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#navi(いぬかみっな使い魔)
いぬかみっな使い魔 第9話・後編(実質8話)
「むう、これが服屋だって? ムードのへったくれも無いね。」
汚くは無いが実用一点張りのそっけない店。ギーシュが不満を漏らした。
「ふ~~ん、こんな服屋で私にどんな服をプレゼントしてくれるの?」
モンモランシーが、冷ややかな目でギーシュを見ている。
「二股、平民に気絶させられた上に甲斐性なし。ダメね。」
「い、いや、それはだね!?」
ギーシュが、すがるような目を啓太に向け…
ようとして絶望のうめきを上げた。すでに啓太達が店に入っていたのである。
「馬車番なら私がしてますからお二人とも買い物楽しんできてください。」
髪をツインテールにまとめ、犬耳と二股の犬尻尾な美少(幼)女の
ともはねが、屈託の無い笑顔で勧める。
「う、うむ、ここで待っているのもつまらないし、見聞を広めるつもりで
入ってみようじゃないか、我が愛しのモンモランシー!」
ギーシュは強引に誘って店に入った。
所狭しと置かれた棚にうずたかく積まれた多数の布地、多数の服。
そのどれもがとても貴族の着る服ではなく、木綿や麻、毛糸で織られている。
色もくすんだような地味な色ばかりで、鮮烈な赤や強い青などの
原色系はほとんどない。
その店の奥で啓太達は大量の服を検品していた。
「おう、ギーシュ、モンモランシー、お前達も手伝ってくれ。」
「あ、ああ。しかし、こんな大量に何の服を頼んだんだい?」
「作業着兼練習時の服さ。お前ら、武芸の鍛錬のときも風呂場工事のときも
学校の制服だったろう? けど、あれじゃあ布地が弱くてすぐ破けるし
汚れにも弱いから思い切った事が出来ない。棒術教えていて
投げ出したくなったぜ。だからサイズ聞いて注文したのさ。」
「なるほど、藍色にそめられたこの布地、随分頑丈そうだね。」
「見たことの無い布地ね?」
「カンバス布さ。」
「カンバス布!?」
「おう、ニーム製のセルジュを藍で染めたんだ。すごく丈夫で
ちょっとした鞭程度ならこれで防げる。少しだが防虫効果もある。
縫製がしっかりしてるか、サイズが合っているか、確かめるの手伝ってくれ。」
「ウィ。」「わかったわ。」
最上級生よりも年上で、一説によればスクウェアクラスの魔力を持つとされる
啓太の頼みは、とりあえずは聞くのが薬草クラブの不文律だ。
リベット補強がされていないものの、地球のデニムのジーパンとジージャンに
酷似したこれらの服は、後に水霊騎士団の普段着となる。
※セルジュ(サージ)・ドゥ・ニーム→ドゥ・ニーム→デニム らしい。
その後、小洒落た服屋にも寄ると、ギーシュがモンモランシーに
服をプレゼントすると言ってあれこれ品定めしている間に、
啓太とともはねは既製服をいくつか買い込んだ。制服以外の着替えである。
ギーシュは服でモンモランシーの機嫌を直せたと大喜びだ。
落 胆 の 後 の 喜 び は 大 き い。
啓太がこの順番で二つの服屋を回った理由に、ギーシュはついに気付かなかった。
「さて、次は酒場で昼飯だが、ちょっと寄るぜ?」
そう言って、啓太はとある建設現場に馬車を寄らせた。
見ると、何人もの学院生が働いている。
この世界では江戸時代の日本よりも武士階級(≒貴族階級)の比率が高い。
7%に対して1割弱である。その代わりに農作業の一部、建設、医師、
薬剤師、製鉄や金属加工等の仕事がメイジの職業として門戸が開かれており、
特に驚く光景ではない。問題なのは、名門貴族の子弟が、
場末の建築現場で絹の服を着て働いている点にある。
「おうい! 服を持ってきたぞ!」
啓太が一声かけると、指導していた現場監督(≒大工の棟梁)がうなずいて
休憩を許可した。生徒達が一斉に駆け寄り、自分の服を探し出す。
「おいおい、お前らこんなとこでバイトしてたのか?」
ギーシュがあきれて突っ込んだ。
「バイトというより修行さ。学校に許可も取っている。」
「この前の風呂工事で未熟を痛感したからな。」「習うより慣れろさ。」
「現場の感覚を覚えたいのさ。」「実際の技術を学びたくてね。」
「賃金も目当てだけどな!」「ああ、それもある!」
「放課後の短時間に魔力使い切ってかまわないからな。」「重宝されてる。」
「へえ、そんないろいろな目的が工事のバイトにあるのか。」
口々に説明する学院生たちに、ギーシュは感心した。
「あれ? でもこの一石二鳥なやりかたって。」
啓太を見る。
「そう。この間の風呂場工事は、こうやって現実の仕事に興味を持たせて、
授業に身を入れさせるのも目的だったのさ。工事の修行と技術の習得、
魔法を使うペース配分習得。使用人に感謝されるのは3番目以下の目的さ。」
啓太は、何度も彼らに対して教えていた。
持ちうるリソースは常に足りない。上に立つものは、あるリソースを
有効に使うために常に一石二鳥も三鳥も狙わなければ大成できない、と。
それは軍事でも統治でも同じで、若いときから癖をつけたほうがいいのだと。
「へえ。この道を通ったのは酒場への移動、現場の様子を見る、
服を届ける、ギーシュにも建設への興味を持たせる、の4目的、というとこ?」
ルイズが、感心したような声で言う。
「ルイズは賢いな。80点をやるよ。」
啓太が、ルイズの頭をなでる。ルイズが、目を細める。最近素直なルイズだ。
ともはねがうらやましそうに見ている。
啓太は現場監督と少し話すと、今度こそ酒場に向けて移動した。
現場で働く生徒達には、ともはねが弁当を配っていた。
「そういえば。」
ルイズが、酒場まであと少し、というところで質問してきた。
「あの男子達、どうやって放課後に建設現場に通ってるの?
