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「大使い魔17-08」(2008/05/03 (土) 16:38:41) の最新版変更点
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だがだん♪ だがだんだがだん♪
「大使い魔ー、ワーンセブーン!!」
オゥオオー オゥオオー 彼こそは~
オゥオオー オゥオオー 大使い魔~ワンセブ~ン
燃える真っ赤な太陽
ギラリ輝く装甲
見よ! 右手の虚無のルーン
風の唸りか雄叫びか~
イザベラ企画の大殺戮
立て! 要塞ワンセブン
防げる者は他になし
オゥオゥオゥ オゥオオー オゥオオー 彼こそは~
オゥオオー オゥオオー 大使い魔~ワンセブ~ン
第八話「運命の再会! ウェールズとティファニア」
「こんなものか……」
ハカイダーの前に、傭兵たちは余りにも無力だった。
なるべく殺さないように戦っていた魔天郎とトトメスとは違い、最初から殺す気で戦っていたハカイダーは迷うことなく傭兵たちを殺しまくった。
「ほんと、カトレアさんが止めないと血の雨が降るわね」
「俺はいつでも全力投球、全力打球、全力疾走だ」
「カトレアさんが同行するのも分かるわね……」
生き残った傭兵たちは既に戦意を喪失していた。
魔天郎が傭兵の一人を尋問していた。
「どうでした、マテンローの小父様?」
「……昨日の連中同様、誰かに雇われたらしい」
「たぶん同じ奴に雇われたんでしょうね」
トトメスの一言にハカイダーはうなずき、続いてこう言った。
「そろそろ桟橋に行こう。最悪、繰上げ出港なんてことになるかもしれん」
仮面の男は焦っていた。
ポワトリンに圧倒されていたからだ。
「大人しく引いて下さいまし。私は命をとる気はありません」
「……」
「引いてはくれないのですね……」
仮面の男が放ったエア・カッターを軽々と避け、ポワトリンは杖を持った手を蹴り上げた。
直後、ポワトリンも予想していなかった事態が起きた。
「……!!」
ギーシュのワルキューレたちが手にしたレイピアが、仮面の男を刺し貫いていた。
声になっていない断末魔をあげ、何故か男はローブと仮面を残して消滅した。
「消滅した!?」
「『偏在』でしたわね」
ポワトリンののんきな感想の直後、階下から怒声が聞こえた。
「傭兵たちがそこまで来ている。船に乗り込んで出港させよう」
ワルドの発言に、ルイズは面食らった。
「待って、まだサブローたちが……」
ルイズが反対しようとした直後、シルフィードがやって来た。
「みんなは先に行って。マテンローさんたちを回収してから追いつく」
タバサはそう言ってからシルフィードに乗り、町へと戻っていった。
「そういうわけだ。早く乗り込もう」
桟橋へと続く道。
シャルル、ハカイダー、トトメスの三人は桟橋を目指して走っていた。
シャルルは仮面と帽子とカツラを脇に抱え、走りながら口を動かした。
「間に合うかな?」
「分からん。俺たちを置いていかないことを祈るしかない」
そこへ、タバサを乗せたシルフィードが降りてきた。
「みんな、乗って!」
「シャルロット!!」
「タバサとシルフィードが来たってことは……」
「マジで置いていかれたみたいだな、俺たちは」
その頃、桟橋ではワルドがマリー・ガラント号の船長と交渉していた。
「風石が足りない分は僕が魔法で補う。それと料金もはずもう」
ワルドのこの一言で、船長はアッサリ出港を決めた。
ルイズたちは気付いていなかったが、異変を察知して一足先にフーケとゴールドウルフが乗船していた。
数時間後、朝になり、ようやくアルビオン大陸が見え始めた。
甲板に立ち、アルビオン大陸を見ているアンリエッタが発した疑問に、ギーシュが答えた。
「マテンローさんたちは大丈夫でしょうか?」
「タバサとシルフィードがいますからね。じきに追いつくかと」
一方、ルイズはワンセブンが自分のために作ってくれたショットガンの手入れをし、ワルドはそれを興味深そうに見ていた。
「ルイズ、その銃は?」
「ワンセブンが私のために作ってくれた銃です」
「ほう、君の使い魔が?」
「はい。万が一、自分が出っ張れない場合を想定して作ったそうです」
一方、ルイズたちが乗っているとは知らぬフーケとゴールドウルフは、甲板に出て日の光を浴びることにした。
「オォゥ、懐かしきはマチルダ様の生まれし故郷」
「アタシにとってはあの子がいるところ以外の感情はないけどね」
ショットガンの手入れを終えたルイズが、偶然フーケの隣に立った。
そして、視線が合った。
「「あ!!」」
「お、お前、何でこのフネに!?」
「あんたこそ何で乗ってんのよ!?」
フーケは杖を、ルイズはショットガンを構えて臨戦態勢に入ったが、ゴールドウルフとカトレアに止められた。
「マチルダ様、今はそのようなことをしている場合では……」
「ルイズ、落ち着いて」
二人に諌められ、フーケとルイズは臨戦態勢を解いた。
「この任務が終わったら、改めてとっ捕まえてやるわ」
「誰が……。ん、任務?」
「あんたには関係ないわよ!」
フーケは周囲を見回し、アンリエッタもいることに気付いた。
「な、何で王女までいるのさ!?」
「任務です」
「……なあ、教えておくれよ。マジで」
「……協力してくれるのなら。後、執行猶予もお付けしますわ」
「……その取引、乗った」
そんな軽率な。
「ありがとうございます」
「で、なんだい、任務って」
「プリンス・オブ・ウェールズを説得し、亡命させることです」
「ウェールズを!?」
「マチルダ、我々は本気です」
「やっぱ、あんたの方は覚えてたか。ま、それは置いといて、……アタシの方も俄然やる気が出てきたよ」
マチルダとアンリエッタは、無言で握手した。
「……ゴールドウルフ、だったかな?」
「ああ。どうした、ミスタ・グラモン」
「なーんかフネがこっちに向かってきているような」
「貴族派か?」
「だったら、レコン・キスタの旗を掲げているはずなのだが」
「確かに、旗を掲げていないな」
「……」
「……」
「「空賊だ―――――っ!!!」」
ギーシュとゴールドウルフの絶叫に、ルイズたちや船員たちも反応した。
しかし、空賊船はあっという間にマリーガラント号に接近、併走していた。
一方、一昼夜かけてマリー・ガラント号を追っていたシャルルたち。
「アルビオンが見えてきたね」
「……お父様、様子が変」
「どれどれ……。空賊に鹵獲されたみたいだな」
その一言に面食らったトトメスが、シャルルに話しかけた
「小父様、どうするの?」
「空賊船の方に殴り込む。見ていろよー!」
シャルルは仮面と帽子とカツラを身に着け、魔天郎に戻った。
「小父様、怖いのねー……」
「言えてるわね」
シルフィードは、速度を上げて空賊船へと突撃していった。
空賊船の船長室。
ルイズたちが、連れて来られていた。
ルイズとアンリエッタとマチルダは、妙に冷めた視線で船長を見ていた。
「何故、そのような格好を?」
「それ以前に、何故空賊などに身をやつしているの?」
「つーか何、そのヒゲ?」
「やっぱりバレていたか……」
船長はそうぼやいでから、カツラと眼帯と付け髭を外した。
そこにいたのは、ウェールズ・テューダーであった。
「で、何用だい? アン、ルイズ」
「「貴方を亡命させます」」
「拒否する」
ウェールズはきっぱりと拒否し、机においてあった酒を一気飲みした。
「正気かい!?」
「正気さ、マチルダ。ティファニアがいないのに亡命したって、空しいだけさ。レコン・キスタの艦隊に一人で突撃した方がまだマシだよ」
「王子様、そんなバカな事をして、ティファニアが喜ぶとでも……」
「悲しむのは百も承知だ! でも、ティファニアはもういないんだ……」
「ウェールズ、ならば、尚更生きるべきでは?」
「ティファニアがいないこの世界でか?」
「全く、意固地にも程があるね! いいかい……」
マチルダが口を開くより早く、甲板の方で轟音が響いた。
「サブローたちかしら?」
カトレアはそう言って、甲板へと駆け出し、ルイズたちも後を追った。
甲板ではハカイダーたちが暴れまわっていた。
「どこだ!? ご主人、どこだー!!」
カトレアが咳き込みながら見たのは、自分を呼びながら船員たちを手当たり次第に殴っているハカイダーの姿であった。
「サブロー、止めなさい!」
カトレアの怒声に反応したハカイダーは、声がした方向に視線を移した。
「無事だったか、ご主人!」
「この人たちは空賊ではないわ。アルビオンの王党派よ」
「何と!?」
「……で、あんたたちは足りない物資を補うために、空賊に扮して貴族派に送られるはずの物資を横取りしていた、と」
「そうだ」
「そして、偶然にも従姉妹とその仲間たちが乗ったフネを拿捕したわけか」
「いやー、こっちも驚いたよ」
「……」
ほろ酔い状態であっけらかんと言い切るウェールズを見て、サブローは怒りが再燃した。
「ご主人、この酔っ払いの顔を殴っていいか?」
「ダメよ!」
「……」
「隠し港とはね」
「ああ、あちら側もここからフネが出入りするとは思っていないだろう。そういえばマチルダ、何か言いかけていたようだが?」
「……後であんたの部屋に行っていいかい? そのときに話す」
数分後、ウェールズの部屋に、マチルダ、アンリエッタ、ルイズが集まっていた。
「……ウェールズ、今言うことはね……サンタにとって最高の吉報になるはずだよ」
「……」
「あんたが惚れた女、ティファニア・テューダーは、生きてるよ」
「……!!」
その言葉に、ウェールズだけでなくルイズとアンリエッタも驚愕した。
「シティオブサウスゴータとロサイスを結ぶ街道の近辺にあるウエストウッド村で、戦災孤児たちと一緒に生活してるよ」
「そうか……、生きていたんだ。ティファニアが……」
嬉しさの余り、とめどなくあふれる涙を拭かずにウェールズは呟いた。
「案内してくれるか?」
「そうしたいのは山々なんだけど……」
「王子様が出るのは危険です」
「ルイズの言う通りよ。ティファニアを連れてくるのは私たちに任せて」
