「使い魔の夢-2」(2007/08/06 (月) 21:44:23) の最新版変更点
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ハルケギニア。トリスティン。
魔法学院。メイジ。貴族。ラ・ヴァリエール。
とどめは空に浮かぶ2つの月。
夢ならすぐに覚めてほしかった。
絵空事の空想ならどれほど良かっただろう。
次々と襲ってくる現実の前に乾巧はただ驚くしかなかった。
「にしては、あんた、あんまり驚いた顔に見えないんだけど」
「悪かったな、生まれつきこういう顔なんだよ、ほっといてくれ」
使い魔の夢
時は夜更け、ここはルイズの部屋。
「何なのその態度は、貴族の私がわざわざ平民のあんたに
今の立場を優しく丁寧に説明してあげたのに」
自分が最初に現れた時、
周りの連中は皆、嘲笑と侮蔑の目で見つめていた。
どいつもこいつもあてにならないと直感した。
バイクで何らかの情報を探そうとしたその時、
引きとめたこの発育不良女が頼んでもないのに
偉そうに長話をしてくれた結果、
何とも不愉快極まりない現状が理解できた。
東京から異世界に飛ばされたこととか帰る方法がわからないこととかは
今はどうにもならないことだ。ならば後々なんとかすればいい。
当面、不安なのは寝食のことだ。右も左もわからないこの世界では、
野宿なんてできそうにないとわかった。
諸々の事を含め、しばらくはこいつの世話になるしかないようだ。
「おい、ルイズ」
「何、呼び捨てにしないで」
「使い魔って何するんだ?」
「ご主人様の目や耳になったり、秘薬探しとかが主な役割なんだけど……、
あんたにできそうなのは、身辺の護衛ぐらいかしら、頼りなさそうだけど」
護衛なんて言い方は立派だが、きつくて危険な汚れ仕事だ。かったりぃ。
「給料いくらだ?」
「ある訳ないでしょ、行くあてなしのあんたに
食事と寝床を提供してるんだから
それだけでも感謝してほしいぐらいだわ」
給料は0。奴隷か、冗談じゃねぇ。
「あの「ばいく」で逃げ出そうなんて考えない事ね、
ここ最近、夜の学院一帯は警備の人間が一杯で
あんたみたいな怪しい平民はすぐに捕まえられるんだから」
こちらの考えを見透かした上、ルイズは勝ち誇ったように言う。
「特に馬小屋の前とかはね」
バイクは馬小屋の空きスペースでも隠しておけと言われた。
巧は糞の匂いがつきそうだからと嫌がったが、
他に車体を隠しきれるような場所が見当たらなかったため、
已む無く従った。その時もっと良く考えるべきだった。
全部こいつの掌の上だったんだ、くそったれ!
その後、ああだこうだの無駄な口論を経て、
巧が洗濯屋で働いていたと知ると
じゃあ、洗濯はできるわね、明日の朝、これ洗っといてと
下着やらキャミソ-ルやらを押し付け
ルイズはさっさとベッドに潜った。
(俺は何処で寝るんだよ)
そんな事はお構いなしに
疲労でくたくたのご主人様は、早速寝息を立てていた。
(月が2つ、か)
オルフェノクの王を倒して数日後の事、
その戦いで破壊されたはずの可変型バリアブルビークル、オートバジンが
何故か西洋洗濯舗・菊池の前にて新品同然の状態で見つかった。
つい気が乗って、何も考えずにそのまま走り出し、
何処かのトンネルをくぐりぬけた先に、あの光のゲートがあった。
(あれが、この世界への入り口だった訳か)
もっと慎重に走っていたらその存在に気付けたかも知れない。
こんな所に連れ去られることなく、東京に残れたかもしれない。
ポケットから携帯を取り出す。
電波の受信レベルはもちろん圏外。
(真理……)
王は消滅し、スマートブレインは崩壊したとはいえ
人間を襲うオルフェノクは今尚多く存在する。
(啓太郎や流星塾の阿部、海堂だっている。心配することはないか)
一人忘れているような気もしたが、
思い出せないならそれほど気にすることでもないんだろう。
(にしても、使い魔か)
あの昼間の長話の途中、いつだってよかった。
その気になれば逃げ出す事はできた。
だけどできなかった。
何故だろう?
話を聞いて結論を出す事が最良と思ったから?
