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#navi(ラスト・レイヴン×ゼロ)
――最初から、結果などわかっていたのかもしれない。
「私はただ、強くあろうとした…」
――たとえ、それが他人から与えられた、望みもしないものだったとしても
「そこに、自分の求めるものがあると…信じていた…」
――私の姉がたどり着けなかったもの。あの男ですら、たどり着けなかったもの
「やっと…追い続けたものに、手が届いたような気がする…」
――レイヴン。力が横行するこの世界で、唯一つ誰にも縛られることのないイレギュラー
「レイヴン……その称号は…お前こそ、ふさわしい…」
ラスト・レイヴン ゼロ 第1話
トリスティンの有名な魔法学校では、二年生に進級する際にある儀式を行う。「サモン・サ
ーバントと呼ばれる使い魔を召還する儀式だ。
魔法を使うメイジにとって、今後一生のパートナーとして召還されるだけあって、二年生
全員気合が入っている。まして、「メイジは使い魔で決まる」といわれるトリスティンでは
格式高い貴族が意義込むのもなおさらであった。
そして、儀式の日。生徒たちの心配の種であった天気は見事に雲ひとつない空に太陽が一
つ。絶好の儀式日和だ。
校庭に集まった生徒たちは次々にサモン・サーバントを終えて、それぞれの使い魔の自慢
話を始めている。
ただ一人、何をしても爆発する。ルイズを除いて。
召還の儀を行ったのは…いや、ルイズがサモン・サーバントをはじめたのはまだ太陽が上
を照らしていた頃だろう。それが、今はとっくに山の辺りだ。
魔法学校の校庭は既に穴だらけ。それも一個や二個ではない、数えることすら困難なほど
土が掘り返されていた。全部、ルイズの魔法によってである。
「おい、ルイズ!早くしろよ!」
最初は馬鹿にしていた周りの生徒たちも、何時間も立ち続けたこともありそんな気力も失
せてしまっていた。
担当の教師であるコルベールも、さすがに困り顔だ。彼女の理解者の一人であるコルベー
ルではあるが、さすがにここまで長引くと、教師としての仕事を優先せざるを得ない。
「ミス・ヴァリエール。今日はもう遅い。別に結果が出ることを恥じることはないですし、
また明日、個別でやることで…」
「そ、そんな!コルベール先生!」
ルイズがコルベールに詰め寄る。コルベールとしては今日の残りの時間は召還した使い魔
とのコミュニケーションに使おうと考えていたため、別にルイズを見限っていた、という
わけではなかった。
対照的に、崖っぷちに立たされていたルイズにとっては、それは最後通牒にも聞こえた。
使い魔すら召還できないメイジ。もはやそれは貴族ではない。もし、ここで召還できずに
終われば、自分は「ゼロ」のままなのだ。貴族ですらないのだ。
「お願いします!必ず召還しますから!後一回だけ!」
必死でコルベールの襟首をつかみ、がくんがくんと前後に振るルイズ。彼女のどこにそん
な力があるのだろうか?と思いつつ彼の数少ない頭髪が落ちそうになっているのに気づき
危機感を抱いた彼が、
「わ、わかりました!ですが、これが最後ですぞ、ヴァリエール!」
そう認めたため、手を離したルイズがくるんと後ろを向き、彼の拷問は終結した。
―――私にとって、これが最後のチャンス。失敗は許されない
今までにない、決して今まで散漫にしてきたわけではないが、集中力を高める。
もう、後がない。震える指先で、呪文を叫ぶ。
「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ!」
後ろで、ようやく開放されたコルベールがため息をつきながら立ち上がる。
「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」
周りの生徒たちが、杖を手に取り帰り支度を始める。
「私は心より求め、訴えるわ!」
広大な芝生に、彼女の大声が響く。爆発によりえぐられた地面に、魔力がたまる。
