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「ボン太くん・イン・ハルケギニア-01」(2008/01/05 (土) 15:29:03) の最新版変更点
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――メリダ島、ミスリル西太平洋戦隊基地、食堂。
「さーて、メシだメシ」
「あ、お疲れ様です」
午前の訓練を終えたクルツが昼食をとろうと食堂に入ったところ、見知らぬ顔に声を掛
けられた。十代後半と思しき日本人の少年だ。
「おーお疲れ、って見ない顔だな。お前新入り?」
「はい! 平賀才人伍長であります! 本日付けで西太平洋戦隊に配属になりました!
よろしくお願い致します!」
才人は敬礼をしながら、元気良く自己紹介をする。
「元気があっていいねぇ。俺はクルツ・ウェーバー、階級は軍曹だ。ま、頑張れよ」
「はい! ありがとうございます!」
「ところでさ、もう他の連中には挨拶したのか?」
「ええ、一通りは済ませたんですけど…」
才人はそこまで言うと口籠もってしまった。クルツは不思議に思い、彼に聞き返す。
「ん? どした?」
「いやあの、あそこに座ってる人なんですけど、挨拶しても目すら合わせてくれないんで
すよ」
才人が指し示す方向にクルツが目をやると、見知った仏頂面が映った。
「ああ、あのむっつり顔は相良宗介って言うんだ。いつもあんな感じだから、気にしなく
ていいぜ」
「そうなんですか…でも、それにしては様子が変じゃないですか?」
「変って言われてもなぁ。どれどれ?」
クルツは改めて宗介を見やる。彼の顔は青白く、目は虚ろ。「馬鹿な…消えた…」「突
然…」「ボン太くんが…」などといった事をうわ言のように繰り返している。
「おーい、ソースケー、生きてるかー、しっかりしろー」
クルツが宗介の目の前で手を振りながら問いかけてみるが、反応は無い。
「こりゃ重症だな。まぁ、気にすんな。それよりメシはもう食ったか?」
「いえ、まだです」
「んじゃ、早くメシにしよーぜ」
そう言って宗介の側を離れる二人。宗介自身は相変わらず独り言を繰り返していた。
相良宗介のもう一つの愛機、ボン太くん。
『ゼロ』と呼ばれる落ちこぼれメイジ、ルイズ。
この一人と一匹(一機?)の出会いがハルケギニアの歴史を変えてゆく……
――異世界ハルケギニア、トリステイン王国、トリステイン魔法学院。
「え? うそ…この私が?」
使い魔召喚の儀――学院の生徒が二年生に進級する際、自分の使い魔を召喚する儀式で
ある。その儀式で信じられない出来事が起こった。
別に信じられない出来事といっても、人間の平民を召喚してしまった訳では無い。魔法
の才能が無い事で有名な『ゼロ』のルイズこと、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・
ド・ラ・ヴァリエールが何と一回で召喚を成功させたのである。
その使い魔の特徴を箇条書きで記すと、
・体の色は全体的に黄色で、所々に茶色のまだら模様。
・顔の横から突き出たお皿の様な大きな耳。ネズミ?
