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―使い魔はじめました 第二話―
ルイズが打ちひしがれている間に、サララは鍋に駆け寄ると
倒れていた梯子をかけ直し、鍋に手を入れる
どういう理論になっているかは分からないが、この鍋は、手を突っ込むだけで
中に入っている道具と、その数が認識できるのだ
どうやら、無くなった道具も、壊れた道具もないようで胸を撫で下ろす
大切な商売道具だし、何より先祖伝来の品である
壊れてしまった日には顔も知らない先祖たちに申し訳が立たない
「さて、ミス・ヴァリエールと、そちらのお嬢さん。あなた方も、教室へ……」
「あの……ミスタ・コルベール」
軽く痛む頭を押さえながら、ルイズは彼に話しかけた
頭を押さえた拍子に取り落とした猫が騒いでいるがとりあえずスルー
「どうしたのですか、ミス・ヴァリエール?」
「……この猫が言うには、彼女はその、魔女、つまりメイジなんだそうです」
足元のチョコを恨めしい顔でにらみつけた後、先程聞いた事実を報告する
「何と……」
予想外だったらしく、コルベールはルイズとサララの顔を交互に見やる
「失礼ですが、お嬢さんは貴族ですか?」
コルベールの問いに、サララは首を横に振る
貴族なんて呼べるのは、吸血鬼の伯爵様と王様たちしか知らないけれど、
少なくとも自分がそうでないことだけは確かである
「だんじょんの町とやらで商人をやってた、ってこの猫「チョコ」……チョコが」
ちょっとうんざりしたような顔で、ルイズは名前で訂正する
「私には、何も喋っているように聞こえませんが……ああ!」
訝しげにしていたコルベールが、ひらめいたような顔をする
何となく頭の上でランプが灯ったようだ
「その猫はこちらのお嬢さんの使い魔ですよね。
おそらく、こちらのお嬢さんを経由して、精神がリンクしているんでしょう」
彼の説明にルイズは成程、と納得する
暗記するほど読み込んだ教科書の『使い魔の能力と役目』のページには、
『使い魔は主と精神をリンクし、会話することが出来る』と書かれていた
ならば、使い魔の使い魔とも、きっとリンクできるのだろう
「ふうむ……しかし、だんじょん、とは聞かぬ名の町ですな
よもや……東方の……いや、しかし……」
ぶつぶつと呟き出すコルベールを尻目に
ルイズはサララという名らしい少女に目をやる
自分が困惑しているというのに、彼女は鍋に手を突っ込んで何を
ボーっとしているのだろうか、腹立たしくなってきた
「えーっと、あんた、サララだっけ?何やってるの?」
そう聞かれてルイズの方に顔を向けるサララ
鍋の中身の確認を、と言おうとしたが答える前に勝手に話し始める
「なんで、由緒正しいヴァリエール家の三女が……。
あんたみたいな、まほ……何処のものともしれない
田舎者を召喚しなくちゃいけないのよ?」
魔法の使えないメイジ、と言おうとして思いとどまった
魔法を使えない苦しみは、自身が一番良く知っている
わざわざ、それを口に出して言うこともあるまい
「ねえ、それよりボク疲れたんだけど」
チョコがルイズの足元で不平の声を上げた
「もう少し敬意を払いな……って、猫にそんなこと求めても仕方ないわね。
ミスタ・コルベール!」
未だに思考の海に沈んでいるらしいコルベールに呼びかける
「つまり……あ、ああ、失礼。どうしましたかな、ミス・ヴァリエール」
はっとして、ルイズの問いに反応する
「あの、私達先に部屋に戻ってもいいですか?」
サララが梯子を降りて鍋の横に立つのが見えた
「あんな大きな鍋を持って教室に行くわけにも行かないでしょう?」
平民を連れ、鍋を持って教室に入ったら、あの同級生達が
また笑い転げるに違いない それは避けたかった
「そうですね、しかし、あの鍋を運べるのですか?」
コルベールは二人を交互に見比べる
「あ……」
ルイズはしまった、というような顔をした
これが他のメイジならフライなりレビテーションであの鍋を動かせるが
か弱い女二人とついでに猫ではあんなもの運べまい
「あ、それなら大丈夫だよ。ね、サララ?」
チョコが問うのにこくりと頷くと鍋の中から篭手を取り出す
それを片腕に装着すると、ひょい、と鍋を持ち上げた
「「え?」」
ルイズとコルベールがその光景を見て困惑する
小柄な少女が自分の身長よりも大きいであろう巨大な鍋を軽く持ち上げたのだ
「あれ?占いカードと日記が落ちてるよ!
鍋の陰になってて分からなかったけど」
チョコ言われて、その存在に気がついたサララは
一旦鍋を下ろすと日記と占いカードを拾いパンパン、と汚れを払う
「ね、ねえ、い、今の何したの?」
「何って……知らない?怪力の篭手。力が上がるやつ」
「ししし、知らないわよ!何そのマジックアイテム!」
マジックアイテム、という言い方に首を傾げるが
まあ、魔法のかかった道具であることに違いはない
場所が違うと流れる商品も違うのだろうと、サララは一人で納得する
珍しいということは、高く売れるのか、いや、
入手が難しいから、あまり簡単に売るわけにも、と
パチパチと脳内で算盤を弾いている辺り、商人である
「……ふむ、確かに見たことのないマジックアイテムですな。
さて、私はもう教室に戻りますね。お二人と……そちらのチョコくんは、
ミス・ヴァリエールの部屋でこれからを話し合ってください」
コルベールはレビテーションを唱え、学院に向かって飛んでいった
「いいなあ、箒も無しに空が飛べてー。ね、君は飛ばないの?」
そうチョコに言われて、ルイズはギクリ、とした顔をする
「う、うるさいわね!あんたらは、歩いてくるんだから、合わせてあげてんのよ!
ほら、学院はこっちよ。とっとと来なさい!」
「あ、待ってよー!おーい!」
チョコがその後を歩くのを、サララも慌てて追おうとする
先程拾った日記と占いカードは、ワンピースのポケットにしまう
そして、ひょいと鍋を抱えるがそこでふと違和感を感じる
確かにこの篭手は、着けたものの腕っ節を強くするが
自分がこの鍋をこんなに軽く感じる程、効果があっただろうか?
少し悩むが、まあいっか、と笑顔を作りえっちらおっちらと
自分の『ご主人様』になるらしい少女の後を追いかける
「早く来なさい!もたもたすると、置いていくわよ!」
サララの額に刻まれたルーンが、ぼんやりと光を放っていたことに
気がつくものは、その場には誰も居なかった
鍋を抱えた少女と猫を引き連れ歩きながら、ルイズは内心ドキドキしていた
「(見たこともないマジックアイテム……ひょっとしたら、
私、当たりをひいたんじゃないの?)」
商人だと言うからには、まさかアレ一つだけ、ということはあるまい
あの鍋から取り出したからには、あの鍋も何らかのマジックアイテムなのだろうか?
「(占いがどうのこうの、って言ってたからには、もしかしたら、
未来予知もできちゃったりするマジックアイテムもあるの?)」
必死に抑えているが、ついつい顔がニヤける
彼女の想像の中ではあらゆるマジックアイテムを使いこなす自身が
拍手喝采で迎えられている様子が浮かんでいる
「(それに……)」
次に浮かんできたのは、病弱な自身の姉の姿である
「(ちいねえさまを治せるマジックアイテムもあるかも……)」
相当遠くから来たらしい自身の使い魔とその使い魔を肩越しに見る
巨大な鍋がフラフラしている
頭にハテナマークを浮かべていたルイズだが、さっと青ざめる
落ち着いて考えれば分かることではないか
大体、彼女は帽子と前髪で元からそんなに視界がよさそうではないのに
自分の身長よりも大きな鍋を抱えているのだから
間違いなく彼女は
「わあああー!サララー、危ないーーー!!」
前が見えていない!!
