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#navi(割れぬなら……)
「ソウソウ!」「ダーリン!」
修理が終わって間もないドアを蹴破り、2人の少女が曹操の執務室に押し込んできた。
しかし、そこに曹操の姿は無かった。
1人黙々と書類の整理をしていた副官は、まるでこの世の終わりが来たかのような顔をした。
「久しぶりねシン。元気そうで何よりだわ。
ところで、ソウソウと爆死、どっちが良いかしら?」
ルイズは実に爽やかな笑顔で副官に杖をつきつけた。
「貴方が副官さん? いつも噂を伺ってるわ。
ところで、メカネと釣り糸、どっちが良いかしら?」
キュルケは実に爽やかな笑顔で釣り糸に針を結んだ。
その時、副官は自身の死期を悟った。
……気の毒な事に、彼は曹操の居場所を知らない。
宮殿にある小部屋の一つで、リッシュモンは落ち着かない様子でふらりふらりと足を動かしていた。
どうやら何かを待っているらしい。
それもきっと重大な何かだ。
「戻りました」
「おお、戻ったか!」
小柄な男がドアを開けると、リッシュモンが歓喜の声をあげて駆け寄ってきた。
「よくぞ無事に戻ってきてくれたな。首尾はどうだった?
いや、聞かなくともわかる。
お前が無事に戻ったという事は、見事にあのソウソウとかいう成り上がりを討ち取ったのだな?」
「いえ、それがですね……」
「実にめでたい。
ぶんぶんと飛び回るしか能の無い小虫に過ぎなくとも、あのお人好し姫に知られれば厄介な事になっただろうからな。
いや、実にめでたい」
「ターゲットの居場所がわからないので、帰ってきました」
……こけた。
リッシュモンは盛大にこけた。
見事にこけた。
その拍子に机の角に頭をぶつけ、たんこぶができた。
「子供の使いかっ!!」
リッシュモンは内密の話題である事を忘れ、男を怒鳴り散らした。
ふぅ……と大きく息を吐き、幾分か冷静さを取り戻す。
「何のために給料を払っていると思っている?
身を隠したのなら探し出して始末せんか」
「こっちだって必死に探しましたよ。
見つからんから見つからんと報告したまでです」
「待て、仕事をほったらかして失踪したのか?
それなら職務怠慢を理由に罷免させられるかもしれんが」
「いえ、ターゲットはどこからか部下に指示を出し、しっかりと治安を守っています」
「ならばその指示の出所を辿ればソウソウを見つけられるではないか!」
「駄目でした」
男は即答した。
「……ずいぶんあっさりと諦めるな」
「通信手段も隠れ家も常に変動していて追い切れません。
我らが居所を割り出すよりも早く別の場所に移動してしまうのです」
「だったら居場所を知っていそうな者を吐かせろ。
いくらなんでも副官なら知っているだろう」
「いえ、私もそう思って副官を張り込んでみました。
残念ながら奴は何も知りません」
……同じ頃、ある男が筆者には描写しきれないほど凄惨な目に遭っている。
気の毒な事に、彼は曹操の居場所を知らない。
「ならワルドは?
あのソウソウの腰巾着なら何か知っていてもおかしくあるまい」
「魔法衛士隊隊長を襲うんですか!?
命がいくつあっても足りませんよ!」
「それをなんとかするのが貴様の仕事だろう!!」
「ええと……10人以上で、同時に、しかも不意を衝ければなんとか……」
「目立って仕方が無いな……」
「諦めた方が賢明ですね」
ぐむむ……とリッシュモンが顔を歪める。
彼は必死に頭を働かせた。
今でこそ非常に高い地位に身を置いているものの、そこに至るまでに何度も強引な手段を用いた。
また、現在の職務も決して綺麗な仕事とは言い難い。
曹操はそんなリッシュモンの弱みを嗅ぎ回り、そして上奏に踏み切るだけの情報を集めたのだ。
なんとか情報を闇に葬らなければ、地位はもちろん、命すら危うい。
……いや、無理に殺す必要はない。
誰もが曹操の言葉を信じないような状況を作れば良い。
その為にはどうする?