・埃が入り放題ではないだろうかと思われる大きな目。
・黄色のアクセントがおしゃれな緑のつば付き帽子。
・これまたおしゃれな赤い蝶ネクタイ。
・短足。
・小さな子供なら、思わず抱き付きたくなる何かファンシーな感じ。
である。
「あのルイズが…『ゼロ』のルイズが……嘘だ! これは何かの間違いだ! しかも生き
物を召喚してるし!」
「でもよ、あんな生き物見た事無いぞ」
ルイズの召喚の様子を周りで見ていた生徒達は、ルイズが召喚したばかりの使い魔の姿
に戸惑っていた。何しろ、今迄に見た事が無い姿をしているのだから無理も無い。
そんな周囲を他所に、ルイズ自身は召喚を成功させた事に一人興奮していた。
「やややややったわ。つつついに成功しししたのよ。ここここここここここれでもう馬鹿
にされなくてすすす済むわ」
ルイズよ。嬉しいのは分かるが、先ずは落ち着くんだ。まだ契約が残っているぞ。
「そ、そうよね。まだ喜ぶのは早いわ。とにかく落ち着かなくちゃ。えーと、気持ちを落
ち着かせるのに有効なのは……深呼吸ね!」
その通り。先ずは大きく息を吸って、
「スゥーッ」
そして、ゆっくりと吐く。
「ヒッ、ヒッ、フゥー」
「ミス・ヴァリエール、それは深呼吸では無い。ラマーズ法の呼吸法だよ」
「わぁっ!!」
背後からいきなり声を掛けられたルイズは驚いて尻餅をついてしまった。声の主は今年
の儀式の監督を務めるコルベールだった。
「大丈夫かね? まだ落ち着きを取り戻していないようだが」
「え、ええ、何しろ、魔法がこんなに上手く出来たのは初めての事ですから」
「なら、休憩をとりなさい。このまま契約を行うのも辛いだろう」
「良いんですか?」
「少しくらいなら構わないよ。時間は君の判断に任せよう。終わったら私に声を掛けなさ
い」
「分かりました。ありがとうございます」
――六時間後。
「ふわぁー、あ、先生、休憩終わりましたぁ」
その場で大の字になって寝ていたルイズは、欠伸をしながらゆっくりと起き上がった。
太陽は空の向こうに沈みかけ、辺りは闇に包まれようとしている。
「う、うむ。では、早く契約を済ませなさい」
コルベールの肩は小刻みに震えていた。まるで今にも怒り出したいのを必死に抑えてい
るかのように。
「ああ、そう言えばそうでしたね。じゃ、早速」
マイペースなルイズは謎の生き物と契約を交す。最後の口付けが終わると、謎の生き物
の左手に使い魔である事を証明するルーンが刻まれた。
「先生、終わりました」
「契約もちゃんと出来たようだね。君の番で最後だから儀式はこれで終わりだ。それじゃ
あ皆、戻ろう…って、あれぇぇぇ!?」
コルベールが他の生徒達を解散させようとして周りを見回した途端、彼は驚きの声を上
げた。他の生徒達が既にいなくなっていたからだ。
「同級生が頑張っているというのに、それを見届けてあげるように指導出来ないとは……
ああ、私は教育者として、まだまだ力不足だというのか…」
「元気を出してください、先生。私なら気にしてませんから」
時間を遅らせた張本人であるルイズは既に蚊帳の外といった感じだ。
「まあいい。では、ミス・ヴァリエール、君も戻りなさい」
「あの、先生、一つ気になることがあります」
「なんだね?」
「この使い魔、さっきから微動だにしないんですけど」
使い魔となった謎の生き物は召喚された時から静止したままだった。本当に生きている
のかも疑わしい。
「おかしいなあ」
ルイズはもっと良く確かめようとして使い魔の頭部を両手で掴んだ。ただ、勢い良く掴
んだので、使い魔の頭部が――外れた。
「く、首が、首が……」
ルイズはそのまま意識を手放した。
「しっかりするんだ! ミス・ヴァリエール……ん? これは…」
コルベールが気を失ったルイズを起こそうとした時、彼は使い魔の頭部に奇妙な部分を
見つけた。使い魔の頭部の内部は中身が無く、空洞になっていたのだ。
「一体、どういう事だ?」
詳しく調べてみようと使い魔の胴体に触れた瞬間、彼に異変が起こった。
「分かる、分かるぞ! この使い魔の事が手に取るように分かる!」
手を触れた瞬間、コルベールの頭の中に使い魔の全容が流れ込んできたのだ。この時、
使い魔の左手のルーンが光り輝いている事に彼は気付かなかった。
「これは生き物などでは無い! 人間が中に入って操るゴーレムだなんて前代未聞だ!
我々の世界の常識を遥かに超えている! 実に素晴らしい! 名前は……ボンタクン?
そうか! ボン太くんというのか!」
コルベールの歓喜の声が夜の静寂を打ち破るように響き渡る。ルイズが起きていたなら、
確実にかわいそうな目か、生暖かい目で見ていただろう。
「む、こうしてはおれん。早速、試してみなければ」
コルベールは逸る気持ちを抑えつつ、素早くボン太くんの中に入り込む。そして、ボン
太くんの頭部を被り、頭部と胴体を繋ぐ金具を固定する。これで準備は完了だ。先程、ル
イズが強く持った時に頭部が外れてしまったのは、この金具が固定されていなかったから
である。
(おおおっ! これは凄いぞぉぉぉっ!)
外見からは想像も付かない高性能ぶりにコルベールの興奮は最高潮に達した。
「ふもっ! ふもっ! ふもーーーーーっ!」
ボン太くん(コルベール)は嬉しさの余り、跳んだり跳ねたり、寝そべってゴロゴロと
転がったり、踊ったりした。研究や発明が好きな彼にとって、このような物に出会えた事
が純粋に嬉しかったのだ。
「…う、うーん」
その勢いはエスカレートし、ひとり『フリッグの舞踏会』になろうかとしていた時、ル
イズの声が聞えた。気を失っていた彼女が目を覚ましたのだ。
「あれ? 動いてる……そっか、さっきのは気のせいだったのね」
(しまった、興奮する余り、ミス・ヴァリエールの事をすっかり忘れていた)
コルベールは自分の迂闊さに後悔した。だが、今更、実は自分が中に入っていたなどと
告白する訳にもいかないだろう。
(今、私が正体を明かせば、まともな使い魔が召喚出来たと喜んでいる彼女の気持ちを踏
みにじる事になってしまう…)
「コルベール先生もいなくなってる……やっぱり私が時間を掛け過ぎたから、怒って帰っ
ちゃったのかな…」
「ふも…」
ボン太くん(コルベール)はルイズの肩にそっと手を置いた。
「え? 慰めてくれるの?」
「ふも」
「ありがとう、やさしいのね」
(何とか、落ち着いてくれたようだな)
「何時までもここにいても切りが無いわ。私の部屋に行くわよ」
(ミス・ヴァリエールには悪いが、暫くはこのままの状態で誤魔化すしかないか…)
ボン太くん(コルベール)はそう思いながら、ルイズの後に続いた。
こうしてコルベールの、ボン太くんの中の人としての生活が始まった。
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――メリダ島、ミスリル西太平洋戦隊基地、食堂。
「さーて、メシだメシ」
「あ、お疲れ様です」
午前の訓練を終えたクルツが昼食をとろうと食堂に入ったところ、見知らぬ顔に声を掛
けられた。十代後半と思しき日本人の少年だ。
「おーお疲れ、って見ない顔だな。お前新入り?」
「はい! 平賀才人伍長であります! 本日付けで西太平洋戦隊に配属になりました!
よろしくお願い致します!」
才人は敬礼をしながら、元気良く自己紹介をする。
「元気があっていいねぇ。俺はクルツ・ウェーバー、階級は軍曹だ。ま、頑張れよ」
「はい! ありがとうございます!」
「ところでさ、もう他の連中には挨拶したのか?」
「ええ、一通りは済ませたんですけど…」
才人はそこまで言うと口籠もってしまった。クルツは不思議に思い、彼に聞き返す。
「ん? どした?」
「いやあの、あそこに座ってる人なんですけど、挨拶しても目すら合わせてくれないんで
すよ」
才人が指し示す方向にクルツが目をやると、見知った仏頂面が映った。
「ああ、あのむっつり顔は相良宗介って言うんだ。いつもあんな感じだから、気にしなく
ていいぜ」
「そうなんですか…でも、それにしては様子が変じゃないですか?」
「変って言われてもなぁ。どれどれ?」
クルツは改めて宗介を見やる。彼の顔は青白く、目は虚ろ。「馬鹿な…消えた…」「突
然…」「ボン太くんが…」などといった事をうわ言のように繰り返している。
「おーい、ソースケー、生きてるかー、しっかりしろー」
クルツが宗介の目の前で手を振りながら問いかけてみるが、反応は無い。
「こりゃ重症だな。まぁ、気にすんな。それよりメシはもう食ったか?」
「いえ、まだです」
「んじゃ、早くメシにしよーぜ」
そう言って宗介の側を離れる二人。宗介自身は相変わらず独り言を繰り返していた。
相良宗介のもう一つの愛機、ボン太くん。
『ゼロ』と呼ばれる落ちこぼれメイジ、ルイズ。
この一人と一匹(一機?)の出会いがハルケギニアの歴史を変えてゆく……
――異世界ハルケギニア、トリステイン王国、トリステイン魔法学院。
「え? うそ…この私が?」
使い魔召喚の儀――学院の生徒が二年生に進級する際、自分の使い魔を召喚する儀式で
ある。その儀式で信じられない出来事が起こった。
別に信じられない出来事といっても、人間の平民を召喚してしまった訳では無い。魔法
の才能が無い事で有名な『ゼロ』のルイズこと、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・
ド・ラ・ヴァリエールが何と一回で召喚を成功させたのである。
その使い魔の特徴を箇条書きで記すと、
・体の色は全体的に黄色で、所々に茶色のまだら模様。
・顔の横から突き出たお皿の様な大きな耳。ネズミ?
