「鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐11」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐11」(2008/05/14 (水) 19:14:31) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
#navi(鮮血の使い魔)
&setpagename(第11話 すぐに忘れてしまうような夢だけど)
#settitle(第11話 すぐに忘れてしまうような夢だけど)
アンドバリの指輪を所持する可能性の高いクロムウェルは、西の浮遊大陸アルビオンにいる。
如何にしてそこへ行くか。
異世界であるハルケギニアを一人で旅するほど無謀ではない。
しかし正直に話してルイズが協力してくれるとも思えない。
今度フーケが来た時に協力を強要するか。
だが渡りに船とばかりに、フーケから情報を得た翌日、機が訪れた。
学院を視察しに来たトリステイン王女アンリエッタがその夜、
幼少の頃遊び相手であったルイズの部屋を密かに訪ねてきたのだ。
アンリエッタは唯一信頼できる友人であるルイズに頼み事をする。
アンリエッタは隣国ゲルマニアとトリステインと同盟を結ぶため
ゲルマニアの皇帝と婚約をする事になってしまったのだ。
理由は、今アルビオンで反乱を起こしている貴族派が、
王党派を倒しアルビオンの実権を握った後、トリステインに攻め入るだろうため、
対抗するにはゲルマニアの戦力が必要、つまりトリステイン弱小国。
そこでアルビオンの皇太子ウェールズの持っている手紙が問題なのだ。
かつてアンリエッタがウェールズに送った手紙の内容が露見したら、
アンリエッタとゲルマニア皇帝の婚約が破棄されてしまう内容らしく、
そうなればトリステインは強大なアルビオンに一国で対抗せねばならない。
故にその手紙を何としても回収せねばならず、しかし信頼し頼れる者がいないため、
やむを得ず旧友であるルイズに頼むしかないとの事。
それをルイズが引き受けると、アンリエッタは手紙を返してもらう旨をしたためた手紙と、
餞別にと水のルビーという指輪をルイズに渡した。
当然、使い魔である言葉はルイズを守るためアルビオンへ同行する。
真の目的を秘したまま。
翌日の早朝、二人は旅支度を整える。
もちろん誠とチェーンソーの入った鞄も持って行く。
そして馬の用意もすませさあ出発というところで魔法衛士隊のワルドという男が現れた。
グリフォンに乗ったダンディな男で、彼は親同士が決めたルイズの婚約者だという。
ルイズも満更ではないらしく、ワルドと久々に再会できて嬉しいようだ。
そんなルイズを見て、言葉は、思う。
(裏切り者の私より、ルイズさんを愛してくれるワルドさんが側にいた方が……。
……アルビオンに着いて、任務を終えたら、後はワルドさんに託せば……)
グリフォンに乗ってきたワルドは、ルイズに一緒にグリフォンに乗るよう誘った。
だがルイズは、なぜか言葉がさみしそうな瞳をしているのに気づいて断る。
「コトノハ……えっと、この子、私の使い魔なんだけど、一人だけ馬っていうのは……」
「ふむ、そうか。三人乗りは少々きついし……」
「私はコトノハと一緒に馬で行くわ。せっかくのご厚意、ごめんなさいワルド様」
「……やむを得ないな、僕のグリフォンは低空で併走していこう」
三人の旅路は順調だった。
特に障害も無くその晩にはラ・ロシェールに到着し、上等な宿に泊まる。
アルビオン行きの船が出るまでまだ日があり足止めを余儀なくされ、
翌日の出航まで三人はラ・ロシェールでのんびりすごす事になった。
ワルドはルイズをデートに誘うなどして、数年振りに親交を深める。
言葉も誠とデートするなどして、以下省略。
大事の前なので、鞄から誠を出すなどといった行為はさすがに自重した言葉だった。
そんな言葉が、街外れへと歩いて行く。
正確には、ローブを着た女性の後を追っている。
人気の無い岩陰に入ると、ローブの女は岩に背中を預けて言葉を待っていた。
「声をかけようかと思ったけど、気づいてくれたようで助かったよ」
「新しい収穫はありましたか?」
「クロムウェルって男についてもう少し詳しく調べてみた。
ま、悪党としちゃ三流。欲望も単純で低俗で下劣。
頭もたいしてよくないから、接触さえできれば絡め取るのは簡単だろうね」
「私のような平民がクロムウェルに会う方法は何かありませんか?」
「そうさね、大きな手柄でも立てれば、王党派の重要人物の首とか持って行けば……。
おっと失礼、そんな事しちゃ、あんたのご主人様が黙っていないわね。
でも、結構いい案だと思うのよ。ふふっ、ご主人様を裏切る裏切らないは、あんたの自由」
「……他に方法は」
「そのデカい胸で誘惑するってのはどうだい?
