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「魔法使いと召喚師-3」(2008/01/10 (木) 02:58:33) の最新版変更点
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「使い魔の仕事を自分の使い魔にたらい回しにするのは、正直どうかと思うのよ、クラレット」
二度寝の悪魔というのは実在すると思う。
たとえばどこぞのメイジもどきの偽使い魔とか。
~魔法使いと召喚師~
参考までに……、ルイズの着替えは本人によるものである。
クラレットの「妹ができたみたい」という発言に、少しばかり傷ついたからだ。
* * *
「無駄に楽しそうよね、あんた」
対して、言の主は酷く機嫌が悪かった。
二度寝している間に、『貴族令嬢を暗殺から救った』ということになっていたからである。
本来なら喜ぶべきなのかもしれない。何しろ彼女の評価は『ゼロ』である。
が、しかし、これを広めたのはキュルケ・フォン・ツェルプストーなのだと言われれば
素直に受け取れない。
絶対、何かロクでもないことをたくらんでいる。使い魔略奪とか……。
――使い魔にまで『ゼロ』の烙印を押させるつもり?
食堂でのキュルケの言葉を思い出す。
一理ある。一理あることが悔しい。
『メイジの実力を見るときは使い魔を見よ』
それはメイジの常識。
裏を返せば、メイジの実力が既知ならば使い魔の実力も知れるということ。
『ゼロ』
最悪の二つ名。
ゼロのルイズの使い魔が、ゼロでない道理はない。
小さな双肩には、己と使い魔、二人分の名誉がかかっている。
だから、止められなかった。
「ミス・ヴァリエール!」
止めるわけにはいかなかった。
「考え事をする暇があるのなら、あなたにやってもらいましょう」
そして……、止まる気もなかった。
渾身の魔力、裂帛の気合、主としての矜持、その他諸々。
こめられるモノは全て杖に込める。
サモン・サーヴァントも、コントラクト・サーヴァントも成功した。
大丈夫。今の私はもう『ゼロ』じゃないのだから。
いざ、『錬金』!
* * *
「「はぁ……」」
破壊された教室に響くのは二人分のため息である。
「なるほど……、これが『ゼロ』の二つ名の真相ですか……」
成功の確率がゼロ。実にわかりやすい。
2回の成功くらいでは埋め合わせられない失敗の山に、またひとつ追加。
今回の失敗は忘れられそうにない。
毛色が違うとはいえ、自身の使い魔は術者。
そしてその使い魔の少女――クラレットは、失敗の直後、誰よりも早く主の下に駆け寄り
至近で爆風を浴びたルイズとミス・シュヴルーズを、召喚獣を使って治療したのだった。
『メイジの実力を見るときは使い魔を見よ』
それはメイジの常識。
確かに対応は腹が立つくらい完璧だった。
これでクラレットを「無能《ゼロ》」と評する者はいなくなるだろう。
だけど、それだけ。逆に肩の荷が増えたかもしれない。
というか、使い魔に愛想尽かされるかも。
「失敗というより暴発ですよね、これ」
もっとも、心配されていた当の使い魔は、まったく逆の感想を持っていた。
異世界からの侵略を防ぐ結界の内部、それも高度な儀式の場に魔法をねじ込んだ存在である。
自分も雑念を加えてしまったとはいえ、並の使い手ではないと思っていた。
が、開幕から爆発はさすがに予想外である。
キュルケが教えてくれなければ、自分も被害者の仲間入りをしていたに違いない。
まったくどこまで規格外なのだ、この小さな主は……。
わかったことはそれだけではなかった。
自分の故郷では才能の証であるソレも、この世界では失敗以外の表現がないということ。
そして、故郷の話を伝えたとしても、ルイズには何の慰めにもならないこと。
情けない。自分は護衛獣になったのに、主を癒す言葉さえ持っていないのだ。
「軽蔑した?」
「いえ……身に覚えがないわけでもないので……」
だから、嘘をついた。
せめてこれ以上傷を増やさないように。
「そっか……」
会話はそれっきり。
結局、掃除が終わったのは昼食の時間になってからだった。
* * *
学院長室では二人の教師が額を突き合わせていた。
