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「結婚なんて!オラまだ心の準備が…。今日始めて会ったばかりじゃないの!!一目ぼれなんて困るわ!」
「結婚じゃなぁ~い!!」
シエスタが震えながらこっちを見ている。周りの貴族たちがひそひそ声で話す。
「シンちゃんなんてことを…貴族様を怒らせるなんて…!」
「おい本気かよギーシュの奴…。あんな子供相手に決闘とか本気か?」
「あれはもう貴族と、いや男としてどうかと…ヒソヒソ。」
「おまえ達も最後まで話を聞けェーーーーーーー!!!!」
ハァハァゼェゼェと肩で息をしている。やっと落ち着いたのか口を開く。
「いくらなんでもだ。子供相手に暴力ふるうなんて名高き貴族のやる事じゃないよ。
だが!だからといっていくら子供でも貴族を舐めた行動をとるのは許しておけないな!それこそ貴族の沽券に関わるというものだ。」
そこでだ、とギーシュが待ちかねたように言う。
「君とボクとで殴り合いにならない、安全で簡単なゲームをしようじゃないか。それでボクが勝ったら君がボクに対し、
『申し訳ありませんでしたギーシュ様。もう二度とあなたに逆らうことは致しません』と誓ってくれればいい。
君が勝ったらボクが君の言うことを一つ、何でも聞いてあげよう。」
「おお!ゲームはやりたいゾ~。」
一方マリコルヌがギーシュに駆け寄る。
「ずいぶん回りくどくないか?ギーシュ。」
「まあ、そりゃ少しばかり魔法で思い知らせてやれば簡単だよ。それができないからがゲームという打開策があるんじゃないか。
ほら、もう彼女は気付いたようだ。」
シエスタがおろおろしながらしんのすけに駆け寄る。
「大丈夫なんですか?貴族様は魔法を使うんですよ?負けたら二度と逆らわないと言うことはずっと自分言いなりになれと
言ってる様なものなんですよ?」
だがしんのすけには負けない自信があるのかまるで物怖じしていない。
「フーン。その時はその時だゾ。」
ここはヴェストリの広場。
「それで?何か提案はあるかい?」
「ほい!」
しんのすけが手を上げた。
「どっちが小便を遠くまで飛ばせるか競争!その名の通りオシッコの飛距離で勝負を…。」
「却下だ!!貴族としてそんな下品な戦いは認められない!!」
「じゃあキンちゃんの仮装大賞!お互いが仮装して周りの人の出した得点で審査を…。」
「難しいと思うなそれ。」
「鬼のいないかくれんぼは?ゆったりした時間を提供するゾ!」
「永久に勝負つかんだろ!」
「じゃあカタツムリ競馬!芝50メートル(こっちではメイルだっけ?)で一番最初にたどり着きそうなカタツムリを賭けるゲーム!
ちなみに一番人気は一秒間に3センチ(サント)進めると速度に定評のあるミニミサエショーグン…。」
「日がくれちまうよそんな勝負!!せめて30サントにしろ!」
しんのすけがいい加減焦れてしまった。
「もーワガママだなー。じゃあなにがいいって言うの!?」
「まともで今日中に勝負がつきそうな奴で頼む!」
しんのすけは本気で考えこむ。そしてピンと閃いたのか、目を輝かせている。
「じゃあこんなのはどう?『お宝争奪戦』って言うよしなが先生が考えた遊びなんだけど、
警察役と怪盗役に分かれて何か宝を用意してそれを制限時間内に全部奪えれば怪盗、
それを守りきれば警察役の勝ちってゲームなんだけど。」
ギーシュもそのゲームには興味をもったのか、やっと乗り気で口を挟んできた。
「ほう、じゃあそれを君にハンデが行くようにルールを調整すればいいね。」
そう言った時、ギーシュの足元の土が盛り上がる。
ポコッと出てきたのは大きなモグラだった。
「おお!でっかいモグラ!」
「おお、ヴェルダンテ!もうお望みのものを持ってきてくれたのかい?君はなんて頼りになる使い魔なんだろう!
