「ルイズちゃん、ここはどこ?」
「こ…、ここは王立魔法研究所よ誠一郎」
「どうしたの?」
「ここに私の一番上の姉、エレオノール姉さまが働いているわ」
「へえ、ルイズちゃんのお姉さんってここにいるんだ」
「今日は、カトレア姉さまから手紙を預かっているから、それを届けに来たの」
「へえ、そうなんだ。でもなんでルイズちゃん元気ないの?お姉さんに会えるのに」
「それは…」
「きゃあああああああああ!!!!」
「きえええええええええええ!!!!」
研究所の建物中にエレオノールの甲高い声(と誠一郎の怪鳥のような声)が鳴り響いた。
「落ち着いてエレオノール姉さま!」
「安心なさいルイズ!こんな悪魔、私の魔法で木端微塵よ」
「やめてお姉さま!」
「大丈夫よルイズ!お姉ちゃんは半魚人と戦って勝ったこともあるんだから!」
「いや、だから違うから」
「離しなさいルイズ!危ないわよ」
ルイズは、姉エレオノールの体に抱きついて離さない。もしここで離したら、間違いなく
誠一郎に対して攻撃魔法を放つからだ。
「彼は私の使い魔なの!」
「なんですって!?アンタ悪魔を召喚してしまったの!?」
「違うから、彼はこんな見た目だけど、ちゃんとした人間なの」
「ウソおっしゃい!人間の使い魔なんて聞いたことないわ」
「確かにそうなんだけど落ち着いてお姉さま!」
周りの研究員や職員に取り押さえられたエレオノールは、ようやく落ち着きを取り戻した。
「なんでアタシが取り押さえられなきゃならないのよ!捕まるのはそっちでしょう」エレオノー
ルが誠一郎を指さす。ちなみに彼女の杖は没シュート。
とりあえず、研究所の応接室でエレオノールと向かい合う形でルイズと誠一郎は座った。
「まったく、ちびルイズは昔からとんでもないことばかりやらかして」
「お父様とけんかして庭に大穴をあけたお姉さまに言われたくありません」
「まあ、姉に向かってなんて口のきき方をするの」
「まあまあ、二人とも」
「あなたは黙ってて」
「はい…」
エレオノールの一喝に誠一郎も黙りこむ。
「何度もいいますけど、誠一郎は普通の人間なんです」
「だからなんで普通の人間が使い魔になるわけ?」
「そういう例はないかもしれませんが、使い魔召喚(サモン・ザ・サーヴァント)で召喚してし
まったのだから仕方ないでしょう?召喚にやり直しがきかないことくらいお姉さまだってわかっ
ているはずよ」
「随分とえらくなったようね、ルイズ。まともに魔法を成功させたこともないくせに」
「こ、これから練習していきます!」
「どうかしら…」
「まあまあ二人とも」
「あなた(誠一郎)は黙ってて!!」
今度は二人一斉に言われて、再び誠一郎は黙り込んだ。
「おやおや、また喧嘩ですの?」
不意にルイズにとって聞き覚えのある声が。
「お母様?」
「元気そうで何よりね、ルイズ。それにエレン(エレオノールのこと。家族や親しい友人
などはそう呼ぶ)」
「は…、はい」
先ほどまでの強気な態度が一転して緊張した面持ちとなったエレオノールの表情を見て、
ルイズは少し可笑しくなった。普段なら実の父親相手でも堂々と喧嘩をふっかけるエレ
オノールも、母親にだけは勝てなかった。
それもそのはず、母カリーヌ・デジレは落ち着いた外見とは裏腹に風系統のスクウェア
メイジであり、かつて「烈風のカリン」と呼ばれ恐れられていた。武闘派が多いラ・ヴァリ
エール家の中でもおそらく最強と思われる。
「エレン、あなたが今回で二十九回目の婚約に失敗したと聞いた時は心配しましたの」
「二十八回目ですわお母様」
そんなのどうでもいいじゃない、どうせ二十九回目も三十回目も同じ結果よ、とルイズは
思ったが間違っても声には出せない。
「この人がルイズちゃんのお母さん?」
「あらやだ、あなたがルイズの使い魔ね」
ルイズ母が珍しそうに誠一郎の顔を覗き込んだ。
「まあ、噂に違わぬ悪魔ね」
「お母様、彼はこんな顔をしておりますが悪魔では」
「冗談ですよルイズ。あなたは私の娘ですもの」
「お母様」
「並みの悪魔なんか召喚しないわよね。彼は大悪魔になる素質を持っているわ」
「全然わかってない…」
いや、むしろすべてわかった上でそんな事を言っているのかもしれない。母は父と違い色々
と裏がある人だ。エレオノールの性格が父親似でカトレアが母親似と言えば分ってもらえるだ
ろうか(筆者注:原作のカトレアやヴァリエール公爵ではない)。
「ところでお母様、お父様とカトレアはどうされました?」動揺から幾分立ち直ったエレオノール
が母に聞いた。
「ああ、主人は確か、年甲斐もなく庭で魔法を乱発したり剣を振り回したり崖から落ちそうになっ
たりしたせいで、持病の腰痛が悪化したために都に来ることができませんでしたの」
「…ルイズちゃん」
「大丈夫、誠一郎のせいじゃないわ」
ちょっと涙目になる誠一郎をルイズは慰めた。うん、確かに彼のせいではない。
「カトレアはどうなの」とエネオノール。
「あの子も持病の仮病が悪化してこられないようよ」
「仮病が、持病?」
「気にしないで誠一郎、いつものことよ」
頭の上に?マークを浮かべている誠一郎に、ルイズはそう声をかけた。
「それにしてもルイズ、しばらく見ないうちに大人っぽくなったわね」
「そんな、お母様」
「胸の方は全然だけど」
「大きなお世話ですわお母様」
「でも胸が大きい方が殿方は好きなんじゃなくて?」
「べ、別にそんなことはありません」
しかしその時、
「ルイズちゃんは今のままでも十分可愛いと思うよ」
「え…!」
唐突な誠一郎の言葉にルイズは赤面する。
「な、何よ誠一郎。こんなところで」
「ご、ごめん」
「別にいいのよ。ちょっと、嬉しかったし…」
「そう…、それはよかった」
「はいはい、昼間からラブコメは禁止ですのよ」
二人の雰囲気をぶち壊すようにカリーヌは手を叩いた。
「エレンは変わらないわね」
「悪かったですわね、お母様」
「あら、また身長伸びましたの?」
「伸びてませんから、もう」
ちなみにエレオノールの身長は北野誠一郎よりも高い。
「エレンはね、ちょうど十二、三歳の頃私に聞いてきたのよ。どうやったら私みたいに胸
が大きくなれるかって」
「ちょっと、お母様!」突然出てきた恥ずかしい過去話にエレオノールは身を乗り出した。
「だから私言ったの。牛乳を飲めばいいんじゃないかって。この子、根は素直だから私
の言うことに従って牛乳をたくさん飲んだのね。そしたら身長だけが伸びちゃって」
「お母様!」
顔を真赤にして起こるエレオノールを見て、母のカリーヌはケタケタと子供のように笑っ
た。
「そういえばルイズちゃんのお母さんって、お若いですね」不意に誠一郎はそんなことを
言った。
「え…?」
一瞬の沈黙。
「あらやだ!この使い魔くんったら、そんな本当のこと言って!やーだあ!」
「痛い痛い」
カリーヌは、先ほどよりも更に声を高めて、嬉しそうに誠一郎の肩を平手でバンバン叩く。
「いいこと、ルイズ。女はいつまでも女としての努力を怠らないことよ。そのためには気持
ちが大事なの」調子に乗ったカリーヌは、さらに語り始める。
「は、はい…」
「だからといって『永遠の十七歳』とか言うのは、ただの現実逃避よエレン」
「なんで私に言うんですかそれを!」
「エレンももう、三十二歳ですし…」
「二十七歳です!」
