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#navi(ゼロのロリカード)
シカゴタイプライターなどとニックネームがつけられるその連射音は独特だった。
ドラムマガジンが装着されたトンプソンM1928を、片手で振り回しトリガーを引く。
本来ならばストックを肩につけるか脇に抱えて撃つものであるが、吸血鬼の膂力ならば片手でもその反動を簡単に抑えきれる。
しかしトミーガンの.45ACP弾ではオーク鬼の分厚い皮と脂肪に覆われた筋肉の体には何発撃とうとも致命傷足りえない。
尤も目的は別のところにある、弾幕を張り怯ませて足止めさえ出来ればそれでよかった。
トミーガンをしまいつつアーカードは怯んだオーク鬼を無視して、自分に襲い掛からんとする正面のオーク鬼の水月に向かって右足で蹴りを放つ。
蹴りこんだ水月を踏み台にしてオーク鬼の肩に駆け上り、右膝をその顔面にぶち込む。
さらに後ろに倒れんとするオーク鬼に駄目押しの左肘を叩き込み、オーク鬼の頭蓋は完全に粉砕された。
次に銃弾に怯んだオーク鬼の方に向かって跳躍をする。右足を天高く振り上げ、全身の強靭なバネでもって振り下ろす。
怯んでいたオーク鬼の脳天に放たれた踵落としは一撃で頭の原型をなくすに至った。
アーカードは勢いを保ったまま、頭のなくなったオーク鬼の体を蹴って再度跳躍し、回転しながら森の方に着地する。
アーカードは着地箇所の手近にある木の根元を蹴り抜く、次に倒れてきた木の先端と後端に素早く手刀を入れた。
数秒で出来上がった丸太の切断面は、まるで肉厚の大斧で一刀両断したかのように綺麗であった。
アーカードが丸太を握る。すると左手の『ガンダールヴ』のルーンが光り輝き、アーカードの驚異的な身体能力をさらにスペックアップさせた。
アーカードは丸太をくるくると回しながら、オーク鬼に向かって再び突撃する。
一足飛びに跳躍し、丸太の先端を顔面に叩き付け、そのまま押し倒し、地面で完全に圧し潰した。
しかし次の瞬間アーカードの背後に位置したオーク鬼が、その無防備な背中に向かって渾身の力で棍棒を振り下ろす。
アーカードは器用に丸太を回転させると、オーク鬼に背を向けたままこれをガードした。
渾身の棍棒を自分達より遥かに小さい少女に難なく受け止められオーク鬼は困惑する。アーカードは背を向けたまま立ち上がり、丸太を大きく振りかぶる。
アーカードのパワーに遠心力が加わった丸太スウィングは、質量・速度共にオーク鬼をぶっ飛ばすには充分過ぎた。
強烈なインパクトによりオーク鬼の内臓は破裂し、その巨体は宙を舞った。森の木々を数十本ほどなぎ倒しようやく止まる。
内外問わず体中がグチャグチャになったオーク鬼は、最初はピクピクと痙攣していたがすぐに動かなくなった。
アーカードは残ったオーク鬼達をゆっくりと睨め付ける。
この時点で、タバサとキュルケによる二度目の魔法攻撃が放たれる。二体のオーク鬼をそれぞれ氷柱の矢が貫き、炎球が頭を燃やし尽くした。
キュルケの使い魔フレイムも一体のオーク鬼を倒し、出鼻にタバサとキュルケが倒した分も合計してオーク鬼の斃された数は既に九体。
残ったオーク鬼は五体、自分達を弄ぶかのように殺す目前の少女にオーク鬼達は混乱する。
アーカードは右手で丸太をドンッと地面に叩き付けて軽い威嚇をおこなった。
蛇に睨まれた蛙と言ったところで、一匹は恐怖に駆られ逃げ出し、一匹は半狂乱に棍棒を振り上げ襲い掛かってきた。
迫り来るオーク鬼に対してアーカードは丸太を槍のように突き出す、それはカウンターの形となった。
顎骨が折れ、歯が砕け、鼻骨が潰れ、目玉は飛び出し、頭骨が残った肉片ごと弾け飛び、オーク鬼は絶命した。
残った三匹は動けないままで、一体はフレイムに倒され、二体はタバサとキュルケの魔法の的となった。
体格に似合わぬ速度で逃走するオーク鬼は、既に魔法で追撃するには不可能なほどの距離を走っていた。
アーカードは落ち着き払った仕草で左腕を伸ばして手の平を空に向ける、そこに丸太をセットして右手を後端にそえる。
そのアーカードの姿はまるで砲台のようであり、攻城兵器さながらの様相を呈していた。
吸血鬼の眼は逃げるオーク鬼の姿を正確に捕捉し、距離を算出し、射角を調整する。
凶悪な力で撃ち出された丸太は、とてつもないスピードでオーク鬼の後頭部へと寸分違わず吸い込まれる。
こうして十数匹のオーク鬼達は三人と一匹により殲滅された。
「・・・なんで使ってくれんのよ」
さめざめとアーカードの肩に背負われたデルフリンガーが口を開く。
「なんでって、『ガンダールヴ』を守る盾だと自分で言っていたではないか。盾を武器にするのはおかしいだろう」
「でも一応剣だし・・・大体なんで丸太なのよ。しかも『ガンダールヴ』まで発動しやがるし」
「丸太は非常に優れた武器だ、打たば槌、突かば槍、守らば盾、投げれば砲弾、リーチが長く、調達も容易、重量も申し分ない。
万能兵器と言っても過言ではないな。・・・まぁ尤も、さっきの丸太程度の大きさでは私にとって小枝のようなモノだがの」