ハゲでおなじみの『炎蛇のコルベール』と、セクハラでおなじみのオールド・オスマンである。
「始祖ブリミルの使い魔『ヴィンダールヴ』に行き着いた、とそういうわけじゃね?」
スケッチのルーン文字と『始祖ブリミルの使い魔達』に描かれたルーンは、同一のものだった。
「して、彼女、ミス・クラレット自身はメイジなのだね?」
「本人は召喚師と名乗っております。
サモン・サーヴァントを極端に発展させ、複数の使い魔を使い分ける術と……」
「実際は?」
「今日連れていた使い魔は、昨日召喚したものとは違うようでした」
「まさに『ヴィンダールヴ』じゃのお」
あらゆる獣を従える神の笛。わかりやすいことこの上ない。
老人にとって、問題は別のところにあった。
「のう、コルベール君」
「はい?」
「ミス・ヴァリエールは努力家だと聞いておる」
「えぇ、彼女は学年一の努力家ですが、それが何か……?」
「この世のどこにも、彼女に魔法を教えられる者はおらん」
使い魔の属性は、メイジの属性と一致する。
ならば、同じ使い魔を持つ始祖ブリミルとルイズは同じ属性ということになる。
――即ち、『虚無』
「……努力とは実るものですよ、オールド・オスマン」
中年の教師は、偉大なる老メイジの言いたいことを理解した。
理解したうえで搾り出した……。
ありえないことが起こった時点で、「ありえない」という言葉は意味を失う。
「よしんば実ったとしても、それがもたらすのは戦乱じゃよ。
コルベール君。君は自分の教え子を戦地へ送りたいのかね?」
コルベールはその問いに答えることが出来なかった。
答えられるわけがなかった。
※参考
暴発
本来の設定では、「呼び出すつもりの無い召喚獣を喚んでしてしまうこと」(サモンナイト3より)
ただし、ここでは、
「たまたま拾ったきれいな石が、あたしの手の中で光を放ち、街をメチャクチャにしちゃった」
という、2の主人公の体験談が元。
リィンバウムでこれを無意識にやらかすと、貧民街の孤児が名門召喚師の後取りになるくらい人生変わります。
護衛獣
召喚師の身を守るためや身の回りの世話をするために召喚された召喚獣。
歴代のシリーズを見る限り、まともに護衛してるのは少数派。
最大のピンチシーンで見せ場をもらうヤツらでもあったり。
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「使い魔の仕事を自分の使い魔にたらい回しにするのは、正直どうかと思うのよ、クラレット」
二度寝の悪魔というのは実在すると思う。
たとえばどこぞのメイジもどきの偽使い魔とか。
~魔法使いと召喚師~
参考までに……、ルイズの着替えは本人によるものである。
クラレットの「妹ができたみたい」という発言に、少しばかり傷ついたからだ。
* * *
「無駄に楽しそうよね、あんた」
対して、言の主は酷く機嫌が悪かった。
二度寝している間に、『貴族令嬢を暗殺から救った』ということになっていたからである。
本来なら喜ぶべきなのかもしれない。何しろ彼女の評価は『ゼロ』である。
が、しかし、これを広めたのはキュルケ・フォン・ツェルプストーなのだと言われれば
素直に受け取れない。
絶対、何かロクでもないことをたくらんでいる。使い魔略奪とか……。
――使い魔にまで『ゼロ』の烙印を押させるつもり?
食堂でのキュルケの言葉を思い出す。
一理ある。一理あることが悔しい。
『メイジの実力を見るときは使い魔を見よ』
それはメイジの常識。
裏を返せば、メイジの実力が既知ならば使い魔の実力も知れるということ。
『ゼロ』
最悪の二つ名。
ゼロのルイズの使い魔が、ゼロでない道理はない。
小さな双肩には、己と使い魔、二人分の名誉がかかっている。
だから、止められなかった。
「ミス・ヴァリエール!」
止めるわけにはいかなかった。
「考え事をする暇があるのなら、あなたにやってもらいましょう」
そして……、止まる気もなかった。
渾身の魔力、裂帛の気合、主としての矜持、その他諸々。
こめられるモノは全て杖に込める。
サモン・サーヴァントも、コントラクト・サーヴァントも成功した。
大丈夫。今の私はもう『ゼロ』じゃないのだから。
いざ、『錬金』!