そんなこんなで、何をしに来たのかよくわからない母カリーヌは、どこかへ行ってしまい、
応接間には再びエレオノールとルイズ、そして誠一郎の三人が残った。
「使い魔のあなた。ちょっとお母様に気に入られたくらいで調子に乗らないで。わたくしは
あなたをまだ認めたわけではありませんからね」
「そんな、お姉さま」ルイズは反論するも、エレオノールは頑な態度を崩さなかった。
「我がヴァリエール家にふさわしい使い魔というものがあるはずです。このような悪魔みた
いな使い魔が召喚されたとあっては、一族の名誉にかかわります」
「見た目だけでなく、ちゃんと中身も見てあげてください」
「見るまでもないわ」
「お姉さま!」
「なによ」
「そうやって外見ばかり気にしているから、今までも殿方に嫌われてきたのではないですか」
「ルイズ、あなた…!」
ルイズの言葉にカッとなったエレオノールは、右手を振り上げた。
平手の乾いた音が部屋に鳴り響く。しかし、ルイズの頬には痛みはなかった。
「あ…」
「誠一郎!」
誠一郎がルイズの前に立って、彼女の代わりにエレオノールに平手打ちをされたのだ。
誠一郎は、キッとエレオノールを睨むと、懐から何かを取り出した。
「待って誠一郎」ルイズはとっさに誠一郎の服をつかんだ。
「ひっ!」思わず目を閉じるエネオノール。
しかし誠一郎の出した物は、ひとつのハンカチであった。
「な、なに…?」
「涙、拭いてください」
「え…」
ルイズがよく見ると、エレオノールの目に大粒の涙がこぼれているのがはっきりと見えた。
あの気丈な姉が泣いている。それはルイズにとってはじめての光景でもあった。
エレオノールのは誠一郎からハンカチを受け取り、それで涙をぬぐった。
「あなた、名前は」涙をふき終わると、彼女は誠一郎をまっすぐ見つめてそう聞いてきた。
「北野、誠一郎です…」
「そう、わかったわ。誠一郎、このハンカチーフは洗って返しますから」
「いや、いいですよそんなの」
「いいえ、そうはいきません。あなた達はこれから用があるのでしょう?それが終わったら、
また私のところへ来なさい。その時にお返しします。そして…」
「へ…?」
「その時は食事くらいは…、御馳走しますわ…」
「お姉さま?」ルイズは、不思議そうな顔をしてエレオノールの表情を覗き込む。
「か、勘違いしないでくれます?わたくしはただ、叩いてしまったお詫びをしたいだけですの。
まだ認めたわけではありませんからね!」
「わかりました」
そんなエレオノールを見て、誠一郎は笑顔で答えた。
エピローグ
その日の午後、都ではアンリエッタの女王即位を記念したパレードが行われていた。
「見て、誠一郎。もうすぐ女王陛下がまいられるわ」
「楽しみだね、ルイズちゃん」
たくさんの人混みの中でパレードの様子を見つめる二人。しかし誠一郎は、迷子になった子供
を発見したようだ。
「あ、ダメよ誠一郎!」ルイズがそう言って止めようとしたが、親切な彼の動きは止められなかった。
「うえええええん」
「大丈夫かい?どうしたの」
「パパとママが…」
誠一郎の顔を間近で見た子供は一瞬息をのんだ。
「どうしたの?」
「うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
子供の叫び声に、近くで警備にあたっていた兵士たちが集まってきた。
「怪しいやつだ!怪しいやつがいるぞ!」
「え?え?」
「こっちへ来い!悪魔か」
「いや、魔物じゃないか!」
「ちょっと待ってください!彼は違います!普通の人間なんですううう!!」
誠一郎が捕まり、誤解が解けるまでには夜までかかってしまい、その日のうちに女王に謁見する
