「風林火山-04」(2008/02/27 (水) 19:27:28) の最新版変更点
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―――――1時間後。広場。
「お、怖気づかずにきたようだね、勘助・・・」
「当然だ」
どこから噂を聞きつけたのか、呆れるほど人が集まっていた。
さらに、決闘の仲介役までついている。
そして、野次馬達が期待している決闘が、今まさに始まろうとしていた。
この決闘の結果は、観客達の予想では、殆どギーシュの圧勝であった。
しかし、誰の目にも、どちらにこそ余裕があるのか、一目瞭然であった。
貴族であるギーシュに、明らかに余裕がない。
いくら相手が軍人とはいえ、自分はメイジである。
彼らの頭の中にある、どんな達人の平民であろうとも、決して貴族には勝てない。
そんな常識が、この状況に崩れかかっていた。
だが、しかしこのギーシュにも先ほどよりは、余裕が見て取れる。
(やはり、魔法を使えるというのが自信につながっているのだろう)
と、勘助は分析する。
確かに、魔法は便利だ。
ルイズや、教師の話、そして実際に見た魔法のどれもが、驚くべきものばかりだった。
が、しかしだからと言って、それらに決して勝てないというわけでは無い。
同数の集団のメイジと平民では、基本的に平民では勝てないだろう。
高位のメイジと、平民の一騎打ちでは、どんな達人でも勝つことはできないだろう。
だが、トライアングルクラスのメイジ一人なら、足軽10人にそれぞれ弓と槍を5本ずつ持たせれば、確実に倒せる。
鉄砲兵なら、2,3人で落ちるかもしれない。
ましてやラインクラスなぞ、足軽2人3人、ドットクラスであれば、勝てるかどうかは、弓兵とそうでない者との差程度だろう。
1:1の場合、メイジ相手に、10メイル程度でも距離を離されれば、一気に危うくなる。
が、1メイル以内の懐に入れれば、もはやメイジは役に立たない。
いつぞやの、小島五郎左衛門と同じだ。
例え、スクエアクラスであろうとも、所詮一人の兵としての能力しか持たぬ。
ひょんな事で、雑兵にすら命を取られる。
だのに、自分があの小童に勝てぬ、ということはない。
問題は、距離のみである。
距離を取られて、攻撃できない場所から攻撃されては打つ手はない。
(ならば、自分が取るべき行動は―――)
「それでは、このコインが地面に落ちたら、それが合図だ。それと同時に、決闘は開始される。それでは、いくぞ・・・」
ピインッ、とコインが弾かれた。
―――瞬間。
地面にコインが落ちるよりも早く、勘助は走りだした。
「ひ・・・ひぃ!」
無言のまま、驚きで動けないギーシュに切りかかる。
コインが地面に着いた瞬間、ズンッと鈍い音がし、そして―――
ギーシュの腕が切断された。
「ぎ・・・ぎああああああああああ」
ギーシュが、腕に走った違和感に気づき、そしてその違和感の正体に気づいた時には、口から大きな悲鳴が漏れていた。
「小童。貴様の武器が魔法というのなら、この勘助の武器は智慧に他ならない。真っ向から力で持って打倒せぬなら、それ以外の方法で打ち取るまでよ」
勘助が、聞いているのかどうかはわからないが、ギーシュにそう呟いた。
「い、今のは反則じゃないか!」
「そうだそうだ!まだ開始の合図が落ちてなかったぞ!」
「これは神聖なる決闘だ!平民には誇りというものがないのか!」
野次馬からは、野次が乱れ飛ぶ。
それらを、ジロリ、と睨みながら、勘助は言った。
「黙らんか、小童ども!戦とは戦うと決まった瞬間から、いや、戦う前からすでに始まっているのだ!命をかけて戦うのが仕事の貴族が、神聖な戦いなどと申すな!」
そう一喝すると、野次馬達がシン、と静まりかえった。
(いかん・・・どうも、血の気が盛んになった気がする・・・若返った代償か)
以前の自分なら考えられないほど、自分を抑えられなかった。
以前なら、軽く受け流し、無駄な争いを避けたはずなのに。
(これからは気をつけねばならんな・・・)
そう考えると、そのままその場から立ち去ろうとした。
「待ちなさい勘助!」
突然、勘助を呼ぶ声が聞こえるのと同時に、勘助の行く手を、ルイズが遮った。
―――――遡ること1時間程。
昼食をとってから、突然姿を消した勘助をルイズは探していた。
(全くもう・・・あの使い魔は一体、どこをほっつきあるているのかしら!)