珍しい黒髪に、貴族でもそうはいないレベルの容姿で、その胸。
それでオチない男は、よっぽど特殊な趣味をしてるだろうね。あっはっは。
まあ、今日のところはこんなもんでおいとまさせてもらうよ。
アルビオン行きの船には一応私も乗るつもりだから。じゃあね」
立ち去っていくフーケを見送って、言葉はその場に腰を下ろした。
「誠君……」
鞄を空け、チェーンソーの刃の隣に転がっている誠の頭を取り出す。
そして、豊かな胸の谷間で抱きしめて、誠の髪に顔をうずめる。
「誠君……絶対に生き返らせて……助けて上げます……。
だから、だから私を助けてください。誠君」
どうしてだろう。こんなに近くにいるのに、抱きしめているのに。
最愛の伊藤誠が、とても遠く感じる。
日が暮れて、テーブルには豪華なディナーが並んでいた。
「うわぁ、おいしそう」
ディナーを前にして誠はとびっきりの笑顔を浮かべてくれた。
場所は都内の高層ビルにある高級レストラン。
彼の活き活きとした笑顔が、なぜかどうしようもなく愛しい。
「さあ、遠慮せずどうぞ」
そう言われて、二人はさっそくナイフとフォークを手に取った。
誠は普段お目にかかれない料理に目の色を変えている。
静々とスープを飲む彼女とは大違いだ。
「まあまあね」
「これがまあまあ? お前、いったいいつもどんなもん食ってるんだよ」
「どんなのって、あんたも食堂には入った事はあるでしょう?」
「そういえばそうだった。そっちの方がおいしいのか?」
「まあね。でも、こっちも悪くないわ。さすがコトノハがお勧めする店ね」
笑い合う。
グラスを持って笑う、言葉。
ステーキを頬張りながら笑う、誠。
スープを上品に飲んで笑う、ルイズ。
ああ、そうなんだ。
これが、私の――。
瞼を開け、見慣れぬ天井に少々困惑し、ここがラ・ロシェールの宿だと思い出す言葉。
その、思い出すという思考の動きの間に、さっきまで見ていた夢の内容を忘却してしまう。
楽しい夢だった気がする。
という事は、多分、誠と一緒の夢だったのだろう。
誠と二人きりの夢だったのだろう。
すぐに忘れてしまうような夢だけど、言葉の身体に活力が湧いてくる。
ベッドから降りた言葉は寝巻きから制服に着替えると、
鞄から誠を取り出しおはようのキスをした。
窓の外では小鳥がさえずっている。清々しい朝の空気が、窓の隙間から流れてきた。
だから窓を開けて深呼吸。
今日はいよいよアルビオンに向けて出発する。
言葉にとっては驚きの空旅の始まりだ。
天に届くほどの大樹が桟橋となり、そこに停泊する空飛ぶ船に乗船する。
なぜ船が空を飛ぶのかさすがに気になった言葉は、
ルイズから風石という物の存在を聞かされ感心した。
船は飛ぶ。風の国アルビオンへ。
第11話 すぐに忘れてしまうような夢だけど
#navi(鮮血の使い魔)
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: