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ルイズは小刻みに震えていた。
拳をきゅっと握り締め、先ほど打ち付けて腫れてしまった
額の痛みも忘れ、目の前にいるものを見下ろしながら、
子犬のように……いや、噴火寸前の火山のように震えていた。
「かっ……か……」
椅子から脱出したばかりのレッドは、ルイズの後ろでぽりぽりと頭をかいた。
その手には赤と白に染められた空っぽのボールが握られている。
「カッワイ――――イィ!!」
「ぴぃか!?」
ルイズは妙なテンションになってとうとう噴火した。
きゃーっと黄色い声を上げると、机の上で不思議そうに耳を振る黄色い生き物に全力で抱きつく。
黄色い生き物は苦しそうにもがき回るものの、体格の差というか、
もっと単純な大きさの違いから抜け出すことが出来ず、ルイズの力いっぱいの抱擁を受ける羽目になった。
「ねぇ、これなん……」
「ぢゅ――――――――――ッ!!!」
「あびばばばばば――――っ!!?」
そして、目を輝かせてレッドに振り向き何かを聞こうとする前に、
腕の中にいた生き物からすさまじい電撃を全身に貰い、つやのある髪を
ぼさぼささせて気絶した。
しばらくたって気絶から目覚めたルイズは、
ぼさぼさのちりちりになった髪に多大なショックを受け………………ベッドの中でひっそりと泣いた。
第三話
「ぽけもん?」
「…………ああこいつはポケモンだ」
髪の毛をくしで整えながら、ルイズはレッドの言葉に耳を傾けた。
相変わらずぶっきらぼうなレッドの話によると、今彼の手で撫でられて
ニコニコしている黄色くてかわいらしい生き物は『ぽけもん』という種族らしい。
聞いたことのない種族名に、ルイズは頭を傾けた。
「ねぇ、そのぽけもんって生き物は、どこに住んでるの? トリスティンじゃ見たことないわ」
「……あたりまえ……俺は、こいつらは、この世界の生き物じゃない」
「…………レッド、私をバカに」
「してないさ」
ルイズはふぅ吐息をついて肩を竦めて見せたが、レッドの顔を見て口を閉じた。
きっぱりと断ったレッドの顔は真剣で鋭かった。そして、思っていたよりかっこよかったのだ。
「俺のいた世界は月が一つ……それに図鑑がまともに作動しない。
状態を調べるのと手持ちのデータ以外、全部エラーだ。普通はどんな場所に行っても作動するのに、だ」
レッドがポケットから出した赤い箱を開き、中を覗いた。
ルイズもつられて覗き込んでみると、そこには砂嵐のような
見ていて気持ち悪くなるものと、ざざざっとした気持ちよくない雑音
が右に左に流れていた。
「なにこれ、気持ち悪い」
「……気持ち悪くてわるかったな……」
レッドは機嫌悪そうに顔をむっと歪め、図鑑をポケットに戻した。
それから、レッドは再びポケモンについて話を始めた。
なんでもポケモンはメイジで言う使い魔らしく、持とうと思えば誰でも
持てるものらしい。数が多く、見つかっているだけで250種類いて、
日夜研究者がこの不思議な生態について研究しているのだとか。
このポケモンはその一匹、『ピカチュー』というらしい。
「……ちがう、ピカチュ“ウ”だ」
「あ、ごめん」
ピカチュウはレッドの肩に飛び乗り、頬を擦り付けている。
レッドはややうんざりしたのか、うっとうしそうにため息をつくと
目を半開きにさせてピカチュウの額にあの赤白ボールをちょん、と当てる。
次の瞬間、ピカチュウは白い光に包まれて……消えた?
「え? あれっ!? あの子はどこに?」
「そこ、そこにいる」
レッドはルイズにボールを放り投げ、指差しながら言った。
ルイズはあたふたしながらそれを受け取ると、眉をひそめた。
「この中にいるの? でもおかしいわよ。大きさが違いすぎる」
その通りである。ピカチュウの大きさはルイズの膝より少し高いだった。
対して今ルイズの両手に乗っている赤白のボールは、文字通り手のひら
サイズしかない。誰の目から見ても質量的にありえないのだ。
「『モンスターボール』っていってな、ポケモンたちは普段それに入ってる。
まれに外にでてトレーナーの後ろをくっついて来る奴もいるけどな……まぁ、
ためしに真ん中のスイッチ、おしてみるといい」
ルイズは首をかしげ、ボールを裏返した。
丁度赤と白の境界となっている黒い線の途中に、丸い突起を見つけた。
「これ?」
「…………」
レッドは黙ってうなづいた。どうやら、あたりのようだ。
ルイズはどきどきしながらも、言われるがままに突起の中心を押した。
規制でなく、なぜか書き込めない…なぜ?