* * *
「「はぁ……」」
破壊された教室に響くのは二人分のため息である。
「なるほど……、これが『ゼロ』の二つ名の真相ですか……」
成功の確率がゼロ。実にわかりやすい。
2回の成功くらいでは埋め合わせられない失敗の山に、またひとつ追加。
今回の失敗は忘れられそうにない。
毛色が違うとはいえ、自身の使い魔は術者。
そしてその使い魔の少女――クラレットは、失敗の直後、誰よりも早く主の下に駆け寄り
至近で爆風を浴びたルイズとミス・シュヴルーズを、召喚獣を使って治療したのだった。
『メイジの実力を見るときは使い魔を見よ』
それはメイジの常識。
確かに対応は腹が立つくらい完璧だった。
これでクラレットを「無能《ゼロ》」と評する者はいなくなるだろう。
だけど、それだけ。逆に肩の荷が増えたかもしれない。
というか、使い魔に愛想尽かされるかも。
「失敗というより暴発ですよね、これ」
もっとも、心配されていた当の使い魔は、まったく逆の感想を持っていた。
異世界からの侵略を防ぐ結界の内部、それも高度な儀式の場に魔法をねじ込んだ存在である。
自分も雑念を加えてしまったとはいえ、並の使い手ではないと思っていた。
が、開幕から爆発はさすがに予想外である。
キュルケが教えてくれなければ、自分も被害者の仲間入りをしていたに違いない。
まったくどこまで規格外なのだ、この小さな主は……。
わかったことはそれだけではなかった。
自分の故郷では才能の証であるソレも、この世界では失敗以外の表現がないということ。
そして、故郷の話を伝えたとしても、ルイズには何の慰めにもならないこと。
情けない。自分は護衛獣になったのに、主を癒す言葉さえ持っていないのだ。
「軽蔑した?」
「いえ……身に覚えがないわけでもないので……」
だから、嘘をついた。
せめてこれ以上傷を増やさないように。
「そっか……」
会話はそれっきり。
結局、掃除が終わったのは昼食の時間になってからだった。
* * *
学院長室では二人の教師が額を突き合わせていた。
ハゲでおなじみの『炎蛇のコルベール』と、セクハラでおなじみのオールド・オスマンである。
「始祖ブリミルの使い魔『ヴィンダールヴ』に行き着いた、とそういうわけじゃね?」
スケッチのルーン文字と『始祖ブリミルの使い魔達』に描かれたルーンは、同一のものだった。
「して、彼女、ミス・クラレット自身はメイジなのだね?」
「本人は召喚師と名乗っております。
サモン・サーヴァントを極端に発展させ、複数の使い魔を使い分ける術と……」
「実際は?」
「今日連れていた使い魔は、昨日召喚したものとは違うようでした」
「まさに『ヴィンダールヴ』じゃのお」
あらゆる獣を従える神の笛。わかりやすいことこの上ない。
老人にとって、問題は別のところにあった。
「のう、コルベール君」
「はい?」
「ミス・ヴァリエールは努力家だと聞いておる」
「えぇ、彼女は学年一の努力家ですが、それが何か……?」
「この世のどこにも、彼女に魔法を教えられる者はおらん」
使い魔の属性は、メイジの属性と一致する。
ならば、同じ使い魔を持つ始祖ブリミルとルイズは同じ属性ということになる。
――即ち、『虚無』
「……努力とは実るものですよ、オールド・オスマン」
中年の教師は、偉大なる老メイジの言いたいことを理解した。
理解したうえで搾り出した……。
ありえないことが起こった時点で、「ありえない」という言葉は意味を失う。
彼女は、その「ありえない」生徒なのだろう。
「よしんば実ったとしても、それがもたらすのは戦乱じゃよ。
コルベール君。君は自分の教え子を戦地へ送りたいのかね?」
コルベールはその問いに答えることが出来なかった。
答えられるわけがなかった。
※参考
暴発
本来の設定では、「呼び出すつもりの無い召喚獣を喚んでしてしまうこと」(サモンナイト3より)
ただし、ここでは、
「たまたま拾ったきれいな石が、あたしの手の中で光を放ち、街をメチャクチャにしちゃった」
という、2の主人公の体験談が元。
リィンバウムでこれを無意識にやらかすと、貧民街の孤児が名門召喚師の後取りになるくらい人生変わります。
護衛獣
召喚師の身を守るためや身の回りの世話をするために召喚された召喚獣。
歴代のシリーズを見る限り、まともに護衛してるのは少数派。
最大のピンチシーンで見せ場をもらうヤツらでもあったり。
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