ああ、もっとそばまでおいで!可愛がってあげよう。スリスリ。」
そこまでやってギーシュはしんのすけが『風間君の家に遊びに行った時、おどかしてやろうとインターホン鳴らさずに
入ってみたら、もえPの衣装を着て遊んでた風間君がいた。』と言った感じの目をしてるのに気がついた。
「な、なんだその目は!話を続けるぞ!」
ギーシュが説明を始める。
「ここに10本の旗と砂時計がある!この砂時計はきっかり30分計ることが出来るだろう。」
と、ギーシュはドッカと大き目の砂時計を前においた。
「制限時間は30分!ボクが怪盗役、君が警察役になってその10本の旗をかけて奪い合う!」
と言ってしんのすけにしんのすけの腰から下くらいのサイズの旗が渡される。
「おお、軽いゾ。これくらいなら10本でもなんなく持ち歩けるね。」
ギーシュは後にこうルールを付け足した。
・奪う際に、ギーシュはしんのすけに殴る、蹴るなどの攻撃を加えてはならない。
・制限時間内にギーシュが10本全部とるまでなら何度でも取り返していい。
・制限時間内に10本全て奪えなかったら自動的にしんのすけの勝ち。
・しんのすけは旗を自分で持っていることも、どこかに隠すことも自由である。
・一応、しんのすけはギーシュに攻撃するのは自由。その際、ギーシュが降参、再起不能になったら
自動的にしんのすけの勝ち。
・お互い、メイジも平民もどちらの味方もしてはならない。
・学院の敷地内ならどこに行ってもかまわない。スタートはヴェストリの広場。
・旗は燃やしたり、トイレに流すなどの破棄は一切認めていない。
「これでいいかな?」
「おお!おもしろそう!いーよ!別に!」
「後、僕はメイジだから、魔法を使ってもかまわないね?そのかわり君もどんな攻撃をしても
僕は文句を言わない。それでいいかな?」
「いいとも~。」
「ちょっと待ちなさいシンノスケ!!」
そう言って走ってきたのはルイズだ。血相を変えて走ってきたのか肩で息をしている。
「アンタ!ギーシュと決闘するですって!?」
「おお、知ってたの。うん決闘だって。」
「やめなさいよ!平民がメイジに勝てるわけないし、そもそも貴族の決闘は禁止されてるはずでしょ!?」
「心配ないさルイズ。貴族と平民の決闘は禁止されてないし、子供相手だからルールを変更したから。」
そうしてルイズに決闘のルールを伝える。
「悪くないルールだけど待って!負けたら二度と逆らわないって、実質シンノスケを配下にするようなモノじゃない!
アイツは私の使い魔よ!何勝手なこと言ってるのよ!」
「いいと言ったのは彼だよ。僕は本人の意思を尊重する。」
そしてその様子を鋭い目で見ている者が一人。
青髪にメガネ、人形のような印象を受ける整った顔立ち、自分の身長より大きな杖の少女。
彼女は普段は何にも興味を示さず本ばかり読んでいるのだが、今はこの騒動を見ている。
「あら?タバサ、どうしたの珍しいわね。本以外に興味を示すなんて。」
そう言ったのは赤髪に褐色の肌、麗しい美貌にグラマラスなスタイルが目立つ親友のキュルケだ。
「ああ、あのルイズが呼び出した使い魔じゃない。あら、思いのほかかわいい顔してる使い魔なのね。」
「・・・・・・。」
しかしタバサは何も言わない。
「なになに?なにか決闘がどうのと言ってるけど。あの子大丈夫かしらね?貴族相手に。」
「…彼は。」
「え?なに?どうしたの?」
タバサが口を開く。キュルケすら動揺するほどに珍しいことなのだろう。
「変わり者。これまでに会ったことないような。でも何か、大きな何かを感じる。それは強さかどうかわからないけど。」
「へえ、そりゃ楽しみね。アナタの目は確かだから。…タバサ?」
キュルケがタバサの顔を直視し、訝しげに顔を少し歪めた。
「…何?」
「い、いえ、なんでもないわ。気のせいだったみたい。いつもどおりのかわいい子ね。」
そう言ってキュルケはタバサの隣に座り、見物を始めた。
「だいじょぶだいじょぶ、オラばら組のみんなと戦った時もオラ達ひまわり組が勝ったし。
ばら組の捕田 羽田朗(とった はたろう)君が出てきたときは少し苦労したけどネネちゃんの活躍で
