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「SnakeTales Z 蛇の使い魔-16」(2008/03/17 (月) 15:35:23) の最新版変更点
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―船尾 第二船倉 物置―
「よくここまでこれたな。さすがだよ、使い魔君。」
「脱獄は慣れているんでな。」
まるで自分が犯罪者だったかのような事を言う。
確かに迷いのないその拳は一般人ではなかったが。
「さて、脱獄したはいいが、これから何処へ行くんだね?」
「船長室だ。考えがある。」
部屋の外の杖を回収するスネーク。
先ほど殴り倒した兵士を引き摺って船倉まで運んできた。
「何をしてるの?」
「あのまま外においておいたら誰か見つけるだろう?」
そういいながら近くにあった兵士の服を脱がし、兵士をロープでぐるぐる巻きにし、箱に突っ込んだ。
部屋の隅にそれを置き、まるで元からそこにあったかのようにカモフラージュした。
「さっさと行きましょうよ。」
「そう言うな。まずどうやって潜入するか伝えてからだ。」
手に持った兵士の服をワルドに手渡し、着替えるように言う。
「なるほど。変装だね?」
「その通りだ。ルイズにはこの箱の中に入ってもらう。」
丁度先ほどスネークが入っていた箱を取り出すスネーク。
「私はお荷物って訳ね。」
「そんな事は無い。…お荷物どころか危険物だ。」
「なんですって!?」
スネークがルイズにシメられている間にワルドの着替えが終了し、いよいよ船倉の外へと歩き出した。
―船尾甲板 上部―
船員があわただしく働いている。
先ほどの船の連中は皆捕虜としてどこかに幽閉されているらしい。
「おい、そこのお前達!」
船長室の前で呼び止められる。
ばれたか…?と身構えつつ、足を止めた。
「その箱の中身は何だ?」
「あの貴族の使い魔らしい男の持っていたものだ。
変なものばかり持っていたからな。頭が興味を持ったらしい。」
もちろん口から出任せだ。
だが、船員は忙しいらしくあまり深く考えなかった。
そのまま歩き去るのを見送ってから船長室の扉をノックする。
「誰だ?」
「ベケットです。頼まれていたものを持ってきました。」
「…?とにかく入れ。」
不審に思われながらも船長室に招き入れられる。
スネーク達が入ったのを確認して、頭が扉の鍵を閉める。
「さて…、貴様達は一体何者だ!」
頭が杖を構える。どうやら変装に騙されていないらしい。
同時に銃に手を伸ばすが、ルイズの入ったダンボールを抱えていたため、一瞬動作が遅れた。
ワルドも同じく、動く事が出来ない。
取り落としたダンボールの中からルイズの悲痛な声が聞こえた。
「とぼけなくていい。船員の事は誰よりもよく知っている。」
「ちょっとスネーク!?いきなり手を離すなんて酷いじゃない!」
箱の中からビックリ箱のように両手を上に掲げたルイズが飛び出した。
それに驚いたのか一瞬隙が生まれる空賊の頭。
スネークはその隙を逃さず、クイックチェンジでM9を装備し、ヘッドショットで頭を眠らせた。
「ナイスだ、ルイズ。」
「…え?」
自分が何をしたのか分かっていないルイズであった。
「…ん?」
どうやら自分は眠っていたようだ。
誰かに身体をゆすられている。
「わかった。いま起きる。」
目を開けるとそこには、見た事のない男たち…いや、先ほど部屋に侵入してきた連中だ!