『ガシャーン』
少し日が暮れてきた空に二人の少女と一匹の猫の悲鳴が響き渡った
#navi(使い魔はじめました)
―使い魔はじめました 第二話―
ルイズが打ちひしがれている間に、サララは鍋に駆け寄ると
倒れていた梯子をかけ直し、鍋に手を入れる
どういう理論になっているかは分からないが、この鍋は、手を突っ込むだけで
中に入っている道具と、その数が認識できるのだ
どうやら、無くなった道具も、壊れた道具もないようで胸を撫で下ろす
大切な商売道具だし、何より先祖伝来の品である
壊れてしまった日には顔も知らない先祖たちに申し訳が立たない
「さて、ミス・ヴァリエールと、そちらのお嬢さん。あなた方も、教室へ……」
「あの……ミスタ・コルベール」
軽く痛む頭を押さえながら、ルイズは彼に話しかけた
頭を押さえた拍子に取り落とした猫が騒いでいるがとりあえずスルー
「どうしたのですか、ミス・ヴァリエール?」
「……この猫が言うには、彼女はその、魔女、つまりメイジなんだそうです」
足元のチョコを恨めしい顔でにらみつけた後、先程聞いた事実を報告する
「何と……」
予想外だったらしく、コルベールはルイズとサララの顔を交互に見やる
「失礼ですが、お嬢さんは貴族ですか?」
コルベールの問いに、サララは首を横に振る
貴族なんて呼べるのは、吸血鬼の伯爵様と王様たちしか知らないけれど、
少なくとも自分がそうでないことだけは確かである
「だんじょんの町とやらで商人をやってた、ってこの猫「チョコ」……チョコが」
ちょっとうんざりしたような顔で、ルイズは名前で訂正する
「私には、何も喋っているように聞こえませんが……ああ!」
訝しげにしていたコルベールが、ひらめいたような顔をする
何となく頭の上でランプが灯ったようだ
「その猫はこちらのお嬢さんの使い魔ですよね。
おそらく、こちらのお嬢さんを経由して、精神がリンクしているんでしょう」
彼の説明にルイズは成程、と納得する
暗記するほど読み込んだ教科書の『使い魔の能力と役目』のページには、
『使い魔は主と精神をリンクし、会話することが出来る』と書かれていた
ならば、使い魔の使い魔とも、きっとリンクできるのだろう
「ふうむ……しかし、だんじょん、とは聞かぬ名の町ですな
よもや……東方の……いや、しかし……」
ぶつぶつと呟き出すコルベールを尻目に
ルイズはサララという名らしい少女に目をやる
自分が困惑しているというのに、彼女は鍋に手を突っ込んで何を
ボーっとしているのだろうか、腹立たしくなってきた
「えーっと、あんた、サララだっけ?何やってるの?」
そう聞かれてルイズの方に顔を向けるサララ
鍋の中身の確認を、と言おうとしたが答える前に勝手に話し始める
「なんで、由緒正しいヴァリエール家の三女が……。
あんたみたいな、まほ……何処のものともしれない
田舎者を召喚しなくちゃいけないのよ?」
魔法の使えないメイジ、と言おうとして思いとどまった
魔法を使えない苦しみは、自身が一番良く知っている
わざわざ、それを口に出して言うこともあるまい
「ねえ、それよりボク疲れたんだけど」
チョコがルイズの足元で不平の声を上げた
「もう少し敬意を払いな……って、猫にそんなこと求めても仕方ないわね。
ミスタ・コルベール!」
未だに思考の海に沈んでいるらしいコルベールに呼びかける
「つまり……あ、ああ、失礼。どうしましたかな、ミス・ヴァリエール」
はっとして、ルイズの問いに反応する
「あの、私達先に部屋に戻ってもいいですか?」
サララが梯子を降りて鍋の横に立つのが見えた
「あんな大きな鍋を持って教室に行くわけにも行かないでしょう?」
平民を連れ、鍋を持って教室に入ったら、あの同級生達が
また笑い転げるに違いない それは避けたかった
「そうですね、しかし、あの鍋を運べるのですか?」
コルベールは二人を交互に見比べる
「あ……」
ルイズはしまった、というような顔をした
これが他のメイジならフライなりレビテーションであの鍋を動かせるが
か弱い女二人とついでに猫ではあんなもの運べまい
「あ、それなら大丈夫だよ。ね、サララ?」
チョコが問うのにこくりと頷くと鍋の中から篭手を取り出す
それを片腕に装着すると、ひょい、と鍋を持ち上げた
「「え?」」
ルイズとコルベールがその光景を見て困惑する
小柄な少女が自分の身長よりも大きいであろう巨大な鍋を軽く持ち上げたのだ
「あれ?占いカードと日記が落ちてるよ!