学校からトリスタニアまで馬で3時間よ? 無理じゃない。」
「その理由は今わかる。」
啓太は上を指差した。さっと上空を大きな影がよぎる。
ついで、雑踏のざわめきにかき消されてはいたが呪文詠唱の声が複数。
見上げると、タバサの使い魔、風竜のシルフィードから、6人ほどの
メイジが飛び降りたところだった。
酒場、ゼルマンの前に飛び降りる。丁度その時間に啓太達は酒場についた。
「よ、タイミングぴったりだったな、幸先いいぜ、お前ら!」
「「「サー・イエス・サー!」」」
「注文されたものは出来たのか?」
「サー・イエス・サー!」
そういって、各々手に持った物を掲げる。装飾された板やら建築工事で必要な
秘薬やら各種金具やら。これらを作るために到着が昼になったようだ。
「よし、上出来だ。よくやった! ほれ、これが例の着替えだ。」
「「「サー・イエス・サー!」」」
啓太が馬車の荷台を指差す。彼らはすぐに服に群がり、各々数着を取ると
先ほどの建設現場とは別の方向に駆けていった。
「あきれるほど感心するわね。昼ごはんすら複数の目的があったの!?」
「当然。とにかく時間も金も足りないんだ。」
啓太はにっと笑うと、降下してきた中一人残ったタバサに笑いかける。
風竜のシルフィードは飛び去った。
「いつもありがとうな。タクシー代は全部でいくらになってる?」
「今日が1エキューと62ドニエ。他に16エキューと52スウ。」
タバサが、無表情に答える。啓太は、エキュー金貨を20枚渡した。
「つりはいらないよ。タバサのおかげでいつも助かってるから端数はチップだ。
ありがとな。それと、昼ごはんを一緒に食べないか? おごるぜ。」
啓太がタバサの頭をなでながら食事に誘う。わずかに目を細めたタバサは、
コクリとうなずいた。
それを見て、ルイズはなぜかいらつく自分に戸惑った。
最近小さめだがベッドを購入し、薬草棚で仕切られた一角に
自分のスペースを作ったが啓太は何も言わない。黙認している。
もう屈辱がどうのは気にする事がなくなってきているあたりからこんな
気分に頻繁になるようになってきている。ルイズは、理由がわからなくて困った。
「う~~ん、ケータ。私、トリスタニアに一緒に来るの初めてだけど、
一体いくつの事に手を出してるの?」
「いくつ手を出す?」
啓太は、ともはねの頬についたソースをハンカチで
拭いてやりながらルイズに聞き返した。
「だって、午前中だけで工事に男子生徒の授業態度の向上、薬草。
通りの名前を聞いて地形を覚える、ギーシュ達の仲を取り持つ。
日用品の相場を調べる。風竜タクシーだってあなたが思いついたんでしょ?
さらに学院じゃ変な機械を作ってるし魔法の修行に社会の勉強に
戦闘訓練と指導。戦術授業に秘薬の開発までしてるそうじゃない?
とても一人でやってる仕事の量じゃないわ。何者なのよ?」
「啓太様はとにかくすごいんです! 当然です!」
ともはねが、ツインテールを揺らして小さな胸を張り、むふ~~と息を吐く。
実に誇らしげに、と言いたいところだが容姿のせいでかわいいポーズ、である。
知らぬ間に仲を取りもたれていたと聞いたモンモランシーが拗ね、
ギーシュは必死になだめている。一瞬ルイズを恨めしそうな目で見た。
だが余所見をしている場合ではないので突っ込みはしない。
「シティーボーイの俺には不満だらけのこの世界。なら楽しめる世界に
“すれば”いいんだ。当分こっちにいるしかない以上、やってみるか、
ってだけさ。そうすると時間は絶対足りない。だからやりくりしていただけさ。」
そう。この世界と啓太の世界の時間軸が違うのでも無い限り、
もはや啓太に獣医大現役合格現役卒業の可能性は無いも同然だ。
ならば、帰るまでの年月を無駄と後悔しないように過ごすしかない。
「??? どういうこと?」「きょろきょろきゅ~~?」
「啓太様、かっこいいです!」「もぐもぐ。」
「モンモランシー、つれないことを言わないで!」「いやよ!」
「無駄なもの、いらないと思えるもの、劣ったもの。役に立たないもの。
でも、別の面から見れば役に立つ優秀なものかもしれない。
あるいは、磨けば光る宝石の原石かもしれない。」
啓太は、ルイズを見据える。ルイズもまた、啓太が見いだした宝石だ。
ルイズは、傍若無人ながらも味方をし、かばい、才能を見出してくれた
啓太に見つめられ、ほんのりと胸が熱くなるのを感じる。
「俺の従兄弟の光は、そうやって10人の女の子の個性を花開かせた。
それを(世界に対して)やってみようってだけの話さ。」
そういって、どこか遠くを見つめる啓太。
啓太は、少しだけ、赤道斎の気持ちがわかった気がした。
己の理想とするもの、欲しいと思うものが無い世界。
世界を変えようとする傲慢と、それが出来る根拠。実に面白い。
そんな、遠い未来の理想を見据えた啓太の目は、実にりりしくかっこよかった。
ルイズの心臓が、また一つ、トクンと鳴る。
ともはねが、キャイキャイ啓太をほめているが気にはならない。
これは害にならないモノだ。ふと横を見ると、ひたすら食べていたタバサが、
手を止めて啓太を見ている。無表情な目。これも害にはならないだろう。
そう考えて、ルイズは、はたと困った。一体ナニが?