・埃が入り放題ではないだろうかと思われる大きな目。
・黄色のアクセントがおしゃれな緑のつば付き帽子。
・これまたおしゃれな赤い蝶ネクタイ。
・短足。
・小さな子供なら、思わず抱き付きたくなる何かファンシーな感じ。
である。
「あのルイズが…『ゼロ』のルイズが……嘘だ! これは何かの間違いだ! しかも生き
物を召喚してるし!」
「でもよ、あんな生き物見た事無いぞ」
ルイズの召喚の様子を周りで見ていた生徒達は、ルイズが召喚したばかりの使い魔の姿
に戸惑っていた。何しろ、今迄に見た事が無い姿をしているのだから無理も無い。
そんな周囲を他所に、ルイズ自身は召喚を成功させた事に一人興奮していた。
「やややややったわ。つつついに成功しししたのよ。ここここここここここれでもう馬鹿
にされなくてすすす済むわ」
ルイズよ。嬉しいのは分かるが、先ずは落ち着くんだ。まだ契約が残っているぞ。
「そ、そうよね。まだ喜ぶのは早いわ。とにかく落ち着かなくちゃ。えーと、気持ちを落
ち着かせるのに有効なのは……深呼吸ね!」
その通り。先ずは大きく息を吸って、
「スゥーッ」
そして、ゆっくりと吐く。
「ヒッ、ヒッ、フゥー」
「ミス・ヴァリエール、それは深呼吸では無い。ラマーズ法の呼吸法だよ」
「わぁっ!!」
背後からいきなり声を掛けられたルイズは驚いて尻餅をついてしまった。声の主は今年
の儀式の監督を務めるコルベールだった。
「大丈夫かね? まだ落ち着きを取り戻していないようだが」
「え、ええ、何しろ、魔法がこんなに上手く出来たのは初めての事ですから」
「なら、休憩をとりなさい。このまま契約を行うのも辛いだろう」
「良いんですか?」
「少しくらいなら構わないよ。時間は君の判断に任せよう。終わったら私に声を掛けなさ
い」
「分かりました。ありがとうございます」
――六時間後。
「ふわぁー、あ、先生、休憩終わりましたぁ」
その場で大の字になって寝ていたルイズは、欠伸をしながらゆっくりと起き上がった。
太陽は空の向こうに沈みかけ、辺りは闇に包まれようとしている。
「う、うむ。では、早く契約を済ませなさい」
コルベールの肩は小刻みに震えていた。まるで今にも怒り出したいのを必死に抑えてい
るかのように。
「ああ、そう言えばそうでしたね。じゃ、早速」
マイペースなルイズは謎の生き物と契約を交す。最後の口付けが終わると、謎の生き物
の左手に使い魔である事を証明するルーンが刻まれた。
「先生、終わりました」
「契約もちゃんと出来たようだね。君の番で最後だから儀式はこれで終わりだ。それじゃ
あ皆、戻ろう…って、あれぇぇぇ!?」
コルベールが他の生徒達を解散させようとして周りを見回した途端、彼は驚きの声を上
げた。他の生徒達が既にいなくなっていたからだ。
「同級生が頑張っているというのに、それを見届けてあげるように指導出来ないとは……
ああ、私は教育者として、まだまだ力不足だというのか…」
「元気を出してください、先生。私なら気にしてませんから」
時間を遅らせた張本人であるルイズは既に蚊帳の外といった感じだ。
「まあいい。では、ミス・ヴァリエール、君も戻りなさい」
「あの、先生、一つ気になることがあります」
「なんだね?」
「この使い魔、さっきから微動だにしないんですけど」
使い魔となった謎の生き物は召喚された時から静止したままだった。本当に生きている