バッチリ勝利したから!しかしばら組ってホント何人いるんだろう?」
「それアンタの手柄じゃないんじゃないの!」
それにルイズが心配してる要素はまだある。
(相手は貴族と平民の決闘は禁止されてないなんてルールの網目をくぐるような奴よ…。
このルールにも何か網目があるんじゃないでしょうね…。)
しかしルイズの視線を気にもせずギーシュはヴェルダンテから受け取った10本の旗を
しんのすけに渡して砂時計を持つ。
「ひっくり返したらゲーム開始だ。僕は開始から3分経ってから動く。さあ用意はいいね?」
「おお!準備かんちょー!」
「レディー…。」
「ゴーッ!!」「ひろみ!」
しんのすけが相槌とともに猛ダッシュする。
子供の身体能力より多く優れているしんのすけ持ち前のスピードで。
「は、速い!!なんてスピードだ!!」
しんのすけはヴェストリの広場から逃れ、学院内に入る。
「それが基本の動きだ。隠すのが自由な以上、隠しやすい建物の中に入るのは当然の行動。
だから学院の敷地内も行動可能にしたんだからね。」
そう言ってギーシュはもう一つの3分用砂時計をみる。
「そろそろ3分経つ。では僕も行動をスタートしよう。」
ギーシュが落ちきった3分砂時計をしまい、薔薇の造花に見立てた杖を振るう。
振るった杖からは花びらが舞い、三体の人影と化した。
しかしそれは女性的なフォルムをしているもののその身体は青銅でできていた。
「『ワルキューレ』。君達の出番だ。」
ギーシュの合図とともにワルキューレは動き出す。
「マリコルヌ、待機して時間計測と見張りを頼んだよ。30分たったらこのホラ貝を吹いてくれ。
誰かが抜け出したら君の使い魔のクヴァーシルを飛ばして知らせてくれればいい。
それじゃあまた後で。」
ギーシュがワルキューレを従えて学院に走っていった。
「…ホラ貝なんてよく持ってたな。…てかちゃんと洗ったんだろうな!!」
もちろん!という声が遠くから聞こえた。
「ワルキューレ、この付近を各自捜すぞ。」
1体目はルイズの爆発で爆破された教室、2体目は図書室、3体目は付近の廊下、
ギーシュ本人はその反対側を探す。
「甘い甘い。どこに隠そうが僕にはお見通しさ。」
ギーシュは最初に食堂で旗を見つけた。
しんのすけ 9-1 ギーシュ
ギーシュが食堂を後にして、しばらく歩く。
「開始から6分。3分もあれば医務室とかにも隠すことができるかな?」
そう言ってギーシュが医務室に向かう。
しかし突き当たりまで行った時、後ろから小さな足音が。
しんのすけの足音だ。
「あ、やべ。」
しんのすけは背中に2本の旗を持って逃げている。
(2本…。隠したのは8本で残る隠し場所は7箇所か!)
「逃がさないよ!!」
ギーシュがしんのすけを追う。しかしダメだ。しんのすけのスピードが速すぎる。
イタズラしてキレたみさえから逃れるためにつけた特異な身体能力。
温室育ちのギーシュに追いつけるような代物ではないのだ。
やっとギーシュがしんのすけを捕らえようとしたとき、しんのすけが壁を一回蹴って上にジャンプ。
上からぶら下がっている照明を掴んでギーシュの背後に飛ぶ。
「う、うわわッ!!」
急ブレーキしても急に真後ろには発進できずしんのすけが「ほっほーい!ここまでおーいで!」と
自慢の尻を軽くペチペチと挑発的に叩いているのを見るばかりだった。
「このッ!待て使い魔!!」
しかし角を曲がれば今度はしんのすけが
「さーて、せっかく尻を出したことだしここでとうとうみなさんお待ちかねのサービスショット!!」
ケツだけせいじーん!!ブリブリ~!!ブリブリ~!!
しんのすけがとうとう開始5話目にして十八番のケツだけ星人を見せながらまた角をさっそうと逃げていく
姿だった。
「クソッ!なんだあの身のこなし…。油断も一気に吹っ飛んじゃったよ。」
ギーシュが最初にしんのすけを見かけたポイントに戻る。
「やっぱり『仕掛け』を用意しておいてよかった…。この辺りかな?」
ギーシュはしんのすけが出てきた方向の道を進み、部屋に入る。
「ほーら!見つけた!!」
しんのすけ 8-2 ギーシュ
「へへん!所詮子供!僕のこの作戦には勝てまい!最もこのゲームに応用するのは初めてだけどね!