啓太は、先ほどから隣のテーブルで声高に話している商人達の話を聞いていた。
「また土くれのフーケが出たそうだぜ!」「今度はどこの貴族だ?」
「ローレシア男爵の水の羽衣だそうだ。」「金庫が土くれになってたそうだ。」
「その前はサマルトリア侯爵の力の盾だったか。」
「巨大ゴーレムで別荘ごと破壊して持ち去ったそうだ。」
「隼の剣は誰から取られたんだっけ?」「ルブカナ伯爵の城さ。」
「聖なるナイフはテバ侯爵の地下通路からトンネル掘って盗んだそうだ。」
「宝を持ってる貴族は皆震え上がって護衛に高い剣持たせてるってよ。」
「だから最近固定化のかかった武器がやたら高いのか。」
「土メイジ相手じゃ、安いただの剣は粘土と同じで役に立たんからな。」
「けど、なまじな武器で意味あるのか?」「気休めにはなるんじゃ?」
「フーケの巨大ゴーレムは見ただけでメイジも逃げ出す恐ろしさだというぜ。」
「誰も襲われたときの事を話したがらないそうだ。」「それほど怖いのかよ?」
「トラウマになって引きこもル奴。」「立たなくなっちまう奴。」
「対人恐怖症になっちまった奴。」「いろいろいるらしいぜ。」
「なんかほんとに恐ろしそうだな。」「手を出さなきゃ大丈夫らしいぜ。」
「一発当てると手加減やめて恐怖のゴーレムにバージョンアップするそうだ。」
「どんなゲームだ?」「なんだそれ?」「いや、気にするな。」
「ふ~~ん。」
啓太は、少し考える。物騒な怪盗が出没しているらしい。
パソコンというこの世界ではとんでもないお宝を持っている以上、
武器を手に入れることを考えたほうがいいのかもしれない。
武器を握れば強くなる、という特殊能力を得たのだ。使わない手は無い。
もっとも、ガンダールヴの力を発動中は霊力を呪符にこめるのに支障がでる。
霊力の流れが分散され、威力が多少落ちるし時間もかかる。
そのデメリットを上回るメリットがあるのだし。
「予定がずれるが、余裕があれば武器屋によって見るか。」
啓太が唐突につぶやいた。
「啓太様、おもちゃ屋より先にですか?」
「武器屋って、あんなに強いのに必要なの?」
ともはねとルイズが聞き返す。
「まずはおもちゃ屋さ。そのあと、時間があれば武器屋にも寄るだけさ。」
さて、それから啓太達はおもちゃ屋で品定めをしていた。
「ケータ様、これ! これ買ってください!」
ともはねが、ラメ入りゴムボールを啓太にねだるので快諾する啓太。
「う~~ん、プリキョ了変身グッズにセラムソ人形にハノレヒ学園キット。
どれも子供っぽいわね。やっぱり私にふさわしいのはもっと大人びた
ビスクドールね。口ーゼソメイデソ工房のがいいなあ。」
そういってちらりと啓太に目をやるルイズ。プレゼントして欲しい…
ってなぜ?ルイズは首をかしげる。
「今日は時間ないしな。今度来たときに寄るからその時買ってくれ。」
空振りである。
「………」
タバサが、無言でじっと人形を見ている。
「欲しいのか? ならプレゼントするよ。店主! これも頼む!」
なぜだかいらついてしまうルイズは、なんとなく店の一角にまとめて
積まれているおもちゃの剣の一つを手に取った。
「どうした、ルイズ。訓練用に買っていくか?」
「う、ううん、そんなんじゃないの。」
あわてて棚に戻すルイズ。その時。
「おい、そこのあんちゃん。」
「ん?」
自分と店主以外誰も男はいないのに聞こえる男の声。
「俺だよ俺。」
「幻聴じゃないよな、幽霊か?」
タバサが、ギクリとこわばって包んでもらった人形を取り落とす。
一方啓太は目を凝らした。大抵の幽霊は普通にしていても見えるが、
中には穏身の得意な幽霊もいるからだ。が、幽霊は見えない。
かわりに、見慣れすぎていて気にも留めなくなっていたもの、
すなわち目の前のおもちゃの剣の山の一本に気付いた。
「気付いたか、俺だよ俺。おめえ、ここによく来る太った貴族や
がきに甘いおばさんどもとは毛色違うな? なんでいめみたいなのが来た?」
「おもちゃにもかかわらず、なぜか強い霊力を放っているな。
おもちゃの剣に幽霊が取り付いてるのか?」
またタバサが人形の包みを取り落とした。
「怖いのか? 安心しろ、邪霊ならすぐに俺が昇天させてやるから。」
