「ゼロの魔獣-08」(2008/02/27 (水) 19:50:33) の最新版変更点
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「―それは違います
今回の事件の責任は ミセス・シュヴールズひとりに押し付けて済むものではないのです。」
宝物庫。
その巨大な風穴の開いた一室では、真理阿の独演会が行われていた。
話は三十分ほど前に遡る。
城下町からの帰り、偶然にも『破壊の杖』盗難事件の目撃者となった四人は
一夜明けた後、現場検証のために宝物庫へと呼び出された。
ところが、議論が責任問題へとすり替わり、当直のシュヴールズが槍玉に挙げられる事態に至ったため
真理阿は彼女の弁護を始めたのである。
「みなさんの中に 一度たりとも当直に手を抜いたことがないと 自信を持って言える人はいますか?
賊が進入する可能性を想定し 警鐘を鳴らしていた人はいましたか?
―事件は起こるべくして起こりました・・・
今この時になって ミセス・シュヴールズひとりを責める それは 人として恥ずべきことです・・・」
それは、まさに名演説と呼ぶにふさわしいものだった。
難物と評判の教師・ギトーまでもが、真理阿の言葉にうなだれ、己の未熟さに深く瞑目している。
渦中のシュヴールズは、まるで聖女を崇めるかのような瞳で真理阿を仰ぎ見る。
コルベールはその日の日記に「あれを聞いて泣かぬ者は人に非ず」と、記した。
ルイズは泣かなかった。
この演説に感動できるのは、真実を知らぬ者だけである。
目の前の頼れる使い魔は、口先では人間愛を説きながら、その実、責任の所在をうやむやにしようとしていた。
「・・・とにかく 恐るべきは怪盗フーケです!
宝物庫の外壁が物理攻撃に弱い事を調べ上げ、
事前に爆薬を仕掛けるなんて・・・」
―訂正しよう。 真理阿は責任の所在をうやむやにはせず、全てフーケに押し付けた。
主を守るためなら、悪魔に魂すら売りかねない女であった。
「マリア殿 よくぞ申して下された
たしかに今回の事件の責任は わしらひとりひとりにある」
オールド・オスマンの真理阿に接する態度は、まるで古い王族を迎え入れるかのようであった。
真理阿の演説の元、皆の心が一丸となり、卑劣な盗賊・フーケの打倒に燃えていた。
「・・・あのぉ」
ロングビルは、その場のテンションの高さに取り残されていた。
「おお! ミス・ロングビル 今までどちらに」
「はい 周辺に聞き込みを行っていましたところ
フーケのアジトについて 有力な情報を掴む事が出来ました」
「なんと! フーケのアジトを!!
ならば 早速じゃが捜索隊を編成して・・・」
「私に!! 私に!! 私にやらせて下さい!!」
オスマンの言葉を待たず、ルイズが叫ぶ。
責任を問われなかった事がかえって罪の意識を重くし、志願せずにはいられなかった。
真理阿もこの事態は避けられないと考えていたのであろう、
ルイズの方を向いて、無言で頷いた。
ついでキュルケが、そしてタバサが名乗りを挙げる。
「まっ ヴァリエールはともかく 真理阿の顔に傷でもついたら大変だからね」
軽口を叩くキュルケだが、その瞳は、どこか熱っぽく潤んでいた。
「心配」
タバサの面構えは、仕えるべき主を見出した、もののふのそれであった。
「しかし 良いのですか学長?