ほーら!もう二本もいただきだ!」
爆破された教室と図書室に送っていたワルキューレが一本ずつ持ってくる。
しんのすけ 6-4 ギーシュ
「さて、今度こそ医務室だな。」
続いて医務室を目指そうとするギーシュだった。
「おお、本棚の旗がなくなってるゾ…。」
しんのすけは図書室の本棚の間にさした旗がないのに気がついた。
「うーん。けっこうやるじゃん。こりゃこっちも一つ打って出たほうがよさそうですな。…お?」
しんのすけが床を見る。
床には本が散らばっている。まるで空き巣に入られた後のような状態だった。
「うーん。台風一過ってやつですな。でもおかたしするのはめんどうくさいから
ひとまずここを離れよーっと。」
でも誰がこんなことを?としんのすけが考える。
「う~んなんでだろう?なにかヒントは…。あれ?」
そこまで考えてしんのすけは『ある事』に気がついた。ギーシュの行動に関するある不自然な点。
だがまだ仮説の段階。なにか決定的な何かを知る方法はないか?
「考えろ考えろ…。アクション仮面も敵の罠に嵌った時知恵を使って切り抜けたんだゾ…。何か方法は…。
…そーだ!いい事考えちゃった!ついでにちょっと小粋なお茶目もかましておきますか。あはあはあは~。」
そう言って図書室を後にした。
「残る隠し場所は4箇所!彼自身が持ってるのは二つ!開始から14分!やはりこの勝負楽に終わりそうだ!」
ギーシュが余裕を見せながら廊下を走る。
「ここだね!これで5点目…!え?」
確かに旗はあった。だが流石のギーシュもここまで不自然な旗の置き方には警戒した。
旗がしなった細い棒の上におかれて、その棒の先にしなったままになるよう縄で固定してある。
どこからかゴリゴリと言う音が聞こえる。
「おい、コレまさか…。」
ギーシュの予想通りである。この音はしんのすけが棒を曲げるためのロープをどこからか持ってきたノコギリで
ブツンッと切ろうとする音だったのだ。
戻った勢いで旗を窓から遠くに吹っ飛ばすための。
「あんな仕組みいつ作ったんだ!?」
「工作は得意なんだゾ!」
その声は医務室のとなりから聞こえてきた。しんのすけはとなりの部屋からロープを切断してるらしい。
完全に切れたロープは固定していた棒を真っ直ぐに戻し、その勢いで二つの旗が吹っ飛んだ。
一つは壁にぶつかってそのまま下の床に落ちていく。もう一つはうまい具合に窓から他の部屋に入っていった。
あっけに取られたギーシュが口を開く。
「あれがあんな子供の技能なのか?しかしなぜこんな仕掛けを!?」
なぜこんな仕掛けを作ったのか?後に語られる『ある事』を確認するため+そのために旗を犠牲にしないためだ。
どうして隣の部屋からロープを切っているのか?『とばっちり』を受けないためである。
『とばっちり』とはなんぞや?ロープで固定していたのは旗を投擲する棒だけではないからである。
一緒に天井にある物を固定していたのだ。
―――――シエスタといっしょに洗濯に使ってた『金だらい』をだ。
ガンッ!!ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!
最初はギーシュの頭上にあった金だらいがうまく当たった音。後のはギーシュの叫び声である。
頭上に簡素なプラネタリウムを作り上げたギーシュはしんのすけの「ドンドンドリフの大爆笑~♪」と言う
声を聞くばかりである。
「映画でやってた事をそのままやってみたけど案外うまくいくもんですな。そしてわかったゾ!あいつやっぱりインチキしてるんだ!」
そう、確信めいた表情で語るしんのすけ。ちなみにその映画の主人公は自分とやけに声が似てたから印象に残ってたそうです。
「イタタ…。あの旗を取りに行かないと…!」
ギーシュが落ちたほうの旗を取りに行こうとする。
走って1分ちょいでつくような地点だった。
ギーシュが怪我の功名だと言わんばかりに拾おうとすると。
「ほっほ~い!!取り返しに参りました~♪」
なぜかモミアゲののびたしんのすけが足でサーカスの空中ブランコのようにぶらさがり、その動きでギーシュに接近する。
「く、空中ブランコだと!?なんでこんなことができる!?ていうかさっきからそういうのどっから持ってきたんだ!?」
だがツッコンでる隙を付かれた。空中ブランコでフリーハンドだったしんのすけが2本ギーシュからくすねていった。