そういって、そっと抱きしめてやる。優しく、子供をあやすように。
「むむ!」「うう!」
ともはねとルイズが同時にうなった。ともはねは遠慮なく啓太に飛びつく。
「啓太様~~~私も怖いです~~~♪」
飛びつけないルイズは、なぜか負けたような気分になっていらついた。
さておき。
「うっうっうっ! なんてえひでぇいいぐさだぁ! 俺様を捕まえて幽霊だ
なんてよおぉ! 俺様はこれでも強えインテリジェンスソードなんだぜえ!」
なぜかおもちゃの剣が泣いている。
「おもちゃの剣をインテリジェンスソードにするなんて何考えてんだ?」
啓太は、じっと目を凝らして見た。悪い気はないようだ。
呪いの剣ではないようである。山から掘り出してみる。左手のルーンが反応する。
「おでれーた。おめえ、使い手か!」
「使い手?」
啓太は鸚鵡返しに聞いた。ガンダールヴの事だろうか。
「おう、使い手だ。おめえ俺を買え。損はさせねえ。」
「ふむ。しかしおもちゃを買ってもな。」「おもちゃじゃねーよ!」
錆びた剣がわめく。左手のルーンが発動するということは、
実際に戦うために作られたものなのだろう。悪くない。しかし。
「いや、だっておもちゃだろう? でなきゃなんでこんなとこに真剣が
あるんだよ。だよな、店主?」「真剣だ! デルフリンガー様だ!」
「まあ、おもちゃ以下といいますか。」「てめ、なにいってやがる!!」
「武器屋で口の悪さから店の売り上げを大幅に落としましてね。」「黙れこら」
「こりゃたまらんと二束三文で譲ってくれたのですよ。」「おきやがれ、殺すぞ!」
「子供の練習用木剣の山と一緒にね。木剣はどっちでも扱いますからその縁で。」
「ふうん、一応本物の剣なのか。しかしこんな錆びついた口の悪い剣か。
安かったら買ってもいいが…」「うおおお!おもちゃ扱いはもういやだ!」
魔法のかかった剣はとても高い。今の予算ではとても手が出ない。
「それなら新金貨で15枚でいいですよ。うちの売り上げも落ちてましてね。」
「う~~ん、しかしな、戦場で隠密行動取ってるときにわめかれたりしたら…」
啓太と店主の、値切り合戦が始まった。
結局啓太は、5エキュで“自称デルフリンガー”を購入した。
人形とゴムボール他のおもちゃ数個よりも安価に魔剣を手に入れたのである。
「うっうっうっ、ひでえぜ相棒。この俺様をあんなに買い叩きやがって!」
「安物。」
ボソッとタバサが一言言う。
「安もんじゃねえぇぇぇぇぇぇ!!!」
デルフリンガーが絶叫する。
「いや、事実だろ。欠点が酷けりゃ安くもなるさ。」
「欠点じゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「じゃ、欠陥。」
またタバサがぼそっとつぶやく。
「欠陥でもねぇぇぇぇぇl!!!」
「うるさいわね、ほんとに」
ルイズも辟易してきたようだ。
「やっぱ返品したほうが「おねがい、それだけはやめて」いいんじゃねえか。」
おもちゃの同類扱いという屈辱だけには、
もううんざりなデルフリンガーであった。
#navi(いぬかみっな使い魔)
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いぬかみっな使い魔 第10話(実質9話)
「なあ、ルイズ。お前王様に会えるコネないか? 公爵令嬢なんだろ?」
おもちゃ屋からの帰り、またしても服を配った後に啓太が聞いた。
「王様? 王様は今空位よ。王妃様が喪に服すといって即位してくれないの。」
「じゃあ王子、はいるわけ無いか。けど悲壮感は無い。王女はいるってとこか?」
啓太の推測に、脇からモンモランシーが割り込んできた。
「ええ、アンリエッタ王女。トリステインがハルケギニアに誇る可憐な花よ。
おん年17歳とお若いのに水のトライアングルメイジと大変優秀だわ。」
「へえ。で、婚約者、つまり次のトリステイン王は誰なんだ?
いつまでも王様決まらないんじゃ色々まずいだろ。」
今度はギーシュが答える。
「決まっていないが支障は出ていない。なにしろマザリーニ枢機卿が
国を牛耳ってからね! あの鳥の骨! ロマリア人の癖に我が物顔で!