「ぴっかぁ!」
「わ! ホントに出てきた!!」
直後、かわいらしい泣き声と共にピカチュウがボールから飛び出してきた。
ルイズは驚きにのけぞって、そのままベッドに倒れこんだ。
「すごいすごい! ねぇ、どうなってるのこれ?」
「…………」
ベッドから飛び上がり、嬉々としてレッドに詰め寄る。
レッドは何も答えず、代わりにおどけるように首だけをかしげて見せた。
「他にもいるの? みせてみせて!!」
「ちょ……まて、おい!」
ルイズは子供のようにはしゃぎ、レッドの腰についているほかのボールへと
遠慮なしに手を伸ばしてきた。レッドはルイズの方を抑えて何とか引き剥がす。
「もう、意地張ってないで見せなさいよ! さっきギーシュをやっつけたの、
ピカチュウじゃないんでしょ? ……って、な、なに赤くなってんのよ!!」
レッドは帽子を深くかぶり、すねたようにぷいと背を向けた。
そばにいたピカチュウが口元を押さえ、ぴぴぴと笑っている。
「…………他の奴は時期がきたら見せる。……ここじゃ絶対無理、狭すぎる」
ため息混じりに言いながら、レッドは乱暴に椅子に腰掛けた。
そして、未だに小さく笑っているピカチュウをじっと睨む。
「ちゃ~……」
びくッと肩をふるわせ、全身の毛を逆立てながら苦笑いしてぽりぽりと頭をかく
ピカチュウを見て、じつに感情豊かな生き物ね。とルイズは思った。
「……それにしても、何も聞いてこないのね」
「…………?」
「決まってるじゃない! この世界のこと、私のこと」
「シエスタ……」
ポツリと口から漏らした言葉に、ルイズはバシッと固まった。
表情は一瞬にして凍りつき、やっと元通りに整ってきた桃髪が、
長年掛けて作られたツララのように、どこぞの蜂のニードルのように鋭くとがった。
その名前はあの厨房にいたメイド。主人(ルイズ)より先に使い魔(レッド)の
名前を知り、会話していた平民の女。
「……大抵のこと、あいつに教えてもらった」
ぴきっ……ぴききっ!
なにかが硬化して行く音、ルイズの体内からそれは響いていた。
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ルイズは小刻みに震えていた。
拳をきゅっと握り締め、先ほど打ち付けて腫れてしまった
額の痛みも忘れ、目の前にいるものを見下ろしながら、
子犬のように……いや、噴火寸前の火山のように震えていた。
「かっ……か……」
椅子から脱出したばかりのレッドは、ルイズの後ろでぽりぽりと頭をかいた。
その手には赤と白に染められた空っぽのボールが握られている。
「カッワイ――――イィ!!」
「ぴぃか!?」
ルイズは妙なテンションになってとうとう噴火した。
きゃーっと黄色い声を上げると、机の上で不思議そうに耳を振る黄色い生き物に全力で抱きつく。
黄色い生き物は苦しそうにもがき回るものの、体格の差というか、
もっと単純な大きさの違いから抜け出すことが出来ず、ルイズの力いっぱいの抱擁を受ける羽目になった。
「ねぇ、これなん……」
「ぢゅ――――――――――ッ!!!」
「あびばばばばば――――っ!!?」
そして、目を輝かせてレッドに振り向き何かを聞こうとする前に、
腕の中にいた生き物からすさまじい電撃を全身に貰い、つやのある髪を
ぼさぼささせて気絶した。
しばらくたって気絶から目覚めたルイズは、
ぼさぼさのちりちりになった髪に多大なショックを受け………………ベッドの中でひっそりと泣いた。
第三話
「ぽけもん?」
「…………ああこいつはポケモンだ」
髪の毛をくしで整えながら、ルイズはレッドの言葉に耳を傾けた。
相変わらずぶっきらぼうなレッドの話によると、今彼の手で撫でられて
ニコニコしている黄色くてかわいらしい生き物は『ぽけもん』という種族らしい。
聞いたことのない種族名に、ルイズは頭を傾けた。
「ねぇ、そのぽけもんって生き物は、どこに住んでるの? トリスティンじゃ見たことないわ」
「……あたりまえ……俺は、こいつらは、この世界の生き物じゃない」
「…………レッド、私をバカに」
「してないさ」
ルイズはふぅ吐息をついて肩を竦めて見せたが、レッドの顔を見て口を閉じた。
きっぱりと断ったレッドの顔は真剣で鋭かった。そして、思っていたよりかっこよかったのだ。
「俺のいた世界は月が一つ……それに図鑑がまともに作動しない。
状態を調べるのと手持ちのデータ以外、全部エラーだ。普通はどんな場所に行っても作動するのに、だ」
レッドがポケットから出した赤い箱を開き、中を覗いた。
ルイズもつられて覗き込んでみると、そこには砂嵐のような
見ていて気持ち悪くなるものと、ざざざっとした気持ちよくない雑音
が右に左に流れていた。
「なにこれ、気持ち悪い」
「……気持ち悪くてわるかったな……」
レッドは機嫌悪そうに顔をむっと歪め、図鑑をポケットに戻した。
それから、レッドは再びポケモンについて話を始めた。
なんでもポケモンはメイジで言う使い魔らしく、持とうと思えば誰でも
持てるものらしい。数が多く、見つかっているだけで250種類いて、
日夜研究者がこの不思議な生態について研究しているのだとか。
このポケモンはその一匹、『ピカチュー』というらしい。
「……ちがう、ピカチュ“ウ”だ」
「あ、ごめん」
ピカチュウはレッドの肩に飛び乗り、頬を擦り付けている。
レッドはややうんざりしたのか、うっとうしそうにため息をつくと
目を半開きにさせてピカチュウの額にあの赤白ボールをちょん、と当てる。
次の瞬間、ピカチュウは白い光に包まれて……消えた?
