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「使い魔を使う使い魔-04」(2008/01/08 (火) 06:23:24) の最新版変更点
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レッドがルイズに吹っ飛ばされているのと同じ頃、
一匹の生き物が暗い空をぐるぐると旋回していた。
「~♪ ~♪ ~♪」
彼女の名はシルフィード。ルイズのクラスメイト、
キュルケの友達である雪風のタバサが召喚せし、今は絶滅したと
ハルケギニアに伝えられる、美しく幼い『風韻竜』であった。
彼女は己が主人であるタバサの部屋の外側で、綺麗な鼻歌を交えながら
実に楽しそうに飛び回っていた。
もうなんか、地上を転がるように空中で転げまわって見せたり、
その場でスクリュー回転して見たりと……大きな体に反し、器用な奴である。
タバサは部屋に篭ってなにやら難しい本を読みふけっていた。
「…………」
が、突如として窓を全開し、見境なくびゅんびゅん飛び回る
シルフィードに対し、無表情に手招きした。
シルフィードは弾丸のように回転しながら飛んでいる際にコレを確認、
何ごとかと思い、すぐさま近寄ってみて…………
ポコッ !
そして、杖で頭をたたかれた。
「きゅい! 痛いのね! なにをするのねおねぇさま!?」
小声で、しかし甲高い幼さのある声でシルフィードが言った。
タバサは一切表情を変えることなく、それどころかさらに杖を振り上げて
ポコポコとさらに2回、シルフィードをたたいた。
「きゅい! やめるのね! どうしちゃったのねおねぇさま? ハッ!
まさか、そっちの趣味に目覚め……いたいのね! 冗談なのね―――っ!!」
「……うるさい」
杖でぼこぼこ殴っといて、血も涙もない命令であった。
第四話
「ひどいのね、シルフィはまだ何もしてないのね!」
「まだ?」
「! こっ……ことばのあや、なのね……」
「……………………」
シルフィードが瞬と首をうなだれる。
すっかり意気消沈した使い魔を見てさすがに気を悪くしたのか、
タバサはかねて疑問だったテンションの高さについて、シルフィード聞いてみた。
「んっふっふ~~~~♪」
「?」
とたんにシルフィードの顔が笑顔に変わる。というか、満面の笑みに。
タバサは使い魔の気味悪い言動の意味が解らなく、首をかしげた。
「おねぇさま、シルフィは恋しちゃったかも、なのね!」
「鯉?」
「違うのね! 恋!」
シルフィードは大げさに首を振った。風がタバサの髪を揺らす。
「請い?」
「きゅい! 恋なの」
今度は駄々をこねるように手をぶんぶん振り回す。
タバサはシルフィードの素直な反応が少し面白くなって、
次もわざと間違えることにした。
「故意? ……誰に?」
「きゅいいいいいいいぃぃ! おねぇさまのいじわる! ねくら! ぺt」
「遺言は……それだけ?」
「きゅいいいいいいいーーーーーっ!! ごめんなさいなのねーーーーっ!!!」
もはや正体バレるとかカンケーなしに、シルフィードは叫んだ。
「……昼の?」
「そう、そうなのね! おねぇさま! シルフィは見惚れちゃったのね、きゅい!」
なみだ目で言ってくる使い魔の頭を、タバサはよしよしと撫でてやった。
シルフィードは嬉しそうにきゅい! と鳴く。
「あの人間が召喚した見たことない竜、ちょっと怖かったけど……カッコよかったのね!」
「…………」
シルフィードが自分のことのように嬉々と語るのは、昼間ヴェストリの
広場で行われた、あのルイズの召喚した平民とギーシュの決闘だった。
あのときタバサは興味ないと読書に没頭しかかったところをキュルケにつかまり、
半ば強引に観戦させられていた。
誰もがギーシュの勝利を疑わなかった。タバサもだ。
一部の物好きな連中が遊び半分で平民に賭けていたが、見たところ普通で
魔力も何も感じない平民の子供が勝てる道理はどこにもなかった。
ないように、見えた。
しかし、ギーシュがワルキューレを出した途端、平民の目つきが変わった。
それは戦場を、厳しい修羅場を知っている目。勝負事に対する絶対手的な才能。
ギーシュのメイジだから~の話が終わったあと、彼は腰からはずした球状の何かから、
恐るべき『それ』を召喚した。
山吹色の体。
対についている2枚の翼。
長く伸びた太い尾、その先に燃える夕焼けのような灯火。
自身の力に絶対の自身を秘めた、ぎらついた鋭い目。
それは――見たこともないドラゴン。
一匹の翼竜は口から炎を吐くと、一撃でギーシュのワルキューレを焼き尽くした。
目を奪われた、とはまさしくあのことなのだろう。
つくづくキュルケには素直に頭が下がる。
あのとき強引に引っ張ってくれなければ、あれをみすみす見逃すところだった。
結果は火を見るまでもなく平民の圧勝。焼き尽くされ、原形を失ったワルキューレには、
その主たるギーシュには、皮肉なことわざである。
しばらく考えた後、タバサは口を開いた。
「…………ムリ」
「きゅい!? なんで!? なんで!?」
「ルックス的に……」
「きゅい! ひどいのね! シルフィは美少竜だもん!」
「……」
美『少』竜と自称しているが、シルフィードは実は200年近く生きている
ずいぶんと長生きさん(竜の中では10歳程度)である。
シルフィードには、自らが恋焦がれる竜のほうが、
見た目はともかく実年齢がはるか年下だとは知る由もない、
ましてや夢にも思っていなかった。
「きゅい! いいもんいいもん! どうせ異性を感じたことのない
おねぇさまにはわからない話だもん! おねぇさまはあのちょっと
けばけばした友達とにゃんにゃん……じ、じょうだんなのね!
杖をおろして詠唱やめて、なのねー!」
シルフィードの願いもむなしく、呪文こそ放たれなかったものの、
杖は今迄で一番強く、シルフィードの脳天を捉えたのだった。
場所を変え……
一方その頃、ルイズの部屋ではルイズによる
使い魔(レッド)調教作戦が実行されていた。
「いい、ばかレッド! これからあのメイドに会うときは必ず私に
一言話してからにしなさい!! 無断で会話でもしたら一週間ご飯抜きだからね!」
「べつにいい。シエスタにもらうから」
「このばかぁぁぁぁ!!、それじゃあ罰の意味がないじゃない!!」
しかし、さっきからこの調子。
ルイズによる躾はまったく戦果を挙げていなかった。
大体ルイズの聞きだした話によると、レッドは今までシエスタに養ってもらっており、
ご飯も服の洗濯などの雑用も手伝ってもらい、かなり親密に話し合える仲なのだと言う。
さすがに寝どこは自分で探していたらしいが、シエスタは前に「よかったら私のベッドで……」
などと、大胆不敵な発言を真っ赤になりながらぶっ放したのだと真顔でレッドは言った。
「……何が気に食わない? 俺はルイズの使い魔はちゃんとやってるぞ?」
レッドの言い分はもっともであった。
レッドは無愛想でちょいと生意気なところを除けば、実はルイズの言うことは
ちゃんと聞いていたし、守っていた。
掃除しろといわれたらやってるし、手伝ってもらっているが、洗濯もしている。
ご飯を抜きにされたら、ちゃんとルイズからはもらっていない。
この前も、レッドはルイズが授業でめちゃくちゃにしてしまったのだという教室
(マルマインでも自爆させたか? と疑うくらいひどい有様だった)を、ただ一人で丁寧に掃除していた。
「一応、おまえを守ってもやれるだろうし……」
手にしたモンスターボールを弾きながら言う。
「何が嫌なんだ、ルイズ?」
「あんたの、そのすかした態度と余裕が……嫌いなのよ」
ルイズは水を一粒ずつこぼすように、ポツリと言った。
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