「――――わが導きに、応えなさい!」
巨大なゲートが開き、そして今までにない爆発が起こる。
そして、ルイズは彼女を召還した――――。
今までにない爆発の衝撃でしりもちをルイズ。痛みに涙目になりつつ見上げた先には。
太陽の逆行を浴びて、こちらを向いている、巨人の姿だった。
爆発によって発生した粉塵から視界がクリアになると、先ほどまで何もなかった空間にい
るのは、巨人。いや、巨大なゴーレムだった。
12メイルほどあろうかという巨体である。ダークブルーの体は、土でも、青銅でもない。
頑丈そうな鉄で出来ている。
だが、頑丈そうなその表面はところどころ傷だらけであり、ひどい部分は間接部分は剥げ
落ちてところどころ内部が見えている。
だが、両腕に持っているものは紛れもない武器だ。力強く両足で立つその姿は、まさしく
傷だらけの戦士。
とんでもないものの登場に、しばらく口をあんぐりとあけていた生徒達。
ようやく再起動したコルベールが、ゴーレムに近寄り、しばらく観察していたと思うと、
ルイズのほうを振り向いた。
「ミス・ヴァリエール。すばらしい!このゴーレムは、どんなメイジでも作れないような
すばらしいものだ!!」
コルベールが笑顔でルイズを賞賛する。
コルベールは優秀なメイジであると共に、変な技術を愛用する変わり者だ。だが、彼も一
介の教師。その彼がああ言うのだから、このゴーレムは普通の技術では作れないことを意
味する。
「・・・このゴーレムを、あたしが・・・?」
自分の呼び出した「使い魔」を見上げて、呆然とするルイズ。
魔法が使えず、いつも馬鹿にされていた自分。
いつか、見返してやろうと頑張っていた自分。
その思いが、今報われた。
自分は、ゼロではない、貴族なのだ…!
満面の笑みを浮かべ、おもわずそのゴーレムにルイズが駆け寄る。
その時だった。
ドサリ
「……え?」
ふと、背後から聞こえた、人が倒れるような音に、ルイズが振り返る。
そこにいたのは、本当に人だった。全身がまるで先ほどの爆発を受けたかのようにぼろぼ
ろで、身体から染み出した大量の血が地面を赤く染めていく。
その光景に、周りにいた女生徒達が悲鳴を上げる。突然現れた重傷者に男子はおろおろす
るばかりだ。
教師としてか、いち早く事態に気づいたコルベールが倒れている平民?に近寄った。
案外小さな身体を持ち上げ仰向けにする。そしてコルベールはぎょっとした。近くにいた
ときは気がつかなかったが、ここにいる生徒たちよりも幾分年上の、だが少女であったか
らだ。だが、来ている服装はあちこちが破れた、みるも無残な状態であり、破れた部分か
らいくつもの深い傷が見えている。遠目では黒く見えた服装はそこから流れ出た少女自身
の血が大量に滲んでできたものであった。呼吸はしているが、ヒュー、ヒュー、と弱弱し
いものだ。さらに、端整な顔の左目には眼球に達していようかという縦に大きな傷があり、
今もドス黒い血が流れている。
「急いで他の先生に連絡を!水属性の生徒達は治療をお願いします!」
その言葉に、ようやく周りにいた生徒が行動を起こす。男子が生徒を呼びに行き、残った
水のメイジが急いで治療を開始する。他の使い魔も主人と行動を共にするか、
その騒動で、一人だけルイズが唖然として突っ立っていた。
自分は…そこにいるゴーレムを召還したはずである。今まで全く成功したことのなかった
魔法が、初めて成功したのである。だが、今あるのは血だらけの平民。皆が注目している
のは、その平民。
周りの生徒たちは、コルベール先生はその平民の対応で忙しい。
誰も、私の「成功」を見てくれる人はいない。
ワタシの「結果」を見てくれる人はいない。
「一体…何なのよ…!」
ルイズのその混乱と、怒りを伴ったつぶやきは…周りの騒音と共に吹き付けた風によって
かき消された。
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