証拠をすべて消す……無理だ、証拠もおそらく曹操が握っている。
曹操を罷免させる……これならなんとか可能かもしれない。
いくら曹操がアルビオンを救った英雄といえども、無役の平民の言葉ならば政界を動かす力は無い。
このまま長期間姿を消していてもらえれば、今度はそれを理由に罷免させる事ができるだろう。
……いや、相手がそんな事もわからない馬鹿ならば苦労はしまい。
おそらく罷免を逃れる手段を用意しているか、それとも短期決戦を目論んで……
「……来週は降臨祭があったな?」
「ええ、そうですよ。ボケたんですか?」
「当日の警備責任者は誰だ?」
「えっと……たしかワルド子爵とか……あっ!?」
「あ奴等の目論見、読めたぞ」
……冷たい石床の感触で、目が覚めた。
周りを見渡すと、彼女は牢獄に居た。
ルイズはようやく自分に何が起こったかを気づき、飛び起きた。
杖を捜す……杖は無い。
鉄格子を引っ張る……とても頑丈な作りだった。
窓を見上げる……窓にも鉄格子が取り付けられていた。
牢屋を観察する……簡単なトイレと、薄汚れたベット。
ベットの上にパンとチーズと干し肉が置いてあった。
ベットの下には水の入ったボトルが何本かあった。
次にルイズは自分を閉じ込めた犯人について考えてみた。
確か、自分はキュルケと一緒に曹操を探していた。
何日か前にキュルケと連絡がとれなくなって、
仕方なく1人で曹操を探したが、手がかり一つ見つからなくて、
降臨祭の日になっても1人で探し歩いていて、
比較的人が少ない場所を歩いていたら、急に眠くなって……
いくら思い出そうとしても、犯人の顔はおろか体の一部さえ思い出せない。
ルイズは焦った。
どんな目的で捕まってのかはわからないが、このままここに居るのは危ないと。
「誰か居ないのっ!」
声は何度か廊下をこだましたが、返事は無い。
それどころか人の気配が全くしない。
よ~く耳を澄ませてみると、どこからか音楽が聞こえてくる。
その音楽には聞き覚えがある、パレードの音楽だ。
……同じ頃。
パレードは王城前の広場でその歩みを止めた。
「始祖の降臨の日を祝して、悪鬼を追い払う剣舞をご覧に入れましょう」
アンリエッタ、ウェールズといった名士達の前に、女装をした曹操が歩み出た。
軍楽隊はパレードの音楽を止めて、演武用の曲を奏で始める。
リッシュモンがその様子を苦々しく見つめていた。
#navi(割れぬなら……)
#navi(割れぬなら……)
「ソウソウ!」「ダーリン!」
修理が終わって間もないドアを蹴破り、2人の少女が曹操の執務室に押し込んできた。
しかし、そこに曹操の姿は無かった。
1人黙々と書類の整理をしていた副官は、まるでこの世の終わりが来たかのような顔をした。
「久しぶりねシン。元気そうで何よりだわ。
ところで、ソウソウと爆死、どっちが良いかしら?」
ルイズは実に爽やかな笑顔で副官に杖をつきつけた。
「貴方が副官さん? いつも噂を伺ってるわ。
ところで、メガネと釣り糸、どっちが良いかしら?」
キュルケは実に爽やかな笑顔で釣り糸に針を結んだ。
その時、副官は自身の死期を悟った。
……気の毒な事に、彼は曹操の居場所を知らない。
宮殿にある小部屋の一つで、リッシュモンは落ち着かない様子でふらりふらりと足を動かしていた。
どうやら何かを待っているらしい。
それもきっと重大な何かだ。
「戻りました」
「おお、戻ったか!」
小柄な男がドアを開けると、リッシュモンが歓喜の声をあげて駆け寄ってきた。
「よくぞ無事に戻ってきてくれたな。首尾はどうだった?
いや、聞かなくともわかる。
お前が無事に戻ったという事は、見事にあのソウソウとかいう成り上がりを討ち取ったのだな?」
「いえ、それがですね……」
「実にめでたい。
ぶんぶんと飛び回るしか能の無い小虫に過ぎなくとも、あのお人好し姫に知られれば厄介な事になっただろうからな。
いや、実にめでたい」
「ターゲットの居場所がわからないので、帰ってきました」
……こけた。
リッシュモンは盛大にこけた。
見事にこけた。
その拍子に机の角に頭をぶつけ、たんこぶができた。
「子供の使いかっ!!」
リッシュモンは内密の話題である事を忘れ、男を怒鳴り散らした。
ふぅ……と大きく息を吐き、幾分か冷静さを取り戻す。
「何のために給料を払っていると思っている?
身を隠したのなら探し出して始末せんか」
「こっちだって必死に探しましたよ。
見つからんから見つからんと報告したまでです」
「待て、仕事をほったらかして失踪したのか?
