「異世界症候群-1」(2007/12/26 (水) 08:58:51) の最新版変更点
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もう何度目かも分からない爆発。周囲の生徒達も飽きてきたのかもう何も言わない。
それでもルイズは諦めずに杖を振り、またも起きる爆発。ただ、今度の爆発は今までのものとは違い、一際大きいものだった。
巻き起こる砂煙に騒然とする生徒達。
ただ一人、原因となったルイズだけは静かに爆発の中心点を睨んでいた。
今のはこれまでの失敗とは違う手応えを感じた。これで何も居なければ……
しかし、現実は無情だった。砂煙が晴れたそこには何もおらず、聞こえてくるのは嘲笑だけだった。
結局、自分はゼロなのか。付き添いの教師が何か言っているが、ルイズにはもう何も聞こえなかった。
皆が自分を嘲り、学院へと空を飛んで帰っていくのを地上から唇を噛み、涙をこらえて見ているしかなかった。
やがて誰もいなくなり、ルイズの目からは涙が零れた。
惨めだった。皆が空を飛ぶのに、自分だけが飛べず、それを眺めるだけ。
悔しかった。皆の隣には使い魔がいるのに、自分の隣には何もいない。
涙が止まらなかった。
どれほど泣いていたのかは分からない。ただ、もう涙は出てこなかった。
部屋に、戻ろう。空から二つの月がルイズを見下ろしていた。何も言わずに空に浮かぶそれすら自分を馬鹿にしているように思える。
〈クスクスクス………〉
ふと、女性の声が聞こえた気がした。
目を開くとそこは知らない場所でした、なんて言えば何を言っているんだこいつは。と鼻で笑われてしまうかもしれないけれど。
実際に体験してみればそんな余裕も無くなるわけで。
部屋で眠りについたはずなのに、起きたら知らない場所でした、ときたら誰だって文句の一つも言ってやりたくなるんじゃないかと思う。
まあその文句を言うべき誰かが分からないんだけど。
とか考えられるくらいにはサモン・サーヴァントに失敗して、自棄になっていた頭も醒めてくるというものだ。
まあ、その、なんだろう。
「どこなのよここはーーーーー!!!」
正直私は混乱している。さっきまで落ち込んでたことも忘れるくらいに。
ここ、どこだろう。というか何で夜だったはずなのに夕陽が見えるんだろう。
ええと、何でこんなことになってるんだろう。もしかして誘拐された? それにしては拘束されているわけでもないし。
夢かと思って二の腕の後ろを思いっきりつねってみれば、余りの痛みに一人で悶える羽目になり。
じゃあ一体なによ? と聞かれても答えなんて見つからない。
そういえば夕食食べてないなー、なんてどうでもいいことを考えだすくらいに現実逃避が進行したあたりで答えがふらりと現れた。
「あら、目が覚めた?」
どこから出てきたの、とかここはどこ、とかどちらさまでしょうか、とか言うべきことはたくさんあると思うのだけど。
人間である以上突然の出来事には対応できないのが常で。
目の前に何の前触れもなく現れた少女に脳がフリーズしてしまった私を誰が責められるというのか。
「どうしたの?」
しばらくの沈黙の後、少女の声でやっと我に返った私の口から出たのはアンタ誰? というこの状況においては当然の質問だった。
そしてその質問に目の前の少女は。
「朝倉涼子。あなたからしてみれば、異世界人ってことになるのかしらね」
微笑みながら、そう言ってのけた。
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