ミス・ロングビルに先導させるとはいえ、まだ未熟な生徒たちに・・・」
コルベールの不安そうな問いかけに、オスマンが答える。
「大丈夫! それでもマリアなら
マリアなら きっと何とかしてくれる・・・!」
「おお!! そうか!」
「確かに・・・ 確かにマリア殿なら・・・!」
「ああ! マリア 我らの女神!!」
「マリア様 バンザーイ!」
・
・
・
こうして、根拠のない賞賛が惜しみなく送られる中、一向は旅立つ事となった・・・。
#navi(ゼロの魔獣)
「―それは違います
今回の事件の責任は ミセス・シュヴールズひとりに押し付けて済むものではないのです。」
宝物庫。
その巨大な風穴の開いた一室では、真理阿の独演会が行われていた。
話は三十分ほど前に遡る。
城下町からの帰り、偶然にも『破壊の杖』盗難事件の目撃者となった四人は
一夜明けた後、現場検証のために宝物庫へと呼び出された。
ところが、議論が責任問題へとすり替わり、当直のシュヴールズが槍玉に挙げられる事態に至ったため
真理阿は彼女の弁護を始めたのである。
「みなさんの中に 一度たりとも当直に手を抜いたことがないと 自信を持って言える人はいますか?
賊が進入する可能性を想定し 警鐘を鳴らしていた人はいましたか?
―事件は起こるべくして起こりました・・・
今この時になって ミセス・シュヴールズひとりを責める それは 人として恥ずべきことです・・・」
それは、まさに名演説と呼ぶにふさわしいものだった。
難物と評判の教師・ギトーまでもが、真理阿の言葉にうなだれ、己の未熟さに深く瞑目している。
渦中のシュヴールズは、まるで聖女を崇めるかのような瞳で真理阿を仰ぎ見る。
コルベールはその日の日記に「あれを聞いて泣かぬ者は人に非ず」と、記した。
ルイズは泣かなかった。
この演説に感動できるのは、真実を知らぬ者だけである。
目の前の頼れる使い魔は、口先では人間愛を説きながら、その実、責任の所在をうやむやにしようとしていた。
「・・・とにかく 恐るべきは怪盗フーケです!
宝物庫の外壁が物理攻撃に弱い事を調べ上げ、
事前に爆薬を仕掛けるなんて・・・」
―訂正しよう。 真理阿は責任の所在をうやむやにはせず、全てフーケに押し付けた。
主を守るためなら、悪魔に魂すら売りかねない女であった。
「マリア殿 よくぞ申して下された
たしかに今回の事件の責任は わしらひとりひとりにある」
オールド・オスマンの真理阿に接する態度は、まるで古い王族を迎え入れるかのようであった。
真理阿の演説の元、皆の心が一丸となり、卑劣な盗賊・フーケの打倒に燃えていた。
「・・・あのぉ」
ロングビルは、その場のテンションの高さに取り残されていた。
「おお! ミス・ロングビル 今までどちらに」
「はい 周辺に聞き込みを行っていましたところ
フーケのアジトについて 有力な情報を掴む事が出来ました」
「なんと! フーケのアジトを!!
ならば 早速じゃが捜索隊を編成して・・・」
「私に!! 私に!! 私にやらせて下さい!!」
オスマンの言葉を待たず、ルイズが叫ぶ。
責任を問われなかった事がかえって罪の意識を重くし、志願せずにはいられなかった。
真理阿もこの事態は避けられないと考えていたのであろう、
ルイズの方を向いて、無言で頷いた。
ついでキュルケが、そしてタバサが名乗りを挙げる。
「まっ ヴァリエールはともかく 真理阿の顔に傷でもついたら大変だからね」
軽口を叩くキュルケだが、その瞳は、どこか熱っぽく潤んでいた。
「心配」
タバサの面構えは、仕えるべき主を見出した、もののふのそれであった。
「しかし 良いのですか学長?
ミス・ロングビルに先導させるとはいえ、まだ未熟な生徒たちに・・・」
コルベールの不安そうな問いかけに、オスマンが答える。
「大丈夫! それでもマリアなら
マリアなら きっと何とかしてくれる・・・!」
「おお!! そうか!」
「確かに・・・ 確かにマリア殿なら・・・!」
「ああ! マリア 我らの女神!!」
「マリア様 バンザーイ!」
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・
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こうして、根拠のない賞賛が惜しみなく送られる中、一向は旅立つ事となった・・・。
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