ことはできなかったようである。
おまけ
深夜、エレオノールは自宅の鏡の前にいた。
「…」
無言で鏡を見つめる彼女。そして次の瞬間、表情を変えて言い放った。
「私エレオノール、十七歳です(はぁと)」
…沈黙。
「ふっ、私もまだまだいけるわね」そう言うと、部屋の中には怪しい笑い声が静かに響く
のであった。
おしまい
#navi(最『恐』の使い魔)
#navi(最『恐』の使い魔)
あらすじ
なんかこう、色々あってアンリエッタがトリステイン王国の女王に即位した。そしてル
イズは、その女王に謁見するために、王都トリスタニアへ使い魔の北野誠一郎と共に
赴くことになったのであるが…。
登場人物
ルイズ:貧乳、ツンデレの設定だが、なんか世話好きお姉さんっぽくなった。
北野誠一郎:ルイズの使い魔(サーヴァント)。天使のような心の優しさと悪魔のような
顔を持つ男。それゆえに、数々の誤解を受ける。
キュルケ:いつの間にかルイズの相談相手に。
エレオノール:ルイズの姉。性格は…。
プロローグ
ある晴れた日、トリステイン魔法学院の中庭。外に用意されたテーブルと椅子があり、
その椅子に座っていたルイズは悩んでいた。
「どうしたのルイズ。あんた、トリスタニアに行くんでしょう?ちゃんと準備しなくていいの?」
彼女に声をかけてきたのは同じ学年のキュルケである。
「あ、荷物の準備とかはできたんだけど…、彼が」
「ああ、北野くんのことね。それがどうしたの?」
「誠一郎をあのまま都に連れて行ったら、間違いなく大騒ぎになるわ」
「そうねえ…」
北野誠一郎。天使のように澄んだ心の持主である一方、その外見は悪魔の化身と思える
ほど怖かった。未だに彼のことを悪魔だと誤解している者は多い(ルイズの父親も含む)。
「あれ?どうしたのルイズちゃん」
噂をすれば影。件の北野誠一郎が現れた。
キュルケはじっと誠一郎の顔を見つめた後、急に立ち上がった。
「どうしたの?」とルイズ。
「ちょっと待ってて」そう言うとキュルケはどこかに走って行った。
しばらくすると、彼女は変な布のようなものを持ってくる。
「何それ」ルイズは聞く。
「ローブよローブ。修道士とかが着てるでしょう?あれでこうやって顔まで隠せば、目立たなく
て済むわ」
「なるほど!キュルケ頭いい」
「じゃあ早速来てみて、北野くん」
「え、はあ…」
誠一郎は、言われるままローブを身にまとい、フードをかぶった。
「…!」
こげ茶色のローブを着た北野誠一郎の姿は、まるで地獄からの使者のようでもあった。
筆者注:SIREN(サイレン)2の「闇人」を想像していただきたい。
※イメージ画像(グロ注意)
ttp://www.famitsu.com/game/coming/__icsFiles/artimage/2005/09/14/pc_fc_n_gs/104_43329_20050916siren2.jpg
最「恐」の使い魔2
~戦慄のトリスタニア~
トリステイン王国王都、トリスタニア。ルイズと誠一郎は、ある建物の前に立っていた。
「ルイズちゃん、ここはどこ?」
「こ…、ここは王立魔法研究所よ誠一郎」
「どうしたの?」
「ここに私の一番上の姉、エレオノール姉さまが働いているわ」
「へえ、ルイズちゃんのお姉さんってここにいるんだ」
「今日は、カトレア姉さまから手紙を預かっているから、それを届けに来たの」
「へえ、そうなんだ。でもなんでルイズちゃん元気ないの?お姉さんに会えるのに」
「それは…」
「きゃあああああああああ!!!!」
「きえええええええええええ!!!!」
