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Chapter1 召喚
「ゴホ、ゴホッ………」
ルイズは、自らのサモン・サーヴァントによって生まれた爆発の煙に咳込みながらも、
今までとは違う感覚に確かな手応えを感じていた。
やがて煙が晴れ、爆発の中心に何かが見えてくる。級友達は既に召喚の儀式を終え、
各々立派と言える使い魔を召喚している。自分はどんな使い魔を召喚したのだろう……ルイズは祈りにも似た気持ちで、見えてくる「何か」を見つめていた。
「エクセル!起きなよ」
「ひゃっ!?」
完全に集中していたからだろうか、突然聞こえた声に、ルイズは思わず情けない声を発してしまう。
「喋った……って事は、まさか人?」
やがて煙が晴れ切る。回りでルイズのサモン・サーヴァントを見ていたクラスメートも、
ルイズが何を召喚したのだろうと、興味津々のようだ。それだけに、事態の理解も早い。
まず目に入るのは、横たわっている人間。見た目からして少年のようだ。顔付きも幼い。
その人間の上に、黒い猫。背中にはささやかな翼が生えている。
そして地面に突き刺さった、黄色い武器のようなもの。剣にも、槍にも見える、奇抜な形の武器だ。
「あんた、誰」
微かな失望を込めて、ルイズは問い掛けた。しかし少年からの反応は無い。
「ん……ん」
と、少年から唸りが洩れる。見た目に違わず、可愛い声である。
「早く起きな……きゃっ!」
ルイズが近寄ろうとすると、少年の上に乗っていた猫が飛び掛かってくる。しかし所詮は小動物、爪に気をつけさえすれば、障害にはなりえなかった。
「見ろよ、ルイズが自分の召喚した使い魔に襲われてるぜ」
「さすがルイズだ!」
その台詞をきっかけに、人垣から笑いが巻き起こり、それはいつしか爆笑へと変わった。
野次に赤面しながらも、ルイズは倒れている少年を揺すり、意識を覚醒させようとしていた。既に覚醒しかかっている事もあり、僅かに目を開き、焦点がルイズに合う。
「きみは……誰?」
「それはこっちのセリフよっ!」
ルイズが怒鳴るも、少年はキョトンとしてルイズを見ているだけだった。怒っている理由がわからないのだから仕方ないだろう。その様子に、ルイズの機嫌はさらに悪くなる。
「だから!あんたの名前はって聞いてるの!」
少年は体を起こし、立ち上がって
「僕はエクセルっていう名前だけど……」
埃の付いた体を払いながらそう告げた。
「いったいどこの平民よ、それは……ミスタ・コルベール!」
「なんだね、ミス・ヴァリエール」
「もう一回召喚させて下さい!」
その言葉には確かな懇願が満ちていたが、頭の淋しい男性――コルベールは、首を振った。
「それはダメだ、ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか」
「決まりだよ、二年生に進級する際、君達は使い魔を召喚する。今やっている通りに――
そして、一度召喚した使い魔は変更する事はできない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。好む好まざるに関わらず、彼かその動物を使い魔にするしかない」
「でも!」
食い下がろうとするルイズだが、コルベールは聞く耳を持たない。
「これは伝統なんだ、ミス・ヴァリエール。どちらかを使い魔に選ばなくてはならない」
がっくりと肩を落とすルイズだが、どちらか使い魔にしなければならないと言われれば、今胸に抱える形になっているこの猫を使い魔にするしかないと思い、猫を小突く。
よくよく考えれば、少年は気を失っていたのだから、声を発したのがこの猫だと行き着く。少しはマシか、とルイズは思い、猫に対して使い魔契約をしようとするも
「僕はエクセルの使い魔なんだって!二重契約なんか出来ないしする気もない!」
猫はルイズの手を振り払い、エクセルの元に戻る。
「ならば仕方ない、そこの少年を使い魔にするしかないね」
「そんな……」
この世の終わりを体言したかのように、ルイズは肩を落とし――何かを決心したように、エクセルの目の前まで歩を進める。
「感謝しなさいよね、貴族にこんなことされるなんて、普通は一生無いんだから」
「え……?」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
ルイズが手に持った小さな杖がエクセルの額に置かれ、少しずつルイズの唇が、エクセルの唇へと近づき――
「ん……」
「むーっ!?」
唇が重なる。エクセルは離れようとするものの、ルイズがしがみついていてそれを許さない。
やがて、唇が離れる。ルイズが顔を真っ赤にしながら、エクセルから距離をとる。
「サモン・サーヴァントは何回も失敗したが、コントラクト・サーヴァントはきちんとできたね」
コルベールが嬉しそうに言った。キスをされたエクセルだが、余りの事に反応できずにいたものの、急激に熱を持ち始めた体に、苦痛で表情を歪めた。
「すぐ終わるわ、使い魔のルーンが刻まれているだけだから」
その言葉通り、熱に支配されていた体はすぐに冷やされた。
「一体、何が」
エクセルが異常がないか体を確かめていると、いつの間にか近づいて来ていたコルベールが、エクセルの右手の甲を確かめた。そこには、神聖文字に似た字が刻まれていた。
「珍しいルーンだな」
コルベールはそう呟いた後、
「さて、皆教室に戻るぞ」
踵を返し、宙に浮いた。エクセルはその様子に、驚きを隠せないでいた。
「翼もないのに、空を飛んでる」
コルベールが宙に浮いたのを皮切りに、回りの人垣も次々と宙に浮き、最終的にルイズ以外の全員が宙に浮いていた。
「ルイズ、お前は歩いて来いよ!」
「あいつフライはおろか、レビテーションさえまともに出来ないんだぜ」
2500
口々にそう言って、近くに建っていた石造りの建物へ飛び去って
いった。二人と一匹のみになった瞬間、ルイズは怒鳴った。
「あんた一体なんなのよ!」
「そんな事言われても……ここが何処かもわからないのに」
「あんた平民なだけじゃなくて知識もないのね、ここはトリステイン魔法学院よ」
「魔法学院!」
エクセルは首を傾げた。ルイズはさらに句を継ぐ。
「そして私がルイズ・ド・ラ・ヴァリエール今日からあんたのご主人様よ、覚えておきなさい」
ルイズは言い切ると、石造りの建物へと歩を進める。
「ルイズは飛んでいかないの?」
なんとなく聞いたのだが、それが逆鱗にふれたのか、ルイズ一度立ち止まってこちらを向きは「いいから早くついてきなさい!」と怒鳴り、再び歩いていった。
「何なんだよもう……」
エクセルは地に刺さっていた武器を掴む。しかしその瞬間、体の異変に気がついた。
「エクセリオンが……?」
何だか、体が軽くなったような気がする。その違和感に動揺していると、足元の猫が問い掛けてくる。
「どーしたの、エクセル」
猫が訝しげに問う。
「ロゼ……いや、なんでもないよ」
「本当に?」
「本当だよ。とりあえず、ここがどのあたりなのかもわからないし、ルイズに付いていってみよう」
エクセル、続いてロゼもルイズの後を追った。
第一節了
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