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#navi(SnakeTales Z 蛇の使い魔)
「機嫌が悪そうだね、使い魔君。」
「そう見えるか?」
「ああ。」
「そうか。…実は機嫌が悪いんだ。」
城のホールでのパーティの席でこんな会話をするワルドとスネーク。
いよいよ明日は最終決戦だというのに随分と豪華なパーティだ。
だがスネークは豪華な料理を前にしても食欲がわいてこない。
機嫌が悪いのもあるが、いやな予感がするからであった。
「あんたパーティくらい笑顔で出席しなさいよ。」
「そんな席じゃないだろう。」
任務も終わっていないのに笑顔で食事など考えたくない。
先ほどのアルビオン国王の演説すらまともに覚えてはいなかった。
頭の中は先ほどからするいやな予感と、任務の事でいっぱいだった。
「食べる時に食べておきなさい。兵士の基本でしょ?」
そんな事をルイズに言われ、ようやく我を取り戻したようだ。
「ひよっこに注意されるとはな。」
スネークはニヤリと笑い、食事に手をつけ始めた。
ルイズが部屋を出る。
その面持ちは満足した、というものではない。
もうこんな部屋にいるのは御免だ、という面持ちだ。
皆この先に待ち受ける暗い死の運命を忘れるかのように騒いでいる。
それがなんだか悲しくて仕方がなかった。
「…スネーク、置いてきちゃった。」
それを少し後悔する。
一人で歩くにはこの城は少し広すぎる。
隣を歩く人間にあの偉そうな使い魔が真っ先に浮かんだ。
ふるふると頭を振ってもう一度想像すると今度は婚約者が浮かぶ。
「私らしくないわ。」
そう考え、そんな妄想を頭から振り払う。
ルイズは先ほど感じた悲しさも一緒に振り払い、明日に控えた結婚の事を考える事にした。
あの使い魔は祝ってくれるだろうか?馬鹿らしいと笑い飛ばすだろうか?
どうせ「任務の途中に何を考えている!」とか言ってくるに違いない。
そう考えると結婚することがおかしくて仕方が無かった。
「楽しんでいるかい?」
座の真中で歓談していたウェールズが近寄って話しかけてきた。
さわやかな笑顔だ。なんだか腹立たしい。
「少し話さないか?」
首肯する。どうやらあまり聞かれたくない話のようだ。
ウェールズに従い、バルコニーに出る。
夜空が綺麗だが、出来れば美女とここへ来たかったと思うスネーク。
「頼みたい事がある。」
またか。俺は何でも屋じゃない。
そう言わずに話を無言で聞く。
「彼女に渡して欲しい。『風のルビー』だ。」
王女がルイズに渡していたものを思い出す。
確かアレは『水のルビー』と呼ばれていたはずだ。
それと関係があるのかどうか気になったが、それに思いをはせるほど興味はない。
「そんなものをどうして俺に託す?途中で売りさばくかも知れんぞ?」
「君はあのアンリエッタの我侭を聞いてくれた。それだけで理由など十分だ。」
あの王女の本当の目的は手紙の回収などではない事などスネークもわかっていた。
手紙など偽造でもなんでも出来るからだ。
アンリエッタがわざわざルイズたちを派遣したのはウェールズに手紙を送りたかったからに他ならない。
それを引き受けたお人好しなら引き受けてくれると踏んだのだろう。
「…縫合キット、包帯、固定具、止血剤。」
「…?」
「報酬代わりだ。前払いで頼む。」
ウェールズが右手を突き出す。どうやら了承したようだ。
「ありがとう。」
「礼を言われるほどじゃない。どうせ帰還報告にも行かなければならない。そのついでだ。」
そう言い放つが、まんざらでもなかった。
ホールに戻るとワルドが待ち構えていた。
「君にいっておかなければいけないことがある。」
「アンタもか。今日は俺に話したいことがある奴がたくさんいるようだな。」
妙に冷たい声でワルドが言ったため、冷たく言い返すスネーク。
「明日、僕とルイズはここで結婚式を挙げる。」
全く予想していなかった事を言われ、目を丸くして驚くスネーク。
「今は任務中だぞ?何を考えている!」
「是非とも僕たちの婚姻の媒酌を、あの勇敢な皇太子に頼みたくてね。殿下も快く引き受けてくれた。」
何を言ってもやめるつもりは無いらしい。
暖簾に腕押しだ。この世界の貴族は何を考えているのやら。
「勝手にしろ。」
「君も出席するかね?」
ぶん殴りたくなるほどに爽やかに笑って言うワルド。
スネークに勝った気でいるのだろう。
「俺は任務に戻る。」
「手紙も無くてかね?」
「ルイズが何とかするだろう。俺は他にも任務がある。」
きびすを返し、指定された部屋へ帰る。
もともと悪かった気分がさらに悪くなり、寝つきは悪くなるだろうとスネークは思った。
暗い廊下をろうそくで照らしながら歩く。
廊下の窓から二つの月が見える。
その月を見ている少女が一人。
「こんな所にいたのか。明日は結婚式だろう?花嫁が寝坊じゃ笑い話だ。早く寝たほうが良い。」
声をかけられて振り向くルイズ。
「聞いたのね。どう思う?」
「何がだ?」
「結婚のこと。こんな時に何を考えてる!とかないわけ?」
先ほどワルドに言ったのを思い出し、苦笑する。
自分の考え方はこんなにも読まれていたのか。
「さっき子爵に同じ事を言った。」
「やっぱりね。そういうと思った。」
軽く微笑むルイズ。
初めてであったときにも思ったが、やはり美少女だ。
「でも私には言わないのね?」
「結婚は本人の自由だ。別に反対はしない。時と場合を考えては欲しいがな。」
「それはそうね。…スネーク、結婚式には来てくれる?」
上目遣いでおずおずと聞くルイズ。
自分にロリコンの気はないと思っていたスネークだが、その考えを少し改めた。
「あいにく服が無いんでね。欠席させてもらう。
任務も途中だしな。」
「手紙は私が持ってるじゃない。」
「もう一つ受けているものがある。」
だんだんルイズの声が怒気を帯び始める。
「いい?あんたは私の使い魔なのよ?主人の断りもなしに勝手に任務なんて受けてるんじゃないわよ!