「しまった!!旗を!!」
差し引くとこうなる。
しんのすけ 7-3 ギーシュ
「取られたものはなんでも取り返すゾ。あ~ばよ~とっつぁ~ん!!」
ギーシュは脅威の身体能力と信じられないくらい悪知恵の働く5歳児を前に開いた口を塞げなくて呆然とするばかりだった。
「こんなの子供じゃねぇ…。まさか僕はこのまま子供に負けるのか…?」
ゲームはまだ始まったばかりだ。
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#navi(伝説を呼ぶ使い魔)
「結婚なんて!オラまだ心の準備が…。今日始めて会ったばかりじゃないの!!一目ぼれなんて困るわ!」
「結婚じゃなぁ~い!!」
シエスタが震えながらこっちを見ている。周りの貴族たちがひそひそ声で話す。
「シンちゃんなんてことを…貴族様を怒らせるなんて…!」
「おい本気かよギーシュの奴…。あんな子供相手に決闘とか本気か?」
「あれはもう貴族と、いや男としてどうかと…ヒソヒソ。」
「おまえ達も最後まで話を聞けェーーーーーーー!!!!」
ハァハァゼェゼェと肩で息をしている。やっと落ち着いたのか口を開く。
「いくらなんでもだ。子供相手に暴力ふるうなんて名高き貴族のやる事じゃないよ。
だが!だからといっていくら子供でも貴族を舐めた行動をとるのは許しておけないな!それこそ貴族の沽券に関わるというものだ。」
そこでだ、とギーシュが待ちかねたように言う。
「君とボクとで殴り合いにならない、安全で簡単なゲームをしようじゃないか。それでボクが勝ったら君がボクに対し、
『申し訳ありませんでしたギーシュ様。もう二度とあなたに逆らうことは致しません』と誓ってくれればいい。
君が勝ったらボクが君の言うことを一つ、何でも聞いてあげよう。」
「おお!ゲームはやりたいゾ~。」
一方マリコルヌがギーシュに駆け寄る。
「ずいぶん回りくどくないか?ギーシュ。」
「まあ、そりゃ少しばかり魔法で思い知らせてやれば簡単だよ。それができないからがゲームという打開策があるんじゃないか。
ほら、もう彼女は気付いたようだ。」
シエスタがおろおろしながらしんのすけに駆け寄る。
「大丈夫なんですか?貴族様は魔法を使うんですよ?負けたら二度と逆らわないと言うことはずっと自分言いなりになれと
言ってる様なものなんですよ?」
だがしんのすけには負けない自信があるのかまるで物怖じしていない。
「フーン。その時はその時だゾ。」
ここはヴェストリの広場。
「それで?何か提案はあるかい?」
「ほい!」
しんのすけが手を上げた。
「どっちが小便を遠くまで飛ばせるか競争!その名の通りオシッコの飛距離で勝負を…。」
「却下だ!!貴族としてそんな下品な戦いは認められない!!」
「じゃあキンちゃんの仮装大賞!お互いが仮装して周りの人の出した得点で審査を…。」
「難しいと思うなそれ。」
「鬼のいないかくれんぼは?ゆったりした時間を提供するゾ!」
「永久に勝負つかんだろ!」
「じゃあカタツムリ競馬!芝50メートル(こっちではメイルだっけ?)で一番最初にたどり着きそうなカタツムリを賭けるゲーム!
ちなみに一番人気は一秒間に3センチ(サント)進めると速度に定評のあるミニミサエショーグン…。」
「日がくれちまうよそんな勝負!!せめて30サントにしろ!」
しんのすけがいい加減焦れてしまった。
「もーワガママだなー。じゃあなにがいいって言うの!?」
「まともで今日中に勝負がつきそうな奴で頼む!」
しんのすけは本気で考えこむ。そしてピンと閃いたのか、目を輝かせている。
「じゃあこんなのはどう?『お宝争奪戦』って言うよしなが先生が考えた遊びなんだけど、
警察役と怪盗役に分かれて何か宝を用意してそれを制限時間内に全部奪えれば怪盗、
それを守りきれば警察役の勝ちってゲームなんだけど。」
ギーシュもそのゲームには興味をもったのか、やっと乗り気で口を挟んできた。
「ほう、じゃあそれを君にハンデが行くようにルールを調整すればいいね。」
そう言った時、ギーシュの足元の土が盛り上がる。
ポコッと出てきたのは大きなモグラだった。
「おお!でっかいモグラ!」
「おお、ヴェルダンテ!もうお望みのものを持ってきてくれたのかい?君はなんて頼りになる使い魔なんだろう!