研究所の建物中にエレオノールの甲高い声(と誠一郎の怪鳥のような声)が鳴り響いた。
「落ち着いてエレオノール姉さま!」
「安心なさいルイズ!こんな悪魔、私の魔法で木端微塵よ」
「やめてお姉さま!」
「大丈夫よルイズ!お姉ちゃんは半魚人と戦って勝ったこともあるんだから!」
「いや、だから違うから」
「離しなさいルイズ!危ないわよ」
ルイズは、姉エレオノールの体に抱きついて離さない。もしここで離したら、間違いなく
誠一郎に対して攻撃魔法を放つからだ。
「彼は私の使い魔なの!」
「なんですって!?アンタ悪魔を召喚してしまったの!?」
「違うから、彼はこんな見た目だけど、ちゃんとした人間なの」
「ウソおっしゃい!人間の使い魔なんて聞いたことないわ」
「確かにそうなんだけど落ち着いてお姉さま!」
周りの研究員や職員に取り押さえられたエレオノールは、ようやく落ち着きを取り戻した。
「なんでアタシが取り押さえられなきゃならないのよ!捕まるのはそっちでしょう」エレオノー
ルが誠一郎を指さす。ちなみに彼女の杖は没シュート。
とりあえず、研究所の応接室でエレオノールと向かい合う形でルイズと誠一郎は座った。
「まったく、ちびルイズは昔からとんでもないことばかりやらかして」
「お父様とけんかして庭に大穴をあけたお姉さまに言われたくありません」
「まあ、姉に向かってなんて口のきき方をするの」
「まあまあ、二人とも」
「あなたは黙ってて」
「はい…」
エレオノールの一喝に誠一郎も黙りこむ。
「何度もいいますけど、誠一郎は普通の人間なんです」
「だからなんで普通の人間が使い魔になるわけ?」
「そういう例はないかもしれませんが、使い魔召喚(サモン・ザ・サーヴァント)で召喚してし
まったのだから仕方ないでしょう?召喚にやり直しがきかないことくらいお姉さまだってわかっ
ているはずよ」
「随分とえらくなったようね、ルイズ。まともに魔法を成功させたこともないくせに」
「こ、これから練習していきます!」
「どうかしら…」
「まあまあ二人とも」
「あなた(誠一郎)は黙ってて!!」
今度は二人一斉に言われて、再び誠一郎は黙り込んだ。
「おやおや、また喧嘩ですの?」
不意にルイズにとって聞き覚えのある声が。
「お母様?」
「元気そうで何よりね、ルイズ。それにエレン(エレオノールのこと。家族や親しい友人
などはそう呼ぶ)」
「は…、はい」
先ほどまでの強気な態度が一転して緊張した面持ちとなったエレオノールの表情を見て、
ルイズは少し可笑しくなった。普段なら実の父親相手でも堂々と喧嘩をふっかけるエレ
オノールも、母親にだけは勝てなかった。
それもそのはず、母カリーヌ・デジレは落ち着いた外見とは裏腹に風系統のスクウェア
メイジであり、かつて「烈風のカリン」と呼ばれ恐れられていた。武闘派が多いラ・ヴァリ
エール家の中でもおそらく最強と思われる。
「エレン、あなたが今回で二十九回目の婚約に失敗したと聞いた時は心配しましたの」
「二十八回目ですわお母様」
そんなのどうでもいいじゃない、どうせ二十九回目も三十回目も同じ結果よ、とルイズは
思ったが間違っても声には出せない。
「この人がルイズちゃんのお母さん?」
「あらやだ、あなたがルイズの使い魔ね」
ルイズ母が珍しそうに誠一郎の顔を覗き込んだ。
「まあ、噂に違わぬ悪魔ね」
「お母様、彼はこんな顔をしておりますが悪魔では」
「冗談ですよルイズ。あなたは私の娘ですもの」
「お母様」
「並みの悪魔なんか召喚しないわよね。彼は大悪魔になる素質を持っているわ」
「全然わかってない…」
いや、むしろすべてわかった上でそんな事を言っているのかもしれない。母は父と違い色々