一気に意識が覚醒し、記憶が蘇る。
「おっと、動くな。別にとって食おうって訳じゃない。」
バンダナの男が警告する。
縛られてもいないし、杖も奪われていない。
本当に危害を加えようとしているわけではないようだ。
「あんたに用があってきたんだ。プリンス・オブ・ウェールズ。」
スネークの発言でその場にいた全員が驚く。
「あ、あんた一体何言って…。」
「どういうことだね、使い魔君?」
「この船にはおかしい点がいくつかあった。
まず第一に船の大きさ。賊の船がこんなに大きく小回りのきかないものにするわけがない。
第二に船員の会話。教育は徹底するんだな、殿下。」
そしてスネークが空賊の頭の顔に手を伸ばし、その顔を拭うと、色が落ちて白い肌が顔を出した。
頭は観念したように頭を振った。
「いかにも、私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官…
そして、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。」
頭が黒髪を剥ぎ、眼帯をとり、作り物の髭をはがした。
そこには確かに上品な皇子の顔があった。
「君たちは一体何者だね?」
「アンリエッタ姫殿下より密書を言付かってまいりました。」
ウェールズの問いにワルドが答える。
「ふむ。姫殿下とな?君は?」
「トリステイン王国魔法騎士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵です。
こちらが姫殿下より大使の大任をおおせつかったラ・ヴァリエール嬢とその使い魔にございます。殿下。」
恭しく一礼するルイズ。手紙を取り出し、ウェールズの元へ歩み寄った。
真剣な面持ちで手紙を読むウェールズ。
「ふむ…。彼女は結婚するのか。私の従妹が結婚、か。」
若干あきらめていたようなため息をつくウェールズ。
最後の一行まで読み、顔を上げた。
「手紙の件、了承した。お返ししよう。ほかでもない姫の願いだからな。
だが、ここにはない故、ニューカッスルの城まで足労願いたい。」
ルイズたちはウェールズに従い、城の中を歩いていく。
城の中は薄暗く、彼処にほこりがたまっている。
そして定期的に貴族派の攻撃によって城全体が大きく揺れる。
そんな城の天守にあるウェールズの部屋は王子のものとは思えないほど質素なものだった。
ろくに部屋で眠っていないのだろう。ここ最近ベッドが使われた様子はない。
王子は椅子に腰掛け、机の引き出しから宝石の散りばめられた小箱を取り出した。
ネックレスの鍵で小箱を開け、手紙を取り出し、ルイズに手渡す。
「この通り確かに返却したぞ。」
「ありがとうございます。」
「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号がここを出発する。それに乗って帰りなさい。」
ルイズは手紙を受け取り、先ほどのパリーという老メイジとウェールズの会話を思い出す。
やがて決心したように口を開く。
「あの殿下…。さきほど、殿下は栄光ある敗北とおっしゃってましたが、勝算はないのですか?」
「万に一つもないね。我々にできる事は奴らに勇敢な死に様を見せ付ける事くらいさ。」
「殿下の討ち死にも…?」
「その通り。真っ先に死ぬつもりだよ。」
あっけからんと言うウェールズの様子にいささかうんざりするスネーク。
死ぬという事がどんな事か分かっているのだろうか?
「殿下、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたい事があります。」
「なんなりと、申してみよ。」
「姫様と殿下は恋仲に?」
「…昔の話だ。さっき返した手紙も恋文さ。」
ルイズの目が鋭くなる。
何度か見ているがこれはいわゆる“切れる”寸前の目だ。
「姫様は…どうするのですか?」
「どうするも何も、彼女と私は今は関係ない。
このままこの国で戦い、そして死ぬさ。」
「誇り、ですか?」
ウェールズは答えない。
ルイズが拳を握り締める。
その後ルイズは、口をきゅっと一文字に結び、一礼してから外へ出て行った。
スネークもそれに従い、出て行った。
「やれやれ。嫌われてしまったかな、子爵殿?」
「どうでしょうね。」
「ところで、君は何のようだい?」
「あ…。いえ、明日頼みたい事がありましてな。」
「…!!!」
ルイズがカンカンに怒って歩く。
その三歩後ろを何も言わずに歩くスネーク。
触らぬ神にたたり無し…のはずなのだが、スネークに飛び火が飛んできた。
「あーもう!王子は何を考えてるのかしらね!」
「俺がわかるとでも思うか?」
「期待しちゃいないわよ。」
やはり先ほどのウェールズとの会話が原因のようだ。
「残された人が何を思うかなんて考えてないんだわ。」
「そう言うな。王子だって辛いはずだ。立場ってものがあるからな。」
「そりゃそうだけど!」
これは何を言っても無駄か…?
など思っていたのだが、いきなり歩みを止めるルイズ。
振り向いてスネークに言った。
「あんたはどう思うの?」
「どうって、何がだ?」
「王子の言ったことについてよ。」
「…。」
メイ・リンのことわざを思い出すスネーク。
ぴったりのことわざを思い出した。
「『好死は悪活に如かず』ということわざがある。」
「またことわざ?意味は?」
「どんなにかっこいい死よりも、生きているほうが良いという言う意味だ。俺もそう思う。」
「…そうよね。」
途端に静かになるルイズ。
以前にフーケのゴーレムに潰されそうになったときの事を思い出したのだろうか?