ああ、もっとそばまでおいで!可愛がってあげよう。スリスリ。」
そこまでやってギーシュはしんのすけが『風間君の家に遊びに行った時、おどかしてやろうとインターホン鳴らさずに
入ってみたら、もえPの衣装を着て遊んでた風間君がいた。』と言った感じの目をしてるのに気がついた。
「な、なんだその目は!話を続けるぞ!」
ギーシュが説明を始める。
「ここに10本の旗と砂時計がある!この砂時計はきっかり30分計ることが出来るだろう。」
と、ギーシュはドッカと大き目の砂時計を前においた。
「制限時間は30分!ボクが怪盗役、君が警察役になってその10本の旗をかけて奪い合う!」
と言ってしんのすけにしんのすけの腰から下くらいのサイズの旗が渡される。
「おお、軽いゾ。これくらいなら10本でもなんなく持ち歩けるね。」
ギーシュは後にこうルールを付け足した。
・奪う際に、ギーシュはしんのすけに殴る、蹴るなどの攻撃を加えてはならない。
・制限時間内にギーシュが10本全部とるまでなら何度でも取り返していい。
・制限時間内に10本全て奪えなかったら自動的にしんのすけの勝ち。
・しんのすけは旗を自分で持っていることも、どこかに隠すことも自由である。
・一応、しんのすけはギーシュに攻撃するのは自由。その際、ギーシュが降参、再起不能になったら
自動的にしんのすけの勝ち。
・お互い、メイジも平民もどちらの味方もしてはならない。
・学院の敷地内ならどこに行ってもかまわない。スタートはヴェストリの広場。
・旗は燃やしたり、トイレに流すなどの破棄は一切認めていない。
「これでいいかな?」
「おお!おもしろそう!いーよ!別に!」
「後、僕はメイジだから、魔法を使ってもかまわないね?そのかわり君もどんな攻撃をしても
僕は文句を言わない。それでいいかな?」
「いいとも~。」
「ちょっと待ちなさいシンノスケ!!」
そう言って走ってきたのはルイズだ。血相を変えて走ってきたのか肩で息をしている。
「アンタ!ギーシュと決闘するですって!?」
「おお、知ってたの。うん決闘だって。」
「やめなさいよ!平民がメイジに勝てるわけないし、そもそも貴族の決闘は禁止されてるはずでしょ!?」
「心配ないさルイズ。貴族と平民の決闘は禁止されてないし、子供相手だからルールを変更したから。」
そうしてルイズに決闘のルールを伝える。
「悪くないルールだけど待って!負けたら二度と逆らわないって、実質シンノスケを配下にするようなモノじゃない!
アイツは私の使い魔よ!何勝手なこと言ってるのよ!」
「いいと言ったのは彼だよ。僕は本人の意思を尊重する。」
そしてその様子を鋭い目で見ている者が一人。
青髪にメガネ、人形のような印象を受ける整った顔立ち、自分の身長より大きな杖の少女。
彼女は普段は何にも興味を示さず本ばかり読んでいるのだが、今はこの騒動を見ている。
「あら?タバサ、どうしたの珍しいわね。本以外に興味を示すなんて。」
そう言ったのは赤髪に褐色の肌、麗しい美貌にグラマラスなスタイルが目立つ親友のキュルケだ。
「ああ、あのルイズが呼び出した使い魔じゃない。あら、思いのほかかわいい顔してる使い魔なのね。」
「・・・・・・。」
しかしタバサは何も言わない。
「なになに?なにか決闘がどうのと言ってるけど。あの子大丈夫かしらね?貴族相手に。」
「…彼は。」
「え?なに?どうしたの?」
タバサが口を開く。キュルケすら動揺するほどに珍しいことなのだろう。
「変わり者。これまでに会ったことないような。でも何か、大きな何かを感じる。それは強さかどうかわからないけど。」
「へえ、そりゃ楽しみね。アナタの目は確かだから。…タバサ?」
キュルケがタバサの顔を直視し、訝しげに顔を少し歪めた。
「…何?」
「い、いえ、なんでもないわ。気のせいだったみたい。いつもどおりのかわいい子ね。」
そう言ってキュルケはタバサの隣に座り、見物を始めた。
「だいじょぶだいじょぶ、オラばら組のみんなと戦った時もオラ達ひまわり組が勝ったし。
ばら組の捕田 羽田朗(とった はたろう)君が出てきたときは少し苦労したけどネネちゃんの活躍で