頭の回りが良く、理解が早い勘助を、ルイズは少し認めていた。
ただの平民ならばこんなことは思わなかっただろうが、コルベール先生の話によれば、ロバ・アル・カリイエにある大国の軍師であるという。
これって、ひょっとするとすごいことじゃないかしら?と、ルイズは思った。
だから、ご飯も貴族と同じような物を出したし、寝る場所にもちゃんとシーツを敷いてあげたのだ。
ルイズからしてみれば、使い魔に対して驚くべき待遇を出している。
だというのに―――
(勝手にご主人様のそばから離れて、どっかにいっちゃうなんて・・・)
そして、再び食堂に戻ってきて、そこを探していると―――
「そ、そうかね。あ、そうだ、僕は貴族なんだ!だから、魔法を使っても文句あるまいね!」
ギーシュの必死な叫び声と、そして他の生徒たちのざわざわとした声が聞こえた。
そちらを見てみると、一点を囲むようにして生徒たちの垣ができており、やがてそこからギーシュが逃げるように歩いてきた。
そして、ギーシュがルイズを発見すると
「ルイズ!き、君は使い魔の教育というものがなってないな!おかげで決闘なんてするはめになってしまったよ。まったく・・・」
と言い残し、去って行った。
何のことか分からず、そして決闘という言葉に思考が停止する。
とりあえず、人垣の方へと行ってみると、勘助が歩いているのが見えた。
「か・・・勘助!あんたどこ行って・・・って聞きなさい!待ちなさいこら!」
まるで聞こえないように勘助が出て行ってしまった。
慌てて追いかけようとするが、人垣が邪魔で追い付けない。
ついに、勘助を見失ってしまった。
仕方なく、人垣の一人に勘助の事を聞いてみた。
すると、驚くべき答えが返ってきた。
「君の使い魔?ギーシュと決闘するってさ。1時間後に、ヴェストリの広場でやるって」
「け、決闘!?勘助とギーシュが、本当に決闘するの!?」
「あぁ。なんでも、ルイズを貶されたからには使い魔として何もしないのは、名折れだっていってたね」
ルイズの目の前が一瞬、真っ暗になった。
それでも、すぐに気を取り戻し、勘助を止めるべくヴェストリの広場へと向かった。
が、そこには野次馬ばかりで勘助の姿は無かった。
(もう・・・本当に何をやってるのよ勘助!)
それから1時間。
勘助がやってきたと思ったら、すぐに決闘が始まってしまった。
自分が止める暇もなかった。
というよりも
(勝手に決闘して、1時間もご主人様を待たせるなんて・・・一回、ボコボコにやられるのがいいわ!)
という思いがあったためか。
でも、ご主人様の名誉のために決闘をしたっていってたし、本当に危なくなったら助けてあげよう、とルイズは思った。
まさか、ギーシュが一瞬で敗北するなどとは全く考えていなかった。
―――――ルイズか。
勘助は行く手をさえぎる者を確認した。
「一体、何ようでござる」
問うた。
その言葉に、ルイズはすかさず返す。
「あんた、ご主人様に相談もしないで、勝手になにやってるのよ!」
「見ての通り、決闘にございます。何も、ルイズ様に迷惑をかけてはおらぬと思いますが」
ジロリ、とルイズを睨む。
「迷惑ですって!かかってるわ。十分に。ギーシュをあんなにして!主人の不始末は使い魔の不始末っていったわよね、前。当然、使い魔の不始末は主人の不始末なのよ!ギーシュの腕の治療費とか、学校からの処罰とか、いろいろと大変になるんだから!」
「ふむ。それは申し訳ないことをした。だが、言わせてもらえれば・・・逃げることだけはできなかった。貴族の言葉でいえば、名誉のために、だな」
「名誉のために・・・ふ、ふん!いいわ・・・別に、あんたが悪いってわけじゃないし・・・悪いのは、決闘をふっかけてきたギーシュの方だっていうし・・・おとがめなしにしておいてあげる!ご主人様に感謝しなさいよね!」
言うと、ルイズはすぐにそっぽを向いて、叫ぶように言った。
「戻るわよ!」
(追い出しはできないとしても、相当の罰はあるものと思っていたが・・・いや、ありがたくはある。とりあえず、それでよしとしておこう)
不可思議な思いであったが、しかし、害はない為にそのままにしておこうと勘助は思った。
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#navi(風林火山)