「……頼む。ティファニアと一緒なら、僕は喜んでトリステインに亡命するよ」
数時間後、ウエストウッド村では。
「テファ、こんな斬り方でいいの?」
「うん。そんな風に薪を斬って、カミタマン」
「りょーかい。それにしても、レイとロボコン遅いな」
「そうね。どうしたのかしら?」
直後、バイクの走行音が聞こえてきた。
「あ、『黒いユニコーン』とロボコンの……あれ? なんか変だよ」
「うん……。黒いユニコーンの他に、他の鉄の馬が走る音も聞こえる」
森を突き抜け、レイが乗った黒いユニコーンとロボコンカー、そしてサブローが乗った白いカラスが来た。
「「テファ、ただいま」」
「二人ともお帰り。後ろの黒ずくめの人は?」
「この人? 大丈夫、レイのすぐ上のお兄さんだよ」
「初めまして、ティファニア・テューダー。俺はサブローだ」
「初めまして……。貴方はどうして私の名前を?」
「分かりやすく言うなら、アンリエッタ姫に教えてもらったのさ」
「……アンが!?」
「マチルダがあんたが生きていることを教えてくれてな。それを聞いて舞い上がったウェールズに頼まれて迎えに来たのさ」
サブローが言った直後、タバサと魔天郎とマチルダが乗ったシルフィードが降りてきた。
「初めまして、ティファニア嬢。私は蜃気楼の国から来た幻の怪人、魔天郎だ」
「はあ……」
「安心しな、テファ。そいつは味方だよ」
「マチルダ姉さん! あれ、ゴールドウルフは?」
「……あいつなら、ニューカッスル城でウェールズと一緒に留守番してるよ」
数分後、マチルダと魔天郎の説明を聞いたティファニアの顔は、暗かった。
「テファ、王子さんのところに行こうよ」
「レイ……。でも、私……」
「確かに半分エルフだよ、テファは。でも、会いたいんだろ、王子さんに?」
「うん」
「なら決まりだ」
「でも、みんなが……」
「慌てるなよ、ジムたちも一緒さ。と言うわけで、早くここを離れる準備をしないと。サブロー兄(に)いと魔天郎さんとタバサちゃんも手伝って」
かくして、ティファニアたちの一大引越し作業が開始された。
まず最初に、マチルダが錬金で大きな鉄のかごとシルフィード用のサドル、その二つを連結する太く丈夫な鎖を作った。
魔天郎とタバサは、ティファニアとカミタマンと子供たちと一緒に家具の梱包。
サブローとレイとロボコンは大きい家具を運んで巨大かごに収納し、全部積み終わってからシルフィードの背中にサドルを着けた。
「きついのね~」
「ニューカッスルに着くまで。我慢して」
そして日が暮れ始めた頃、シルフィードのサドルにタバサと魔天郎、かごの方に家具一式とマチルダと子供たちが乗った。
カミタマンはロボコンカーに、ティファニアはレイが運転する装甲トライク・黒いユニコーンに乗った。
「……」
サブローが無言で白いカラスのエンジンを起動させたのを合図に、魔天郎たちはニューカッスル城へと向かった。
日が沈んだ直後のニューカッスル城。
ウェールズは今か今かと待ってそわそわしていた。
「王子様、落ち着いてください」
「コレが落ち着いていられるか」
ウェールズが言い切った直後、城を包囲するレコン・キスタの戦艦の砲撃音が響いた。
二つのカッタートルネードが数隻の戦艦を切り刻み、その隙を突いてシルフィードが敵陣を突破。
それに続いて、ロボコンカーと白いカラスと黒いユニコーンも敵陣を突破し、無事に城内に入った。
黒いユニコーンから降りたテファを確認したウェールズは、臣下たちを押しのけて走り出した。
「ティファニアー!!」
「ウェールズ……」
無我夢中でティファニアを抱きしめ、ウェールズは狂喜乱舞した。
その光景を見ていたカミタマンは、レイとロボコンに尋ねた。
「レイ、ロボコン、どうする?」
「こっちに気付くのを待つしかないな」
「右に同じ」
家具と子供たちをかごから降ろしながら、レイとロボコンは淡白に答えた。
ウェールズの部屋。
ウェールズとティファニア、そしてルイズとアンリエッタとマチルダがいた。
「イーグル号に全員乗れるのかい?」
「少し無理をすれば可能だな」
「……あの子達ぐらいの人数なら、ワンセブンに乗せられます」
「ルイズ、君の使い魔はそんなに大きいのか?」
「50メイルぐらいはあります」
「私とマチルダもこの目で見ているから、保障できるわ」
ジムたちと、ウエストウッド村から持ってきた家具について話し合っていたところ、ドアをノックする音と、レイの声が響いた。
「王子さーん。ワルドって人が話があるって言ってるよー」
「分かった」
ウェールズの返事に呼応するように開いたドアから、ワルドが入ってきた。
「子爵殿、どうした? 晩餐会にはまだ早いぞ」
「いえ、実は頼みたいことがありまして」
「何だい?」
「明日この城でルイズと式を挙げたいので、殿下に式を取り仕切ってもらおうと思いまして」
ワルドのこの一言に、ウェールズ以外の4人が絶句した。
ティファニアと再会できた嬉しさで有頂天になっていたウェールズの方は、嬉々として快諾した。
