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#navi(いぬかみっな使い魔)
いぬかみっな使い魔 第6話(実質5話)
トリスティン魔法学院、中央の塔最上階にあるオールドオスマンの学長室。
そこには今、二人の教師がいた。オスマン自身と教師のコルベールである。
「というわけで、彼はガンダールヴなのだと思われます。」
「コルベール君。すぐに気づくとは思ったが、早かったの。」
「オールドオスマン! 気づいておられたのですか!」
「最初から、の。このことは他言無用じゃ。少なくともしばらくは。」
「なぜです!? これを知らせれば「大変です!」大きな」
「なんじゃ?」
オールドオスマンの部屋に、ミス・ロングビルが駆け込んできた。
「大変です! 決闘騒ぎです! 教師達が眠りの鐘の使用を求めています!」
「決闘? 誰と誰の決闘騒ぎじゃ?」
「片方はミス・ヴァリエール。代理としてケータ・カワヒラが。
相手は彼女のクラスメイトほぼ全員です!」
「それでは決闘ではなくリンチではないですか!」
コルベールが驚く。それを、鋭い目つきのままのオスマンが止めた。
「生徒の喧嘩ごときで秘宝を使ってどうする。ほうっておけ。」
ミス・ロングビルが出って行った後、二人は顔を見合わせ、
遠見の鏡を起動させた。
その少し前。
事態が一変したのは、錬金の実技だった。数人が錬金したあと、
ルイズが挑戦し大爆発を起こしたのだ。教室は阿鼻叫喚。
「使い魔が食われた」「机に押しつぶされて使い魔が死んだ」
「やけどをした」「自慢の髪がちりちりになった」
ゼロと馬鹿にしていたルイズが授業前に使い魔で思わぬ反撃をした。
クラスメイトの受けた衝撃は大きく、そこに格好の反撃材料が与えられたのだ。
意趣返しにと一斉に非難を集中させ、ルイズ排斥にかかったのだ。
対して、いつもなら受け流すルイズが強気に反論。
事態はルイズに対してクラスの大半が決闘を挑むという方向に進んだ。
それを止めるべき赤土のシュヴルーズは気絶しており。
一方啓太はフリチン状態を何とかするためにズボンの確保が急務であり。
かくして、止める者とておらず決闘現場である。
「いくらなんでももう我慢の限界だ!」「迷惑すぎる!」
「そうよそうよ、命にかかわることなんだからね!」
「だれから相手する!?」「誰だってルイズじゃ話にならないから同じさ。」
「では。まずはボクがお相手しよう。」
そう言って、気障に薔薇の造花を構えたギーシュ・ド・グラモンが前に出た。
「ま、負けないわよ! ヴァリエールの名にかけて!」
「ゼロのルイズ。素直に謝罪する気はないのかい?
女性も男と同じ権利と義務を持つご時世とはいえ、
女性を一方的にいたぶるのは好まない。ちゃんと謝罪し、
高慢な態度を改めると約束するなら皆もここまで激しはしないだろう。」
要するに。
素直にいじめられ、悪口を言われても耐えていやがれ、生意気なんだよ。
そういう意味である。周りの級友達はほとんどが賛同しているようだ。
なぜか決闘を申し込まなかったキュルケは難しい顔で黙り込み、
同じトライアングルのタバサはなぜか授業に出ていなかったのでいない。
最悪の敵を相手にしなくとも良いとはいえ、気休め程度だ。
いくらなんでも数が多すぎる。ルイズは、絶望と必死に戦っていた。
それ以前に自分の実力ではギーシュ一人にも勝てない。
それでも。己のほこりを守るためには、こうするしかないのだ。
「そんな事! できるわけないでしょ!」
小さな杖を構える。周囲から一斉に野次が飛ぶ。
他のクラスや学年の生徒達、教師、平民の使用人達まで集まってきていた。
口々に噂をしあっている。教師達は止めようとしているが、
生徒達に阻まれうまく行っていない。そこへ。
「待ちな。その勝負。俺が受ける。」
白銀のマントをなびかせ、上は学生服、下は黒いこちらのズボン、
という格好の川平啓太が、堂々とした制止をかけた。
「こっちの決闘の作法は知らない。が、俺の国のある地域では
か弱い女性が名誉を傷つけられたときに、代理として男が戦う
という慣習がある。男の矜持があるなら俺が代理になることを認めな!」
ギーシュは、啓太のほうを見て、納得してうなずいた。
こちらのほうがずっとやりやすい。そもそも、怒り心頭に達して
決闘を挑んだが、元来フェミニストなギーシュは女性を傷つけるのを好まない。
決闘で一番手を買って出たのも、説得でルイズに謝罪させ、
リンチを止めようと思ったからだ。彼のワルキューレなら怪我をさせずに