先王陛下が亡くなられて以来今の王家には杖が無いと揶揄されてるよ。」
「ほう…詳しく話してくれ。」
啓太はルイズやタバサ、ギーシュから聞き込みをしていく。
「なるほど。ふむ、有能だが評判の悪い実務能力者か。」
啓太は、悪口の洪水の中から王妃や王女達の統治能力の低さを感じ取った。
自ら動いている感触がまったく伺えない。政治を省みない女性王族のみに
なったので仕方なく統治を代行している人という可能性もあるな、とも考える。
「それで話は戻るけど、謁見自体はなんとでもなるわ。幼い頃姫様の遊び相手を
務めたこともあるのよ、私。特に今はお父様も王都にいらっしゃる時期だし。
でも、理由は? ただ会いたいといって会わせてくれるほどお暇じゃないのよ?」
「理由なんていくらでもある。東方仕込みの新式の秘薬を開発しました。
ついては献上したく存じ上げます。とでも言えばいい。」
ルイズの頼もしいコネクションに、啓太も立派な理由を挙げる。
「いいなあ、君達は。僕は姫様にお会いするコネなんて何も無いよ。」
「私もだわ。ケータ君達がうらやましいわ。」
ギーシュとモンモランシーが愚痴る。
そこに馬車を御していたともはねが口を挟んだ。
「啓太様、お姫様ってことはひらひらでフリフリでキラキラなドレスですか?」
「お、興味あるか、みんな。だったらみんなで謁見申し込むか?」
「おおお!!」「えええ!」「わわわ!!!」
「みんな薬草クラブ員だ。こっちに無いポーションや秘薬はいくつもある。
その精製担当者が献上して、残りが運搬人として行けばいい。
次代を担う名家の子女達が国のためになる産業開拓を報告したい、
って事なら名目は充分だろう。どうだ、ルイズ?」
ギーシュ、モンモランシー、ともはね。みな期待に満ちた目でルイズを見る。
タバサだけはマイペースで本を読んでいる。
「どうだ、ルイズ、出来るのかい!?」
ギーシュがルイズに迫る。他2人も迫る。ルイズは、たじたじと答えた。
「だ、大丈夫だと思うわ。」
「「「おおお!」」」
皆が喜色満面となって口々に叫ぶ。
「これは素晴らしいわ!」「皆を誘わないと!」「本物のお姫様、初めて!」
盛り上がる一同を見て、啓太は薬草のストック量と
生産予定を頭から引っ張り出して献上品の検討を始める。
「よし、それじゃあ、明日街に売りに来る予定だった分なんかをまとめて
献上するか。ガソリンにペニシリンに赤玉にエキスに養命酒、
焼傷癒馬油、葛根湯、銀丹、小柴胡湯、安中散、黄連解毒湯、
あとは歯ブラシに歯磨き粉、スティック口紅、土のチョコもいいかな。
味噌と醤油は厨房に渡して調理法工夫してもらう前だしやめとくか。」
「啓太様、そんなに献上しちゃって大丈夫なんですか?」
ともはねが、振り返り振り返りしながら心配そうに聞く。
馬車の御者をしているので振り向いたままにしておけないのだ。
振り返るたびにともはねのツインテールにまとめた髪が揺れる。
「なんだ、ともはね、心配してくれるのか?」
「はい、啓太様。お金が足りない足りないっていつもおっしゃいます。
クラブのみんなも分け前が減るって怒るのでは?」
「誰も反対しないさ。それどころか、当分無給だって大喜びだろうさ。」
「もちろんよ!」
調合を主に担当し、金が足りないと一番困る部署にいるモンモランシーが請合う。
「確かに、これで反対する奴なんてまず居ないだろうね。」
ギーシュも同意する。ルイズもうなずく。
「ま、確かにね。姫様と会えるかも、となればみんな大喜びよ。」
「納得させるのなんて簡単さ!」
啓太が、ともはねに請合った。
かくして、一大イベントが決定した。皆盛り上がっている。
その一方で、相変わらずマイペースに本を読んでいたタバサがポツリと聞いた。
「お母様の薬は、出来そう?」
ふむ、と啓太がうなって答えた。
「そっちは難しい。一通り調べてはみたがどれもこれも高度な薬ばかり
材料に必要だし。基礎的な薬品をもっとそろえないと話にならない。
それに、話を聞いただけの症状じゃなあ。一度診察してみないと。」
それを聞いて、タバサは無表情にうなずいた。
「だったら、今度、私の家、来ない?」
突然ルイズが怒りだした。自分でも理解できない衝動で。
「むむ! ちょっと、なに勝手に家に招待してるのよ!」
「別に、あなたに断る必要ない。」
「ひ、必要ないって!」
ルイズは、自分の使い魔だから、と言おうとして啓太の氷点下の視線を感じ、
0.1秒で無難な言い方をはじき出した。
「ケ、ケータは、私が召喚したんだから私に責任があるの!