と裏がある人だ。エレオノールの性格が父親似でカトレアが母親似と言えば分ってもらえるだ
ろうか(筆者注:原作のカトレアやヴァリエール公爵ではない)。
「ところでお母様、お父様とカトレアはどうされました?」動揺から幾分立ち直ったエレオノール
が母に聞いた。
「ああ、主人は確か、年甲斐もなく庭で魔法を乱発したり剣を振り回したり崖から落ちそうになっ
たりしたせいで、持病の腰痛が悪化したために都に来ることができませんでしたの」
「…ルイズちゃん」
「大丈夫、誠一郎のせいじゃないわ」
ちょっと涙目になる誠一郎をルイズは慰めた。うん、確かに彼のせいではない。
「カトレアはどうなの」とエネオノール。
「あの子も持病の仮病が悪化してこられないようよ」
「仮病が、持病?」
「気にしないで誠一郎、いつものことよ」
頭の上に?マークを浮かべている誠一郎に、ルイズはそう声をかけた。
「それにしてもルイズ、しばらく見ないうちに大人っぽくなったわね」
「そんな、お母様」
「胸の方は全然だけど」
「大きなお世話ですわお母様」
「でも胸が大きい方が殿方は好きなんじゃなくて?」
「べ、別にそんなことはありません」
しかしその時、
「ルイズちゃんは今のままでも十分可愛いと思うよ」
「え…!」
唐突な誠一郎の言葉にルイズは赤面する。
「な、何よ誠一郎。こんなところで」
「ご、ごめん」
「別にいいのよ。ちょっと、嬉しかったし…」
「そう…、それはよかった」
「はいはい、昼間からラブコメは禁止ですのよ」
二人の雰囲気をぶち壊すようにカリーヌは手を叩いた。
「エレンは変わらないわね」
「悪かったですわね、お母様」
「あら、また身長伸びましたの?」
「伸びてませんから、もう」
ちなみにエレオノールの身長は北野誠一郎よりも高い。
「エレンはね、ちょうど十二、三歳の頃私に聞いてきたのよ。どうやったら私みたいに胸
が大きくなれるかって」
「ちょっと、お母様!」突然出てきた恥ずかしい過去話にエレオノールは身を乗り出した。
「だから私言ったの。牛乳を飲めばいいんじゃないかって。この子、根は素直だから私
の言うことに従って牛乳をたくさん飲んだのね。そしたら身長だけが伸びちゃって」
「お母様!」
顔を真赤にして起こるエレオノールを見て、母のカリーヌはケタケタと子供のように笑っ
た。
「そういえばルイズちゃんのお母さんって、お若いですね」不意に誠一郎はそんなことを
言った。
「え…?」
一瞬の沈黙。
「あらやだ!この使い魔くんったら、そんな本当のこと言って!やーだあ!」
「痛い痛い」
カリーヌは、先ほどよりも更に声を高めて、嬉しそうに誠一郎の肩を平手でバンバン叩く。
「いいこと、ルイズ。女はいつまでも女としての努力を怠らないことよ。そのためには気持
ちが大事なの」調子に乗ったカリーヌは、さらに語り始める。
「は、はい…」
「だからといって『永遠の十七歳』とか言うのは、ただの現実逃避よエレン」
「なんで私に言うんですかそれを!」
「エレンももう、三十二歳ですし…」
「二十七歳です!」
そんなこんなで、何をしに来たのかよくわからない母カリーヌは、どこかへ行ってしまい、
応接間には再びエレオノールとルイズ、そして誠一郎の三人が残った。
「使い魔のあなた。ちょっとお母様に気に入られたくらいで調子に乗らないで。わたくしは
あなたをまだ認めたわけではありませんからね」
「そんな、お姉さま」ルイズは反論するも、エレオノールは頑な態度を崩さなかった。
「我がヴァリエール家にふさわしい使い魔というものがあるはずです。このような悪魔みた
いな使い魔が召喚されたとあっては、一族の名誉にかかわります」