「めでたい話じゃないか。喜んで引き受けよう」
ウェールズがアッサリ引き受けたため、明日のイーグル号の出発前に、ワルドとルイズの結婚式が行われることとなった。
無論、ルイズの意思とは関係無しに。
時は少しだけ過ぎて、パーティーが始まった。
ウェールズが亡命を決意してくれたのが嬉しかったのか、みんなの表情は一様に明るく、場の雰囲気も朗らかだった。
「やっぱり、ティファニアのことは……」
「今は隠すべきよ」
「そんなぁ。何とかならないのかい、アンリエッタ」
「簡単に何とかなったら苦労はしないわ」
情けない声を出すウェールズを見て、見かねたティファニアが会話に割って入った。
「私はいいの……。ウェールズと一緒だから」
「ティファニア……」
ティファニアは、ロボコンが万が一を想定して作った、つばがやたら広く、顔以外をヒラヒラで隠した帽子をかぶっていた。
城の者たちは首をかしげたが、ロボコンの「小さい頃の事故で耳が焼け爛れている」という嘘にアッサリ納得した。
ティファニ眩しいくらいの笑顔を見せるウェールズだったが、父王や、ティファニアの正体を知っているモノたちへ向けた顔は嫌悪と殺意だけが浮かんでいた。
「ウェールズ、アンから聞いたの。伯父様とうまくいっていないって」
「いいんだよ。あんな奴がどうなろうと」
「ウェールズ……、どうして自分のお父様に対してそんなひどいことを言うの?」
「……父親だからさ」
一方、ルイズは困惑していた。
明日、いきなり自分の結婚式が執り行われるからだ。
(ワンセブン……)
ルイズの心は本人が気付かぬうちに、ワンセブンの方に大きく傾いていた。
翌朝、礼拝堂。
ワルドと、花嫁衣裳に身を包んだルイズがいた。
式に出席していたのは、アンリエッタ、カトレア、サブロー、魔天郎、タバサ、キュルケ、ギーシュ、先住魔法で人間に化けたきゅいきゅい、フレイム、ヴェルダンテ、テファ、そしてレイとカミタマンとロボコンだけであった。
カトレアの手には、ルイズから預かったワンエイトヘルがあった。
神官役のウェールズは朗らかに式を進める。
この式が終わり次第、ルイズたちはイーグル号に乗ってアルビオンを脱出する手はずだった
だが、異変は起きた。
「ワルド様、私の力で、何を手に入れるのですか?」
突如としてルイズがワルドに問いかけた。
「どうしたんだい、僕のルイズ?」
「……トリステイン? 聖地? それとも両方? 私の力を借りて……」
あっという間に固まったワルドを見て、ルイズは確信した。
「やっぱり、貴方が愛したのは私ではなく、あるかどうかも分からない私の魔法の才能だったのね……」
何故気付いた、と言わんばかりの表情でルイズを見ながら、ワルドは口を開けた。
「まいったな……、土壇場でこんなコトになるなんて。けど、目的は全部果たさせてもらうよ」
「目的?」
「一つはアンリエッタの命。もう一つはウェールズの命。最後の一つは君を手に入れることだ!」
ワルドはそう言い切り、ルイズの肩を強く掴み、盾にしてからウェールズたちと対峙した。
直後、鋭い轟音が近づき、何かがぶつかった衝撃で礼拝堂の壁が大きく崩れた。
「な、何だ!?」
動揺するワルドを振り解いたルイズがその場を離れた直後、ワルド目掛けて巨大な何かが突っ込んできた。
とっさに避けたワルドには、それは足に見えた。
「一体何が起きた!?」
埃が薄れて視界が晴れると、そこにはワンセブンがいた。
「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド!!」
「貴様は、ルイズの使い魔……!!」
「私はお前を、ルイズちゃんを邪なことに利用しようとしたお前を許さない! 必ず殺す!!」
「ほざけ! 僕は聖地を……、全てを手に入れる!」
「世迷い言は気が触れてから言え!」
「言うに事欠いて……。残念だが僕はこれで失礼させてもらおう!」
ワルドはそう言った直後、消滅した。
「偏在だと!?」
ルイズもこれには面食らった。
「い、いつの間に?」
一方、ニューカッスルを包囲する戦艦の内の一隻。
「くそ、よりによってルイズの使い魔がいきなりアルビオンに来るとは!」
甲板に立つ本物のワルドが忌々しげに舌打ちしていた。
レコン・キスタの艦隊を視界に捕捉したワンセブンは、迷わず両足のナイキ級ミサイルと、ミサイルパンチを同時に発射した。
戦艦が一隻、また一隻と、轟音と閃光の中に掻き消えていった。
「あれだけの数のフネをこうも簡単に……!!」
ワルドは僚艦が手当たり次第に破壊される様を見て戦慄した。
一方のワンセブンは、わざと照準から外した、本物のワルドが乗るフネを睨み付けた。
怒りが収まらないワンセブンは、ワルドを葬り去るために最終兵器を発動させた。
「グラビトォオオオン!!!」
パキューン、パキューン、パキューン、バギィィィィン!!
ワンセブンの咆哮を聞いて危険を察知したワルドは、瞬時にフネから脱出した。
シュビビビビ~! バゴーン! ズギャァーン!! ドォッカァァァ―――ンッ!!!