「この世界の価値観なんて物は知らんがな。
犬死と犠牲は別のものだ。俺はそう思っている。」
再び歩き出すスネーク。
ルイズはしばらくその背中を見ていた。
#navi(SnakeTales Z 蛇の使い魔)
―船尾 第二船倉 物置―
「よくここまでこれたな。さすがだよ、使い魔君。」
「脱獄は慣れているんでな。」
まるで自分が犯罪者だったかのような事を言う。
確かに迷いのないその拳は一般人ではなかったが。
「さて、脱獄したはいいが、これから何処へ行くんだね?」
「船長室だ。考えがある。」
部屋の外の杖を回収するスネーク。
先ほど殴り倒した兵士を引き摺って船倉まで運んできた。
「何をしてるの?」
「あのまま外においておいたら誰か見つけるだろう?」
そういいながら近くにあった兵士の服を脱がし、兵士をロープでぐるぐる巻きにし、箱に突っ込んだ。
部屋の隅にそれを置き、まるで元からそこにあったかのようにカモフラージュした。
「さっさと行きましょうよ。」
「そう言うな。まずどうやって潜入するか伝えてからだ。」
手に持った兵士の服をワルドに手渡し、着替えるように言う。
「なるほど。変装だね?」
「その通りだ。ルイズにはこの箱の中に入ってもらう。」
丁度先ほどスネークが入っていた箱を取り出すスネーク。
「私はお荷物って訳ね。」
「そんな事は無い。…お荷物どころか危険物だ。」
「なんですって!?」
スネークがルイズにシメられている間にワルドの着替えが終了し、いよいよ船倉の外へと歩き出した。
―船尾甲板 上部―
船員があわただしく働いている。
先ほどの船の連中は皆捕虜としてどこかに幽閉されているらしい。
「おい、そこのお前達!」
船長室の前で呼び止められる。
ばれたか…?と身構えつつ、足を止めた。
「その箱の中身は何だ?」
「あの貴族の使い魔らしい男の持っていたものだ。
変なものばかり持っていたからな。頭が興味を持ったらしい。」
もちろん口から出任せだ。
だが、船員は忙しいらしくあまり深く考えなかった。
そのまま歩き去るのを見送ってから船長室の扉をノックする。
「誰だ?」
「ベケットです。頼まれていたものを持ってきました。」
「…?とにかく入れ。」
不審に思われながらも船長室に招き入れられる。
スネーク達が入ったのを確認して、頭が扉の鍵を閉める。
「さて…、貴様達は一体何者だ!」
頭が杖を構える。どうやら変装に騙されていないらしい。
同時に銃に手を伸ばすが、ルイズの入ったダンボールを抱えていたため、一瞬動作が遅れた。
ワルドも同じく、動く事が出来ない。
取り落としたダンボールの中からルイズの悲痛な声が聞こえた。
「とぼけなくていい。船員の事は誰よりもよく知っている。」
「ちょっとスネーク!?いきなり手を離すなんて酷いじゃない!」
箱の中からビックリ箱のように両手を上に掲げたルイズが飛び出した。
それに驚いたのか一瞬隙が生まれる空賊の頭。
スネークはその隙を逃さず、クイックチェンジでM9を装備し、ヘッドショットで頭を眠らせた。
「ナイスだ、ルイズ。」
「…え?」
自分が何をしたのか分かっていないルイズであった。
「…ん?」
どうやら自分は眠っていたようだ。
誰かに身体をゆすられている。
「わかった。いま起きる。」
目を開けるとそこには、見た事のない男たち…いや、先ほど部屋に侵入してきた連中だ!