「え? あれっ!? あの子はどこに?」
「そこ、そこにいる」
レッドはルイズにボールを放り投げ、指差しながら言った。
ルイズはあたふたしながらそれを受け取ると、眉をひそめた。
「この中にいるの? でもおかしいわよ。大きさが違いすぎる」
その通りである。ピカチュウの大きさはルイズの膝より少し高いだった。
対して今ルイズの両手に乗っている赤白のボールは、文字通り手のひら
サイズしかない。誰の目から見ても質量的にありえないのだ。
「『モンスターボール』っていってな、ポケモンたちは普段それに入ってる。
まれに外にでてトレーナーの後ろをくっついて来る奴もいるけどな……まぁ、
ためしに真ん中のスイッチ、おしてみるといい」
ルイズは首をかしげ、ボールを裏返した。
丁度赤と白の境界となっている黒い線の途中に、丸い突起を見つけた。
「これ?」
「…………」
レッドは黙ってうなづいた。どうやら、あたりのようだ。
ルイズはどきどきしながらも、言われるがままに突起の中心を押した。
「ぴっかぁ!」
「わ! ホントに出てきた!!」
直後、かわいらしい泣き声と共にピカチュウがボールから飛び出してきた。
ルイズは驚きにのけぞって、そのままベッドに倒れこんだ。
「すごいすごい! ねぇ、どうなってるのこれ?」
「…………」
ベッドから飛び上がり、嬉々としてレッドに詰め寄る。
レッドは何も答えず、代わりにおどけるように首だけをかしげて見せた。
「他にもいるの? みせてみせて!!」
「ちょ……まて、おい!」
ルイズは子供のようにはしゃぎ、レッドの腰についているほかのボールへと
遠慮なしに手を伸ばしてきた。レッドはルイズの方を抑えて何とか引き剥がす。
「もう、意地張ってないで見せなさいよ! さっきギーシュをやっつけたの、
ピカチュウじゃないんでしょ? ……って、な、なに赤くなってんのよ!!」
レッドは帽子を深くかぶり、すねたようにぷいと背を向けた。
そばにいたピカチュウが口元を押さえ、ぴぴぴと笑っている。
「…………他の奴は時期がきたら見せる。……ここじゃ絶対無理、狭すぎる」
ため息混じりに言いながら、レッドは乱暴に椅子に腰掛けた。
そして、未だに小さく笑っているピカチュウをじっと睨む。
「ちゃ~……」
びくッと肩をふるわせ、全身の毛を逆立てながら苦笑いしてぽりぽりと頭をかく
ピカチュウを見て、じつに感情豊かな生き物ね。とルイズは思った。
「……それにしても、何も聞いてこないのね」
「…………?」
「決まってるじゃない! この世界のこと、私のこと」
「シエスタ……」
ポツリと口から漏らした言葉に、ルイズはバシッと固まった。
表情は一瞬にして凍りつき、やっと元通りに整ってきた桃髪が、
長年掛けて作られたツララのように、どこぞの蜂のニードルのように鋭くとがった。
その名前はあの厨房にいたメイド。主人(ルイズ)より先に使い魔(レッド)の
名前を知り、会話していた平民の女。
「……大抵のこと、あいつに教えてもらった」
ぴきっ……ぴききっ!
なにかが硬化して行く音、ルイズの体内からそれは響いていた。
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