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「無敵で不死身の使い魔」(2008/03/22 (土) 21:05:13) の最新版変更点
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せまる七万の大軍勢を目前にしながら、ルイズは考えていた。
どんなピンチにもいかなる強大な敵にも打ち勝つ、絶対無敵の英雄。
それはおとぎ話や空想の世界には実にありがちな存在だ。
男の子はそんな存在に憧れて英雄ごっこをし、女の子はそんな英雄に助けられるヒロインになれたらと夢想する。
しかし、そう長くはない時間の中で、子供はそれがあくまで空想の中の存在であることを知る。
英雄と呼ばれている人間も、その実は傷つけば血を流し、命を落とせばそのまま土に還る、そんな当たり前の人間でしかないことに気づく。
それでも、そんな英雄の伝説や神話が語り継がれるのは、はかない現世でのせめてもの慰みなのかもしれない。
(そんな風に思っていた時期が、私にもありました)
ルイズはため息をつく。
こんなことがあればいいな、こんな英雄がいてくれたら。
人は誰でもそんなことを思う時がある。
でも? もしも、そんな空想だけの存在が、実在するとすれば、人ははたして素直に喜べるのだろうか?
やったあ、ラッキー!! で、すむものだろうか?
否。断じて否である、と今のルイズは断言できる。
不気味な怪物のようにせまってくる敵軍を見ながら、ルイズは初めてあいつに出会った時のこと、サモン・サーヴァントの儀式を思い出す。
最初は絶望した。
何故なら、そいつはどう見ても死体だったからだ。
何らかの処置がされているのか、ボロボロに腐っているということはなかったが、顔はもはや生前の様子すらわからない骸骨となっていた。
その格好や全身に施されている黄金の装飾からして、どうも生前はメイジのように思われた。
もしかすると王族かもしれぬ。
だが、死体ではどうしようもない。
それでも、規則は規則ということで、ルイズは泣く泣く死体に契約のキスをした。
胸に使い魔にルーンが刻まれると同時に、死体だと思っていたそれはむくりと起き上がった。
「お化け?」
「幽霊?」
そんな声がこだましたのをおぼえている。
驚く中、そいつはマントをなびかせ、高笑いと共に空高く飛び去っていき、そのままどこかへ消えてしまった。
あのおかしな骸骨を使い魔にしなくてラッキーだったのか、使い魔に逃げられたのを悲しむべきか、正直微妙だった。
多分二度と会うことはない、と思っていたのだが、そいつは思わぬ時に戻ってきた。
土くれのフーケが、学院を襲った時である。
使い魔召喚にすら失敗した今、ここで名誉を挽回するしかないとルイズは無謀にも巨大なゴーレムに向かっていった。
あわやつぶされそうなになった時、あの使い魔が高笑いと共にやってきたのだ。
使い魔は縦横無尽にそれを飛び回り、その銀色の杖でゴーレムを破壊した上、フーケを捕らえた。
フーケの正体ことミス・ロングビルはよほどショックだったのか、すっかりダメな人になっていたそうだ。
その代わり、寛大な措置とかで、死刑は免れたらしい。
その後も、アルビオン、タルブの村、とルイズがピンチになった時には、使い魔はどこからともなく飛んできて、悪を蹴散らしていった。
まさにおとぎ話の英雄が実在化したようだ。
顔が骸骨というのはどうにもいただけないが。
そこでルイズは思考を迫る軍勢に戻した。
ここまでは、確実にやられるどころか、勝負にすらなるまい。
しかし。
「いつものやつね」
いつの間にか自分の周辺を飛び回っている金色に輝くコウモリに、ルイズはため息をつく。
あの使い魔の現れる前兆。
そして、当然のように使い魔は高笑いと共にやってきた。
銀の杖を手に、黒いマントをなびかせて。
そして、やっぱり当然のように敵軍に向かっていくが、ルイズは心配などしない。
あいつはフーケのゴーレムに踏み潰されようが、ワルドの魔法を食らおうが、戦艦の砲撃が直撃しようが、何事もなく復活し、恐怖する敵をなぎ倒したのだから。
今も、敵兵たちは阿鼻叫喚の騒ぎになっている。
何をやっても通じず、疲れさえ欠片も見せない使い魔に、それはもうボコボコにされていくのが遠目にもよく見える。
あ、大砲の弾を受けて墜落した。
一瞬敵は沸いたようだが、歓声はすぐにそれ以上の悲鳴となる。
使い魔は何事もなかったように復活し、また敵に向かっていたのだから。
もはやルイズにさえトラウマになりつつある、おなじみの台詞を叫んで。
「黄金バットは無敵だ!!」
神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。
そして最後にもう一人……。
それは記すことさえはばかれる神の心臓。何者にも敗れぬ神の杖。不死の体と無敵の力、いかなる時にもいかなる場所にも、我を救いに現れる。
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迫る七万の大軍勢を目前にしながら、ルイズは考えていた。
どんなピンチにもいかなる強大な敵にも打ち勝つ、絶対無敵の英雄。
それはおとぎ話や空想の世界には実にありがちな存在だ。
男の子はそんな存在に憧れて英雄ごっこをし、女の子はそんな英雄に助けられるヒロインになれたらと夢想する。
しかし、そう長くはない時間の中で、子供はそれがあくまで空想の中の存在であることを知る。
英雄と呼ばれている人間も、その実は傷つけば血を流し、命を落とせばそのまま土に還る。
そんな当たり前の人間でしかないことに気づく。
それでも、そんな英雄の伝説や神話が語り継がれるのは、はかない現世でのせめてもの慰みなのかもしれない。
(そんな風に思っていた時期が、私にもありました)
ルイズはため息をつく。
こんなことがあればいいな、こんな英雄がいてくれたら。
人は誰でもそんなことを思う時がある。
でも? もしも、そんな空想だけの存在が実在するとすれば、人は果たして素直に喜べるのだろうか?
