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#navi(虚無と最後の希望)
level-11 「想い」
『女神の杵』、ラ・ロシェールで一等と言う宿
一歩足を踏み入れると広がるのは中々豪華な酒場
流石に貴族を客に取るだけあって豪華なことこの上ない
勿論、そこが貴族たちに気に入られたのだろうが
また、気に入られた理由は他にもある
女神の杵宿はハルケギニアでもかなり珍しいらしい巨大な一枚岩の中にあり、床やテーブルは勿論、削り出された岩で出来ている
鏡の如く光を反射するように磨かれたテーブルはチーフたちの姿を映していた
反射した光を視界に捉えながら入り口、窓、二階への階段、カウンターの隣にある裏口への扉に視線をやる
理由は勿論、敵の襲撃に際してどう行動するかの判断材料にするため
「へぇ、中々良い作りじゃない」
宿内を見渡すチーフをよそに、キュルケはハルケギニアでも結構珍しい岩作りの宿を見て感嘆の声を漏らす
それを発端に3人は内装の話をし始める
「装飾が疎ら」「統一感が無い」「二流品だね」などと酷評、先ほどまでの評価とは裏返っていた
子供と言えど貴族と言うものは対面を気にするので仕方が無いのかもしれない
そこへ、乗船の交渉へ行っていたワルドとルイズが現れる
「あら、どこへ行ってたの?」
ワルドは羽帽子を近くのテーブルに置きながら、椅子に座る
その表情から見るに、結果はあまり芳しくなかったようだ
「乗る船を捜してたんだが、どうやら出発は明後日にならないと駄目な様だ」
「急ぎの任務なのに……」
口と尖らせるルイズを見て、キュルケは疑問を口にする
「あたしアルビオンに行ったこと無いんだけど、どうしてすぐに出せないの?」
「明日の夜は『スヴェルの月夜』さ、その翌日の朝にアルビオンが最もラ・ロシェールに近づくんだ」
「へぇ~、その時が一番効率がいいから明後日と言うわけね」
「そう言う事だね」
言いながらワルドは懐から鍵束を取り出し、テーブルの上に置く
「部屋を取っておいたが、一部屋に3人は厳しいかな?」
キュルケ・タバサ・モンモランシーを見てワルドが聞いてくる
3人は、正確には2人だが問題ないと言った
「それじゃあ、ギーシュとチーフが相部屋」
「そして、僕とルイズが同室だ」
「え、ちょ、ちょっと待って!」
予想もしていなかったと声を上げるのはルイズ
『使い魔は常に主人と共に在るべき』と常々思っている
同じ考えを持つメイジはたくさん居る、それを裏付けるようにメイジは召喚した使い魔を常に傍に置いている者が多い
「だ、だめよ! 私達結婚してないじゃない! それに……」
チーフを横目で見つめる、それに答えるようにチーフは口を開く
「ルイズとは同室が好ましい」
護衛の関係上、安全ではない場所で離れるのは出来るだけ避けたい
守るにしても逃げるにしても、すぐに近くに居なければ意味がない
駆けつけている間に死を招くこともあるが故にこれだけは譲れなかった
「ワルド、大事な話ってなに?」
先ほどの部屋割りの提案、チーフと同室がいいと言ったルイズは
『とても真剣な話があるんだ、二人っきりで話したい』
と真剣な表情で言われ、渋々その提案を呑みワルドと同室に相成った
この決定にチーフは何も言わなかった、不服そうな感じだったけど
ギーシュと同室になっていたが、その部屋で寝ることは無いと思う
私とワルドの部屋の前で一晩中立ち続けるだろうから、後で一言言っておかなくちゃ
「ねぇ、ワルドったら」
女神の杵で一番上等な部屋、室内は一般の宿と比べかなり広く複数人入っても広々していると感じられる
部屋に置かれた調度品も質の高い物ばかり、その中で一際目を引くのは天蓋付きのベッド
見るからに豪華なレースの飾りが付いたベッドに座るルイズは問いかけた
それを聞いていたワルドはワインのコルクを開け、一つの椅子を引いた
「こっちに腰掛けて、一杯やらないかい?」
屈託の無い笑みを浮かべたワルドは二つのグラスを並べてワインを注いだ
返事で答えず、ルイズは椅子に腰掛ける
先ほどと同じような笑みを浮かべてワインを手渡すワルド、それを受け取るルイズ
「二人に」
その言葉に戸惑いながらもグラスを軽くあわせた
「ルイズ、姫殿下から預かった手紙はきちんと持っているかい?」
手紙が入っているポケットを押さえて頷く
思い出せば手紙を書き綴っているアンリエッタの表情は憂いを帯びた悲しそうな
それでいて、少しだけ熱を持った瞳で書き認めていた
あの表情は王女としてではなく、恋する──
「──イズ、ルイズ?」
「あ、ええ。 ちゃんと持ってるわ」
「心配なのかい? 無事アルビオンのウェールズ皇太子に会えるかどうか、手紙を取り返せるのか」
身の安全が心配かと言われれば、別にそうでもない
いまや疑うことの出来ないチーフの力を信じている、ただ守られているだけなのは我慢できないけど
ワルドだって居るし、失敗なんて事態を想像することが出来ない
「………」
「大丈夫さ、きっと上手く行くよ。 僕が居るし、君の使い魔だって居る」
「それに他の4人もそこそこ出来るんだろう? 並みのメイジが来たってすぐに撃退出来るさ」
ワルドは自信満々で『何も危険なことは無い』と言い放った
「……そうね、皆居るしきっと大丈夫よね」
「ああ、ルイズを必ずウェールス皇太子のもとに送り届けよう」
「貴方は昔から頼もしかったもの、全員無事に戻ってこれるわよね」
ワルドはにっこりと笑う、ルイズも釣られて笑った
「ワルド、これが話したいことじゃないわよね?」
「ああ、これからが君と二人で話したかったことだ……」
ワルドは一呼吸、ルイズを見つめる瞳に炎が宿る
「ルイズ、この任務が終わったら僕と結婚しよう」
「ワ、ワルド、本気だったの?」
「勿論さ、ラ・ロシェールへの道中で言っただろう?」
「で、でも。 わたしまだ……」
「ルイズ、君はもう子供じゃない。 自分の意思を持って自分の事を決めれる歳だろう? きっとお父上だって認めてくださる」
「ワルド……」
「僕は君を何年もほったらかしにしてきた、これはどう考えても僕が悪い、謝るよ」
「婚約者と言えた義理じゃない事も分かってる、でも僕には君が必要なんだ、ルイズ」
「待ってワルド……私はまだ、ちゃんとしたメイジじゃないの。 いつも失敗ばかりして、まともな魔法は一度しか使えていないの」
「私ね、立派なメイジになりたいの。 いつか皆に認めてもらいたいの、ただ口先だけじゃないメイジになりたいの」
「私は貴方のような立派なメイジに相応しくないと思うの、だから……」
「……違う、違うんだルイズ」
「え?」
「君はもう立派なメイジだ、それも並の奴らとは違うんだよ」
「まさか、そんなわけ……」
「君は他人にはない特別な力を持っているんだ、今はまだその使い方が分からないだけなんだよ」
「買いかぶりすぎよ、私にそんな力……」
「いや、君は特別なんだ。 その証拠が君の使い魔だ」
「チーフのこと?」
浮かんだのは常に身を持って守ってくれる使い魔
その巨躯で自分を包み込んでくれる、頼もしいチーフ
「そうだ、彼が武器を握った時に浮き上がった左手にルーンはね、とても特別な物なんだよ」
「特別……?」
「ああそうだ、あれは伝説の使い魔のルーンなんだよ」
「伝説の使い魔?」
「そう、あれは『ガンダールヴ』、始祖ブリミルが用いたと言われる伝説の使い魔の印さ」
語るワルドの瞳には力強い光を放っている
始祖ブリミルといえば、誰もが知る偉大なメイジ
従えていた使い魔はいずれも強大な力を持っていたと言われている
「そんな、信じられないわ」
「確かに、信じられないかもしれないが、彼が伝説の使い魔であり、君の使い魔と言う現実なんだよ」
「さっき君が言っていたように、今は立派なメイジではないかもしれない、だがいずれは歴史に名を残すような偉大なメイジになるに違いない」
「きっと、誰もが君の名を偉大な、素晴らしいメイジとして知る日が来る、僕はそう予感している」
「……ごめんなさい、ワルド。 私、なんて答えればいいのか分からない」
「……わかった、今返事をくれとは言わないよ」
ワルドは背もたれに背を預け、ワインを呷る
「任務中にこんな話をしてすまない、でも僕は本気なんだ。 それだけは覚えておいてくれ」
ルイズはそれを聞いて頷く、その真剣な瞳を前に頷く事しか出来なかった
#navi(虚無と最後の希望)