はっはっはと笑いながら、アーカードとフレイムはタバサやキュルケがいる方へと歩いていく。
到着すると軽い口論が発生していた。
「アンタら馬鹿じゃないの」
キュルケに文句を言われていたのは、ギーシュとルイズ。
本来ならばオーク鬼達をおびき寄せ、ヴェルダンデが掘った落とし穴を利用してまとめて駆逐する手筈だったのである。
「いや、しかしだね・・・」
ギーシュは必死に弁解し、ルイズはむすっとした表情をしている。
「これだからトリステインは・・・、戦ってモンをホント知らないみたいね」
ギーシュはわらわらと現れたオーク鬼達に焦り、先走ってワルキューレ達を突撃させたのである。
それにルイズもつられてしまって魔法を唱えるも例によって爆発、どちらもオーク鬼一体すら倒すに至らず逆に怒らせる結果となった。
逆上したオーク鬼はすぐさま匂いで索敵し、ルイズらのいる方向へ走り出す。
タバサとキュルケが咄嗟にフォローに入り、二体のオーク鬼を斃すも勢いは止まらない。
そしてアーカードは駆け出して、トミーガンを取り出し――――というわけであった。
「まったく、実戦力が3人と1匹でよくもまぁあれだけの数のオーク鬼を倒せたもんよ。前衛が優秀だったからかしらね」
そう言ってキュルケはアーカードを見やる、フレイムがキュルケの元へと駆け寄りキュルケは頭を撫でてあげた。
「よしよし、よく頑張ったわねフレイム。まったく四人もいたメイジの内二人が、戦力にならないどころか足を引っ張るなんてね~」
フレイムを褒めながらも、キュルケはルイズとギーシュに皮肉をぶつける。
「主人の失敗をリカバリーするのも、従僕の務めさ」
アーカードとしては一応庇っているつもりだったが、それもこの状況下では皮肉にしか聞こえない。
「ち・・・ちょっと調子が悪かっただけよ」
「戦は先手必勝さ!僕はそれを実践したまでさ!!」
「あ~はいはい、もういいからとっととお宝を探しにいきましょ」
右手を振って二人の言葉を遮り、あしらいながらキュルケは立ち上がる。胸の谷間から地図を取り出すとそれを広げた。
「え~っと・・・寺院の中の祭壇の~・・・」
「もう周囲に気配はないぞ」
アーカードはタバサに近付き声を掛ける。
「・・・そう」
目前の敵を倒したからって安心はできない。どこかに潜んでる可能性も、残党がいる可能性もあった。
若くしてシュヴァリエの称号を持つタバサはそれ故に気を張っていたのだが、それも余計な心配だったらしい。
目の前の吸血鬼がないと言っているならそれは100%ないだろう。彼女は自分とは比べ物にならない戦闘経験を持ち、あらゆる能力が桁違いだ。
視力も索敵範囲も人間のそれとは全然違う、タバサは吸血鬼退治の任務を手伝ってくれたアーカードを信頼していた。
キュルケとフレイムを先頭に歩き出し、ルイズとギーシュもそれに続く。
「行こうか」
アーカードの言葉にタバサは頷き、二人は遅れないように早足でキュルケ達の向かう方へと歩き出した。
◇
「結局ここも駄目じゃないか!これで7件目、インチキ地図ばっかりだ!」
「あーあーまったく、大した働きもしてないくせにゴチャゴチャうるさいわねえ。そんな簡単に見つかりゃ苦労しないわよ!」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
はぁ~っとキュルケ、ルイズ、ギーシュが溜息を吐く。
「もう終わりにしましょ。アンタに挑発されてついてきちゃったけど、いい加減学院に帰らないと・・・」
と、これはルイズ。その言葉にキュルケはむぅ~っと唇をすぼめる。
「そうだよ、もう帰ろう・・・」
と、これはギーシュ。最早口論する気力も失せてきたような声色である。
戦力トップ2で最も働いているタバサとアーカードは黙していた。
「よしっ!じゃあ次がラスト!!この『竜の羽衣』!」
地図を広げて指をさしながらキュルケは叫ぶ、ラストと聞いてギーシュとルイズも渋々承諾する。
「タバサ、シルフィードを呼んで。目的地は・・・えーと・・タルブの村!」
タバサは静かに頷き、口笛を吹いた。タルブと聞いてアーカードの眉が動く。
「タルブ?確かシエスタの実家があるところではないか」
「シエスタ?・・・・・・って、確か厨房のメイドだっけ?」
キュルケが聞き返す、そこにギーシュが付け加えた。
「あぁ、僕とアーカードが決闘するきっかけを作った平民のメイドだね」
「そうだ。確か少し前に帰省すると言っていたからな、もしかしたらいるかもしれん」
「なるほど、現地人がいるのは助かるわね」
シルフィードがキュルケ達の前に着陸する。
「本当にラストでしょうね」
ルイズが半眼でキュルケに問う。
「正真正銘最後よ」
そう言うやいなやキュルケはシルフィードへと飛び乗る、見るとタバサは既に乗っていた。
「『竜の羽衣』ね・・・今度こそ本物のお宝だと願うよ・・・」
「それじゃ張り切って行きましょう!」
そんなキュルケの言葉に呼応する者は誰もいなかった。
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