「ゼロの魔獣-06」(2008/02/27 (水) 19:51:40) の最新版変更点
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頭上には、満天の星空が広がっている。
二つの月の輝きの下、ルイズは再びヴェストリの広場にいた。
その目の前にあるのは、一体の案山子。
突き立った一本の棒に、ひしゃげた青銅の鎧兜が結わえてある。
ギーシュのワルキューレを再利用した、練習相手というワケだ。
(今回の惨事は、全て私の責任・・・)
主である私に十分な力があれば、真理阿も無茶な決闘は挑まなかったハズだ。
のみならず、自分の力量を見誤った結果、大切な友人を殺めるところだった・・・。
(せめて 彼女の献身に報いるだけの力を身につけなければ!)
ルイズは深呼吸して、詠唱を始める。
まずは炎の系統、ファイヤーボール。
詠唱に合わせて大気が振るえ、体内に力が満ちてくるのが分かる。
(イケる!)
高まる魔力を杖先に集中し、そして・・・!
「ルイズ?」
「ひゃわあぁっ!?」
背後からの真理阿の声に、集中力はおおいに乱れ、魔力が一気に雲散する。
数瞬の間、
・
・
・
ドワオォ!!
魔法は案山子を飛び越え、はるか後方、本塔の付近で爆裂した。
呆然とするルイズ。 対して、真理阿の動きには一切の淀みが無い。
「逃げるわ」「え? ええっ!?」
「大丈夫!」
2人が走る。
「あの付近は宝物庫 相当強力な防護壁が張られているハズ
もし壁が壊れていたとしても それは管理に手抜かりのあった学院側の責任よ!」
―無茶苦茶だ。
こんなのはいつもの真理阿じゃない。
(これが 『血が騒ぐ』 と言う事なの?)
走る真理阿の横顔が、わずかに微笑んでいるように感じた。
・
・
・
―自室
ルイズは再び正座していた。
今回は、真理阿に強制されたわけではない。
昼夜に渡る二度の失態が、ルイズを自然にその体勢に持っていった。
「・・・ル」「あ、あのねマリア!」
ルイズが口火を切る。
「マホッま、魔法の練習をしていたのよホラあたしって魔法の属性を使い分けるのがちょっとば
かり苦手じゃない勿論こんな夜中にいきなり始めるのもどーかとも思ったけど善は急げ思い立っ
たが吉日鉄は熱いうちに打てって昔から言うじゃない!」
「・・・・・・・・」
「最初は最初は最初はホンットーにうまくいってたの!指先まで全神経が集中してたっていうか
とにかく全身にやる気がみなぎっていたわ!そそそりゃー最後はあんな感じになっちゃったけど
本当に悪気があったわけじゃなくて・・・」
「ルイズ」
「・・・・・・・・」
後が続かない。
真理阿の心配そうな瞳の前に、通用する言い訳など無かった。
「ルイズ
あなたが魔法を使いこなしたいと努力する事は とても素晴らしい事よ
あなたが影で人一倍努力している事は 私が誰よりも知っているわ」
「・・・・・・・・・」
「けれども 魔法は時として危険なもの
使い方を誤れば 自分はおろか 他人まで傷つけてしまうかもしれない
分からないままに 闇雲に練習するのは良くないわ」
「・・・・・・・・・」
「練習する時は 皆の力を借りればいいのよ
魔法が使えないことも 人に頼ることも恥ずかしい事ではないわ
何かを覚えようと 必死に努力する人間を笑う人こそ恥ずべきなのよ
心を開けば 先生たちも キュルケやタバサも きっとあなたに協力してくれる」
「・・・違うの・・・」
「・・・ルイズ?」
真理阿の言葉には、一切の侮蔑や欺瞞が無い。
だからこそ、ルイズは言葉を紡ぐのを抑えられなかった。
「言っていることはわかる・・・でも・・それじゃあ間に合わないの」
「間に合わない・・・?」
「あなたは・・・あなたがわたしの使い魔だから・・・
魔法も使えないクセに あなたはいざとなると わたしを守ろうとするから」
「・・・・・・・・・」
「ホントは・・・本当は メイジで貴族のわたしが あなたを守らなきゃいけないの
なのに・・・
だから・・・だから わたし・・・!」
「ルイズ」
真理阿がルイズを抱擁する
ルイズは子供のように涙を流す。
「・・・ごめんなさい
わたしの存在が あなたにプレッシャーを与えていたのね・・・」
「・・・ッ!? 違ッ!」
「約束するわ」
真理阿はルイズを見つめ、あくまで穏やかに語りかける
「私はもう 二度と危険な真似はしないわ・・・
キュルケやタバサや それにシェスタにギーシュも
ここの人たちはみんな とってもいい人たちばっかり
無理にぶつかり合わなくたって 協力し合って生きていけるわ」
「真理阿・・・」
「だからルイズも 二度と無茶な真似はしないと約束して」
― かつてルイズは 真理阿が母親の貫禄を備えていると感じた事があった。
だが、それは間違いだった。
真理阿は母親なのだ。真理阿の中に、確かに母親がいるのだ。
もちろんルイズの母親ではない。そしておそらく、真理阿の母親でもない。
言うなれば、普遍的な母性を宿した女性の面影を、ルイズは真理阿の中に見出していた。
どこにでもいる少女の真理阿。
平然とムチャをする真理阿。
そして、母親の真理阿・・・。
「あなたは・・・あなたは だれ・・・?」
真理阿が笑う。
「私は真理阿 あなたの友人で あなたの使い魔」
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#navi(ゼロの魔獣)
頭上には、満天の星空が広がっている。
二つの月の輝きの下、ルイズは再びヴェストリの広場にいた。
その目の前にあるのは、一体の案山子。
突き立った一本の棒に、ひしゃげた青銅の鎧兜が結わえてある。
ギーシュのワルキューレを再利用した、練習相手というワケだ。
(今回の惨事は、全て私の責任・・・)
主である私に十分な力があれば、真理阿も無茶な決闘は挑まなかったハズだ。
のみならず、自分の力量を見誤った結果、大切な友人を殺めるところだった・・・。
(せめて 彼女の献身に報いるだけの力を身につけなければ!)