―――――1時間後。広場。
「お、怖気づかずにきたようだね、勘助・・・」
「当然だ」
どこから噂を聞きつけたのか、呆れるほど人が集まっていた。
さらに、決闘の仲介役までついている。
そして、野次馬達が期待している決闘が、今まさに始まろうとしていた。
この決闘の結果は、観客達の予想では、殆どギーシュの圧勝であった。
しかし、誰の目にも、どちらにこそ余裕があるのか、一目瞭然であった。
貴族であるギーシュに、明らかに余裕がない。
いくら相手が軍人とはいえ、自分はメイジである。
彼らの頭の中にある、どんな達人の平民であろうとも、決して貴族には勝てない。
そんな常識が、この状況に崩れかかっていた。
だが、しかしこのギーシュにも先ほどよりは、余裕が見て取れる。
(やはり、魔法を使えるというのが自信につながっているのだろう)
と、勘助は分析する。
確かに、魔法は便利だ。
ルイズや、教師の話、そして実際に見た魔法のどれもが、驚くべきものばかりだった。
が、しかしだからと言って、それらに決して勝てないというわけでは無い。
同数の集団のメイジと平民では、基本的に平民では勝てないだろう。
高位のメイジと、平民の一騎打ちでは、どんな達人でも勝つことはできないだろう。
だが、トライアングルクラスのメイジ一人なら、足軽10人にそれぞれ弓と槍を5本ずつ持たせれば、確実に倒せる。
鉄砲兵なら、2,3人で落ちるかもしれない。
ましてやラインクラスなぞ、足軽2人3人、ドットクラスであれば、勝てるかどうかは、弓兵とそうでない者との差程度だろう。
1:1の場合、メイジ相手に、10メイル程度でも距離を離されれば、一気に危うくなる。
が、1メイル以内の懐に入れれば、もはやメイジは役に立たない。
いつぞやの、小島五郎左衛門と同じだ。
例え、スクエアクラスであろうとも、所詮一人の兵としての能力しか持たぬ。
ひょんな事で、雑兵にすら命を取られる。
だのに、自分があの小童に勝てぬ、ということはない。
問題は、距離のみである。
距離を取られて、攻撃できない場所から攻撃されては打つ手はない。
(ならば、自分が取るべき行動は―――)
「それでは、このコインが地面に落ちたら、それが合図だ。それと同時に、決闘は開始される。それでは、いくぞ・・・」
ピインッ、とコインが弾かれた。
―――瞬間。
地面にコインが落ちるよりも早く、勘助は走りだした。
「ひ・・・ひぃ!」
無言のまま、驚きで動けないギーシュに切りかかる。
コインが地面に着いた瞬間、ズンッと鈍い音がし、そして―――
ギーシュの腕が切断された。
「ぎ・・・ぎああああああああああ」
ギーシュが、腕に走った違和感に気づき、そしてその違和感の正体に気づいた時には、口から大きな悲鳴が漏れていた。
「小童。貴様の武器が魔法というのなら、この勘助の武器は智慧に他ならない。真っ向から力で持って打倒せぬなら、それ以外の方法で打ち取るまでよ」
勘助が、聞いているのかどうかはわからないが、ギーシュにそう呟いた。
「い、今のは反則じゃないか!」
「そうだそうだ!まだ開始の合図が落ちてなかったぞ!」
「これは神聖なる決闘だ!平民には誇りというものがないのか!」
野次馬からは、野次が乱れ飛ぶ。
それらを、ジロリ、と睨みながら、勘助は言った。
「黙らんか、小童ども!戦とは戦うと決まった瞬間から、いや、戦う前からすでに始まっているのだ!命をかけて戦うのが仕事の貴族が、神聖な戦いなどと申すな!」
そう一喝すると、野次馬達がシン、と静まりかえった。
(いかん・・・どうも、血の気が盛んになった気がする・・・若返った代償か)
以前の自分なら考えられないほど、自分を抑えられなかった。
以前なら、軽く受け流し、無駄な争いを避けたはずなのに。
(これからは気をつけねばならんな・・・)
そう考えると、そのままその場から立ち去ろうとした。
「待ちなさい勘助!」
突然、勘助を呼ぶ声が聞こえるのと同時に、勘助の行く手を、ルイズが遮った。
―――――遡ること1時間程。
昼食をとってから、突然姿を消した勘助をルイズは探していた。
(全くもう・・・あの使い魔は一体、どこをほっつきあるているのかしら!)