直後、ワルドがさっきまで乗っていたフネが激しく押しつぶされ、大爆発した。
ワルドは押しつぶされずに済んだが、残骸交じりの爆風が直撃し、左腕が吹き飛んだ。
「ワンセブンさん、どうして来たの!?」
アンリエッタの声をスルーして、ワンセブンはみんなにこう言った。
「話は後だ。みんな、トリステインに戻ろう!!」
要塞形態に変形したワンセブンを見て、今度はウェールズが口を開いた。
「マチルダたちが気がかりだから、僕たちはイーグル号に乗るよ」
そう言って、ウェールズはティファニアとレイ、そしてカミタマンとロボコンを連れて隠し港へと走っていった。
そんな中、ルイズはワンセブンを見て、こう呟いた。
「命尽きる日が来るまで……、私の心と体は貴方のものよ、ワンセブン」
戦いの、戦いの、野辺に咲く
骸骨色をした彼岸花
鋼鉄の足音が
荒野に響いて
ミサイル飛んで
全てを焼き尽くす~
大地を揺るがし
世界を震わす
ヴィンダールヴの
戦う鼓動
ルイズを賭け~た~、戦い~の~
これが最初の激突だ~
ワンセブン、ワンセブン、ルイズ~の~、ワンセブン~
戦いの、戦いの、海に浮く
水死体色をしたカーネーション
巨人の声響き
波間が躍って
ミサイル爆ぜて
全てを流し去る~
大波蹴立てて
海原切り裂く
ヴィンダールヴの
戦う理由
ルイズを賭け~た~、戦い~の~
これが最初の決戦だ~
ワンセブン、ワンセブン、ルイズ~の~、ワンセブン~
#navi(大使い魔17)
だがだん♪ だがだんだがだん♪
「大使い魔ー、ワーンセブーン!!」
オゥオオー オゥオオー 彼こそは~
オゥオオー オゥオオー 大使い魔~ワンセブ~ン
燃える真っ赤な太陽
ギラリ輝く装甲
見よ! 右手の虚無のルーン
風の唸りか雄叫びか~
イザベラ企画の大殺戮
立て! 要塞ワンセブン
防げる者は他になし
オゥオゥオゥ オゥオオー オゥオオー 彼こそは~
オゥオオー オゥオオー 大使い魔~ワンセブ~ン
第八話「運命の再会! ウェールズとティファニア」
「こんなものか……」
ハカイダーの前に、傭兵たちは余りにも無力だった。
なるべく殺さないように戦っていた魔天郎とトトメスとは違い、最初から殺す気で戦っていたハカイダーは迷うことなく傭兵たちを殺しまくった。
「ほんと、カトレアさんが止めないと血の雨が降るわね」
「俺はいつでも全力投球、全力打球、全力疾走だ」
「カトレアさんが同行するのも分かるわね……」
生き残った傭兵たちは既に戦意を喪失していた。
魔天郎が傭兵の一人を尋問していた。
「どうでした、マテンローの小父様?」
「……昨日の連中同様、誰かに雇われたらしい」
「たぶん同じ奴に雇われたんでしょうね」
トトメスの一言にハカイダーはうなずき、続いてこう言った。
「そろそろ桟橋に行こう。最悪、繰上げ出港なんてことになるかもしれん」
仮面の男は焦っていた。
ポワトリンに圧倒されていたからだ。
「大人しく引いて下さいまし。私は命をとる気はありません」
「……」
「引いてはくれないのですね……」
仮面の男が放ったエア・カッターを軽々と避け、ポワトリンは杖を持った手を蹴り上げた。
直後、ポワトリンも予想していなかった事態が起きた。
「……!!」
ギーシュのワルキューレたちが手にしたレイピアが、仮面の男を刺し貫いていた。
声になっていない断末魔をあげ、何故か男はローブと仮面を残して消滅した。
「消滅した!?」
「『偏在』でしたわね」
ポワトリンののんきな感想の直後、階下から怒声が聞こえた。
「傭兵たちがそこまで来ている。船に乗り込んで出港させよう」
ワルドの発言に、ルイズは面食らった。
「待って、まだサブローたちが……」
ルイズが反対しようとした直後、シルフィードがやって来た。
「みんなは先に行って。マテンローさんたちを回収してから追いつく」
タバサはそう言ってからシルフィードに乗り、町へと戻っていった。
「そういうわけだ。早く乗り込もう」
桟橋へと続く道。
シャルル、ハカイダー、トトメスの三人は桟橋を目指して走っていた。
シャルルは仮面と帽子とカツラを脇に抱え、走りながら口を動かした。
「間に合うかな?」
「分からん。俺たちを置いていかないことを祈るしかない」
そこへ、タバサを乗せたシルフィードが降りてきた。
「みんな、乗って!」
「シャルロット!!」
「タバサとシルフィードが来たってことは……」
「マジで置いていかれたみたいだな、俺たちは」
その頃、桟橋ではワルドがマリー・ガラント号の船長と交渉していた。
「風石が足りない分は僕が魔法で補う。それと料金もはずもう」
ワルドのこの一言で、船長はアッサリ出港を決めた。
ルイズたちは気付いていなかったが、異変を察知して一足先にフーケとゴールドウルフが乗船していた。
数時間後、朝になり、ようやくアルビオン大陸が見え始めた。
甲板に立ち、アルビオン大陸を見ているアンリエッタが発した疑問に、ギーシュが答えた。
「マテンローさんたちは大丈夫でしょうか?」
「タバサとシルフィードがいますからね。じきに追いつくかと」
一方、ルイズはワンセブンが自分のために作ってくれたショットガンの手入れをし、ワルドはそれを興味深そうに見ていた。
「ルイズ、その銃は?」
「ワンセブンが私のために作ってくれた銃です」
「ほう、君の使い魔が?」
「はい。万が一、自分が出っ張れない場合を想定して作ったそうです」
一方、ルイズたちが乗っているとは知らぬフーケとゴールドウルフは、甲板に出て日の光を浴びることにした。
「オォゥ、懐かしきはマチルダ様の生まれし故郷」
「アタシにとってはあの子がいるところ以外の感情はないけどね」
ショットガンの手入れを終えたルイズが、偶然フーケの隣に立った。