取り押さえられるから、というのもある。火炎魔法ではそうはいかないのだ。
(ちなみに、この時点でクラスメイト達は啓太の4度目のフリチンを知らない)
「おい、あれってさっきのフリチン男!」「だよな、フリチン男だ。」
「かっこっつけてるけどフリチン男だ。」「それでかっこつけてもな。」
「なんかギャップが酷くて笑える。」「フリチン男にかばわれるルイズか。」
「さすがゼロのルイズ。」「フリチン男が代理とはな。」
「ええい、外野! うるっせえぞ!」
啓太が顔を真っ赤にして怒鳴るとギーシュに向き直った。
「どうなんだ、受けるのか、受けないのか!」
「良かろう。しかし、事態をわかっているのかね? ミス・ヴァリエールに
決闘を申し込んだのはクラスメイトのほとんどだ。全員を相手するのかね?」
「かまわん。ただし。」
そういって、啓太は周りを取り囲むルイズのクラスメイト達を見回した。
「おい男ども! お前らも矜持があるなら女性に戦わせず、
代理を申しでな! そう、出来れば愛する女性の前にひざまずいて、な。」
速攻でギーシュはモンモランシーの前にひざまずいた。
他の男達も同様である。
「これでだいぶやりやすくなった」とは啓太の内心だ。
戦う回数そのものは同じだが、女だからと遠慮する必要がなくなり、
消耗とダメージは半分の人数が受け取る事になる。うまく言いくるめれば
女性の分の戦闘回数はチャラにも出来るだろう。
交渉で有利な戦況を作る。戦いの基本である。
「ちょ、ちょっと! なんであんたがここで出てくるのよ!
あんたは外国人でしかもブリミル教徒でも無いわ。
となれば学生同士のお遊びの決闘で済ませてもらえる保証は無いわ。
むしろ、嬉々として全力で魔法を使えるって攻撃されるかもしれない。
しかもこの人数。もしかしなくても死ぬわよ!?」
当惑したルイズが制止に入った。小声で啓太に詰め寄っている。
「大丈夫。俺は死なないさ。任せておけ。」
「ありがたいけど、理解できないわ。それどころか私が死ねば、
使い魔としての強制力も消えるわ。私が死んだほうが
あんた都合いいんでしょう!? なのになんで!?」
昨日もルイズに全ての責任をひっかぶせようとした教師から助けてくれた。
「それが俺の性分だから、じゃだめか?」
「で、でも、あんたをこんな遠くにいきなり呼んだ私を?
見返りが約束されてるわけでも無いのになんで助けてくれるの!? 」
「それは問題じゃない。」
「なぜ、ここまでかばってくれるのよ。私はゼロなのよ?
無能、無能とずっと悪口言われていたわ。誰も味方してくれなかった。
それなのに、なぜあんただけはここまで!」
ルイズは理解できなかった。
同時に、どこか胸の奥が熱くなるのを感じていた。
川平啓太は、周りからのフリチン陰口を無視して、小声で答える。
「俺の家が掲げている家訓があってな。破邪顕正という。
邪悪なものを打ち倒し、正義をあらわす。リンチされる女の子を
見過ごしたとあっちゃあ、それはもう俺じゃあない。
以前はそんな事理解していなかったが。見てしまった以上。やる。」
「!」
ルイズは、否応なしに理解してしまった。
「自分の信念の為に決闘を受けるの!? 女の子だからって言って。
私をかばって死ぬかもしれないというのに。
あんたを貴族として尊敬するわ。まさに貴族ね。」
ルイズは、止められなくなった。
「もし、心配してくれるんなら応援してくれ。」
啓太は、にこりと笑って答えた。
「そうだな、対戦相手の得意な魔法の効果や対策なんかを教えてくれ。
敵を知り、己を知れば百戦危うからず。
情報収集も、戦いの一部なんだ。戦いを分かち合ってくれ。」
ルイズは、深くうなずいた。
啓太が殴りかかってきたゴーレムの腕をつかんで引っ張り、足払いをかける。
絶妙のタイミングと角度のそれは、ギーシュのブロンズゴーレムを
宙に舞わせた。きりもみ状になって墜落する。クンフーの投げ技の一つだ。
「な、何をやった!? 先住魔法か!?」
「まさか。これは体術だ。単なる格闘戦さ。呪文すら唱えなかったろう?」
「だ、だが!」
ぎりぎりときしんだ音を立て、ゴーレムが立ち上がる。
その動きはぎこちない。
「く、くそ、ワルキューレ、行け!」
次の瞬間、またもゴーレムが地面に叩きつけられ、右腕が千切れ飛ぶ。
叩きつけるさいにゴーレムに片足と腕をかけ、右腕を極めていたためだ。
「どうした。俺はまだ片手しか使っていない。呪文も使っていない。
にもかかわらずこのざまとは。貴族ってのは領民を守るもんじゃないのか?
こんなに弱くて領民を、愛する淑女を守れるのか?」
「き、貴様!」
「よく見ろ! 魔法など使わなくともこれだけ戦えるんだ!」
それはルイズに向けての言葉だった。魔法の苦手なルイズを励ますための。
同時に、野次馬に混じっていた平民達をも大いに沸かせた。
「おのれ、ならばもう容赦はしない!」
ギーシュは、薔薇の造花からさらに6枚の花びらを落とし、
青銅のゴーレム6体を作り出した。一斉に襲い掛かる。
「いけ! ワルキューレ!」
「ふ、甘いな。戦い慣れしていない。」
啓太は、大きく左にステップを踏むと左端の一体に向け突っ込んだ。
先ほどと同じ要領でふっとばすとさらに回り込む。
これでゴーレムたちはほぼ一直線に並ぶ。
一斉攻撃の優位はこの瞬間消え去った。
啓太は先頭の一体だけを相手にすればいい。
腰を低く落とし、パンチを繰り出したワルキューレに必殺の寸頸を放つ。
胸をひしゃげさせて吹っ飛び、後方の2体を巻き込んで倒れこむ。
残る立っているワルキューレは2体。踏み越えて攻撃するわけにも行かず、
左右に分かれて啓太に迫る。啓太は、右に回りこんで突っ込み、
全ての勢いを利用して諸手刈りを仕掛け、頭部を地面に叩きつける。
フラフラと起き上がって来た最初の1体目に足払いをかけると同時に
腕を極めて左腕を折る。両腕を失ったワルキューレは動きを止めた。
その間にギーシュは、6体のワルキューレを下がらせていた。
「おのれ!」
低く呪文を唱えると、地面からボコリと音を立てて青銅の剣や槍が生える。
ワルキューレ達が一斉に武器を取った。
「遅いな。戦力の逐次投入はへぼ戦略の典型なんだぜ?」
ワルキューレのうち4体はいずれかの場所が歪み、すでに動きが
ギクシャクしているのだ。それで武器を持ち出しても怖くは無い。
しかも、隊列も組まずに一斉に攻撃してくる。動きも稚拙だ。
繰り出される2本の槍。片方を手で跳ね上げ、片方を右にはじき、
数瞬死に体にする。その隙に突っ込むと、胸が陥没して満足に剣を振るえぬ
ワルキューレの懐に入って腕をつかみ、一本背負いをかける。
反転したワルキューレが繰り出した槍の軌道をわずかに変え、
背後から剣で襲い掛かってきたワルキューレに矛先を変える。
剣持つワルキューレが串刺しになった。
しかも槍を抜こうとして双方動きが止まる。
「隙だらけだな。」
一本背負いで転がしたワルキューレの剣が地に突き立っていたので
それを取り、振るおうとして異変に気づいた。
周りの動きが妙に緩慢に見える。いや、ワルキューレの動き自体は
鍛え抜かれた啓太から見て緩慢だった。だが、さらに緩慢に見える。
しかも、左手のルーンが熱い。見ると手袋の隙間から、
かすかに光が漏れている。
啓太は、様子を見るためにしばらくワルキューレ達の攻撃をかわし続けた。
周りからは、啓太が剣を取ってからなぜか守勢に回ったように見える。
そして、次の瞬間。
6体全てのワルキューレが切り裂かれた。
啓太が、ワルキューレの1体が持っていた槍に持ち替え、縦横無尽に振るう。
すさまじい速度ゆえに視認すら出来ぬ速度の演舞に、一同は息をのんだ。
そして気が付くと、ギーシュの目の前に槍の穂先が突きつけられていた。
「降参するか?」
「こ、降参する!」
「よし。後が控えているから敗北者への要求は後回しだ。次!」
「な、なんて強さだ!」「魔法も使わずにギーシュに勝っちまったぞ!?」
「本当に魔法を使ってないのか!?」「恐ろしい早さだな!」
「素手で青銅のゴーレムを破壊するなんて!」「信じられない!」
「あれがフリチン男かよ!?」「馬鹿にするのまずそうだぜ!?」
外野が口々に論評している。
