「ゼロの女帝-09」(2008/08/02 (土) 20:29:11) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
#navi(ゼロの女帝)
&setpagename(ゼロの女帝 第十話)
「もうすぐラ・ロシェーヌね」
「思っていたより早く着いた」
「シルフィードもだけど、ワルド卿のグリフォンのおかげね。
あらどうされましたワルド卿?」
「い、いやちょっとね」
「まあまあワルドちゃんったら、まるで『初めてのデートの相手が待ち合わせに遅れてる』みたいよ」
「な、なにおおっしゃっているのかわかり・・・・・・」
「ワルドちゃんは男の子、しかもこの中で最年長なんだからどっしりと『俺に全て任せておけ』みたいに構えないと。
ましてルイズちゃんの前なんだから」
「どう考えてもワルド卿はヴァリエールにはもったいないわよねぇ」
などとヨタ話をしながら飛び行く二匹。
そして岩陰からそれを見送るのは、珍妙な格好をした一人の男。
トリステインでは見かけない衣装だ。
否、ハルケギニア全土を見てもこのような服を着た者はいないだろう。
「う・・・・・・うぐ、テメェ」
げしっ
「黙ってろ。第一お前、本来なら平身低頭して俺に感謝すべきなんだぞ」
「な・・・・にぃ?」
「今ここでおれにやられてなければお前ら、みなあのクソババァに係わっちまう所だったんだからな」
『お疲れ様、兼光 帰還して頂戴』
「なあ水穂、本当に水鏡と俺たち、瀬戸様放って帰還していいのか?」
『あら、心配?』
「ああ、心配だね。あのクソババァが好き勝手するかと思うと、この惑星、ハルケギニアだったか?
戻ってきた時には存在してないなんて事になりかねん」
『しかたないでしょ、瀬戸様がしばらくいなくなってるって事で海賊やら天木の舟参やらがコソコソ動き始めてるし
瀬戸様のアストラルコピーで睨み効かせないと』
「お前も西南くんに会いたいし、てか?」
『な、な、な、何言ってるのよ!そんな事あるわけないでしょ!
とりあえず樹雷に帰還するわよ!』
「ヘイヘイ」
「えーみなさま。と・いうワケでラ・ロシェーヌに早く着いたワレワレでありますが」
「誰に説明してるんだい?」
「誰でもいいでしょ 一番早い便が明日の朝なので一夜の宿を取ったら、そこを謎な傭兵のクズどもに
襲撃されているという状況なのです」
「で、ワルドちゃんはどうしたらいいと思う?」
瀬戸の問いに、少し考えるワルド。
「このような任務は、半数が目的地に辿り着ければ、成功とされる。
正式な使いであるルイズと、護衛としてこのわたしが裏口から行こう。
皆は連中を食い止めていて欲しい」
「はい三十点ね、失格。
裏口に伏兵が待ち構えてたらどうするの?
彼我の戦力差を認識していない状況でいたずらに分かれるのは各個撃破されるだけよ」
「ではどうするべきと?」
できればここで余計な『護衛』と使い魔を排除、とまで行かなくとも別れておきたかったのだが。
「ここは正面突破ね」
「正面突破なんて無謀です」
「大丈夫よギーシュちゃん、心配してくれてありがと。
でもまあ時間も無いし。
みんな後から来てね」
いうなり立ち上がる瀬戸。
そのまま無造作にすたすたと外に歩いていく。
矢は勿論、燃え上がる炎はおろかメイジくずれの放つ風の牙すら彼女を傷付ける事無く自ら身を逸らしていく。
「やれやれ、『死を覚悟すれは鬼神も道を譲る』といったところかね」
「あら何を言ってるのかしらギーシュ。
セトは『死を覚悟』なんかしてないわ。
ただ普通に歩いてるだけ。
それだけで火も風もセトを恐れて逃げているのよ」
そういったルイズは、自らの使い魔の後について行く。
それはギーシュも、キュルケもタバサも同様であった。
「な・・・・・なにが・・・・・・・」
仕方なく最後尾をついていきながら、ワルドは呆然としていた。
何故あの使い魔はあそこまで自信満々なのだろう。
そしてルイズやこの物達は何を考えてここまで平民をごときを信用できるのだ。
「それはですね、ワルド卿。
彼女に教えられたからです。
魔法など宴会芸のひとつに過ぎないのだと」
これはいけない。
決定的な破滅で心が壊れかけた状態のルイズ。
そんな彼女に手を差し伸べる事で彼女の信頼を勝ち得る予定だったのに。
その為に周囲の者を少しずつ排除していく段取りだったのに。
などと考えながら外に出たワルドは驚愕した。
あの命知らずの荒くれ傭兵どもが、怯え恐れ身を竦ませているではないか。
先頭の、ルイズの使い魔である平民がただ歩くだけで腰を抜かし、逃げ出してゆく。
一体何なのだ、ヤツは。
ヤツを殺さなければならない
ヤツの存在は自分達メイジの存在意義を危うくする