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『女神の杵』、ラ・ロシェールで一等と言う宿
一歩足を踏み入れると広がるのは中々豪華な酒場
流石に貴族を客に取るだけあって豪華なことこの上ない
勿論、そこが貴族たちに気に入られたのだろうが
また、気に入られた理由は他にもある
女神の杵宿はハルケギニアでもかなり珍しいらしい巨大な一枚岩の中にあり、床やテーブルは勿論、削り出された岩で出来ている
鏡の如く光を反射するように磨かれたテーブルはチーフたちの姿を映していた
反射した光を視界に捉えながら入り口、窓、二階への階段、カウンターの隣にある裏口への扉に視線をやる
理由は勿論、敵の襲撃に際してどう行動するかの判断材料にするため
「へぇ、中々良い作りじゃない」
宿内を見渡すチーフをよそに、キュルケはハルケギニアでも結構珍しい岩作りの宿を見て感嘆の声を漏らす
それを発端に3人は内装の話をし始める
「装飾が疎ら」「統一感が無い」「二流品だね」などと酷評、先ほどまでの評価とは裏返っていた
子供と言えど貴族と言うものは対面を気にするので仕方が無いのかもしれない
そこへ、乗船の交渉へ行っていたワルドとルイズが現れる
「あら、どこへ行ってたの?」
ワルドは羽帽子を近くのテーブルに置きながら、椅子に座る
その表情から見るに、結果はあまり芳しくなかったようだ
「乗る船を捜してたんだが、どうやら出発は明後日にならないと駄目な様だ」
「急ぎの任務なのに……」
口と尖らせるルイズを見て、キュルケは疑問を口にする
「あたしアルビオンに行ったこと無いんだけど、どうしてすぐに出せないの?」
「明日の夜は『スヴェルの月夜』さ、その翌日の朝にアルビオンが最もラ・ロシェールに近づくんだ」
「へぇ~、その時が一番効率がいいから明後日と言うわけね」
「そう言う事だね」
言いながらワルドは懐から鍵束を取り出し、テーブルの上に置く
「部屋を取っておいたが、一部屋に3人は厳しいかな?」
キュルケ・タバサ・モンモランシーを見てワルドが聞いてくる
3人は、正確には2人だが問題ないと言った
「それじゃあ、ギーシュとチーフが相部屋」
「そして、僕とルイズが同室だ」
「え、ちょ、ちょっと待って!」
予想もしていなかったと声を上げるのはルイズ
『使い魔は常に主人と共に在るべき』と常々思っている
同じ考えを持つメイジはたくさん居る、それを裏付けるようにメイジは召喚した使い魔を常に傍に置いている者が多い
「だ、だめよ! 私達結婚してないじゃない! それに……」
チーフを横目で見つめる、それに答えるようにチーフは口を開く
「ルイズとは同室が好ましい」
護衛の関係上、安全ではない場所で離れるのは出来るだけ避けたい
守るにしても逃げるにしても、すぐに近くに居なければ意味がない
駆けつけている間に死を招くこともあるが故にこれだけは譲れなかった
「ワルド、大事な話ってなに?」
先ほどの部屋割りの提案、チーフと同室がいいと言ったルイズは
『とても真剣な話があるんだ、二人っきりで話したい』
と真剣な表情で言われ、渋々その提案を呑みワルドと同室に相成った
この決定にチーフは何も言わなかった、不服そうな感じだったけど
ギーシュと同室になっていたが、その部屋で寝ることは無いと思う
私とワルドの部屋の前で一晩中立ち続けるだろうから、後で一言言っておかなくちゃ
「ねぇ、ワルドったら」
女神の杵で一番上等な部屋、室内は一般の宿と比べかなり広く複数人入っても広々していると感じられる
部屋に置かれた調度品も質の高い物ばかり、その中で一際目を引くのは天蓋付きのベッド
見るからに豪華なレースの飾りが付いたベッドに座るルイズは問いかけた
それを聞いていたワルドはワインのコルクを開け、一つの椅子を引いた
「こっちに腰掛けて、一杯やらないかい?」
屈託の無い笑みを浮かべたワルドは二つのグラスを並べてワインを注いだ
返事で答えず、ルイズは椅子に腰掛ける
先ほどと同じような笑みを浮かべてワインを手渡すワルド、それを受け取るルイズ
「二人に」
その言葉に戸惑いながらもグラスを軽くあわせた
「ルイズ、姫殿下から預かった手紙はきちんと持っているかい?」