それなら職務怠慢を理由に罷免させられるかもしれんが」
「いえ、ターゲットはどこからか部下に指示を出し、しっかりと治安を守っています」
「ならばその指示の出所を辿ればソウソウを見つけられるではないか!」
「駄目でした」
男は即答した。
「……ずいぶんあっさりと諦めるな」
「通信手段も隠れ家も常に変動していて追い切れません。
我らが居所を割り出すよりも早く別の場所に移動してしまうのです」
「だったら居場所を知っていそうな者を吐かせろ。
いくらなんでも副官なら知っているだろう」
「いえ、私もそう思って副官を張り込んでみました。
残念ながら奴は何も知りません」
……同じ頃、ある男が筆者には描写しきれないほど凄惨な目に遭っている。
気の毒な事に、彼は曹操の居場所を知らない。
「ならワルドは?
あのソウソウの腰巾着なら何か知っていてもおかしくあるまい」
「魔法衛士隊隊長を襲うんですか!?
命がいくつあっても足りませんよ!」
「それをなんとかするのが貴様の仕事だろう!!」
「ええと……10人以上で、同時に、しかも不意を衝ければなんとか……」
「目立って仕方が無いな……」
「諦めた方が賢明ですね」
ぐむむ……とリッシュモンが顔を歪める。
彼は必死に頭を働かせた。
今でこそ非常に高い地位に身を置いているものの、そこに至るまでに何度も強引な手段を用いた。
また、現在の職務も決して綺麗な仕事とは言い難い。
曹操はそんなリッシュモンの弱みを嗅ぎ回り、そして上奏に踏み切るだけの情報を集めたのだ。
なんとか情報を闇に葬らなければ、地位はもちろん、命すら危うい。
……いや、無理に殺す必要はない。
誰もが曹操の言葉を信じないような状況を作れば良い。
その為にはどうする?
証拠をすべて消す……無理だ、証拠もおそらく曹操が握っている。
曹操を罷免させる……これならなんとか可能かもしれない。
いくら曹操がアルビオンを救った英雄といえども、無役の平民の言葉ならば政界を動かす力は無い。
このまま長期間姿を消していてもらえれば、今度はそれを理由に罷免させる事ができるだろう。
……いや、相手がそんな事もわからない馬鹿ならば苦労はしまい。
おそらく罷免を逃れる手段を用意しているか、それとも短期決戦を目論んで……
「……来週は降臨祭があったな?」
「ええ、そうですよ。ボケたんですか?」
「当日の警備責任者は誰だ?」
「えっと……たしかワルド子爵とか……あっ!?」
「あ奴等の目論見、読めたぞ」
……冷たい石床の感触で、目が覚めた。
周りを見渡すと、彼女は牢獄に居た。
ルイズはようやく自分に何が起こったかを気づき、飛び起きた。
杖を捜す……杖は無い。
鉄格子を引っ張る……とても頑丈な作りだった。
窓を見上げる……窓にも鉄格子が取り付けられていた。
牢屋を観察する……簡単なトイレと、薄汚れたベット。
ベットの上にパンとチーズと干し肉が置いてあった。
ベットの下には水の入ったボトルが何本かあった。
次にルイズは自分を閉じ込めた犯人について考えてみた。
確か、自分はキュルケと一緒に曹操を探していた。
何日か前にキュルケと連絡がとれなくなって、
仕方なく1人で曹操を探したが、手がかり一つ見つからなくて、
降臨祭の日になっても1人で探し歩いていて、
比較的人が少ない場所を歩いていたら、急に眠くなって……
いくら思い出そうとしても、犯人の顔はおろか体の一部さえ思い出せない。
ルイズは焦った。
どんな目的で捕まってのかはわからないが、このままここに居るのは危ないと。
「誰か居ないのっ!」
声は何度か廊下をこだましたが、返事は無い。
それどころか人の気配が全くしない。
よ~く耳を澄ませてみると、どこからか音楽が聞こえてくる。
その音楽には聞き覚えがある、パレードの音楽だ。
……同じ頃。
パレードは王城前の広場でその歩みを止めた。
「始祖の降臨の日を祝して、悪鬼を追い払う剣舞をご覧に入れましょう」
アンリエッタ、ウェールズといった名士達の前に、女装をした曹操が歩み出た。
軍楽隊はパレードの音楽を止めて、演武用の曲を奏で始める。
リッシュモンがその様子を苦々しく見つめていた。
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