一気に意識が覚醒し、記憶が蘇る。
「おっと、動くな。別にとって食おうって訳じゃない。」
バンダナの男が警告する。
縛られてもいないし、杖も奪われていない。
本当に危害を加えようとしているわけではないようだ。
「あんたに用があってきたんだ。プリンス・オブ・ウェールズ。」
スネークの発言でその場にいた全員が驚く。
「あ、あんた一体何言って…。」
「どういうことだね、使い魔君?」
「この船にはおかしい点がいくつかあった。
まず第一に船の大きさ。賊の船がこんなに大きく小回りのきかないものにするわけがない。
第二に船員の会話。教育は徹底するんだな、殿下。」
そしてスネークが空賊の頭の顔に手を伸ばし、その顔を拭うと、色が落ちて白い肌が顔を出した。
頭は観念したように頭を振った。
「いかにも、私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官…
そして、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。」
頭が黒髪を剥ぎ、眼帯をとり、作り物の髭をはがした。
そこには確かに上品な皇子の顔があった。
「君たちは一体何者だね?」
「アンリエッタ姫殿下より密書を言付かってまいりました。」
ウェールズの問いにワルドが答える。
「ふむ。姫殿下とな?君は?」
「トリステイン王国魔法騎士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵です。
こちらが姫殿下より大使の大任をおおせつかったラ・ヴァリエール嬢とその使い魔にございます。殿下。」
恭しく一礼するルイズ。手紙を取り出し、ウェールズの元へ歩み寄った。
真剣な面持ちで手紙を読むウェールズ。
「ふむ…。彼女は結婚するのか。私の従妹が結婚、か。」
若干あきらめていたようなため息をつくウェールズ。
最後の一行まで読み、顔を上げた。
「手紙の件、了承した。お返ししよう。ほかでもない姫の願いだからな。
だが、ここにはない故、ニューカッスルの城まで足労願いたい。」
ルイズたちはウェールズに従い、城の中を歩いていく。
城の中は薄暗く、彼処にほこりがたまっている。
そして定期的に貴族派の攻撃によって城全体が大きく揺れる。
そんな城の天守にあるウェールズの部屋は王子のものとは思えないほど質素なものだった。
ろくに部屋で眠っていないのだろう。ここ最近ベッドが使われた様子はない。
王子は椅子に腰掛け、机の引き出しから宝石の散りばめられた小箱を取り出した。
ネックレスの鍵で小箱を開け、手紙を取り出し、ルイズに手渡す。
「この通り確かに返却したぞ。」
「ありがとうございます。」
「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号がここを出発する。それに乗って帰りなさい。」
ルイズは手紙を受け取り、先ほどのパリーという老メイジとウェールズの会話を思い出す。
やがて決心したように口を開く。
「あの殿下…。さきほど、殿下は栄光ある敗北とおっしゃってましたが、勝算はないのですか?」
「万に一つもないね。我々にできる事は奴らに勇敢な死に様を見せ付ける事くらいさ。」
「殿下の討ち死にも…?」
「その通り。真っ先に死ぬつもりだよ。」
あっけからんと言うウェールズの様子にいささかうんざりするスネーク。
死ぬという事がどんな事か分かっているのだろうか?
「殿下、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたい事があります。」
「なんなりと、申してみよ。」
「姫様と殿下は恋仲に?」
「…昔の話だ。さっき返した手紙も恋文さ。」
ルイズの目が鋭くなる。
何度か見ているがこれはいわゆる“切れる”寸前の目だ。
「姫様は…どうするのですか?」
「どうするも何も、彼女と私は今は関係ない。
このままこの国で戦い、そして死ぬさ。」
「誇り、ですか?」
ウェールズは答えない。
ルイズが拳を握り締める。
その後ルイズは、口をきゅっと一文字に結び、一礼してから外へ出て行った。
スネークもそれに従い、出て行った。
「やれやれ。嫌われてしまったかな、子爵殿?」
「どうでしょうね。」
「ところで、君は何のようだい?」
「あ…。いえ、明日頼みたい事がありましてな。」
「…!!!」
ルイズがカンカンに怒って歩く。
その三歩後ろを何も言わずに歩くスネーク。
触らぬ神にたたり無し…のはずなのだが、スネークに飛び火が飛んできた。
「あーもう!王子は何を考えてるのかしらね!」
「俺がわかるとでも思うか?」
「期待しちゃいないわよ。」
やはり先ほどのウェールズとの会話が原因のようだ。
「残された人が何を思うかなんて考えてないんだわ。」
「そう言うな。王子だって辛いはずだ。立場ってものがあるからな。」
「そりゃそうだけど!」
これは何を言っても無駄か…?
など思っていたのだが、いきなり歩みを止めるルイズ。
振り向いてスネークに言った。
「あんたはどう思うの?」
「どうって、何がだ?」
「王子の言ったことについてよ。」
「…。」
メイ・リンのことわざを思い出すスネーク。
ぴったりのことわざを思い出した。
「『好死は悪活に如かず』ということわざがある。」
「またことわざ?意味は?」
「どんなにかっこいい死よりも、生きているほうが良いという言う意味だ。俺もそう思う。」
「…そうよね。」
途端に静かになるルイズ。
以前にフーケのゴーレムに潰されそうになったときの事を思い出したのだろうか?
「この世界の価値観なんて物は知らんがな。
犬死と犠牲は別のものだ。俺はそう思っている。」
再び歩き出すスネーク。
ルイズはしばらくその背中を見ていた。
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