やったあ、ラッキー!! で、すむものだろうか?
否。断じて否。と、今のルイズなら断言できる。
不気味な怪物のように迫ってくる敵軍を見ながら、ルイズは初めてあいつに出会った時のこと、サモン・サーヴァントの儀式を思い出す。
最初は絶望した。
何故なら、そいつはどう見ても死体だったからだ。
何らかの処置がされているのか、ボロボロに腐っているということはなかったが、顔はもはや生前の様子すらわからない骸骨となっていた。
その格好や全身に施されている黄金の装飾からして、どうも生前はメイジのように思われた。
もしかすると王族かもしれぬ。
だが、死体ではどうしようもない。
それでも、規則は規則ということで、ルイズは泣く泣く死体に契約のキスをした。
胸に使い魔のルーンが刻まれると同時に、死体だと思っていたそれはむくりと起き上がった。
「お化け?」
「幽霊?」
そんな声がこだましたのをおぼえている。
驚く中、そいつはマントをなびかせ、高笑いと共に空高く飛び去っていき、そのままどこかへ消えてしまった。
あのおかしな骸骨を使い魔にしなくてラッキーだったのか、使い魔に逃げられたのを悲しむべきなのか、正直微妙だった。
多分、二度と会うことはないと思っていたのだが、そいつは思わぬ時に戻ってきた。
土くれのフーケが、学院を襲った時である。
使い魔召喚にすら失敗した今、ここで名誉を挽回するしかないと、ルイズは無謀にも巨大なゴーレムに立ち向かっていった。
あわやつぶされそうなになった時、あの使い魔が高笑いと共にやってきたのだ。
使い魔は縦横無尽に空を飛び回り、手にした銀色の杖でゴーレムを破壊した上、フーケを捕らえた。
フーケの正体ことミス・ロングビルはよほどショックだったのか、すっかりダメな人になってしまったそうだ。
その代わり、寛大な措置とかで、死刑だけは免れたらしい。
その後も、アルビオン、タルブの村、とルイズがピンチになった時には、使い魔はどこからともなく飛んできて、悪を蹴散らしていった。
まさにおとぎ話の英雄が実在化したようだ。
顔が骸骨というのはどうにもいただけないが。
そこでルイズは思考を迫る軍勢に戻した。
このままでは、確実にやられるどころか勝負にすらなるまい。
しかし。
「いつものやつね」
いつの間にか自分の周辺を飛び回っている金色に輝くコウモリに、ルイズはため息をつく。
あの使い魔の現れる前兆。
そして、当然のように使い魔は高笑いと共にやってきた。
銀の杖を手に、黒いマントをなびかせて。
そして、やっぱり当然のように敵軍に向かっていくが、ルイズは心配などしない。
あいつはフーケのゴーレムに踏み潰されようが、ワルドの魔法を食らおうが、戦艦の砲撃が直撃しようが、何事もなく復活し、恐怖する敵をなぎ倒したのだから。
今も、敵兵たちは阿鼻叫喚の騒ぎになっている。
何をやっても通じず、僅かな疲れさえ見せない使い魔に、それはもうボコボコにされていくのが遠目にもよく見える。
あ、大砲の弾を受けて墜落した。
一瞬敵は沸いたようだが、歓声はすぐにそれ以上の悲鳴となる。
使い魔は何事もなかったように復活し、また敵に向かっていったのだから。
もはやルイズにさえトラウマになりつつある、おなじみの台詞を叫んで。
「黄金バットは無敵だ!!」
神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。
そして最後にもう一人……。
それは記すことさえはばかれる神の心臓。何者にも敗れぬ神の杖。不死の体と無敵の力、いかなる時にもいかなる場所にも、我を救いに現れる。
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