違う、そうじゃない。
多分、それだけじゃない。
きっと、こいつが『夢』をもっているから。
目で判る。あの時の真理の目だ。
『夢を持つとね、時々すっごく切なくなるけど……時々すっごく熱くなるんだ』
オルフェノクとしての崩壊が始まっている以上、自分はそう長くない。
だけど、残された日々の中でこいつの『夢』を叶える事が出来たのなら。
『俺にはまだわからない……何が正しいのか、だからその答えを……君が俺に教えてくれ!』
木場に胸を張って答えを教えられるかもしれない。
ハルケギニア。トリステイン。
魔法学院。メイジ。貴族。ラ・ヴァリエール。
とどめは空に浮かぶ2つの月。
夢ならすぐに覚めてほしかった。
絵空事の空想ならどれほど良かっただろう。
次々と襲ってくる現実の前に乾巧はただ驚くしかなかった。
「にしては、あんた、あんまり驚いた顔に見えないんだけど」
「悪かったな、生まれつきこういう顔なんだよ、ほっといてくれ」
使い魔の夢
時は夜更け、ここはルイズの部屋。
「何なのその態度は、貴族の私がわざわざ平民のあんたに
今の立場を優しく丁寧に説明してあげたのに」
自分が最初に現れた時、
周りの連中は皆、嘲笑と侮蔑の目で見つめていた。
どいつもこいつもあてにならないと直感した。
バイクで何らかの情報を探そうとしたその時、
引きとめたこの発育不良女が頼んでもないのに
偉そうに長話をしてくれた結果、
何とも不愉快極まりない現状が理解できた。
東京から異世界に飛ばされたこととか帰る方法がわからないこととかは
今はどうにもならないことだ。ならば後々なんとかすればいい。
当面、不安なのは寝食のことだ。右も左もわからないこの世界では、
野宿なんてできそうにないとわかった。
諸々の事を含め、しばらくはこいつの世話になるしかないようだ。
「おい、ルイズ」
「何、呼び捨てにしないで」
「使い魔って何するんだ?」
「ご主人様の目や耳になったり、秘薬探しとかが主な役割なんだけど……、
あんたにできそうなのは、身辺の護衛ぐらいかしら、頼りなさそうだけど」
護衛なんて言い方は立派だが、きつくて危険な汚れ仕事だ。かったりぃ。
「給料いくらだ?」
「ある訳ないでしょ、行くあてなしのあんたに
食事と寝床を提供してるんだから
それだけでも感謝してほしいぐらいだわ」
給料は0。奴隷か、冗談じゃねぇ。
「あの「ばいく」で逃げ出そうなんて考えない事ね、
ここ最近、夜の学院一帯は警備の人間が一杯で
あんたみたいな怪しい平民はすぐに捕まえられるんだから」
こちらの考えを見透かした上、ルイズは勝ち誇ったように言う。
「特に馬小屋の前とかはね」
バイクは馬小屋の空きスペースでも隠しておけと言われた。
巧は糞の匂いがつきそうだからと嫌がったが、
他に車体を隠しきれるような場所が見当たらなかったため、
已む無く従った。その時もっと良く考えるべきだった。
全部こいつの掌の上だったんだ、くそったれ!
その後、ああだこうだの無駄な口論を経て、
巧が洗濯屋で働いていたと知ると
じゃあ、洗濯はできるわね、明日の朝、これ洗っといてと
下着やらキャミソ-ルやらを押し付け
ルイズはさっさとベッドに潜った。
(俺は何処で寝るんだよ)
そんな事はお構いなしに
疲労でくたくたのご主人様は、早速寝息を立てていた。
(月が2つ、か)
オルフェノクの王を倒して数日後の事、
その戦いで破壊されたはずの可変型バリアブルビークル、オートバジンが
何故か西洋洗濯舗・菊池の前にて新品同然の状態で見つかった。
つい気が乗って、何も考えずにそのまま走り出し、
何処かのトンネルをくぐりぬけた先に、あの光のゲートがあった。
(あれが、この世界への入り口だった訳か)
もっと慎重に走っていたらその存在に気付けたかも知れない。
こんな所に連れ去られることなく、東京に残れたかもしれない。
ポケットから携帯を取り出す。
電波の受信レベルはもちろん圏外。
(真理……)
王は消滅し、スマートブレインは崩壊したとはいえ
人間を襲うオルフェノクは今尚多く存在する。
(啓太郎や流星塾の阿部、海堂だっている。心配することはないか)
一人忘れているような気もしたが、
思い出せないならそれほど気にすることでもないんだろう。
(にしても、使い魔か)
あの昼間の長話の途中、いつだってよかった。
その気になれば逃げ出す事はできた。
だけどできなかった。
何故だろう?
話を聞いて結論を出す事が最良と思ったから?
違う、そうじゃない。
多分、それだけじゃない。
きっと、こいつが『夢』をもっているから。
目で判る。あの時の真理の目だ。
『夢を持つとね、時々すっごく切なくなるけど……時々すっごく熱くなるんだ』
オルフェノクとしての崩壊が始まっている以上、自分はそう長くない。
だけど、残された日々の中でこいつの『夢』を叶える事が出来たのなら。
『俺にはまだわからない……何が正しいのか、だからその答えを……君が俺に教えてくれ!』
木場に胸を張って答えを教えられるかもしれない。
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