ヤツは『メイジとそれ以外』という始祖ブリミルによって定められたこの世界のありようを否定する
ヤツはどこかママににてるが、彼女を許しておいてはいけない
ヤツはボクがボクであることすら否定してしまう存在だ
ママ、ママ、ああママどうしたら良いと思う?助けてよママ
#navi(ゼロの女帝)
#navi(ゼロの女帝)
&setpagename(ゼロの女帝 第九話)
翌朝
アルビオンに出立する一行は、朝霧の中準備を整えていた。
「静かにしてね、シルフィード」「きゅい」
「保存食に、旅費に着替えに」
「ああ、ヴェルダンデ、なんて可愛いんだ僕の愛しいヴェルダンデ。
一緒にいこうね、君にとても珍しいものを見せてあげよう。
なんと浮かぶ大地なんだよ」
などとやっている一行の前に、一匹のグリフォンが舞い降りる。
「やあ、愛しいルイズ。久しぶりだね」
「貴方は・・・・・・・ワルド?」
キュピーン! キュルケの「いい男センサー」が発動する。
「アレは・・・・・・トリオステインの『ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド』ね。
爵位は子爵、トリステイン王国に3つある魔法衛士隊の1つ「グリフォン隊」の隊長にまで栄達し、マザリーニ枢機卿の
覚えもめでたい将来有望な殿方と聞くわ」
「えらく詳しいね」
「ゲルマニアは勿論トリステイン、ガリアロマリアまでいい男を漏れなく記した
『ハルケギニアナイスガイ辞典』から引用よ。
タバサ、貴方の国の男も載ってるわ。
例えば(パラパラ)コレね、『バッソ・カステルモール』 爵位は男爵。
かなりレベルの高い特殊な系統魔法を使いこなしオルレアン公にいまだ忠義を尽くす男」
「おいおい、それバレたらまずいんじゃないのかい」
「大丈夫。これがバレたら確かにこのカステルモールさん処刑だけど『いい男に不利益を与えない』
それがこの本を出版している『ハルケギニア淑女同盟』の心意気よ!」
「ちなみにボクはどう書いてあるんだい?
何で目をそらすのかな?」
「ワルド卿、なぜ貴方がここにいるのかしら?」
柔らかい目で、柔らかい口調で問いただす瀬戸。
そんな彼女にワルドは一通の書を差し出す。
「何々、『親愛なるルイズ。
勝手とは判っていますがこの作戦の成功度を上げるため、やはり本職の軍人を貴方達に同行させます。
聞けばワルド卿は貴方の婚約者なのだとか。
ならば情報の隠匿は勿論ですし信頼の置ける人物なのも間違い無いでしょう よく知らないけど
そういう訳で、我が愛しき親友ルイズへ アンリエッタ』ふむふむ
?どうしたのセト」
「あの姫様・・・・・・・・こんな作戦は情報の秘匿が大事だってのに。
まあ彼女なりの努力ってことで。
この程度ならフォロー出来るし」
「それじゃあ出発しようか」
それを合言葉に出立する一行。
ちなみにワルドのグリフォンにルイズと瀬戸が、タバサのシルフィードにキュルケとギーシュが相乗りする、という状況だ。
「おや、どうしたんだい愛しいルイズ」
「いや、なんか忘れてるような気がするんです」
「忘れ物かい?」
「いえ、着替えにアレにコレに姫様からの手紙に身分証明のための水のルビー。
何も忘れてないはずなんですが・・・・・・何か忘れてるような・・・・・・」
「まあナンだ、アレだよ。
ここらで足洗ってカタギになるってのも悪くないかもね。
スケベじじぃのセクハラ我慢すればあの子達に仕送りできる位の給金貰えるし。
『拾った孤児達に仕送りしてるんです」とか言いながら嘘泣きの涙一滴たらしゃ
もうちっと上げてくれっだろ」
「出るなり消されちまったり存在無視されたりした他所の俺に比べりゃマシだぁな。
この先ひょっとしたら出番あるかもしれねぇし」
駆けて行く彼女達を、窓からひっそり見つめるオールド・オスマンとマザリーニ枢機卿。
アンリエッタはお茶をすすりながら、その羽ばたきの音を聞いていた。
「あの娘ら大丈夫だろうか。 のうオスマン」
「大丈夫じゃよ枢機卿。
必ず使命を果たし、心身ともに一回りも二回りも成長して帰ってくるでしょうな」
「えらくかっておるな。
いってはナンだがたかが学生でしかないというのに」
「あの子らもだがそれ以上に、彼女を信頼しておるんじゃよ。
無限の可能性を秘めた、あの娘の傍に立つあの女性を」
「するとワシが同行させたワルド卿は無用だったか」
「・・・・・・・・・・・・無用程度ですめばよいのじゃが」
あの若き子爵の目の輝きに、言い知れぬ不安を感じるオスマンであった。
#navi(ゼロの女帝)
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: