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「大使い魔17-11」(2008/06/26 (木) 08:37:55) の最新版変更点
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レコン・キスタ 外道の軍団
この国狙う黒い影 世界の平和を守るため
ゴー ゴー レッツゴー!!
輝くマシン
ライダージャンプ! ライダーキック!
仮面ライダー! 仮面ライダー!
ライダー! ライダー!!
「クノイチメイド嵐、けんざーん!!」
煌めく稲妻 燃えるハヤブサオー
行くぞ嵐 萌えろ嵐
嵐よ叫べー!
変身、変身、影写し
正義のメイド 空駆け見参!
嵐! 嵐! シエスタは嵐!
くノ一メイド嵐 けんざーん!!
第十一話「邪国への花嫁王女」
ある廃村の教会。
ジローとサブローとアンリエッタとレイが、内部を漁っていた。
アンリエッタは、ジローとお揃いのジーンズ生地の服を着ていた。
そして、レイが目当ての物を見つけた。
「……コレ、真鍮だよね?」
「真鍮だな」
「真鍮だ」
「真鍮ですね」
レイは、真鍮の装飾品を思いっきり壁に投げつけた。
装飾品は、衝撃で粉砕された。
「……フリージンガメルじゃ無いのかよ」
ことの始まりは、昨日。
ジローが王宮に戻った次の日であった。
ジローの部屋では、ジロー以外にサブローとレイもいた。
「俺の、もう一人の弟……」
「初めまして、ジロー兄い」
レイと初めて会ったジローは非常に感慨深げであった。
「まあ、仕方ないな。レイが造られたのは、あんたがこの世界に来てからだ」
「しかし、光明寺博士はどうしてお前を造り変えただけでなく、レイも造ったんだろう?」
「……聞かない方が良い」
「何か、あったんだな?」
「俺の口からはとても言う気になれん。光明寺に聞いてくれ」
「……無茶なことを言う」
そこに、ドアをノックする音が響いた。
「誰だ?」
「アニエスにございます」
「どうしたんだ?」
「妃殿下がお呼びです。至急、妃殿下の御部屋に」
マリアンヌの部屋。呼ばれたのはあくまでもジローだけであり、サブローとレイは部屋の外で懸命に聞き耳をたてていた。
「アンリエッタが、結婚!?」
「ええ。わが国とゲルマニアは、軍事同盟を結ぶ事となりましたが、その際に皇帝が締結の条件として、アンリエッタとの結婚を要求してきたのです」
「あの皇帝……!」
「我がトリステインは小国。大国であるゲルマニアの要求を跳ね除けることは出来ません」
「だけど、アンリエッタの意思は? アンリエッタはずっとルイズのことが……」
アンリエッタは不意に声を荒げて、ジローの発言を制した。
「兄上!」
「アンリエッタ、お前だって……」
「この国と民衆のためなら、自分一人の想いなど押し殺せます。第一、『ミツコ』さんの思いに応えなかった兄上が言えることではありません!」
「……」
ガックリとうな垂れるジローに、マリアンヌは優しく諭した。
「堪えるのです、ジロー。我が国だけでは、レコン・キスタの攻勢を押し退けることは出来ません」
「俺とサブローにレイ、それにワンセブンもいる。レコン・キスタぐらい……」
「敵が常に正攻法で来るとは限りません。策謀も使ってくるでしょう。いかにあなたが強くても、あなたの実弟たちが強くても、ワンセブンが強くても、向こうが頭を使って補うのは目に見えています」
「……義母さん、俺にはどうすることも出来ないのですか?」
「……」
「兄上、せめて私が嫁ぐまでの間、側にいてください……」
一方、廊下では。
「サブロー兄い、本当にどうすることも出来ないの?」
「……難しいな。出来るとしたら……、レイ、あの地図、すぐに持って来れるか?」
「この間裏通りで起きた火事で、焼け落ちた店の跡から俺が盗ってきた宝の地図のこと?」
「そうだ」
「……店の焼け具合が見事すぎて、二枚しか盗れなかったけど」
「かまわん。最後の思い出作りぐらい、それなりにスリリングでないとな」
数分後、再びマリアンヌの部屋。
「宝探しですか?」
「そうだ。兄妹の最後の思い出ぐらい、スリルが無いと味気ないからな」
「サブローさん、肝心の地図は?」
「レイが部屋まで取りに行ったんだが……」
急にドアが開いた。
「レイ、ノックぐらいしろ!」
「ゴメン、テファと王子様をはぐらかすのに時間かかっちゃて……。とりあえず、もって来たよ」
レイは、息を切らしながら二枚の地図をアンリエッタに手渡した。
「コレは……?」
「宝の地図。二枚しかないけど」
「どこで手に入れたんですか?」
「実はね……」
レイの説明に、サブロー以外の全員が呆れた。
かくして、ジローとアンリエッタの最後の思い出作りとして、宝探しが決行されることとなった。
期限は三日。
四日後には、アンリエッタはゲルマニアに行くこととなっている。
そして、冒頭に戻る。
「それにしても、この様な廃村があるとは……」
「ハルケギニアじゃよくある事だって、義父さんが言っていたな」
「貴族でありながら……」
領主の怠慢のせいで廃村になったこの村の実情を知り怒りに震えるアンリエッタとは対照的に、ジローは淡々と静かに怒りを燃やしていた。
「アンリエッタ、この村がある領地って、誰が治めているんだ?」
「確かこの地方は高等法院の……」
二人のことをとりあえず放って置いて、レイは二枚目の地図を広げた。
「次はタルブか。お宝は……霊馬(れいば)の柩(ひつぎ)か」
「柩?」
「実際に行ってみないと分からないね」
数時間後、タルブ村。
「ココか……」
「廃村ではないな」
フリージンガメルの時とは違って、ちゃんと住人がいる村であったため、レイとサブローは驚いていた。
「のどかでイイ村じゃないか」
村人たちの生き生きとした表情を遠目で見ていたジローは、きっぱり言い切った。
「兄上、どうします?」
「村人たちに聞いてみるか」
というわけで、ジローたちは『霊馬の柩』について、聞き込むことにした。
「あの、尋ねたいことがあるんですが」
「はい?」
ジローに声をかけられた女性は、振り向いて、固まった。
「王子様!?」
「シエスタじゃないか!」
数分後、シエスタの実家。
ジローはこの村に来た経緯を、シエスタはこの村にいる経緯を説明しあった。
「お休みをもらったのか」
「はい。それにしても、まさかあの柩を探しに来たとは……」
「知っているのか?」
「知っているも何も、あの柩は元々曽祖父の持ち物です」
「……詳しく、聞かせてくれないか?」
「……私の曽祖父は、ある日突然馬に乗って、この村に流れ着いたそうです。その馬は、白骨化していた上に全身に蒼い炎みたいなものをまとっていました」
シエスタの説明に、ジローだけでなくアンリエッタも、サブローとレイも思わず固まった。
「当時の村のみんなは当然気味悪がりましたが、曽祖父は地面に頭をこすり付けてまでみんなをなだめました。馬の方も不気味なだけでとても大人しかったから、曽祖父はそのままこの村に住み着いてしまいました」
「よく受け入れてもらえたな」
「私もそう思います。みんなは曽祖父が何者なのかを聞いたのですが、本人は「俺はこの『ハヤブサオー』と共に異世界から来た」の一点張りでした。ちなみにハヤブサオーは、曽祖父の馬の名前です」
「ハヤブサオー!?」
ジローは面食らった。
「なるほど、君のひいおじいさんは『化身忍者』だったのか」
「どうして『ケシンニンジャ』のことを!?」
「知り合いに、『ハンペン』という奴がいるんだが、彼から聞いたことがあるんだ。大昔、獣の能力を宿して、異形の姿と力を手に入れた忍者がいて、そいつらのことを『化身忍者』と呼んでいたそうだ」
「その通りです。曽祖父は、村のみんなに自分の素性や、この村に来た経緯を洗いざらい全部しゃべったそうです。ハヤブサオーと、実際に変身した曽祖父の姿を見た以上、みんなは信じるしかありませんでした」
シエスタは、少し複雑そうに続けた。
「結局、生真面目で温厚な曽祖父はすぐに村になじみ、ハヤブサオーも村の家畜たちと打ち解けました。何故かその内、曽祖父と同じ「二ホン人」たちが何人もこの村に流れ着くようになりました」
「一体何故?」
「本人たちも分からずじまいだったそうです。曽祖父が結婚する頃にはピタリと止んだそうですが……。小さい頃、曽祖父に聞いたんです。「どうしてケシンニンジャになれるの?」って」
「ハヤブサオーに選ばれたから、そう言ったんだな?」
「はい。曽祖父は、「ハヤブサオーは、俺の実家の家系の当主を選び、化身忍者にする役目を持っていた。俺が化身忍者になれるのも、ハヤブサオーに当主と認められたからだ」って言っていました」
「……ハヤブサオーは、俺やサブローにレイが元いた世界の元々ある一族が所有していた霊獣だった。何十年も昔の大地震で当時の当主ごと行方不明になっていたが、まさかこの世界に流れ着いていたとは」
「曽祖父も、「地震が収まって、その次に火にまかれたと思ったら、気がついたらハヤブサオーにまたがって砂漠を彷徨っていた」なんて言っていました」
霊馬の柩が納められている寺院の内部。
その寺院は、殆ど神社そのものであった。
ただ、光が入らないような造りになっていた。
「数年前に曽祖父や、当時を知る人たちがたてつづけに死んじゃったショックで、滅多なことではこの柩から出なくなって……」
シエスタの説明を聞きながら、ジローは霊馬の柩を開けた。
その中には、馬の遺骨が納まっていた。
そして、突如として骨から蒼い炎のようなものが吹き上がり、柩の中の骨が動き出した。
「コレが、ハヤブサオー……!」
“ソウ、俺ガはやぶさおーダ。オ前、コノ世界ノ者ドコロカ、人間デスラ無イナ?”
