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番外編 「お嬢様」から「王女様」へ
ここはトリステインの宮殿の中にある中庭、高名な庭師が整えた美しい場所
風に優しく吹かれた木々が囁き、最後の楽園かと思わせるような場所
その中でほんの少しの静かな時を過ごしている少女がいる
この国の王女、アンリエッタ姫である
彼女はゲルマニアとの同盟を結ぶ為の遠征を始める前に、短い休日をこの場所で過ごしていた
空は青く、小鳥が歌うように鳴くこの場所は心を安らかせるには最適だった
しかしそれでも彼女の心は曇ったままであった
今、ハルケギニアの政治情勢は最悪に近い状態である
ハルケギニアの始祖ブリミルが与えたと言われる三本の王権を持つ国、『白の国』アルビオンの貴族達は
クーデターを起こして王を倒し、やがてハルケギニアをも統一するという野望を掲げていた
それに対抗する為にトリステインの女王、マリアンヌは愛娘アンリエッタを帝政ゲルマニアの皇帝に嫁がせる事によって同盟を成立させ
来るべき戦争の日に備えようとしていた
望まない結婚
従兄弟であるアルビオンの皇太子、ウェールズの安否
そして、今後のトリステインの行方・・・・
全てが混じり合い、頭でかき回されて、アンリエッタ姫はとても憂鬱な気分であった
「私は・・・・この国は・・・・どうなるんでしょう・・・・」
そんな一人言をポツリと発した時、突然、眩しい光が自分を包んだ
「なっ何事!?」
急な光に驚くアンリエッタ姫
目をグッとつむり、手を顔の前に掲げ光が止むのを待った
そして光が止んだ
恐る恐る瞼を開けようとする、そして自分の前を確認する
赤い「何か」がそこにあった
「い、一体これは・・・・」
赤い「何か」は人の形であった
アンリエッタ姫は思考した
これはゴーレムの類か?それにしてもこんな物は今までみたことがない
すると「何か」は突然立ち上がった。そして
「いたたたた・・・・、お嬢様、大丈夫ですか?ってあれ?お嬢様!?」
なんと人語を発したではないか!
「お嬢様!?何処にいらっしゃるのですか!?そ、それにここは何処!?
私はロム様を探して街の中を走っていたはずなのに!?」
更に手と足をバタつかせ慌てているような素振りを見せる
一体これは何なのだ、知識はあるのでわかるのだがゴーレムはこのように自ら意思を持ち、人間の様な仕草はしない
(そうだ、きっと「これ」には中に人が入っているのだわ。取り敢えずどうやってここに入って来たのか
まずそれを尋ねましょう)
「貴方は誰ですか?」
そう尋ねるとそれはアンリエッタ姫の顔を見た
「・・・・あ、そのお嬢様・・・・、いや、質問を質問で返すようで悪いのですが
貴方ぐらいのお年の女の子は知りませんか?」
アンリエッタ姫はまた驚いた
受け答えが出来ている、やはり人が入っているのか?
それにしてもお嬢様とは?
疑問がどんどん沸き上がってくるが一応質問に答える事にした
「いえ、この場所には私しか居ません」
「そ、そんな!?お、お嬢様~!何処にいらっしゃるのですか~!?」
それはそう言うと頭を抱えて嘆いた
「王女様!何事ですか!」
騒ぎを聞き付けた衛士達がやって来る
彼らは「それ」を見て目を丸くして驚いた
「な、何だあれは!」
衛士の一人が叫ぶ
「王女様が危ない!皆のもの!あいつを捕まえろ!」
衛士達はそれぞれ剣を持ち、それに飛び掛かった
「な、何なんですか貴方達は!?え、ちょ、ちょっと止めてください!誰か助けて!あ~~!」
「・・・・で強い光が現れたと思ったらいつの間にかそこにこいつが居た。
そういうことで良いのですね?殿下」
アンリエッタ姫の側近、マザリーニ枢機卿が口髭をいじりながら質問した
彼は衛士の報告を聞き、中庭に来ていた
「はい、それでお願いします」
アンリエッタ姫の返事を聞くとマザリーニは嫌そうな顔をして、侵入者に尋ねた
「お前、ここがどんな所か知っているのか?」
「わかりません。気付いたら何故かここに・・・・」
侵入者はやたらしょんぼりした声で言った
「ここはトリステインの宮殿、そしてお前の前にいらっしゃるのはこの国の王女、アンリエッタ姫だ。わかっているのか?」
「すみません、わかりません・・・・」
侵入者はそう答えると下を向いて肩を落とした
衛士の一人の顔が怒りに染まる
「貴様!王女の前で失礼を!」
「よしなさい!」
アンリエッタ姫は一声出して兵士を抑えた
「彼はきっと何かが原因でここに来たのです。
ただの平民ならここにすんなり入るなんて事ができるはずがありません
まずは彼の事情を聞きましょう」
そう言うとアンリエッタ姫は侵入者の前に立ち、微笑みながら尋ねた
「貴方、お名前は?」
侵入者は顔を上げて答える
・・・・
「・・・・わかりました。では私は貴方を小間使いとして貴方を雇います。これで文句はありませんね枢機卿」
「はい・・・・、では私は仕事があるのでこれで。皆の者、それぞれの配置場所に戻るがよい」
マザリーニがそう言うと衛士達は中庭を去っていき、残ったのはアンリエッタ姫と侵入者だけになった
「これで縛り首にならずにすみましたね」
アンリエッタ姫がにっこり笑う
「はい!あのお礼と言っては何なのですが、これで」
侵入者はそう言うと体を変型させて珍妙な形の乗り物となった
「まあ!」
アンリエッタ姫が声をあげて驚く「では乗ってください!」
乗り物の透明部分が開く、そこには一人分の座席があった
アンリエッタ姫がそこに乗ると透明部分が閉じてパタパタパタパタという音が聞こえてきた
なんと乗り物となった侵入者は突如浮き始めたのだ
そしてどんどん城を離れ高く宙を浮き、城下町が見える程の高度まで来た
「凄い・・・・、貴方こんな事ができるのね」
アンリエッタ姫は驚きながら周りの光景を見る
「どうですか王女様?」
侵入者が言う
「とても・・・・、楽しいわ!」
アンリエッタ姫は興奮しながら言う
彼のおかげで憂鬱な気分は吹き飛び、最高の休日を過ごす事が出来たのであった
「では、貴方の『お嬢様』が見つかるまでの間、小間使いとして宜しくお願いしますね。
トリプル・ジム」
「はい!『王女様』!」
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