「ぼ、ボクはマリコルヌ! 「風上」のマリコルヌ・ド・グランドプレだ!」
「ケータ・カワヒラだ。死神殺し、犬神使い、3神が試練の達成者、
白山名君の友、ケータ・カワヒラだ! 来い!」
それからは、あまりに一方的な戦いが続いた。
啓太は、ほとんどの場合片手での素手攻撃しか使わず、戦い慣れしたラインメイジ
相手の場合等にたまに槍や剣を使い、土のラインメイジが繰り出した
大型ゴーレム相手にただ一度白山名君の力を借りた“魔法”を使った。
一撃でラインゴーレムを爆砕するその威力に、一同は固唾をのんだ。
そして、結局のところ女性に申し込んだ2回目の決闘の義務は、
全員が負けを認めたことで決着した。
「男なら女性に課せられる敗北者への要求は自分でかぶれ。
淑女なら愛する男が消耗した状態での戦いに挑むのを止めろ。」
皆啓太の説得に応じたのだ。
「さて、それじゃあ敗北者達に勝者の俺が要求する。まずは。」
そういって啓太はルイズとクラスメイト全員を相対させた。
「ルイズの謝罪を受け入れ、許してやってくれ。」
「おい、どういうことだ!?」「謝罪を受け入れろ!?」
「それだけか?」「へえ、いかした要求ジャン。」
「やるわね。」「もちろん謝るんなら受け入れるわよ。」
「ちょっと、啓太!?」
「ルイズ。元はといえばお前の失敗で迷惑かけたのが原因だろう。
俺も含めて、な。迷惑かけた連中に謝れ! 全てはそこからだ。」
「う・・・」
ルイズの誇りとムジナのマロちんを得たことによる驕りがためらわせたが、
啓太の雄姿と献身を見た後では、少しは素直になれた。
「ご、ごめんなさい。迷惑かけてすいませんでした。」
クラスメイト達は、当然ながらこれを快諾した。
「ああ、かまわないぜ。」「もうなれたしな。」
「今度からちゃんと防御するようにするわ。」「いいわよ。」
「ありがとう、では次に、ルイズを馬鹿にしていた連中は謝罪するんだ。
これからもう悪口は言わない。そう誓ってくれ。」
これもまた快諾され、実行に移された。
「ごめんね。」「もう言わない。」「悪かったな。」
「すまなかったな。」「すごい人呼んだのね。」
「おまえ将来はすごい奴になるのかもな!」
向こうから謝ってくるならルイズも素直になれる。
「私こそ、ごめんなさい。みんな、ありがとう。」
「よし、それじゃあ最後の要求だ。男子は壊れた教室の片づけを
手伝ってくれ! シュヴルーズ先生に命令されてんだ。」
一斉に悲鳴が上がるが、それは明るく裏の無い悲鳴だった。
三々五々教室に戻ろうとする男子、別の教室で講義が続けられるとのことで
移動する女子、それについていって明るく会話するルイズ。
そのルイズの首根っこを、啓太がぐいとつかんだ。
「どこ行くつもりだ?」
「え? だから教室に行って授業を…」
「壊れた教室の片付けは?」
「え? それは男子がやってくれるんじゃ!?」
「手伝ってくれ、といっただろう? 片付けは壊した張本人がするもんだ。
つまり、お前が中心になって片付けるんだ。」
「えええええええええ!!!!」
「ほれ、いけ。」
「ちょっと、あんたは!?」
「俺はもちろん授業を受ける。ものすごく興味深いからな。
いやあ、授業時間おもいっきり損しちまった。取り戻さないと。」
つまり。
教師を含めて女子だけの教室で授業を受けるということで。
「ちょっと~~~~!!??!?!?!?!」
自分に尽くしてくれるナイトがあらわれた!
とも思っていたルイズは。
あまりの事態に絶叫したのであった。
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