そして、視線が合った。
「「あ!!」」
「お、お前、何でこのフネに!?」
「あんたこそ何で乗ってんのよ!?」
フーケは杖を、ルイズはショットガンを構えて臨戦態勢に入ったが、ゴールドウルフとカトレアに止められた。
「マチルダ様、今はそのようなことをしている場合では……」
「ルイズ、落ち着いて」
二人に諌められ、フーケとルイズは臨戦態勢を解いた。
「この任務が終わったら、改めてとっ捕まえてやるわ」
「誰が……。ん、任務?」
「あんたには関係ないわよ!」
フーケは周囲を見回し、アンリエッタもいることに気付いた。
「な、何で王女までいるのさ!?」
「任務です」
「……なあ、教えておくれよ。マジで」
「……協力してくれるのなら。後、執行猶予もお付けしますわ」
「……その取引、乗った」
そんな軽率な。
「ありがとうございます」
「で、なんだい、任務って」
「プリンス・オブ・ウェールズを説得し、亡命させることです」
「ウェールズを!?」
「マチルダ、我々は本気です」
「やっぱ、あんたの方は覚えてたか。ま、それは置いといて、……アタシの方も俄然やる気が出てきたよ」
マチルダとアンリエッタは、無言で握手した。
「……ゴールドウルフ、だったかな?」
「ああ。どうした、ミスタ・グラモン」
「なーんかフネがこっちに向かってきているような」
「貴族派か?」
「だったら、レコン・キスタの旗を掲げているはずなのだが」
「確かに、旗を掲げていないな」
「……」
「……」
「「空賊だ―――――っ!!!」」
ギーシュとゴールドウルフの絶叫に、ルイズたちや船員たちも反応した。
しかし、空賊船はあっという間にマリーガラント号に接近、併走していた。
一方、一昼夜かけてマリー・ガラント号を追っていたシャルルたち。
「アルビオンが見えてきたね」
「……お父様、様子が変」
「どれどれ……。空賊に鹵獲されたみたいだな」
その一言に面食らったトトメスが、シャルルに話しかけた
「小父様、どうするの?」
「空賊船の方に殴り込む。見ていろよー!」
シャルルは仮面と帽子とカツラを身に着け、魔天郎に戻った。
「小父様、怖いのねー……」
「言えてるわね」
シルフィードは、速度を上げて空賊船へと突撃していった。
空賊船の船長室。
ルイズたちが、連れて来られていた。
ルイズとアンリエッタとマチルダは、妙に冷めた視線で船長を見ていた。
「何故、そのような格好を?」
「それ以前に、何故空賊などに身をやつしているの?」
「つーか何、そのヒゲ?」
「やっぱりバレていたか……」
船長はそうぼやいでから、カツラと眼帯と付け髭を外した。
そこにいたのは、ウェールズ・テューダーであった。
「で、何用だい? アン、ルイズ」
「「貴方を亡命させます」」
「拒否する」
ウェールズはきっぱりと拒否し、机においてあった酒を一気飲みした。
「正気かい!?」
「正気さ、マチルダ。ティファニアがいないのに亡命したって、空しいだけさ。レコン・キスタの艦隊に一人で突撃した方がまだマシだよ」
「王子様、そんなバカな事をして、ティファニアが喜ぶとでも……」
「悲しむのは百も承知だ! でも、ティファニアはもういないんだ……」
「ウェールズ、ならば、尚更生きるべきでは?」
「ティファニアがいないこの世界でか?」
「全く、意固地にも程があるね! いいかい……」
マチルダが口を開くより早く、甲板の方で轟音が響いた。
「サブローたちかしら?」
カトレアはそう言って、甲板へと駆け出し、ルイズたちも後を追った。
甲板ではハカイダーたちが暴れまわっていた。
「どこだ!? ご主人、どこだー!!」
カトレアが咳き込みながら見たのは、自分を呼びながら船員たちを手当たり次第に殴っているハカイダーの姿であった。
「サブロー、止めなさい!」
カトレアの怒声に反応したハカイダーは、声がした方向に視線を移した。
「無事だったか、ご主人!」
「この人たちは空賊ではないわ。アルビオンの王党派よ」
「何と!?」
「……で、あんたたちは足りない物資を補うために、空賊に扮して貴族派に送られるはずの物資を横取りしていた、と」
「そうだ」
「そして、偶然にも従姉妹とその仲間たちが乗ったフネを拿捕したわけか」
「いやー、こっちも驚いたよ」
「……」
ほろ酔い状態であっけらかんと言い切るウェールズを見て、サブローは怒りが再燃した。
「ご主人、この酔っ払いの顔を殴っていいか?」
「ダメよ!」
「……」
「隠し港とはね」
「ああ、あちら側もここからフネが出入りするとは思っていないだろう。そういえばマチルダ、何か言いかけていたようだが?」
「……後であんたの部屋に行っていいかい? そのときに話す」
数分後、ウェールズの部屋に、マチルダ、アンリエッタ、ルイズが集まっていた。
「……ウェールズ、今言うことはね……サンタにとって最高の吉報になるはずだよ」
「……」
「あんたが惚れた女、ティファニア・テューダーは、生きてるよ」
「……!!」
その言葉に、ウェールズだけでなくルイズとアンリエッタも驚愕した。
「シティオブサウスゴータとロサイスを結ぶ街道の近辺にあるウエストウッド村で、戦災孤児たちと一緒に生活してるよ」
「そうか……、生きていたんだ。ティファニアが……」
嬉しさの余り、とめどなくあふれる涙を拭かずにウェールズは呟いた。
「案内してくれるか?」
「そうしたいのは山々なんだけど……」
「王子様が出るのは危険です」
「ルイズの言う通りよ。ティファニアを連れてくるのは私たちに任せて」
「……頼む。ティファニアと一緒なら、僕は喜んでトリステインに亡命するよ」
数時間後、ウエストウッド村では。
「テファ、こんな斬り方でいいの?」
「うん。そんな風に薪を斬って、カミタマン」