のかも疑わしい。
「おかしいなあ」
ルイズはもっと良く確かめようとして使い魔の頭部を両手で掴んだ。ただ、勢い良く掴
んだので、使い魔の頭部が――外れた。
「く、首が、首が……」
ルイズはそのまま意識を手放した。
「しっかりするんだ! ミス・ヴァリエール……ん? これは…」
コルベールが気を失ったルイズを起こそうとした時、彼は使い魔の頭部に奇妙な部分を
見つけた。使い魔の頭部の内部は中身が無く、空洞になっていたのだ。
「一体、どういう事だ?」
詳しく調べてみようと使い魔の胴体に触れた瞬間、彼に異変が起こった。
「分かる、分かるぞ! この使い魔の事が手に取るように分かる!」
手を触れた瞬間、コルベールの頭の中に使い魔の全容が流れ込んできたのだ。この時、
使い魔の左手のルーンが光り輝いている事に彼は気付かなかった。
「これは生き物などでは無い! 人間が中に入って操るゴーレムだなんて前代未聞だ!
我々の世界の常識を遥かに超えている! 実に素晴らしい! 名前は……ボンタクン?
そうか! ボン太くんというのか!」
コルベールの歓喜の声が夜の静寂を打ち破るように響き渡る。ルイズが起きていたなら、
確実にかわいそうな目か、生暖かい目で見ていただろう。
「む、こうしてはおれん。早速、試してみなければ」
コルベールは逸る気持ちを抑えつつ、素早くボン太くんの中に入り込む。そして、ボン
太くんの頭部を被り、頭部と胴体を繋ぐ金具を固定する。これで準備は完了だ。先程、ル
イズが強く持った時に頭部が外れてしまったのは、この金具が固定されていなかったから
である。
(おおおっ! これは凄いぞぉぉぉっ!)
外見からは想像も付かない高性能ぶりにコルベールの興奮は最高潮に達した。
「ふもっ! ふもっ! ふもーーーーーっ!」
ボン太くん(コルベール)は嬉しさの余り、跳んだり跳ねたり、寝そべってゴロゴロと
転がったり、踊ったりした。研究や発明が好きな彼にとって、このような物に出会えた事
が純粋に嬉しかったのだ。
「…う、うーん」
その勢いはエスカレートし、ひとり『フリッグの舞踏会』になろうかとしていた時、ル
イズの声が聞えた。気を失っていた彼女が目を覚ましたのだ。
「あれ? 動いてる……そっか、さっきのは気のせいだったのね」
(しまった、興奮する余り、ミス・ヴァリエールの事をすっかり忘れていた)
コルベールは自分の迂闊さに後悔した。だが、今更、実は自分が中に入っていたなどと
告白する訳にもいかないだろう。
(今、私が正体を明かせば、まともな使い魔が召喚出来たと喜んでいる彼女の気持ちを踏
みにじる事になってしまう…)
「コルベール先生もいなくなってる……やっぱり私が時間を掛け過ぎたから、怒って帰っ
ちゃったのかな…」
「ふも…」
ボン太くん(コルベール)はルイズの肩にそっと手を置いた。
「え? 慰めてくれるの?」
「ふも」
「ありがとう、やさしいのね」
(何とか、落ち着いてくれたようだな)
「何時までもここにいても切りが無いわ。私の部屋に行くわよ」
(ミス・ヴァリエールには悪いが、暫くはこのままの状態で誤魔化すしかないか…)
ボン太くん(コルベール)はそう思いながら、ルイズの後に続いた。
こうしてコルベールの、ボン太くんの中の人としての生活が始まった。
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