だからちゃんと私に断ってから誘いなさいよ!」
だがこれは大きな間違いだった。啓太が手をわきわきさせながら聞く。
「なんでお前の許可が必要なんだ?」
「そ、それは!」
使い魔だからと言いたくなるが、それが禁句なのは何度も
ほっぺむにむにの刑を受けて体に叩き込まれている。
ルイズは蛇ににらまれた蛙のように何もいえなくなった。
「現在進行形で誘拐犯がなんだって?」
「ご、ごめんなさい。そんな権利はありません。」
殊勝に謝るルイズである。
「よし、「そうですよ~~、啓太様は今私のもののなんですから!」そry」
とりあえず許してやる、と言おうとした啓太に、ともはねが割り込んだ。
「ちょ、ちょっと! なんであんたのものなのよ!」
当然、ルイズが食って掛かった。
「啓太様は私と契約しています。この世界で契約してる犬神は私だけです!」
大見得切るために馬車を止めたともはねが、御者台の上に立って
えっへんと胸を張った。ツインテールと先の割れた尻尾がピコピコ揺れる。
「いや、あのな、ともはね。」
啓太が頭を抱える。地球の日本で、女達の啓太争奪戦に嫌気がさして
逃げ出したいと常々思っていた啓太であるが、なんだかこっちの世界でも
似たような状況になりつつある気がする。
しかも食指の動かないするぺた3人娘が主力というのが泣ける。
「なんです、啓太様。」
「俺がともはねのものだとどうなるんだ?」
「啓太様にお世話してもらえるんです! ブラッシングもシャンプーも
爪切りも! 服だって買ってくれますし一緒のベッドで寝ても
下さるんですよ!それが許されるのは私だけなんです! エッヘン!」
ものすごく得意そうである。
「ちょ、ちょっと、その言い方だとまるでベッドであああああ、あれ、
あれでもしてるみたいじゃない! ごごご、誤解される言い方やめてよね!」
ルイズが真っ赤になって突っ込む。
「誤解じゃないですよ、毎晩抱いてくださいます!」
通行人の視線が痛い。こんなロリケモノを毎晩抱いているのか!?
どんな変態だ!? とさげすむような目つきだ。ギーシュとモンモランシーも
啓太に疑いの目を向ける。
「ままさか!?」
「ちょ、ちょっと、犯罪…じゃないけどどうかと思うわよ!?」
「いや、あのな、添い寝してるだけだから! 俺お子様には興味ないの!」
「な~~んだ。」「と、当然よねっ!」「そ、そうよね、良かった。」
「ぷう。啓太様つれないです。シャンプーもまだ1回しかしてもらってません。」
ちょっとしょぼんとなるともはねだ。
※1回だけのシャンプーとは!?
男子生徒用の風呂にともはねがすっぱだかで乱入してシャンプーを強要した
一件。タオルで隠すことすらせず、断固として動かないともはねに、
啓太は仕方なくシャンプーしてやった。
次の日殺到した入部希望者はなぜかともはねに次のシャンプー予定を
聞く事に余念が無い。ブランド物のシャンプーや石鹸をともはねに贈る奴、
代わりにシャンプーしてやろうかと打診する奴、
はては尻尾や耳を触らせてと頼む奴。啓太は、全部断るよう言いつけている。
「あ~~、まあ、その、とおり、かな。」
啓太が、あきらめ気味で同意した。下手な地雷女に手を出して
占有権を主張されるよりも、ともはねに第一の権利があることに
しておいたほうが無難な気がする。
くいくい。
啓太の袖が引っ張られた。振り返るとタバサである。
「さっきの話だと、薬の調合表自体はあるのね?」
「あ、ああ、あくまで効きそうな薬をピックアップしただけだが。」
「いつ、来れる?」
「むむ!」「う~~~!!」
ともはねとルイズがうなる。どっちも独占欲が増大中である。
「場所はどこだ?」
「ラグドリアン湖のガリア側。」
「タバサは外国人だったのか? まあ、家が近いなら明日にでも…」
「啓太様!」
「け、啓太様! 謁見はどうするのですか!? もしかしたら明日にでも
謁見できるかも知れないんですよ! タバサさんの家に行ってるどころじゃ
無いとおもいます! 今はいい献上品を沢山作らないと!」
なぜか危機感を感じたルイズとともはねが必死に言い募る。
「そ、そうよ、私が頼めば明日にでも謁見できるかもしれないのよ!?
そうだわ、今からうちの別邸にいらっしゃいよ、すぐお父様に会わせるわ!」
すでに、自分がなぜこんなに張り合っているのか、
理由がわからないことすらどうでも良くなっている。
「(くいくい)じゃあ、明日に。シルフィードに乗れば2時間で着くわ。」
「だめ~~~!!!」
「啓太さま~~~!!!」
大騒ぎをしながらブルドンネ街で止まっている啓太達の馬車。
しょうがないなとギーシュが後ろの騒ぎから避難して御者席に移った。
隣に同じく避難してきたモンモランシーが座ったのでご機嫌で馬に鞭をくれる。
「お~~い、ルイズ。ヴァリエール家の別邸はこの辺りだったよね?」
「だからね、私は! って、そうよ、右の塀はもううちのだから、
門もすぐ見えるわ! だから離れなさいって!」
「啓太様は私のです!」
「(くいくい)明日がダメならあさっては?」
「ぐはあ! だからお前らいい加減にしろ~~~!」
啓太達はなんだかんだいって平和だった。
王立銀行(1P192)の前に、差し掛かるまでは。
突然がらがらがら、と大音響を立て、巨大な何かが立ち上がった。
「な、なんだこりゃ!?」「キャー!」「で、でかい!?」
「ご、ゴーレム!?」「いや~~~!!!」「うわ~~~!」
たちまちブルドンネ街は悲鳴を上げて逃げ惑う人たちで一杯になり、
啓太達の馬車は立ち往生する。
ズゴオォン ズゴオォン ズゴオォン!