手紙が入っているポケットを押さえて頷く
思い出せば手紙を書き綴っているアンリエッタの表情は憂いを帯びた悲しそうな
それでいて、少しだけ熱を持った瞳で書き認めていた
あの表情は王女としてではなく、恋する──
「──イズ、ルイズ?」
「あ、ええ。 ちゃんと持ってるわ」
「心配なのかい? 無事アルビオンのウェールズ皇太子に会えるかどうか、手紙を取り返せるのか」
身の安全が心配かと言われれば、別にそうでもない
いまや疑うことの出来ないチーフの力を信じている、ただ守られているだけなのは我慢できないけど
ワルドだって居るし、失敗なんて事態を想像することが出来ない
「………」
「大丈夫さ、きっと上手く行くよ。 僕が居るし、君の使い魔だって居る」
「それに他の4人もそこそこ出来るんだろう? 並みのメイジが来たってすぐに撃退出来るさ」
ワルドは自信満々で『何も危険なことは無い』と言い放った
「……そうね、皆居るしきっと大丈夫よね」
「ああ、ルイズを必ずウェールス皇太子のもとに送り届けよう」
「貴方は昔から頼もしかったもの、全員無事に戻ってこれるわよね」
ワルドはにっこりと笑う、ルイズも釣られて笑った
「ワルド、これが話したいことじゃないわよね?」
「ああ、これからが君と二人で話したかったことだ……」
ワルドは一呼吸、ルイズを見つめる瞳に炎が宿る
「ルイズ、この任務が終わったら僕と結婚しよう」
「ワ、ワルド、本気だったの?」
「勿論さ、ラ・ロシェールへの道中で言っただろう?」
「で、でも。 わたしまだ……」
「ルイズ、君はもう子供じゃない。 自分の意思を持って自分の事を決めれる歳だろう? きっとお父上だって認めてくださる」
「ワルド……」
「僕は君を何年もほったらかしにしてきた、これはどう考えても僕が悪い、謝るよ」
「婚約者と言えた義理じゃない事も分かってる、でも僕には君が必要なんだ、ルイズ」
「待ってワルド……私はまだ、ちゃんとしたメイジじゃないの。 いつも失敗ばかりして、まともな魔法は一度しか使えていないの」
「私ね、立派なメイジになりたいの。 いつか皆に認めてもらいたいの、ただ口先だけじゃないメイジになりたいの」
「私は貴方のような立派なメイジに相応しくないと思うの、だから……」
「……違う、違うんだルイズ」
「え?」
「君はもう立派なメイジだ、それも並の奴らとは違うんだよ」
「まさか、そんなわけ……」
「君は他人にはない特別な力を持っているんだ、今はまだその使い方が分からないだけなんだよ」
「買いかぶりすぎよ、私にそんな力……」
「いや、君は特別なんだ。 その証拠が君の使い魔だ」
「チーフのこと?」
浮かんだのは常に身を持って守ってくれる使い魔
その巨躯で自分を包み込んでくれる、頼もしいチーフ
「そうだ、彼が武器を握った時に浮き上がった左手にルーンはね、とても特別な物なんだよ」
「特別……?」
「ああそうだ、あれは伝説の使い魔のルーンなんだよ」
「伝説の使い魔?」
「そう、あれは『ガンダールヴ』、始祖ブリミルが用いたと言われる伝説の使い魔の印さ」
語るワルドの瞳には力強い光を放っている
始祖ブリミルといえば、誰もが知る偉大なメイジ
従えていた使い魔はいずれも強大な力を持っていたと言われている
「そんな、信じられないわ」
「確かに、信じられないかもしれないが、彼が伝説の使い魔であり、君の使い魔と言う現実なんだよ」
「さっき君が言っていたように、今は立派なメイジではないかもしれない、だがいずれは歴史に名を残すような偉大なメイジになるに違いない」
「きっと、誰もが君の名を偉大な、素晴らしいメイジとして知る日が来る、僕はそう予感している」
「……ごめんなさい、ワルド。 私、なんて答えればいいのか分からない」
「……わかった、今返事をくれとは言わないよ」
ワルドは背もたれに背を預け、ワインを呷る
「任務中にこんな話をしてすまない、でも僕は本気なんだ。 それだけは覚えておいてくれ」
ルイズはそれを聞いて頷く、その真剣な瞳を前に頷く事しか出来なかった
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