「りょーかい。それにしても、レイとロボコン遅いな」
「そうね。どうしたのかしら?」
直後、バイクの走行音が聞こえてきた。
「あ、『黒いユニコーン』とロボコンの……あれ? なんか変だよ」
「うん……。黒いユニコーンの他に、他の鉄の馬が走る音も聞こえる」
森を突き抜け、レイが乗った黒いユニコーンとロボコンカー、そしてサブローが乗った白いカラスが来た。
「「テファ、ただいま」」
「二人ともお帰り。後ろの黒ずくめの人は?」
「この人? 大丈夫、レイのすぐ上のお兄さんだよ」
「初めまして、ティファニア・テューダー。俺はサブローだ」
「初めまして……。貴方はどうして私の名前を?」
「分かりやすく言うなら、アンリエッタ姫に教えてもらったのさ」
「……アンが!?」
「マチルダがあんたが生きていることを教えてくれてな。それを聞いて舞い上がったウェールズに頼まれて迎えに来たのさ」
サブローが言った直後、タバサと魔天郎とマチルダが乗ったシルフィードが降りてきた。
「初めまして、ティファニア嬢。私は蜃気楼の国から来た幻の怪人、魔天郎だ」
「はあ……」
「安心しな、テファ。そいつは味方だよ」
「マチルダ姉さん! あれ、ゴールドウルフは?」
「……あいつなら、ニューカッスル城でウェールズと一緒に留守番してるよ」
数分後、マチルダと魔天郎の説明を聞いたティファニアの顔は、暗かった。
「テファ、王子さんのところに行こうよ」
「レイ……。でも、私……」
「確かに半分エルフだよ、テファは。でも、会いたいんだろ、王子さんに?」
「うん」
「なら決まりだ」
「でも、みんなが……」
「慌てるなよ、ジムたちも一緒さ。と言うわけで、早くここを離れる準備をしないと。サブロー兄(に)いと魔天郎さんとタバサちゃんも手伝って」
かくして、ティファニアたちの一大引越し作業が開始された。
まず最初に、マチルダが錬金で大きな鉄のかごとシルフィード用のサドル、その二つを連結する太く丈夫な鎖を作った。
魔天郎とタバサは、ティファニアとカミタマンと子供たちと一緒に家具の梱包。
サブローとレイとロボコンは大きい家具を運んで巨大かごに収納し、全部積み終わってからシルフィードの背中にサドルを着けた。
「きついのね~」
「ニューカッスルに着くまで。我慢して」
そして日が暮れ始めた頃、シルフィードのサドルにタバサと魔天郎、かごの方に家具一式とマチルダと子供たちが乗った。
カミタマンはロボコンカーに、ティファニアはレイが運転する装甲トライク・黒いユニコーンに乗った。
「……」
サブローが無言で白いカラスのエンジンを起動させたのを合図に、魔天郎たちはニューカッスル城へと向かった。
日が沈んだ直後のニューカッスル城。
ウェールズは今か今かと待ってそわそわしていた。
「王子様、落ち着いてください」
「コレが落ち着いていられるか」
ウェールズが言い切った直後、城を包囲するレコン・キスタの戦艦の砲撃音が響いた。
二つのカッタートルネードが数隻の戦艦を切り刻み、その隙を突いてシルフィードが敵陣を突破。
それに続いて、ロボコンカーと白いカラスと黒いユニコーンも敵陣を突破し、無事に城内に入った。
黒いユニコーンから降りたテファを確認したウェールズは、臣下たちを押しのけて走り出した。
「ティファニアー!!」
「ウェールズ……」
無我夢中でティファニアを抱きしめ、ウェールズは狂喜乱舞した。
その光景を見ていたカミタマンは、レイとロボコンに尋ねた。
「レイ、ロボコン、どうする?」
「こっちに気付くのを待つしかないな」
「右に同じ」
家具と子供たちをかごから降ろしながら、レイとロボコンは淡白に答えた。
ウェールズの部屋。
ウェールズとティファニア、そしてルイズとアンリエッタとマチルダがいた。
「イーグル号に全員乗れるのかい?」
「少し無理をすれば可能だな」
「……あの子達ぐらいの人数なら、ワンセブンに乗せられます」
「ルイズ、君の使い魔はそんなに大きいのか?」
「50メイルぐらいはあります」
「私とマチルダもこの目で見ているから、保障できるわ」
ジムたちと、ウエストウッド村から持ってきた家具について話し合っていたところ、ドアをノックする音と、レイの声が響いた。
「王子さーん。ワルドって人が話があるって言ってるよー」
「分かった」
ウェールズの返事に呼応するように開いたドアから、ワルドが入ってきた。
「子爵殿、どうした? 晩餐会にはまだ早いぞ」
「いえ、実は頼みたいことがありまして」
「何だい?」
「明日この城でルイズと式を挙げたいので、殿下に式を取り仕切ってもらおうと思いまして」
ワルドのこの一言に、ウェールズ以外の4人が絶句した。
ティファニアと再会できた嬉しさで有頂天になっていたウェールズの方は、嬉々として快諾した。
「めでたい話じゃないか。喜んで引き受けよう」
ウェールズがアッサリ引き受けたため、明日のイーグル号の出発前に、ワルドとルイズの結婚式が行われることとなった。
無論、ルイズの意思とは関係無しに。
時は少しだけ過ぎて、パーティーが始まった。
ウェールズが亡命を決意してくれたのが嬉しかったのか、みんなの表情は一様に明るく、場の雰囲気も朗らかだった。
「やっぱり、ティファニアのことは……」
「今は隠すべきよ」
「そんなぁ。何とかならないのかい、アンリエッタ」
「簡単に何とかなったら苦労はしないわ」
情けない声を出すウェールズを見て、見かねたティファニアが会話に割って入った。
「私はいいの……。ウェールズと一緒だから」
「ティファニア……」
ティファニアは、ロボコンが万が一を想定して作った、つばがやたら広く、顔以外をヒラヒラで隠した帽子をかぶっていた。