30メイルにも及ぶ巨大なゴーレムが、王立銀行脇の車寄せに立ち、
拳を振るっている。壁に拳が叩きつけられる瞬間だけ拳は鋼鉄となり、
一撃で壁がぼろぼろになり、ニ撃で穴が貫通し、三撃で穴が広がる。
銀行の中から、パニックになった客や職員達が逃げ出す。
職員も客もほとんどがマントをまとった貴族だ。だが、逃げ惑うばかりで
事態をどうにかしようとするものは一人もいない。
最後のほうになって太ったガマ蛙のような男がよたよたと転がり出てきた。
「ああ! わ、私の銀行が! こ、こら、お前達、逃げずに戦え、
それでも貴族か! わしの銀行を守るんじゃ!」
「ここは王立銀行で私物じゃないはずじゃ? さすが悪名高い」
ギーシュが冷静に突っ込んだ。
「ほう、王立銀行なのか。白昼堂々の銀行強盗だな。」
啓太も冷静に突っ込んだ。この程度のゴーレムは“邪星”の取り付いた
クサンチッペと比べればたいした事は無い。
巨大ゴーレムは、銀行の中に土とレンガと石でできた拳を突っ込んで
ごそごそ探っている。
すでに、辺りに残っている人影はまばらになっている。
皆逃げ出したようだ。「さてどうするか」と啓太は一瞬考えた。
このまま逃げるのはいい考えだ。見たところ人的被害は無い様に
気を使っているようで、けが人すらろくにいない。
となると、今啓太が手を出さずとも官憲が相手するだろう。
何より問題なのは馬車に大量に積んだ今日の購入物だ。
貴重な薬草も多いのである。これをほっといて戦うのはまずい。
「よし、前が空いた、ギーシュ、逃げるぞ!」
「お、おう!」
パニックになっていた馬に何度も“沈静”の呪文をかけていた
ギーシュは、馬に鞭を入れて逃げ出そうとした。その時。
「啓太様、あれ!」
ともはねが指差す。
見ると、銀行を私物扱いしていたがま蛙男が、逃げ遅れた若い職員を
怒鳴りつけて魔法攻撃させようとしている。が、問題なのはそれではない。
銀行の車寄せに逃げ遅れたと思しきローブ姿の女性が乗った馬車がある。
彼女は、そろそろと巨大ゴーレムの後ろ、足元をすり抜けようとしていた。
良く見ると、啓太達が毎日補習授業を受けている、ミス・ロングビルだ!!
そこに、3人のメイジが、魔法を巨大ゴーレムに向けて放つ。
「あのじじい何とち狂ってんだ、早く逃げないとあぶねえぞ!」
3人の魔法攻撃はろくに効いていない。ゴーレムが、手に何か持って起き上がり、
件の3人に向きなおると、口と思しき場所を開いて言った。
「ああんら~~~せくしぃい~~な坊や達ね~~~(野太い声で)」
口の中にある岩の板を振動させて話しているようだ。
「そんなに私と遊びたいなら、私脱いじゃうわあぁん(野太い声で)」
第2撃目が当たった巨大ゴーレムの表面から膨大な量の土が
ガラガラと音を立てて落ちる。
小さく「きゃっ」という悲鳴が聞こえた気もするが、気付かれないよう
声を抑えていたのか瓦礫の落ちる音にかき消されたのか定かではない。
ミス・ロングビルの乗った馬車が砂埃に包まれる。啓太が心配して叫ぶ。
「うわ! 生き埋めに!?」
が、馬車は大量の土砂を荷台に乗っけながらも逃げ出すことに成功していた。
啓太達の馬車の横をがらがらと猛スピードで追い抜き…かけて速度を緩める。
「あ、あなた達、どうしてここへ!? 早く逃げなさい!」
「お、おう!」
発進直後でスピードの乗っていない馬車から振り返った啓太は深く後悔した。
なぜなら。
件のゴーレムは、30メートルから一回り小さく25メートル
ほどになっていた。のはいいのであるが、大雑把に人型だった形が、
見事に引き締まったマッチョ全裸ハゲになっていたのである。
ボディビルダーのように見事な筋肉の鎧にオカマ言葉。
ボリューム感たっぷりで筋肉の一筋一筋まで見えるほどリアルな造詣。
それは、背筋が凍るほどのおぞましさと恐怖を啓太にもたらした。
「こ、怖え~~~! なまじな悪魔より怖ええ~~~!!」
それまで、物陰で様子を見ていた連中も、脱兎のごとく逃げ出した。
「ギーシュ、何してんだ、もっとスピード上げろ!」
啓太は、恐怖のあまり巨大マッチョゴーレムから目を離せない。
見ると、マッチョ全裸ハゲゴーレムは太った男と逃げ遅れた職員二人を
引っつかみ、へそまで○起したご立派なモノに近づけているところだった!