「良く分かったな」
この会話を聞いたシエスタは、度肝を抜かれた。
「王子様、ハヤブサオーの言っていることが分かるんですか!?」
「……一応、な」
その日の晩、村は大騒ぎだった。
この国の王女であるアンリエッタ一行が来たのだ、村長まで挨拶に来た。
心なしか、村人たちはアンリエッタの側にいるジローの姿を見て、非常に喜んでいるように見えた。
「みんな、嬉しそうだな」
「兄上が、私たちのところに帰ってきてくれたからですわ」
そんな二人の姿を、一人の青年がシャッターに収めた。
カメラのシャッターを切る音に反応した二人が振り向くと、青年は人懐っこそうな笑顔を見せた。
「失礼、二人の姿が余りにも絵になっていたもので」
「あなたは、一文字さん!」
「久しぶりだな、ジロー」
その青年、一文字隼人、地球びとは「仮面ライダー2号」とも呼ぶ。
一方、魔法学院の広場にいる、要塞ワンセブンの内部サロン。
ルイズが、見たことのない本を持っていたので、ロボターが尋ねた。
「ルイズちゃん、その本は?」
「これ? 「始祖の祈祷書」よ」
「これが、始祖の祈祷書かぁ……。何でルイズちゃんが持ってるの?」
「姫様から直々に預かったのよ。この国の王族の結婚式では、貴族の中から選ばれた巫女が詔(みことのり)を読み上げる慣わしなのよ」
「ふ~ん。でもそれ、何にも書いてないよ」
「そうなのよ」
「不思議な本だよね~。ん?」
ロボターは、ルイズが指につけている指輪に注目した。
「どうしたの?」
「その指輪、どうしたの?」
「これ? 始祖の祈祷書とセットで王家に伝わる秘宝で、「水のルビー」って言うのよ。姫様が「いっその事これも預かってください」って言ったから、応じることにしたの」
「水のルビー……」
ロボターは水のルビーをまじまじと見ていた。
そしてルイズが祈祷書のページに、ルビーをはめている方の手を置いた瞬間、祈祷書が光り、文字が現れた。
ルイズは夢中でそれを読み、自分の系統に気付き始めた。
零すなわちこれ『虚無』。
我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。
以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
初歩の初歩の初歩。
『エクスプロージョン』。
「私が、虚無!?」
「ルイズちゃん!?」
ルイズの素っ頓狂な声に、ロボターが驚いた。
「虚無。それがルイズちゃんの系統なのか」
ワンセブンがそう言った直後、シャルルが驚いたようにルイズを凝視した。
「まさか、この光景をまた見ることになるとはね」
「シャルル殿下、いたんですか!?」
「……君が詔を考えている間に来たんだよ」
「そういえば、さっき「この光景をまた見ることに」と……」
「地球に漂流する前の話だよ。僕は、兄さんが虚無の系統に目覚める一部始終に立ち会ったことがあるんだ」
「……!!」
「これなら、この間のジロー君とサブロー君の兄弟ゲンカを、他の生徒たちの使い魔たちまでもが止めようとしたのにも納得がいくね」
「どういうことですか?」
「君の系統が虚無であるということは、ワンセブン君が虚無の使い魔であることも意味している」
シャルルは普段は絶対に見せないような、厳しい表情を見せた。
「ワンセブンが……!」
「私はあらゆる獣を操る使い魔、「ヴィンダールヴ」だ」
「ワンセブン、あなたはそのことを知っていたの!?」
「……コルベール先生に教えられたが、口止めされていた」
「あのコッパゲめ!」
ワンセブンが「神の右手」であることを知ったシャルルは、どこか納得していた。
「なるほど、『笛』だったのか……。よくよく考えてみれば、その巨体じゃ笛以外に適合できないよな……」
「どういうことだ?」
「考えても見たまえ、君は『盾』の力無しでも、有り得ないほど強く、その巨体ゆえに人のようにそう簡単に武器を持つことは出来ない。『本』になっても、大きすぎてマジックアイテムが使えない。『四番目』に至っては、君の胸のマークとルーンの位置が被ってしまう」
「……『笛』以外にはなれなかった、ということか」
「そして、『笛』としての力も、その巨体に合わせて変形している可能性もあるな」
「想定したくはないな」
「現実なんだから受け入れないと」
時は過ぎ、アンリエッタが出発する当日。
アルビオン政府からの国賓を歓迎するために派遣された艦隊が壊滅したとの報告に、王宮は揺れた。
マザリーニが、特使の派遣を提案した直後、アルビオンの艦隊がラ・ロシェール近郊の草原地帯―タルブ村―に降下、占領行動に移ったとの報告が入った。
会議室の貴族たちが騒然とする中、アンリエッタは意を決して、会議室を出た。
マザリーニたちがそれに気付いたのは、約一分後である。
中庭にある謎の保管庫。
そこの扉を開け、アンリエッタは中にあるものを見た。
義兄のもう一つの姿を意識した意匠の鎧と、サイドマシーンを模したバイクであった。
「この鎧をまとい、この鉄の馬に乗る日が来るとは……」
装飾品も、ウエディングドレスも、パンツも脱ぎ、一糸まとわぬ姿になり、鎧を身に着けた。
「父上、私に力を……!!」
アカデミーが、キカイダーを参考にして開発した強化甲冑「エンゼルサタン」を身に着け、口元を黄色いマフラーで隠したアンリエッタは、「サイドマシーンMk-II」に乗った。
サイドマシーンMk-IIは、中庭を、王宮の門を、城門を抜け、タルブを目指して突っ走った。
タルブの村は、騒然となっていた。
アルビオンの戦艦から、次々と兵士たちが降りて、村目掛けて突き進んできた。
村人たちが付近の森や、霊馬の柩がある寺院へと避難する中、シエスタは呆然としていた。
「逃げないのか?」
そんなシエスタに、隼人が声をかけた。