アンタの一番の任務は私の使い魔を勤める事!分かってるの!?」
そこまで言って、しまった、という表情で言葉を切った。
「ごめん。言い過ぎたわ。」
「…大丈夫だ。気にするな。」
とは言っているが目を合わせようとしないスネーク。
彼なりに傷ついているようだ。
案外繊細なのかもしれないと思うルイズ。
「幸せにな。」
それだけ言って部屋へ行ってしまった。
ルイズはやはり声をかけることができなかった。
翌朝
スネークは一番乗りで帰りの船を待っていた。
おいてきたルイズが気がかりだが、あの子爵なら大丈夫だろう。
そう信じて、ルイズを任せたのだ。
「おい相棒、大丈夫か?」
「何がだ?」
「あの娘っ子の事だ。」
背中のデルフがスネークの心を読んだかのように話しかけてくる。
「何が引っかかってるんだ?」
「わからん。だが、嫌な予感がする。」
何か腑に落ちない。
ざわざわしたものが頭の中で蠢いている。
すると、突如左目に違和感。
左目だけ別の景色が見えるのだ。
「これは…、ルイズの視界?」
「新郎 ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。
汝は始祖ブリミルの名において、この者を愛し、敬い、そして妻にする事を誓いますか?」
「誓います。」
爽やかに答えるワルド。
ウェールズはルイズに視線を移す。
「新婦、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。汝は…。」
ウェールズは朗々と誓いのための詔を読み上げる。
だが、その言葉が頭に入ってこない。
どうしてか式に集中できない。自分は一体何をしているのか?
嬉しいはずの憧れの人との結婚。
嬉しくて仕方が無いはずなのに心は躍らない。
何故か胸の奥がざわつく。
―逃げろ
そう聞こえた気がした。
「…新婦?」
「え?あ…。」
気がつくと二人ともルイズの顔を覗き込んでいた。
「緊張しているようだね?大丈夫。ただの儀礼だ。
では、繰り返そう。汝は始祖ブリミルの名において、この者を愛し、敬い、そして夫にする事を誓いますか?」
だが答えは無い。
ルイズ自身、何故答えないのか分からなかった。
「ルイズ?どうした、気分でも悪いのかね?」
ワルドが怪訝な顔で問いかける。
ルイズは哀しい表情で首を振り、答えた。
「ごめんなさい、ワルド。貴方とは結婚できないわ。」
ワルドの表情が凍りついた。
よほど予想していない言葉だったのだろう。
「ルイズ…嘘だろう?緊張しているんだ…だから、こんな…。」
言葉をさえぎるようにウェールズがもう一度ルイズに聞く。
「新婦、この結婚を望まぬか?」
「…はい。お二方には大変失礼をいたすことになりますが、私はこの結婚を望みません。」
するとワルドはルイズの方を強く掴んだ。
その目は冷たく、まるで氷のような目であった。
その目とは対照的に、熱っぽく叫ぶワルド。
「ルイズ、私は世界を手に入れる!世界だ!そのためには君の力が必要なのだ!」
「私は世界なんて要らないわ。」
ワルドが静かに聞く。
「どうしてもダメだというのかね?」
「嫌よ。貴方私のことを愛してないじゃない!
貴方が愛しているのは私じゃなくて私の魔法の才能よ!」
ウェールズがワルドの肩に手を置いて引き離そうとするが、逆にワルドに突き飛ばされる。
「何たる侮辱!子爵、今すぐラ・ヴァリエール嬢から手を離したまえ!
さもなくば風の刃が貴様を切り裂くぞ!」
黙って手を離すワルド。ルイズは数歩後ずさりした。
ワルドはしばらく呆然として、突然声を上げて笑い出す。
豹変したワルドの態度に身体を震わせるルイズ。
「…何がおかしい?」
「…茶番はおかしいものだろう?もう少しゆっくり楽しんでいたかったが、何せ時間が無い!
三つのうち一つはあきらめるとしよう。」
ワルドの言葉の真意がつかめない二人。
問いただすウェールズ。
「どういうことだ?」
「まずは一つ目。ルイズ、君を手に入れること。…だがこれは達成されまい?」
「当たり前よ!」
怒鳴るルイズ。
「二つ目はアンリエッタの手紙。そして三つ目は…。」
言葉を切るワルド。
ルイズははっとする。
全てを察知したウェールズが杖を構え、呪文を放つ。
だが、一瞬早く、ワルドが着ていたマントを脱ぎ、投げ捨て、ウェールズと同時に呪文を放った!
二つの疾風がワルドのマントに穴を開ける―
倒れたのは―
「殿下!」
―ウェールズだけだった。
「その腕では現役引退だな、ウェールズ?」
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