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「闇の廊下、裁きの者。」(2008/07/22 (火) 21:10:18) の最新版変更点
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ガショーンガショーン―――
頭の中でまたあの音が響く。
二日前から聞こえ初め以来ずっと悩まされている。
あの日は丁度進級テストを兼ねた春の使い魔召喚の儀式であった。
皆は意気揚々と杖を振り呪文を唱え、ヘビ、蛙、バクベアーなどを呼び出していった。
やがて無口で定評のある『雪風』のタバサの召喚が終わり、私の番となった。
自慢じゃないが、私は初歩であるコモン・マジックですら成功したことがない。生まれてからまだ一度もだ。
なら何故こんな学院にいるのだと言えば、実習以外成績が良いためである。
しかしそれよりも自分は公爵家の末女であるためやはりコネという部分が多いのだろう。
そうまでしてここに居る私はたまに自己険悪に陥るときがある。
どうしてメイジ失格である自分は貴族として存在しているのだろうか?
メイジや貴族を偽っているような私は近い将来裁かれるのでは…とありもしないことを考えている。
そんな事を考えながら私は杖を気障ったらしく振り上げ、使い魔召喚の呪文を詠唱する。
詠唱が完了し杖を振り下ろし、あっという間もなく閃光が辺り一帯に走り、盛大な爆発を起こした。
ここまでは普通だった、そうココまでは。
失敗したのだろうか?私はそう思い、煙立ちこめる視界の中目を擦り、開けた。
ガショーンガショーン…ガシェン、ガシェン。
ふと耳に聞き慣れない音が響いた。
なんだろうかと顔を歪め、爆発の中心地を見るがそこには何もいない。
使い魔が召喚早々逃げ出したか、そう思いその場に近づこうとしたが…動かない。
身体が動かない、比喩ではなく文字通りからだが地面から出ている大木のように固まっている。
動かない自分自身を必死に振り回し、やっとのことで身体が動いたとき、自分の『後ろ』にいつの間にかいた自分の『使い魔』を爆煙越しに拝むことが出来た。
その姿に『平民』だと感じたがその考えは呆気なく変更された。
――――以上だったのだ、そいつの姿が。
所々赤黒い染みを作っているシャツ、猿のような長い手には灰色の手袋。
そして頭には『赤い三角形の兜』――――――――――――――――――――いや、『赤い三角形の頭』なのだろうか?
いつの間に?と、驚愕したがそいつは再び煙の中に姿を消していった。
やがて煙が晴れた頃にはそいつはその場におらず、周りの生徒達は私の使い魔がいない事を馬鹿にし始めた。
生徒の近くで私を見守っていた教師のコルベールが沈痛な面持ちでこちらに寄ってきた。
「ミス・ヴァリエール…貴方の使い魔は?」
どうしようか?素直に…消えました。と言いたいがあんな奴を使い魔―――違う、生き物ですらないアレを召喚したとは私のプライドが認めなかった。
そう結論付け、私は首を横に振り再度召喚の許可を得た。
あの後、何回やっても成功ならず、いよいよ日が落ちてくる時間に迫ったとき、この続きはまた後日となった。
溜息を吐きながら私はトコトコと自室へと戻っていった。
階段の踊り場であざ笑っているキュルケやモンモランシーには目もくれず、私は階段を上っていく。
やがて階段が終わり、多くの扉がある廊下へとたどり着いたとき――
ガショーンガショーン……ガショーンガショーン。
再びあの音が鳴り響いた、それもこの空間全体に…
私は腰のベルトから杖を―――といっても他の貴族達とは違い余り役に立たなそうだが――を抜き辺りを見回す。
自分の視界からは音が何処から出ているのか分からず、私は杖を構えながら廊下を黙々と歩き始めた。
やがて中間地点と思われる場所まで進んだとき、前方から足音が聞こえてきた。
自分と同じ音を聞いた生徒が居るのだろうかと思ったがそれは違った。
. .
――――再び私の目の前にあの三角形の何かが現れた。
靴音も出さず、迫り寄ってくる。左手には細長い大きな鉄の串、それは血で輝いている。
何故かその姿が『コワイ』と感じた。
私は今まで感じたことのない純粋な恐怖に駆り立てられ、声でなく心が悲鳴を上げながら踵を返し今通ってきた道を戻っていった。
全速力で逃げているにもかかわらず、そいつはゆっくりとした歩みで近づいてきている。
あの後私はなんとか自室に入り危機を逃れた。
それからである、あの音が聞こえ始めたのは…
この音が聞こえるたびに廊下から謎の足音が聞こえ、食堂で昼食を食べているときには遠くからアレがじっとこちらを見つめている。
しかし、今になって思い返せばあの姿は何処かで見たような気がした…ずっと小さい頃に。
はて?と思ったとき、部屋に飾ってある家族の肖像画を見て思い出した。
確か父が一度だけ連れて行ってくれた絵画展に飾られていた。
暗い感じの絵で、槍で刺し貫かれた大勢の人達が鉄の格子に詰められている。
そしてあの三角頭のアイツがデカデカと描かれ、手にはあの時持っていた血まみれの槍。
タイトルは…『霧の日、裁きの―――――――――
ガショーン――――――――――
サイレントヒル2からレッド・ピラミッド・シング
[[戻る>http://www35.atwiki.jp/anozero/pages/53.html#id_c51585d9]]
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ガショーンガショーン―――
頭の中でまたあの音が響く。
二日前から聞こえ初め以来ずっと悩まされている。
あの日は丁度進級テストを兼ねた春の使い魔召喚の儀式であった。
皆は意気揚々と杖を振り呪文を唱え、ヘビ、蛙、バクベアーなどを呼び出していった。
やがて無口で定評のある『雪風』のタバサの召喚が終わり、私の番となった。
自慢じゃないが、私は初歩であるコモン・マジックですら成功したことがない。生まれてからまだ一度もだ。
なら何故こんな学院にいるのだと言えば、実習以外成績が良いためである。
しかしそれよりも自分は公爵家の末女であるためやはりコネという部分が多いのだろう。
そうまでしてここに居る私はたまに自己険悪に陥るときがある。
どうしてメイジ失格である自分は貴族として存在しているのだろうか?