鍋の陰になってて分からなかったけど」
チョコ言われて、その存在に気がついたサララは
一旦鍋を下ろすと日記と占いカードを拾いパンパン、と汚れを払う
「ね、ねえ、い、今の何したの?」
「何って……知らない?怪力の篭手。力が上がるやつ」
「ししし、知らないわよ!何そのマジックアイテム!」
マジックアイテム、という言い方に首を傾げるが
まあ、魔法のかかった道具であることに違いはない
場所が違うと流れる商品も違うのだろうと、サララは一人で納得する
珍しいということは、高く売れるのか、いや、
入手が難しいから、あまり簡単に売るわけにも、と
パチパチと脳内で算盤を弾いている辺り、商人である
「……ふむ、確かに見たことのないマジックアイテムですな。
さて、私はもう教室に戻りますね。お二人と……そちらのチョコくんは、
ミス・ヴァリエールの部屋でこれからを話し合ってください」
コルベールはレビテーションを唱え、学院に向かって飛んでいった
「いいなあ、箒も無しに空が飛べてー。ね、君は飛ばないの?」
そうチョコに言われて、ルイズはギクリ、とした顔をする
「う、うるさいわね!あんたらは、歩いてくるんだから、合わせてあげてんのよ!
ほら、学院はこっちよ。とっとと来なさい!」
「あ、待ってよー!おーい!」
チョコがその後を歩くのを、サララも慌てて追おうとする
先程拾った日記と占いカードは、ワンピースのポケットにしまう
そして、ひょいと鍋を抱えるがそこでふと違和感を感じる
確かにこの篭手は、着けたものの腕っ節を強くするが
自分がこの鍋をこんなに軽く感じる程、効果があっただろうか?
少し悩むが、まあいっか、と笑顔を作りえっちらおっちらと
自分の『ご主人様』になるらしい少女の後を追いかける
「早く来なさい!もたもたすると、置いていくわよ!」
サララの額に刻まれたルーンが、ぼんやりと光を放っていたことに
気がつくものは、その場には誰も居なかった
鍋を抱えた少女と猫を引き連れ歩きながら、ルイズは内心ドキドキしていた
「(見たこともないマジックアイテム……ひょっとしたら、
私、当たりをひいたんじゃないの?)」
商人だと言うからには、まさかアレ一つだけ、ということはあるまい
あの鍋から取り出したからには、あの鍋も何らかのマジックアイテムなのだろうか?
「(占いがどうのこうの、って言ってたからには、もしかしたら、
未来予知もできちゃったりするマジックアイテムもあるの?)」
必死に抑えているが、ついつい顔がニヤける
彼女の想像の中ではあらゆるマジックアイテムを使いこなす自身が
拍手喝采で迎えられている様子が浮かんでいる
「(それに……)」
次に浮かんできたのは、病弱な自身の姉の姿である
「(ちいねえさまを治せるマジックアイテムもあるかも……)」
相当遠くから来たらしい自身の使い魔とその使い魔を肩越しに見る
巨大な鍋がフラフラしている
頭にハテナマークを浮かべていたルイズだが、さっと青ざめる
落ち着いて考えれば分かることではないか
大体、彼女は帽子と前髪で元からそんなに視界がよさそうではないのに
自分の身長よりも大きな鍋を抱えているのだから
間違いなく彼女は
「わあああー!サララー、危ないーーー!!」
前が見えていない!!
『ガシャーン』
少し日が暮れてきた空に二人の少女と一匹の猫の悲鳴が響き渡った
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