「見た目だけでなく、ちゃんと中身も見てあげてください」
「見るまでもないわ」
「お姉さま!」
「なによ」
「そうやって外見ばかり気にしているから、今までも殿方に嫌われてきたのではないですか」
「ルイズ、あなた…!」
ルイズの言葉にカッとなったエレオノールは、右手を振り上げた。
平手の乾いた音が部屋に鳴り響く。しかし、ルイズの頬には痛みはなかった。
「あ…」
「誠一郎!」
誠一郎がルイズの前に立って、彼女の代わりにエレオノールに平手打ちをされたのだ。
誠一郎は、キッとエレオノールを睨むと、懐から何かを取り出した。
「待って誠一郎」ルイズはとっさに誠一郎の服をつかんだ。
「ひっ!」思わず目を閉じるエネオノール。
しかし誠一郎の出した物は、ひとつのハンカチであった。
「な、なに…?」
「涙、拭いてください」
「え…」
ルイズがよく見ると、エレオノールの目に大粒の涙がこぼれているのがはっきりと見えた。
あの気丈な姉が泣いている。それはルイズにとってはじめての光景でもあった。
エレオノールのは誠一郎からハンカチを受け取り、それで涙をぬぐった。
「あなた、名前は」涙をふき終わると、彼女は誠一郎をまっすぐ見つめてそう聞いてきた。
「北野、誠一郎です…」
「そう、わかったわ。誠一郎、このハンカチーフは洗って返しますから」
「いや、いいですよそんなの」
「いいえ、そうはいきません。あなた達はこれから用があるのでしょう?それが終わったら、
また私のところへ来なさい。その時にお返しします。そして…」
「へ…?」
「その時は食事くらいは…、御馳走しますわ…」
「お姉さま?」ルイズは、不思議そうな顔をしてエレオノールの表情を覗き込む。
「か、勘違いしないでくれます?わたくしはただ、叩いてしまったお詫びをしたいだけですの。
まだ認めたわけではありませんからね!」
「わかりました」
そんなエレオノールを見て、誠一郎は笑顔で答えた。
エピローグ
その日の午後、都ではアンリエッタの女王即位を記念したパレードが行われていた。
「見て、誠一郎。もうすぐ女王陛下がまいられるわ」
「楽しみだね、ルイズちゃん」
たくさんの人混みの中でパレードの様子を見つめる二人。しかし誠一郎は、迷子になった子供
を発見したようだ。
「あ、ダメよ誠一郎!」ルイズがそう言って止めようとしたが、親切な彼の動きは止められなかった。
「うえええええん」
「大丈夫かい?どうしたの」
「パパとママが…」
誠一郎の顔を間近で見た子供は一瞬息をのんだ。
「どうしたの?」
「うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
子供の叫び声に、近くで警備にあたっていた兵士たちが集まってきた。
「怪しいやつだ!怪しいやつがいるぞ!」
「え?え?」
「こっちへ来い!悪魔か」
「いや、魔物じゃないか!」
「ちょっと待ってください!彼は違います!普通の人間なんですううう!!」
誠一郎が捕まり、誤解が解けるまでには夜までかかってしまい、その日のうちに女王に謁見する
ことはできなかったようである。
おまけ
深夜、エレオノールは自宅の鏡の前にいた。
「…」
無言で鏡を見つめる彼女。そして次の瞬間、表情を変えて言い放った。
「私エレオノール、十七歳です(はぁと)」
…沈黙。
「ふっ、私もまだまだいけるわね」そう言うと、部屋の中には怪しい笑い声が静かに響く
のであった。
おしまい
#navi(最『恐』の使い魔)
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