「逃げてはいけない気がしたんです」
「そうか」
「ハヤトさんは逃げないんですか?」
「逃げる気はない。むしろ、全力で迎え撃つつもりだ」
「そうですか……」
シエスタの隣には、いつの間にかハヤブサオーがいた。
普段は、当の昔に腐ってなくなった皮と筋肉の代わりに、骨だけになったその体を覆っている鬼火と同じ色であるはずの眼の色が、怒りのあまり深紅になっていた。
“しえすた、俺タチモ行クゾ”
「そうね、行こう、ハヤブサオー」
竜が飛び、村に火の手が上がる中、アルビオンの兵士たちは我が物顔で草原を進んでいた。
兵士たちを引き連れていたのは、「ジョージ」から派遣された殺戮構成員、カッパマンであった。
「奪え! 燃やせ! 男と老いぼれどもは見せしめのために殺し、女子供は慰み者にしろ!!」
カッパマンの雄たけびに、下品極まる兵士たちは歓喜し、色めきたった。
そこに、サイドマシーンMk-IIが突撃し、カッパマンの眼前で停車した。
「貴様、誰だ?」
「人造人間、キカイダー……!!」
サイドマシーンMk-IIから降りて、義兄のもう一つの名を名乗り、アンリエッタは兄同様ワイクルーの舞を披露してから戦闘態勢に入った。
「行け!」
カッパマンの号令と共に兵士がアンリエッタに切りかかったが、その内の一人はアンリエッタのパンチで吹き飛ばされた。
「ダブルチョーップ!」
兵士の一人が、アンリエッタのダブルチョップで両肩を深く切り裂かれ、事切れた。
「デンジ・エーンド!!」
更にもう一人、今度はデンジ・エンドの直撃によって爆発した。
強化甲冑、エンゼルサタンを装着しているアンリエッタの前に、兵士たちは劣勢を強いられていたが、カッパマンは冷静だった。
「ウソはいけないなぁ、アンリエッタ王女殿下!」
カッパマンは両手の、とがった指でアンリエッタのマフラーを切り裂いた。
マフラーが切り裂かれ、完全に面が割れたアンリエッタを見て、兵士たちは騒然とした。
「キカイダーだと? 本物のキカイダーは、貴方が身にまとっている鎧より、更に醜い姿をしている!」
カッパマンは針のようにとがった口で、エンゼルサタンの肩アーマー部分を貫通した。
「ぐ……!」
肩に鋭いものが突き刺さった激痛にうめきながら、アンリエッタは言い返した。
「兄上は、兄上のあの姿は、人の心そのものを表したもの。断じて醜くなどありません……! 醜いのは、貴方の方です!」
「そこまで言うとはな……。王宮の貴族連中への見せしめだ、まずはこの王女を慰み者にしろ!!」
エンゼルサタンの胸アーマー部分を切り裂き、カッパマンは傭兵たちに命令した。
(兄上……)
兵士たちが我先にとアンリエッタに群がろうとした中、突如として銃声が響き、一人の兵士が蜂の巣にされた。
更に、三名ほどが蜂の巣にされた直後、ギターの音色が響いた。
「どこだ!?」
「どこにいる!?」
「あ! あそこだ!!」
一人の兵士が指差した方向に、カッパマンと残りの兵士たちが視線を合わせると、そこにはギターを弾くジローの姿があった。
「ほ、本物だと!?」
「犯罪ロボット派遣ギルド、ジョージの殺戮構成員カッパマン、妹へのこれ以上の狼藉は俺が許さん!!」
兵士たちが浮き足立った直後、ジローはチェンジした!
「チェンジ! スイッチ・オン! 1、2、3!!」
アンリエッタが人の心そのものを表したものと断じた、正義と悪の青と赤の左右非対称ボディーが宙を舞う。
「とぉー!」
きゅるるるる~、フォッ、カシンッ!
「俺はジロー・トリステイン。またの名を、人造人間キカイダー!!」
アンリエッタの眼前にその背を見せ、キカイダーは啖呵を切った。
「兄上……」
「アンリエッタ……そこで大人しくしているんだ。兄である俺が、お前が守りたかったものをお前の代わりに守り抜く!」
そして、サイクロンに乗った隼人と、ハヤブサオーにまたがったシエスタがその場に駆けつけた。
「一文字さん、シエスタ!」
「俺たちも加勢するぜ、お二人さん」
“コノ馬鹿ドモハ、俺タチガ蹴散ラス”
「私も、戦います!」
そして、隼人とシエスタは、変身した。
「……変身っ!! とぉー!!」
「吹けよ、嵐! 嵐! 嵐ぃっ! 」
そこにいたのは、二人の異形の戦士だった。
片方はドクロにも見える仮面をかぶり、その手と足は深紅だった。
もう片方は、銀色の、二の腕まで届く長い手袋を着け、オーバーニーソックスを履き、忍者の服を模したようなメイド服を着て、鳥を表したかのようなドミノマスクをつけていた。
「き、貴様ら、何物だ!?」
カッパマンの動揺した声にこたえるように、片方は静かに、片方は叫ぶように答えた。
「正義。仮面ライダー2号」
「くノ一メイド嵐、けんざーん!!」
今度は、トランペットの音色が響き、終わったと思ったら次は口笛の音色が辺りに響いた。
「チェンジ、キカイダー……01!」
「変身、ストロンガー!」
異形の戦士が、更に二人増えた。
「「天が呼べば悪のいる所に必ず現れ、地が呼べば悪の行われる所に必ず行き、人が呼べば悪の軍団を必ず討つ。
悪を倒せと俺たちを呼べば正義の力で何度でも蘇る。
聞け、悪の軍団レコン・キスタ! 俺たちは正義の戦士」」
「キカイダー01!!」
「仮面ライダーストロンガー!!」
チェインジ01!
聞こえてくる~ 正義の叫び~
ダブルマシーンが 空飛ぶ轟音
見える~(ゴーゴー) 見える~(ゴーゴー)
光り集まる太陽電池の 01ボディ~(イエ~!)
オーオー01! 僕らの キカイダー01!!
「仮面ライダーストロンガー!!」
突っ走れ~ 異世界で~
レコン・キスタを潰すため
守るぞ 平和を トリステインの
カーッと燃えるぜ 正義の心~
見~よ~ 必殺 電ショック
男の命を懸けてゆく
その名は その名は
仮面ライダー スト~ロ~ンガァ~!!
#navi(大使い魔17)
レコン・キスタ 外道の軍団
この国狙う黒い影 世界の平和を守るため
ゴー ゴー レッツゴー!!
輝くマシン
ライダージャンプ! ライダーキック!
仮面ライダー! 仮面ライダー!
ライダー! ライダー!!
「クノイチメイド嵐、けんざーん!!」
煌めく稲妻 燃えるハヤブサオー
行くぞ嵐 萌えろ嵐
嵐よ叫べー!
変身、変身、影写し
正義のメイド 空駆け見参!
嵐! 嵐! シエスタは嵐!
くノ一メイド嵐 けんざーん!!
第十一話「邪国への花嫁王女」
ある廃村の教会。
ジローとサブローとアンリエッタとレイが、内部を漁っていた。
アンリエッタは、ジローとお揃いのジーンズ生地の服を着ていた。
そして、レイが目当ての物を見つけた。
「……コレ、真鍮だよね?」
「真鍮だな」
「真鍮だ」
「真鍮ですね」
レイは、真鍮の装飾品を思いっきり壁に投げつけた。
装飾品は、衝撃で粉砕された。
「……フリージンガメルじゃ無いのかよ」
ことの始まりは、昨日。
ジローが王宮に戻った次の日であった。
ジローの部屋では、ジロー以外にサブローとレイもいた。
「俺の、もう一人の弟……」
「初めまして、ジロー兄い」
レイと初めて会ったジローは非常に感慨深げであった。
「まあ、仕方ないな。レイが造られたのは、あんたがこの世界に来てからだ」
「しかし、光明寺博士はどうしてお前を造り変えただけでなく、レイも造ったんだろう?」
「……聞かない方が良い」
「何か、あったんだな?」
「俺の口からはとても言う気になれん。光明寺に聞いてくれ」
「……無茶なことを言う」
そこに、ドアをノックする音が響いた。
「誰だ?」
「アニエスにございます」
「どうしたんだ?」
「妃殿下がお呼びです。至急、妃殿下の御部屋に」
マリアンヌの部屋。呼ばれたのはあくまでもジローだけであり、サブローとレイは部屋の外で懸命に聞き耳をたてていた。
「アンリエッタが、結婚!?」
「ええ。わが国とゲルマニアは、軍事同盟を結ぶ事となりましたが、その際に皇帝が締結の条件として、アンリエッタとの結婚を要求してきたのです」
「あの皇帝……!」
「我がトリステインは小国。大国であるゲルマニアの要求を跳ね除けることは出来ません」
「だけど、アンリエッタの意思は? アンリエッタはずっとルイズのことが……」
アンリエッタは不意に声を荒げて、ジローの発言を制した。
「兄上!」
「アンリエッタ、お前だって……」
「この国と民衆のためなら、自分一人の想いなど押し殺せます。第一、『ミツコ』さんの思いに応えなかった兄上が言えることではありません!」
「……」
ガックリとうな垂れるジローに、マリアンヌは優しく諭した。
「堪えるのです、ジロー。我が国だけでは、レコン・キスタの攻勢を押し退けることは出来ません」
「俺とサブローにレイ、それにワンセブンもいる。レコン・キスタぐらい……」
「敵が常に正攻法で来るとは限りません。策謀も使ってくるでしょう。いかにあなたが強くても、あなたの実弟たちが強くても、ワンセブンが強くても、向こうが頭を使って補うのは目に見えています」
「……義母さん、俺にはどうすることも出来ないのですか?」
「……」
「兄上、せめて私が嫁ぐまでの間、側にいてください……」
一方、廊下では。
「サブロー兄い、本当にどうすることも出来ないの?」
「……難しいな。出来るとしたら……、レイ、あの地図、すぐに持って来れるか?」
「この間裏通りで起きた火事で、焼け落ちた店の跡から俺が盗ってきた宝の地図のこと?」
「そうだ」
「……店の焼け具合が見事すぎて、二枚しか盗れなかったけど」
「かまわん。最後の思い出作りぐらい、それなりにスリリングでないとな」
数分後、再びマリアンヌの部屋。
「宝探しですか?」
「そうだ。兄妹の最後の思い出ぐらい、スリルが無いと味気ないからな」
「サブローさん、肝心の地図は?」
「レイが部屋まで取りに行ったんだが……」
急にドアが開いた。
「レイ、ノックぐらいしろ!」
「ゴメン、テファと王子様をはぐらかすのに時間かかっちゃて……。とりあえず、もって来たよ」
レイは、息を切らしながら二枚の地図をアンリエッタに手渡した。
「コレは……?」
「宝の地図。二枚しかないけど」
「どこで手に入れたんですか?」
「実はね……」
レイの説明に、サブロー以外の全員が呆れた。
かくして、ジローとアンリエッタの最後の思い出作りとして、宝探しが決行されることとなった。
期限は三日。
四日後には、アンリエッタはゲルマニアに行くこととなっている。
そして、冒頭に戻る。
「それにしても、この様な廃村があるとは……」
「ハルケギニアじゃよくある事だって、義父さんが言っていたな」
「貴族でありながら……」
領主の怠慢のせいで廃村になったこの村の実情を知り怒りに震えるアンリエッタとは対照的に、ジローは淡々と静かに怒りを燃やしていた。
「アンリエッタ、この村がある領地って、誰が治めているんだ?」
「確かこの地方は高等法院の……」
二人のことをとりあえず放って置いて、レイは二枚目の地図を広げた。
「次はタルブか。お宝は……霊馬(れいば)の柩(ひつぎ)か」
「柩?」
「実際に行ってみないと分からないね」
数時間後、タルブ村。
「ココか……」
「廃村ではないな」
フリージンガメルの時とは違って、ちゃんと住人がいる村であったため、レイとサブローは驚いていた。
「のどかでイイ村じゃないか」
村人たちの生き生きとした表情を遠目で見ていたジローは、きっぱり言い切った。
「兄上、どうします?」
「村人たちに聞いてみるか」
というわけで、ジローたちは『霊馬の柩』について、聞き込むことにした。
「あの、尋ねたいことがあるんですが」
「はい?」
ジローに声をかけられた女性は、振り向いて、固まった。
「王子様!?」
「シエスタじゃないか!」
数分後、シエスタの実家。
ジローはこの村に来た経緯を、シエスタはこの村にいる経緯を説明しあった。
「お休みをもらったのか」
「はい。それにしても、まさかあの柩を探しに来たとは……」
「知っているのか?」
「知っているも何も、あの柩は元々曽祖父の持ち物です」
「……詳しく、聞かせてくれないか?」
「……私の曽祖父は、ある日突然馬に乗って、この村に流れ着いたそうです。その馬は、白骨化していた上に全身に蒼い炎みたいなものをまとっていました」
シエスタの説明に、ジローだけでなくアンリエッタも、サブローとレイも思わず固まった。
「当時の村のみんなは当然気味悪がりましたが、曽祖父は地面に頭をこすり付けてまでみんなをなだめました。馬の方も不気味なだけでとても大人しかったから、曽祖父はそのままこの村に住み着いてしまいました」
「よく受け入れてもらえたな」
「私もそう思います。みんなは曽祖父が何者なのかを聞いたのですが、本人は「俺はこの『ハヤブサオー』と共に異世界から来た」の一点張りでした。ちなみにハヤブサオーは、曽祖父の馬の名前です」
「ハヤブサオー!?」
ジローは面食らった。
「なるほど、君のひいおじいさんは『化身忍者』だったのか」
「どうして『ケシンニンジャ』のことを!?」
「知り合いに、『ハンペン』という奴がいるんだが、彼から聞いたことがあるんだ。大昔、獣の能力を宿して、異形の姿と力を手に入れた忍者がいて、そいつらのことを『化身忍者』と呼んでいたそうだ」
「その通りです。曽祖父は、村のみんなに自分の素性や、この村に来た経緯を洗いざらい全部しゃべったそうです。ハヤブサオーと、実際に変身した曽祖父の姿を見た以上、みんなは信じるしかありませんでした」
シエスタは、少し複雑そうに続けた。
「結局、生真面目で温厚な曽祖父はすぐに村になじみ、ハヤブサオーも村の家畜たちと打ち解けました。何故かその内、曽祖父と同じ「二ホン人」たちが何人もこの村に流れ着くようになりました」
「一体何故?」
「本人たちも分からずじまいだったそうです。曽祖父が結婚する頃にはピタリと止んだそうですが……。小さい頃、曽祖父に聞いたんです。「どうしてケシンニンジャになれるの?」って」
「ハヤブサオーに選ばれたから、そう言ったんだな?」
「はい。曽祖父は、「ハヤブサオーは、俺の実家の家系の当主を選び、化身忍者にする役目を持っていた。俺が化身忍者になれるのも、ハヤブサオーに当主と認められたからだ」って言っていました」
「……ハヤブサオーは、俺やサブローにレイが元いた世界の元々ある一族が所有していた霊獣だった。何十年も昔の大地震で当時の当主ごと行方不明になっていたが、まさかこの世界に流れ着いていたとは」
「曽祖父も、「地震が収まって、その次に火にまかれたと思ったら、気がついたらハヤブサオーにまたがって砂漠を彷徨っていた」なんて言っていました」
霊馬の柩が納められている寺院の内部。
その寺院は、殆ど神社そのものであった。
ただ、光が入らないような造りになっていた。
「数年前に曽祖父や、当時を知る人たちがたてつづけに死んじゃったショックで、滅多なことではこの柩から出なくなって……」
シエスタの説明を聞きながら、ジローは霊馬の柩を開けた。
その中には、馬の遺骨が納まっていた。
そして、突如として骨から蒼い炎のようなものが吹き上がり、柩の中の骨が動き出した。
「コレが、ハヤブサオー……!」
“ソウ、俺ガはやぶさおーダ。オ前、コノ世界ノ者ドコロカ、人間デスラ無イナ?”