バッチリ勝利したから!しかしばら組ってホント何人いるんだろう?」
「それアンタの手柄じゃないんじゃないの!」
それにルイズが心配してる要素はまだある。
(相手は貴族と平民の決闘は禁止されてないなんてルールの網目をくぐるような奴よ…。
このルールにも何か網目があるんじゃないでしょうね…。)
しかしルイズの視線を気にもせずギーシュはヴェルダンテから受け取った10本の旗を
しんのすけに渡して砂時計を持つ。
「ひっくり返したらゲーム開始だ。僕は開始から3分経ってから動く。さあ用意はいいね?」
「おお!準備かんちょー!」
「レディー…。」
「ゴーッ!!」「ひろみ!」
しんのすけが相槌とともに猛ダッシュする。
子供の身体能力より多く優れているしんのすけ持ち前のスピードで。
「は、速い!!なんてスピードだ!!」
しんのすけはヴェストリの広場から逃れ、学院内に入る。
「それが基本の動きだ。隠すのが自由な以上、隠しやすい建物の中に入るのは当然の行動。
だから学院の敷地内も行動可能にしたんだからね。」
そう言ってギーシュはもう一つの3分用砂時計をみる。
「そろそろ3分経つ。では僕も行動をスタートしよう。」
ギーシュが落ちきった3分砂時計をしまい、薔薇の造花に見立てた杖を振るう。
振るった杖からは花びらが舞い、三体の人影と化した。
しかしそれは女性的なフォルムをしているもののその身体は青銅でできていた。
「『ワルキューレ』。君達の出番だ。」
ギーシュの合図とともにワルキューレは動き出す。
「マリコルヌ、待機して時間計測と見張りを頼んだよ。30分たったらこのホラ貝を吹いてくれ。
誰かが抜け出したら君の使い魔のクヴァーシルを飛ばして知らせてくれればいい。
それじゃあまた後で。」
ギーシュがワルキューレを従えて学院に走っていった。
「…ホラ貝なんてよく持ってたな。…てかちゃんと洗ったんだろうな!!」
もちろん!という声が遠くから聞こえた。
「ワルキューレ、この付近を各自捜すぞ。」
1体目はルイズの爆発で爆破された教室、2体目は図書室、3体目は付近の廊下、
ギーシュ本人はその反対側を探す。
「甘い甘い。どこに隠そうが僕にはお見通しさ。」
ギーシュは最初に食堂で旗を見つけた。
しんのすけ 9-1 ギーシュ
ギーシュが食堂を後にして、しばらく歩く。
「開始から6分。3分もあれば医務室とかにも隠すことができるかな?」
そう言ってギーシュが医務室に向かう。
しかし突き当たりまで行った時、後ろから小さな足音が。
しんのすけの足音だ。
「あ、やべ。」
しんのすけは背中に2本の旗を持って逃げている。
(2本…。隠したのは8本で残る隠し場所は7箇所か!)
「逃がさないよ!!」
ギーシュがしんのすけを追う。しかしダメだ。しんのすけのスピードが速すぎる。
イタズラしてキレたみさえから逃れるためにつけた特異な身体能力。
温室育ちのギーシュに追いつけるような代物ではないのだ。
やっとギーシュがしんのすけを捕らえようとしたとき、しんのすけが壁を一回蹴って上にジャンプ。
上からぶら下がっている照明を掴んでギーシュの背後に飛ぶ。
「う、うわわッ!!」
急ブレーキしても急に真後ろには発進できずしんのすけが「ほっほーい!ここまでおーいで!」と
自慢の尻を軽くペチペチと挑発的に叩いているのを見るばかりだった。
「このッ!待て使い魔!!」
しかし角を曲がれば今度はしんのすけが
「さーて、せっかく尻を出したことだしここでとうとうみなさんお待ちかねのサービスショット!!」
ケツだけせいじーん!!ブリブリ~!!ブリブリ~!!
しんのすけがとうとう開始5話目にして十八番のケツだけ星人を見せながらまた角をさっそうと逃げていく
姿だった。
「クソッ!なんだあの身のこなし…。油断も一気に吹っ飛んじゃったよ。」
ギーシュが最初にしんのすけを見かけたポイントに戻る。
「やっぱり『仕掛け』を用意しておいてよかった…。この辺りかな?」
ギーシュはしんのすけが出てきた方向の道を進み、部屋に入る。
「ほーら!見つけた!!」
しんのすけ 8-2 ギーシュ
「へへん!所詮子供!僕のこの作戦には勝てまい!最もこのゲームに応用するのは初めてだけどね!
