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#navi(いぬかみっな使い魔)
いぬかみっな使い魔 第16話(実質15話)
4月30日朝。
ラ・ロシェールから1羽の鷹が舞い上がった。伝令として珍しくも無い
その光景は、だがしかしその使い魔を放ったメイジが密偵として逮捕され、
警戒していたヒポグリフ隊メイジの迎撃であえなく捕まった。
直ちに宿が調べられ、暗号表を没収され、拷問にかけられて連絡先などを
吐かせられる。偽物の定時報告書がアルビオンのレコンキスタめがけて送られた。
一方そのころ、啓太は頭を抱えていた。
「ルイズ。なんでお前がここに居るんだ!?」「きょろきょろきゅ~~~?」
「だって、姫様が居て欲しいっていうんだもの。私姫様の女官なのよ?」
「いや、だから、約束破ったら俺が公爵に殺されるの! わかってくれよ!」
「え~~、でも、やっぱり私貴族だし? 領地もらっちゃったし?」
「ちゃったしじゃねえ!」「きょろきょろきゅ!」
「ケータ殿、ルイズを責めないでくださいまし。私が頼んだのですもの。
今、私には、どうしてもルイズに隣に居て欲しいのですわ。
でなければ重圧で潰れてしまいそう。いきなりの親征なんて。」
「そうですわよね、姫様! それに、私も手柄を立てたいのよ。
ゼロのルイズがゼロでなくなるには、やっぱり実績が必要だわ。
武闘員のみんなも同じ理由で乗り込んでいるのよ。わかって頂戴。」
「う~~~!!!!!」「きゅ~~~?」
啓太はうなった。説得できそうに無い。このままでは絶対に公爵から
大目玉を食らう。しかも矛先は娘や姫様に向けられない分自分に来る。
悶々と悩んでいる啓太を、ルイズはじっと見ていた。実をいうとルイズは、
姫様が啓太の好み直球ストライクなのが心配で残っている。
姫様が襲われないか? 啓太に感服している姫様がライバルにならないか?
実に心配なのである。「…ライバル? 何が?」ルイズは首をひねった。
これではまるで恋のライバルとして姫様を見ているような?
次の瞬間、ルイズは顔を真っ赤にして辞去の言葉を述べると部屋を出て行った。
「…なんだ、突然?」
啓太が首をひねる。妹ポジションをルイズ、ともはね、タバサの3人が
争っているのはわかるが、だからこそあんな反応は???である。
入れ替わりに、タバサが入ってきた。
「お、どうだ、無事に連れてこれたか? 大事なものは持ってこれたか?」
「(無言でコクリ)」
「そうか、良かった。」
啓太が、タバサの頭をなでた。わずかに目を細めて撫でられているタバサを見て、
ともはねがう~う~うなりながら二つに割れた自分の尻尾の先を追って
ぐるぐる回り始める。アンリエッタが、なんだかうらやましそうに見ている。
バタ~ン!
ドアが勢い良く開けられ誰か入ってきた。
タバサが部屋に入ったのを見咎めたルイズである。
「ああっ!? タバサばっかりずるい! 私も私も!」
「いや、あのな、お前の頭を撫でる理由無いだろ?」
「あるわよ! 私はケータの妹なんだから!」
「ああっ! じゃあ啓太様、ともはねも撫でてください!」
「妹?」
ともはねとルイズを仕方なく撫でてやる啓太。
その光景を胡乱な目つきで眺めやるタバサである。
ルイズが、頭を撫でてもらいながら平らな胸を誇らしげに反り返らせる。
「そうよ! 私、ケータの妹にしてもらったんだから!」
「ともはねだって妹なんです!」
注:二人とも無理やり承諾させた。
次の瞬間、猛烈な勢いで二人はガンを付け合う。
タバサは、そんな二人をじっと見詰めた後、啓太に向かって無表情な顔を少し、
ほんの少しだけ恥ずかしげにしながらポツリとつぶやいた。
「ケータお兄ちゃん?」
「おお!?」
啓太が驚きの声を上げるくらい、様になっていた。
「な、なんであんたまで!?」「だめですっ!!!」
啓太は、ルイズとともはねを頭から締め出してタバサの頭を撫ぜた。
「タバサにお兄ちゃんて呼ばれるのが一番しっくり来るな。」
「いや~~~!!!!」「だめだめだめだめだめ~~~!!!!」
大騒ぎをしている二人。完全に駄々っ子状態である。
アンリエッタがおずおずと近づいてくると、頭を差し出した。
「?」←啓太 「!?」←ともはね 「!!!」←危機感丸出しなルイズ
「(無言でほにゃん)」←頭撫でられてるタバサ
「あの、姫様?」←戸惑ってる啓太
「あの、私もお願いします。」←頬を赤らめたアンリエッタ
「!!!!」←危機感丸出しなともはね
「!!!!」←危機感丸出しなルイズ
まさかお姫様相手にダメと怒鳴るわけにも行かず無言でじたばたしている
二人を置いといて、啓太はなでなでしてやった。
だって啓太、アンリエッタコマすの狙ってるし。
猫のように目を細めるアンリエッタ姫である。
思えば、このようにかわいがってもらうなど絶えてなかったことなのだ。
その表情を見て、啓太は内心ほくそえんだ。
(「いける! いけるぞ、本物のお姫様を侍らせる事が出来る!
ようこや時子みたいな地雷女の暴力で毎日苦労する地球の日本に比べて、
なんていい世界なんだ! ふふふふ、ルイズ、召喚してくれてありがとよ!」)
さて、しばらくしてから。
「あの、啓太殿、私、お願いがございますの。」
「なんでしょう、姫? 何なりと命じてください。」
(「くくくくく! 結婚してくれとか今夜部屋にとかだったらどうしよう!?」)
「~~~~~!!!!(ジタバタ)」←危機感丸出しなともはね
「~~~~~!!!!(ジタバタ)」←危機感丸出しなルイズ
「(すっと無表情になる)」←タバサ
「あの、啓太殿、私、結婚したい人がいるのです。ご協力して頂けますか?」
(「きたっ」)啓太は心の中で親指を突き出して拳をぐっと握る。
「結婚は王族の義務。とはいえ、やはり好きな方と添い遂げるのが
望ましいですな。姫殿下の意中のお相手はどなたでしょうか?
それによって難易度が変わります。」
「あの…」
「どうぞ、おっしゃってください。ここには姫殿下が本音を話しても
咎めたり外に漏らすような人はおりません。」
「はい。では。」
ルイズはもちろん、ともはねも口外はしない。タバサも、家族を助けてくれる
啓太が止めるならもらしたりしないだろう。それに、今タバサの家族や
親しかった使用人を庇護しているのはトリスティン王宮なのだ。
「アルビオン皇太子、ウェルズ・テューダー様です(顔真っ赤)」
「……はい?」
「ぷっ!」「くっ!」「(無言で本を読み始める)」「きょろ?」
「む、難しいでしょうか?」
「えっと。」
期待していた啓太は、完全に思考停止していた。
「きゃはははは!!!」「あはははは!!」「(読書中)」
「あの、どうしまたの、みなさん?」
戸惑うアンリエッタ。ルイズは、腹を抱えながら答えた。
「い、いえ! 素晴らしいと思いますわ! お似合いでございます、姫様!」
「お姫様と皇子様なら最高ですね! ひらひらでフリフリできらきらです!」
ともはねも祝福する。タバサは無反応に本を読んでいる。
啓太は、がっくりと肩を落として、声を絞り出した。
「あ~~、わかりました。出来るようならやってみます。難しいので
確約は出来ませぬが、不可能ではないでしょう。」
「まあ! ありがとうございます!」
ぱあっと顔を輝かせるアンリエッタ。神々しい美貌が、さらに輝く。
その隣で、どんよりと曇り空な啓太である。明暗くっきり。
「ルイズ、ありがとう。あなたのおかげだわ。ケータ殿と会ってから、
全てがいい方向に進んでいるように思います。いきなり呼ばれてしまった
ケータ殿には申し訳ありませんが、ルイズが呼んでくださったことは
本当に行幸でした。こんなケータ殿の側にずっといたら、自然に慕い
頼りにしてしまう。ルイズの気持ち、わかりますわ。本当にお兄様みたい。」
啓太は、この間に気を取り直していた。回復が早いのも啓太の長所だ。
「ははは、ほめすぎでございますぞ、姫様。」
(「こうなったら、この姫さんが俺に全幅の信頼を置く方向に計画修正だ!」)
「姫殿下、そろそろお時間で…おや、なにやら楽しい事でもございましたか?」
呼びに来たマンティコア隊長ド・ゼッサールが笑顔で聞く。
まだ正直に話すわけには行かない段階である。
アンリエッタは、何事も無かったかのように顔を上げるとそそくさと
出て行った。ルイズが、すかさずついていく。
そして、啓太は。
「し、しまった~~~~!!! ルイズを返しそびれちまった~~~!!!」
大騒ぎにまぎれてすっかり忘れていたのである。
「ま、まずい、ルイズがもし戦死すれば確実に公爵に殺される。
怪我しただけでも一歩対応を間違えれば公爵に殺される。
戦場にいたというだけでものすごくいびられる!」
トリスティン第3番目の実力者の怒りである。啓太はがっくり肩を落とすと、
「はああ。しょうが無い。あきらめて行くか。」
そういって部屋を出た。作戦の概要を明かし、戦いを始める時間なのだ。
もう、ルイズと姫を説得している時間はこれっぽっちも無かったのである。
事実、公爵は後に誤解から妻・烈風カリンにぼろくそにされた
鬱憤ばらしで啓太をいびるのだが、今は本編に関係ないのであった。
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