「良く分かったな」
この会話を聞いたシエスタは、度肝を抜かれた。
「王子様、ハヤブサオーの言っていることが分かるんですか!?」
「……一応、な」
その日の晩、村は大騒ぎだった。
この国の王女であるアンリエッタ一行が来たのだ、村長まで挨拶に来た。
心なしか、村人たちはアンリエッタの側にいるジローの姿を見て、非常に喜んでいるように見えた。
「みんな、嬉しそうだな」
「兄上が、私たちのところに帰ってきてくれたからですわ」
そんな二人の姿を、一人の青年がシャッターに収めた。
カメラのシャッターを切る音に反応した二人が振り向くと、青年は人懐っこそうな笑顔を見せた。
「失礼、二人の姿が余りにも絵になっていたもので」
「あなたは、一文字さん!」
「久しぶりだな、ジロー」
その青年、一文字隼人、地球びとは「仮面ライダー2号」とも呼ぶ。
一方、魔法学院の広場にいる、要塞ワンセブンの内部サロン。
ルイズが、見たことのない本を持っていたので、ロボターが尋ねた。
「ルイズちゃん、その本は?」
「これ? 「始祖の祈祷書」よ」
「これが、始祖の祈祷書かぁ……。何でルイズちゃんが持ってるの?」
「姫様から直々に預かったのよ。この国の王族の結婚式では、貴族の中から選ばれた巫女が詔(みことのり)を読み上げる慣わしなのよ」
「ふ~ん。でもそれ、何にも書いてないよ」
「そうなのよ」
「不思議な本だよね~。ん?」
ロボターは、ルイズが指につけている指輪に注目した。
「どうしたの?」
「その指輪、どうしたの?」
「これ? 始祖の祈祷書とセットで王家に伝わる秘宝で、「水のルビー」って言うのよ。姫様が「いっその事これも預かってください」って言ったから、応じることにしたの」
「水のルビー……」
ロボターは水のルビーをまじまじと見ていた。
そしてルイズが祈祷書のページに、ルビーをはめている方の手を置いた瞬間、祈祷書が光り、文字が現れた。
ルイズは夢中でそれを読み、自分の系統に気付き始めた。
零すなわちこれ『虚無』。
我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。
以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
初歩の初歩の初歩。
『エクスプロージョン』。
「私が、虚無!?」
「ルイズちゃん!?」
ルイズの素っ頓狂な声に、ロボターが驚いた。
「虚無。それがルイズちゃんの系統なのか」
ワンセブンがそう言った直後、シャルルが驚いたようにルイズを凝視した。
「まさか、この光景をまた見ることになるとはね」
「シャルル殿下、いたんですか!?」
「……君が詔を考えている間に来たんだよ」
「そういえば、さっき「この光景をまた見ることに」と……」
「地球に漂流する前の話だよ。僕は、兄さんが虚無の系統に目覚める一部始終に立ち会ったことがあるんだ」
「……!!」
「これなら、この間のジロー君とサブロー君の兄弟ゲンカを、他の生徒たちの使い魔たちまでもが止めようとしたのにも納得がいくね」
「どういうことですか?」
「君の系統が虚無であるということは、ワンセブン君が虚無の使い魔であることも意味している」
シャルルは普段は絶対に見せないような、厳しい表情を見せた。
「ワンセブンが……!」
「私はあらゆる獣を操る使い魔、「ヴィンダールヴ」だ」
「ワンセブン、あなたはそのことを知っていたの!?」
「……コルベール先生に教えられたが、口止めされていた」
「あのコッパゲめ!」
ワンセブンが「神の右手」であることを知ったシャルルは、どこか納得していた。
「なるほど、『笛』だったのか……。よくよく考えてみれば、その巨体じゃ笛以外に適合できないよな……」
「どういうことだ?」
「考えても見たまえ、君は『盾』の力無しでも、有り得ないほど強く、その巨体ゆえに人のようにそう簡単に武器を持つことは出来ない。『本』になっても、大きすぎてマジックアイテムが使えない。『四番目』に至っては、君の胸のマークとルーンの位置が被ってしまう」
「……『笛』以外にはなれなかった、ということか」
「そして、『笛』としての力も、その巨体に合わせて変形している可能性もあるな」
「想定したくはないな」
「現実なんだから受け入れないと」
時は過ぎ、アンリエッタが出発する当日。
アルビオン政府からの国賓を歓迎するために派遣された艦隊が壊滅したとの報告に、王宮は揺れた。
マザリーニが、特使の派遣を提案した直後、アルビオンの艦隊がラ・ロシェール近郊の草原地帯―タルブ村―に降下、占領行動に移ったとの報告が入った。
会議室の貴族たちが騒然とする中、アンリエッタは意を決して、会議室を出た。
マザリーニたちがそれに気付いたのは、約一分後である。
中庭にある謎の保管庫。
そこの扉を開け、アンリエッタは中にあるものを見た。
義兄のもう一つの姿を意識した意匠の鎧と、サイドマシーンを模したバイクであった。
「この鎧をまとい、この鉄の馬に乗る日が来るとは……」
装飾品も、ウエディングドレスも、パンツも脱ぎ、一糸まとわぬ姿になり、鎧を身に着けた。
「父上、私に力を……!!」
アカデミーが、キカイダーを参考にして開発した強化甲冑「エンゼルサタン」を身に着け、口元を黄色いマフラーで隠したアンリエッタは、「サイドマシーンMk-II」に乗った。
サイドマシーンMk-IIは、中庭を、王宮の門を、城門を抜け、タルブを目指して突っ走った。
タルブの村は、騒然となっていた。
アルビオンの戦艦から、次々と兵士たちが降りて、村目掛けて突き進んできた。
村人たちが付近の森や、霊馬の柩がある寺院へと避難する中、シエスタは呆然としていた。
「逃げないのか?」
そんなシエスタに、隼人が声をかけた。
「逃げてはいけない気がしたんです」
「そうか」