城の者たちは首をかしげたが、ロボコンの「小さい頃の事故で耳が焼け爛れている」という嘘にアッサリ納得した。
ティファニ眩しいくらいの笑顔を見せるウェールズだったが、父王や、ティファニアの正体を知っているモノたちへ向けた顔は嫌悪と殺意だけが浮かんでいた。
「ウェールズ、アンから聞いたの。伯父様とうまくいっていないって」
「いいんだよ。あんな奴がどうなろうと」
「ウェールズ……、どうして自分のお父様に対してそんなひどいことを言うの?」
「……父親だからさ」
一方、ルイズは困惑していた。
明日、いきなり自分の結婚式が執り行われるからだ。
(ワンセブン……)
ルイズの心は本人が気付かぬうちに、ワンセブンの方に大きく傾いていた。
翌朝、礼拝堂。
ワルドと、花嫁衣裳に身を包んだルイズがいた。
式に出席していたのは、アンリエッタ、カトレア、サブロー、魔天郎、タバサ、キュルケ、ギーシュ、先住魔法で人間に化けたきゅいきゅい、フレイム、ヴェルダンテ、テファ、そしてレイとカミタマンとロボコンだけであった。
カトレアの手には、ルイズから預かったワンエイトヘルがあった。
神官役のウェールズは朗らかに式を進める。
この式が終わり次第、ルイズたちはイーグル号に乗ってアルビオンを脱出する手はずだった
だが、異変は起きた。
「ワルド様、私の力で、何を手に入れるのですか?」
突如としてルイズがワルドに問いかけた。
「どうしたんだい、僕のルイズ?」
「……トリステイン? 聖地? それとも両方? 私の力を借りて……」
あっという間に固まったワルドを見て、ルイズは確信した。
「やっぱり、貴方が愛したのは私ではなく、あるかどうかも分からない私の魔法の才能だったのね……」
何故気付いた、と言わんばかりの表情でルイズを見ながら、ワルドは口を開けた。
「まいったな……、土壇場でこんなコトになるなんて。けど、目的は全部果たさせてもらうよ」
「目的?」
「一つはアンリエッタの命。もう一つはウェールズの命。最後の一つは君を手に入れることだ!」
ワルドはそう言い切り、ルイズの肩を強く掴み、盾にしてからウェールズたちと対峙した。
直後、鋭い轟音が近づき、何かがぶつかった衝撃で礼拝堂の壁が大きく崩れた。
「な、何だ!?」
動揺するワルドを振り解いたルイズがその場を離れた直後、ワルド目掛けて巨大な何かが突っ込んできた。
とっさに避けたワルドには、それは足に見えた。
「一体何が起きた!?」
埃が薄れて視界が晴れると、そこにはワンセブンがいた。
「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド!!」
「貴様は、ルイズの使い魔……!!」
「私はお前を、ルイズちゃんを邪なことに利用しようとしたお前を許さない! 必ず殺す!!」
「ほざけ! 僕は聖地を……、全てを手に入れる!」
「世迷い言は気が触れてから言え!」
「言うに事欠いて……。残念だが僕はこれで失礼させてもらおう!」
ワルドはそう言った直後、消滅した。
「偏在だと!?」
ルイズもこれには面食らった。
「い、いつの間に?」
一方、ニューカッスルを包囲する戦艦の内の一隻。
「くそ、よりによってルイズの使い魔がいきなりアルビオンに来るとは!」
甲板に立つ本物のワルドが忌々しげに舌打ちしていた。
レコン・キスタの艦隊を視界に捕捉したワンセブンは、迷わず両足のナイキ級ミサイルと、ミサイルパンチを同時に発射した。
戦艦が一隻、また一隻と、轟音と閃光の中に掻き消えていった。
「あれだけの数のフネをこうも簡単に……!!」
ワルドは僚艦が手当たり次第に破壊される様を見て戦慄した。
一方のワンセブンは、わざと照準から外した、本物のワルドが乗るフネを睨み付けた。
怒りが収まらないワンセブンは、ワルドを葬り去るために最終兵器を発動させた。
「グラビトォオオオン!!!」
パキューン、パキューン、パキューン、バギィィィィン!!
ワンセブンの咆哮を聞いて危険を察知したワルドは、瞬時にフネから脱出した。
シュビビビビ~! バゴーン! ズギャァーン!! ドォッカァァァ―――ンッ!!!
直後、ワルドがさっきまで乗っていたフネが激しく押しつぶされ、大爆発した。
ワルドは押しつぶされずに済んだが、残骸交じりの爆風が直撃し、左腕が吹き飛んだ。
「ワンセブンさん、どうして来たの!?」
アンリエッタの声をスルーして、ワンセブンはみんなにこう言った。
「話は後だ。みんな、トリステインに戻ろう!!」
要塞形態に変形したワンセブンを見て、今度はウェールズが口を開いた。
「マチルダたちが気がかりだから、僕たちはイーグル号に乗るよ」
そう言って、ウェールズはティファニアとレイ、そしてカミタマンとロボコンを連れて隠し港へと走っていった。
そんな中、ルイズはワンセブンを見て、こう呟いた。
「命尽きる日が来るまで……、私の心と体は貴方のものよ、ワンセブン」
戦いの、戦いの、野辺に咲く
骸骨色をした彼岸花
鋼鉄の足音が
荒野に響いて
ミサイル飛んで
全てを焼き尽くす~
大地を揺るがし
世界を震わす
ヴィンダールヴの
戦う鼓動
ルイズを賭け~た~、戦い~の~
これが最初の激突だ~
ワンセブン、ワンセブン、ルイズ~の~、ワンセブン~
戦いの、戦いの、海に浮く
水死体色をしたカーネーション
巨人の声響き
波間が躍って
ミサイル爆ぜて
全てを流し去る~
大波蹴立てて
海原切り裂く
ヴィンダールヴの
戦う理由
ルイズを賭け~た~、戦い~の~
これが最初の決戦だ~
ワンセブン、ワンセブン、ルイズ~の~、ワンセブン~
#navi(大使い魔17)
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