ルイズは深呼吸して、詠唱を始める。
まずは炎の系統、ファイヤーボール。
詠唱に合わせて大気が振るえ、体内に力が満ちてくるのが分かる。
(イケる!)
高まる魔力を杖先に集中し、そして・・・!
「ルイズ?」
「ひゃわあぁっ!?」
背後からの真理阿の声に、集中力はおおいに乱れ、魔力が一気に雲散する。
数瞬の間、
・
・
・
ドワオォ!!
魔法は案山子を飛び越え、はるか後方、本塔の付近で爆裂した。
呆然とするルイズ。 対して、真理阿の動きには一切の淀みが無い。
「逃げるわ」「え? ええっ!?」
「大丈夫!」
2人が走る。
「あの付近は宝物庫 相当強力な防護壁が張られているハズ
もし壁が壊れていたとしても それは管理に手抜かりのあった学院側の責任よ!」
―無茶苦茶だ。
こんなのはいつもの真理阿じゃない。
(これが 『血が騒ぐ』 と言う事なの?)
走る真理阿の横顔が、わずかに微笑んでいるように感じた。
・
・
・
―自室
ルイズは再び正座していた。
今回は、真理阿に強制されたわけではない。
昼夜に渡る二度の失態が、ルイズを自然にその体勢に持っていった。
「・・・ル」「あ、あのねマリア!」
ルイズが口火を切る。
「マホッま、魔法の練習をしていたのよホラあたしって魔法の属性を使い分けるのがちょっとば
かり苦手じゃない勿論こんな夜中にいきなり始めるのもどーかとも思ったけど善は急げ思い立っ
たが吉日鉄は熱いうちに打てって昔から言うじゃない!」
「・・・・・・・・」
「最初は最初は最初はホンットーにうまくいってたの!指先まで全神経が集中してたっていうか
とにかく全身にやる気がみなぎっていたわ!そそそりゃー最後はあんな感じになっちゃったけど
本当に悪気があったわけじゃなくて・・・」
「ルイズ」
「・・・・・・・・」
後が続かない。
真理阿の心配そうな瞳の前に、通用する言い訳など無かった。
「ルイズ
あなたが魔法を使いこなしたいと努力する事は とても素晴らしい事よ
あなたが影で人一倍努力している事は 私が誰よりも知っているわ」
「・・・・・・・・・」
「けれども 魔法は時として危険なもの
使い方を誤れば 自分はおろか 他人まで傷つけてしまうかもしれない
分からないままに 闇雲に練習するのは良くないわ」
「・・・・・・・・・」
「練習する時は 皆の力を借りればいいのよ
魔法が使えないことも 人に頼ることも恥ずかしい事ではないわ
何かを覚えようと 必死に努力する人間を笑う人こそ恥ずべきなのよ
心を開けば 先生たちも キュルケやタバサも きっとあなたに協力してくれる」
「・・・違うの・・・」
「・・・ルイズ?」
真理阿の言葉には、一切の侮蔑や欺瞞が無い。
だからこそ、ルイズは言葉を紡ぐのを抑えられなかった。
「言っていることはわかる・・・でも・・それじゃあ間に合わないの」
「間に合わない・・・?」
「あなたは・・・あなたがわたしの使い魔だから・・・
魔法も使えないクセに あなたはいざとなると わたしを守ろうとするから」
「・・・・・・・・・」
「ホントは・・・本当は メイジで貴族のわたしが あなたを守らなきゃいけないの
なのに・・・
だから・・・だから わたし・・・!」
「ルイズ」
真理阿がルイズを抱擁する
ルイズは子供のように涙を流す。
「・・・ごめんなさい
わたしの存在が あなたにプレッシャーを与えていたのね・・・」
「・・・ッ!? 違ッ!」
「約束するわ」
真理阿はルイズを見つめ、あくまで穏やかに語りかける
「私はもう 二度と危険な真似はしないわ・・・
キュルケやタバサや それにシェスタにギーシュも
ここの人たちはみんな とってもいい人たちばっかり
無理にぶつかり合わなくたって 協力し合って生きていけるわ」
「真理阿・・・」
「だからルイズも 二度と無茶な真似はしないと約束して」
― かつてルイズは 真理阿が母親の貫禄を備えていると感じた事があった。
だが、それは間違いだった。
真理阿は母親なのだ。真理阿の中に、確かに母親がいるのだ。
もちろんルイズの母親ではない。そしておそらく、真理阿の母親でもない。
言うなれば、普遍的な母性を宿した女性の面影を、ルイズは真理阿の中に見出していた。
どこにでもいる少女の真理阿。
平然とムチャをする真理阿。
そして、母親の真理阿・・・。
「あなたは・・・あなたは だれ・・・?」
真理阿が笑う。
「私は真理阿 あなたの友人で あなたの使い魔」
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