頭の回りが良く、理解が早い勘助を、ルイズは少し認めていた。
ただの平民ならばこんなことは思わなかっただろうが、コルベール先生の話によれば、ロバ・アル・カリイエにある大国の軍師であるという。
これって、ひょっとするとすごいことじゃないかしら?と、ルイズは思った。
だから、ご飯も貴族と同じような物を出したし、寝る場所にもちゃんとシーツを敷いてあげたのだ。
ルイズからしてみれば、使い魔に対して驚くべき待遇を出している。
だというのに―――
(勝手にご主人様のそばから離れて、どっかにいっちゃうなんて・・・)
そして、再び食堂に戻ってきて、そこを探していると―――
「そ、そうかね。あ、そうだ、僕は貴族なんだ!だから、魔法を使っても文句あるまいね!」
ギーシュの必死な叫び声と、そして他の生徒たちのざわざわとした声が聞こえた。
そちらを見てみると、一点を囲むようにして生徒たちの垣ができており、やがてそこからギーシュが逃げるように歩いてきた。
そして、ギーシュがルイズを発見すると
「ルイズ!き、君は使い魔の教育というものがなってないな!おかげで決闘なんてするはめになってしまったよ。まったく・・・」
と言い残し、去って行った。
何のことか分からず、そして決闘という言葉に思考が停止する。
とりあえず、人垣の方へと行ってみると、勘助が歩いているのが見えた。
「か・・・勘助!あんたどこ行って・・・って聞きなさい!待ちなさいこら!」
まるで聞こえないように勘助が出て行ってしまった。
慌てて追いかけようとするが、人垣が邪魔で追い付けない。
ついに、勘助を見失ってしまった。
仕方なく、人垣の一人に勘助の事を聞いてみた。
すると、驚くべき答えが返ってきた。
「君の使い魔?ギーシュと決闘するってさ。1時間後に、ヴェストリの広場でやるって」
「け、決闘!?勘助とギーシュが、本当に決闘するの!?」
「あぁ。なんでも、ルイズを貶されたからには使い魔として何もしないのは、名折れだっていってたね」
ルイズの目の前が一瞬、真っ暗になった。
それでも、すぐに気を取り戻し、勘助を止めるべくヴェストリの広場へと向かった。
が、そこには野次馬ばかりで勘助の姿は無かった。
(もう・・・本当に何をやってるのよ勘助!)
それから1時間。
勘助がやってきたと思ったら、すぐに決闘が始まってしまった。
自分が止める暇もなかった。
というよりも
(勝手に決闘して、1時間もご主人様を待たせるなんて・・・一回、ボコボコにやられるのがいいわ!)
という思いがあったためか。
でも、ご主人様の名誉のために決闘をしたっていってたし、本当に危なくなったら助けてあげよう、とルイズは思った。
まさか、ギーシュが一瞬で敗北するなどとは全く考えていなかった。
―――――ルイズか。
勘助は行く手をさえぎる者を確認した。
「一体、何ようでござる」
問うた。
その言葉に、ルイズはすかさず返す。
「あんた、ご主人様に相談もしないで、勝手になにやってるのよ!」
「見ての通り、決闘にございます。何も、ルイズ様に迷惑をかけてはおらぬと思いますが」
ジロリ、とルイズを睨む。
「迷惑ですって!かかってるわ。十分に。ギーシュをあんなにして!主人の不始末は使い魔の不始末っていったわよね、前。当然、使い魔の不始末は主人の不始末なのよ!ギーシュの腕の治療費とか、学校からの処罰とか、いろいろと大変になるんだから!」
「ふむ。それは申し訳ないことをした。だが、言わせてもらえれば・・・逃げることだけはできなかった。貴族の言葉でいえば、名誉のために、だな」
「名誉のために・・・ふ、ふん!いいわ・・・別に、あんたが悪いってわけじゃないし・・・悪いのは、決闘をふっかけてきたギーシュの方だっていうし・・・おとがめなしにしておいてあげる!ご主人様に感謝しなさいよね!」
言うと、ルイズはすぐにそっぽを向いて、叫ぶように言った。
「戻るわよ!」
(追い出しはできないとしても、相当の罰はあるものと思っていたが・・・いや、ありがたくはある。とりあえず、それでよしとしておこう)
不可思議な思いであったが、しかし、害はない為にそのままにしておこうと勘助は思った。
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