メイジや貴族を偽っているような私は近い将来裁かれるのでは…とありもしないことを考えている。
そんな事を考えながら私は杖を気障ったらしく振り上げ、使い魔召喚の呪文を詠唱する。
詠唱が完了し杖を振り下ろし、あっという間もなく閃光が辺り一帯に走り、盛大な爆発を起こした。
ここまでは普通だった、そうココまでは。
失敗したのだろうか?私はそう思い、煙立ちこめる視界の中目を擦り、開けた。
ガショーンガショーン…ガシェン、ガシェン。
ふと耳に聞き慣れない音が響いた。
なんだろうかと顔を歪め、爆発の中心地を見るがそこには何もいない。
使い魔が召喚早々逃げ出したか、そう思いその場に近づこうとしたが…動かない。
身体が動かない、比喩ではなく文字通りからだが地面から出ている大木のように固まっている。
動かない自分自身を必死に振り回し、やっとのことで身体が動いたとき、自分の『後ろ』にいつの間にかいた自分の『使い魔』を爆煙越しに拝むことが出来た。
その姿に『平民』だと感じたがその考えは呆気なく変更された。
――――異常だったのだ、そいつの姿が。
所々赤黒い染みを作っているシャツ、猿のような長い手には灰色の手袋。
そして頭には『赤い三角形の兜』――――――――――――――――――――いや、『赤い三角形の頭』なのだろうか?
いつの間に?と、驚愕したがそいつは再び煙の中に姿を消していった。
やがて煙が晴れた頃にはそいつはその場におらず、周りの生徒達は私の使い魔がいない事を馬鹿にし始めた。
生徒の近くで私を見守っていた教師のコルベールが沈痛な面持ちでこちらに寄ってきた。
「ミス・ヴァリエール…貴方の使い魔は?」
どうしようか?素直に…消えました。と言いたいがあんな奴を使い魔―――違う、生き物ですらないアレを召喚したとは私のプライドが認めなかった。
そう結論付け、私は首を横に振り再度召喚の許可を得た。
あの後、何回やっても成功ならず、いよいよ日が落ちてくる時間に迫ったとき、この続きはまた後日となった。
溜息を吐きながら私はトコトコと自室へと戻っていった。
階段の踊り場であざ笑っているキュルケやモンモランシーには目もくれず、私は階段を上っていく。
やがて階段が終わり、多くの扉がある廊下へとたどり着いたとき――
ガショーンガショーン……ガショーンガショーン。
再びあの音が鳴り響いた、それもこの空間全体に…
私は腰のベルトから杖を―――といっても他の貴族達とは違い余り役に立たなそうだが――を抜き辺りを見回す。
自分の視界からは音が何処から出ているのか分からず、私は杖を構えながら廊下を黙々と歩き始めた。
やがて中間地点と思われる場所まで進んだとき、前方から足音が聞こえてきた。
自分と同じ音を聞いた生徒が居るのだろうかと思ったがそれは違った。
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――――再び私の目の前にあの三角形の何かが現れた。
靴音も出さず、迫り寄ってくる。左手には細長い大きな鉄の串、それは血で輝いている。
何故かその姿が『コワイ』と感じた。
私は今まで感じたことのない純粋な恐怖に駆り立てられ、声でなく心が悲鳴を上げながら踵を返し今通ってきた道を戻っていった。
全速力で逃げているにもかかわらず、そいつはゆっくりとした歩みで近づいてきている。
あの後私はなんとか自室に入り危機を逃れた。
それからである、あの音が聞こえ始めたのは…
この音が聞こえるたびに廊下から謎の足音が聞こえ、食堂で昼食を食べているときには遠くからアレがじっとこちらを見つめている。
しかし、今になって思い返せばあの姿は何処かで見たような気がした…ずっと小さい頃に。
はて?と思ったとき、部屋に飾ってある家族の肖像画を見て思い出した。
確か父が一度だけ連れて行ってくれた絵画展に飾られていた。
暗い感じの絵で、槍で刺し貫かれた大勢の人達が鉄の格子に詰められている。
そしてあの三角頭のアイツがデカデカと描かれ、手にはあの時持っていた血まみれの槍。
タイトルは…『霧の日、裁きの―――――――――
ガショーン――――――――――
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