カックン カックン カックン
巨大マッチョゴーレムが嬉しそうに腰を前後に振る。
同時にご立派なモノも前後に振られる。そのちょっと上に
吊り下げられたがま蛙デブ店長と職員二人がいるわけで。
「うわ~~!!」「か、勘弁してくれ!」「い、いやだあ!!」
「ああんら~~、そんな事言わないで愛しい人~~~(野太い声で)」
「誰が愛しい人じゃ~~~!」「わ、私は愛しくない、愛しくない!」
「喜んでえぇん! 私、天国に連れて行ってあげるからあん(嬉しそうに)」
カックンカックンカックン
「無理! 絶対無理だ!」「絶対に入らん!」「死ぬ!死んでしまう!」
「そおうおん? じゃああなた達に合わせてあげるわぁん(野太い声で)」
そういって巨大ゴーレムは3人のズボンを剥ぎ取り、直径80センチはある
ご立派なモノの先から細いご立派なもの(それでも子供の腕ほどもある)
を3本出して近づける。
「うわ~~~!!」「いやだあああ!!」「そ、それだけは! それだけわあ!」
それを見て。ガラガラ逃げていた啓太は、見捨てられなくなった。
「ここで逃げたままでは、破邪顕正ではなくなってしまう!」
すさまじい早口でつぶやく。
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ!」
恐怖を抑え、かえるの消しゴムを引っつかみ、ともはねのほうを見る。
「おい、お前らルイズの家に避難してろ! いくぞ、ともはね!」
「はい!」
「わ、わかった!」「ちょと、何する気!?」「危ないわよ!?」
啓太達が地を蹴る。カエルの消しゴムを投げようとし、そこで啓太は
危うく思いとどまった。今日は杖を忘れてきた。マントも学院用の
小さなものだ。この状態で杖もなしに術を使えば先住魔法か!?
と大騒ぎになってしまう。ともはねはまだいいが、啓太自身はまずい。
啓太は、仕方なく背負ったデルフリンガーを抜いた。
啓太はデルフリンガーを構えて走る。
「おい、相棒! まさかおめ、あのおぞましいもん俺で切るってか!?」
「他に方法が無い!」「やめてくれ~~~!」
「知るか! ともはね!」「はい!」
啓太が三角飛びの要領で塀から銀行の屋根へ、そしてゴーレムの
膝を経てさらに飛び上がり、剣を振りかぶる。
二つの小ご立派なモノはなんとか切り飛ばした。
だが、一つはわずかに間に合わない。
ずぶり
がま蛙デブ店長は、バックバージンを(検閲削除)
「うっぎゃ~~~~!!!!」
痙攣しながら悲鳴を挙げると、がっくりと動かなくなった。
「どっせい!」「破邪走行、紅!」
啓太の握るデルフリンガーがご立派なモノ(大)を切り落とし、
ともはねの放った真紅の光線がゴーレムの拳を開かせ、とらわれていた
若者二人とがま蛙デブ店長を放出する。二人はとっさに魔法を唱えてふわりと
落下し、気絶していたがま蛙デブ店長はともはねがなんとか捕まえて軟着陸する。
「おい、こいつは俺たちが何とかするからこのデブ連れて逃げろ!」
「は、はい!」「ありがとうございます!」
フリチンの二人は、魔法でがま蛙デブ店長(フリチン、バック経験済み)
を浮かべて連れると逃げていった。
「ああああ! わたしの、わたしの自慢の○○ちゃんが~~~(野太い声で)」
ゴーレムが悲鳴を上げている。
「よくもやったわね、こうなったらあなたに埋め合わせをして「ざれごと
いってんじゃねえ!」もらうわよおおぉん(野太い声で)」
啓太が、ゴーレムの右足の脇をすさまじい速度で駆け抜けながら切り裂く。
取って返してもう一度斜めに切り裂くと、45度ほどの角度で
三日月状に土がそげ落ちる。そこに、ともはねの紅が突き刺さる。
一気にくるぶしの上、一番細い部分の半分以上も奪われた
巨大全裸マッチョゴーレムは、体重を支えきれずに足が破砕。
「ああああああ!!!(野太い声で)」
巨体に似合う時間をかけてゆっくりと倒れていき。
ドズズズズズズウウウウゥゥゥンンン!!!
転倒すると、そのまま動かなくなった。
「ふ~~~、恐ろしい敵だったぜ。」
秒単位で倒したくせにかいてもいない額の汗をぬぐいながら言う啓太である。
「よし、ともはね、人が集まる前に逃げるぞ。」
「ううう、ひでえ、よりによって俺様で○○を切るなんて。」
「啓太様、いい事したのに逃げるんですか?」
「ううう、穢れちまった、穢れちまった。」
「事情聴取なんかで長時間拘束されたら割に合わん。」
「初の実戦、それも長いこと使われなかった久しぶりの戦いが○○切りかよ。」
「そっか、そうですね。」
「ヴァリエール邸行くぞ。」
「はい、啓太様!」
「おい、少しは聞いてくれよ~~~~~~!!!!」
デルフリンガーの哀惜の叫びが、長く響いた。
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