ほーら!もう二本もいただきだ!」
爆破された教室と図書室に送っていたワルキューレが一本ずつ持ってくる。
しんのすけ 6-4 ギーシュ
「さて、今度こそ医務室だな。」
続いて医務室を目指そうとするギーシュだった。
「おお、本棚の旗がなくなってるゾ…。」
しんのすけは図書室の本棚の間にさした旗がないのに気がついた。
「うーん。けっこうやるじゃん。こりゃこっちも一つ打って出たほうがよさそうですな。…お?」
しんのすけが床を見る。
床には本が散らばっている。まるで空き巣に入られた後のような状態だった。
「うーん。台風一過ってやつですな。でもおかたしするのはめんどうくさいから
ひとまずここを離れよーっと。」
でも誰がこんなことを?としんのすけが考える。
「う~んなんでだろう?なにかヒントは…。あれ?」
そこまで考えてしんのすけは『ある事』に気がついた。ギーシュの行動に関するある不自然な点。
だがまだ仮説の段階。なにか決定的な何かを知る方法はないか?
「考えろ考えろ…。アクション仮面も敵の罠に嵌った時知恵を使って切り抜けたんだゾ…。何か方法は…。
…そーだ!いい事考えちゃった!ついでにちょっと小粋なお茶目もかましておきますか。あはあはあは~。」
そう言って図書室を後にした。
「残る隠し場所は4箇所!彼自身が持ってるのは二つ!開始から14分!やはりこの勝負楽に終わりそうだ!」
ギーシュが余裕を見せながら廊下を走る。
「ここだね!これで5点目…!え?」
確かに旗はあった。だが流石のギーシュもここまで不自然な旗の置き方には警戒した。
旗がしなった細い棒の上におかれて、その棒の先にしなったままになるよう縄で固定してある。
どこからかゴリゴリと言う音が聞こえる。
「おい、コレまさか…。」
ギーシュの予想通りである。この音はしんのすけが棒を曲げるためのロープをどこからか持ってきたノコギリで
ブツンッと切ろうとする音だったのだ。
戻った勢いで旗を窓から遠くに吹っ飛ばすための。
「あんな仕組みいつ作ったんだ!?」
「工作は得意なんだゾ!」
その声は医務室のとなりから聞こえてきた。しんのすけはとなりの部屋からロープを切断してるらしい。
完全に切れたロープは固定していた棒を真っ直ぐに戻し、その勢いで二つの旗が吹っ飛んだ。
一つは壁にぶつかってそのまま下の床に落ちていく。もう一つはうまい具合に窓から他の部屋に入っていった。
あっけに取られたギーシュが口を開く。
「あれがあんな子供の技能なのか?しかしなぜこんな仕掛けを!?」
なぜこんな仕掛けを作ったのか?後に語られる『ある事』を確認するため+そのために旗を犠牲にしないためだ。
どうして隣の部屋からロープを切っているのか?『とばっちり』を受けないためである。
『とばっちり』とはなんぞや?ロープで固定していたのは旗を投擲する棒だけではないからである。
一緒に天井にある物を固定していたのだ。
―――――シエスタといっしょに洗濯に使ってた『金だらい』をだ。
ガンッ!!ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!
最初はギーシュの頭上にあった金だらいがうまく当たった音。後のはギーシュの叫び声である。
頭上に簡素なプラネタリウムを作り上げたギーシュはしんのすけの「ドンドンドリフの大爆笑~♪」と言う
声を聞くばかりである。
「映画でやってた事をそのままやってみたけど案外うまくいくもんですな。そしてわかったゾ!あいつやっぱりインチキしてるんだ!」
そう、確信めいた表情で語るしんのすけ。ちなみにその映画の主人公は自分とやけに声が似てたから印象に残ってたそうです。
「イタタ…。あの旗を取りに行かないと…!」
ギーシュが落ちたほうの旗を取りに行こうとする。
走って1分ちょいでつくような地点だった。
ギーシュが怪我の功名だと言わんばかりに拾おうとすると。
「ほっほ~い!!取り返しに参りました~♪」
なぜかモミアゲののびたしんのすけが足でサーカスの空中ブランコのようにぶらさがり、その動きでギーシュに接近する。
「く、空中ブランコだと!?なんでこんなことができる!?ていうかさっきからそういうのどっから持ってきたんだ!?」
だがツッコンでる隙を付かれた。空中ブランコでフリーハンドだったしんのすけが2本ギーシュからくすねていった。
「しまった!!旗を!!」
差し引くとこうなる。
しんのすけ 7-3 ギーシュ
「取られたものはなんでも取り返すゾ。あ~ばよ~とっつぁ~ん!!」
ギーシュは脅威の身体能力と信じられないくらい悪知恵の働く5歳児を前に開いた口を塞げなくて呆然とするばかりだった。
「こんなの子供じゃねぇ…。まさか僕はこのまま子供に負けるのか…?」
ゲームはまだ始まったばかりだ。
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#navi(伝説を呼ぶ使い魔)
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