「ハヤトさんは逃げないんですか?」
「逃げる気はない。むしろ、全力で迎え撃つつもりだ」
「そうですか……」
シエスタの隣には、いつの間にかハヤブサオーがいた。
普段は、当の昔に腐ってなくなった皮と筋肉の代わりに、骨だけになったその体を覆っている鬼火と同じ色であるはずの眼の色が、怒りのあまり深紅になっていた。
“しえすた、俺タチモ行クゾ”
「そうね、行こう、ハヤブサオー」
竜が飛び、村に火の手が上がる中、アルビオンの兵士たちは我が物顔で草原を進んでいた。
兵士たちを引き連れていたのは、「ジョージ」から派遣された殺戮構成員、カッパマンであった。
「奪え! 燃やせ! 男と老いぼれどもは見せしめのために殺し、女子供は慰み者にしろ!!」
カッパマンの雄たけびに、下品極まる兵士たちは歓喜し、色めきたった。
そこに、サイドマシーンMk-IIが突撃し、カッパマンの眼前で停車した。
「貴様、誰だ?」
「人造人間、キカイダー……!!」
サイドマシーンMk-IIから降りて、義兄のもう一つの名を名乗り、アンリエッタは兄同様ワイクルーの舞を披露してから戦闘態勢に入った。
「行け!」
カッパマンの号令と共に兵士がアンリエッタに切りかかったが、その内の一人はアンリエッタのパンチで吹き飛ばされた。
「ダブルチョーップ!」
兵士の一人が、アンリエッタのダブルチョップで両肩を深く切り裂かれ、事切れた。
「デンジ・エーンド!!」
更にもう一人、今度はデンジ・エンドの直撃によって爆発した。
強化甲冑、エンゼルサタンを装着しているアンリエッタの前に、兵士たちは劣勢を強いられていたが、カッパマンは冷静だった。
「ウソはいけないなぁ、アンリエッタ王女殿下!」
カッパマンは両手の、とがった指でアンリエッタのマフラーを切り裂いた。
マフラーが切り裂かれ、完全に面が割れたアンリエッタを見て、兵士たちは騒然とした。
「キカイダーだと? 本物のキカイダーは、貴方が身にまとっている鎧より、更に醜い姿をしている!」
カッパマンは針のようにとがった口で、エンゼルサタンの肩アーマー部分を貫通した。
「ぐ……!」
肩に鋭いものが突き刺さった激痛にうめきながら、アンリエッタは言い返した。
「兄上は、兄上のあの姿は、人の心そのものを表したもの。断じて醜くなどありません……! 醜いのは、貴方の方です!」
「そこまで言うとはな……。王宮の貴族連中への見せしめだ、まずはこの王女を慰み者にしろ!!」
エンゼルサタンの胸アーマー部分を切り裂き、カッパマンは傭兵たちに命令した。
(兄上……)
兵士たちが我先にとアンリエッタに群がろうとした中、突如として銃声が響き、一人の兵士が蜂の巣にされた。
更に、三名ほどが蜂の巣にされた直後、ギターの音色が響いた。
「どこだ!?」
「どこにいる!?」
「あ! あそこだ!!」
一人の兵士が指差した方向に、カッパマンと残りの兵士たちが視線を合わせると、そこにはギターを弾くジローの姿があった。
「ほ、本物だと!?」
「犯罪ロボット派遣ギルド、ジョージの殺戮構成員カッパマン、妹へのこれ以上の狼藉は俺が許さん!!」
兵士たちが浮き足立った直後、ジローはチェンジした!
「チェンジ! スイッチ・オン! 1、2、3!!」
アンリエッタが人の心そのものを表したものと断じた、正義と悪の青と赤の左右非対称ボディーが宙を舞う。
「とぉー!」
きゅるるるる~、フォッ、カシンッ!
「俺はジロー・トリステイン。またの名を、人造人間キカイダー!!」
アンリエッタの眼前にその背を見せ、キカイダーは啖呵を切った。
「兄上……」
「アンリエッタ……そこで大人しくしているんだ。兄である俺が、お前が守りたかったものをお前の代わりに守り抜く!」
そして、サイクロンに乗った隼人と、ハヤブサオーにまたがったシエスタがその場に駆けつけた。
「一文字さん、シエスタ!」
「俺たちも加勢するぜ、お二人さん」
“コノ馬鹿ドモハ、俺タチガ蹴散ラス”
「私も、戦います!」
そして、隼人とシエスタは、変身した。
「……変身っ!! とぉー!!」
「吹けよ、嵐! 嵐! 嵐ぃっ! 」
そこにいたのは、二人の異形の戦士だった。
片方はドクロにも見える仮面をかぶり、その手と足は深紅だった。
もう片方は、銀色の、二の腕まで届く長い手袋を着け、オーバーニーソックスを履き、忍者の服を模したようなメイド服を着て、鳥を表したかのようなドミノマスクをつけていた。
「き、貴様ら、何物だ!?」
カッパマンの動揺した声にこたえるように、片方は静かに、片方は叫ぶように答えた。
「正義。仮面ライダー2号」
「くノ一メイド嵐、けんざーん!!」
今度は、トランペットの音色が響き、終わったと思ったら次は口笛の音色が辺りに響いた。
「チェンジ、キカイダー……01!」
「変身、ストロンガー!」
異形の戦士が、更に二人増えた。
「「天が呼べば悪のいる所に必ず現れ、地が呼べば悪の行われる所に必ず行き、人が呼べば悪の軍団を必ず討つ。
悪を倒せと俺たちを呼べば正義の力で何度でも蘇る。
聞け、悪の軍団レコン・キスタ! 俺たちは正義の戦士」」
「キカイダー01!!」
「仮面ライダーストロンガー!!」
チェインジ01!
聞こえてくる~ 正義の叫び~
ダブルマシーンが 空飛ぶ轟音
見える~(ゴーゴー) 見える~(ゴーゴー)
光り集まる太陽電池の 01ボディ~(イエ~!)
オーオー01! 僕らの キカイダー01!!
「仮面ライダーストロンガー!!」
突っ走れ~ 異世界で~
レコン・キスタを潰すため
守るぞ 平和を トリステインの
カーッと燃えるぜ 正義の心~
見~よ~ 必殺 電ショック
男の命を懸けてゆく
その名は その名は
仮面ライダー スト~ロ~ンガァ~!!
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