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「とある魔術の使い魔と主-18」(2009/10/11 (日) 16:29:17) の最新版変更点
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「なぁ僕の使い魔を連れてっていいかい?」
ギーシュの質問に、当麻とルイズは互いの視線を向けあった。
そういえばギーシュの使い魔って見たことがないな、と両者は思いながらもルイズが応え、当麻が質問をする。
「えぇ、使い魔なんだし別に構わないよ」
「てか使い魔持ってたのか?」
当麻の一言に、ギーシュはムッとなる。
「失礼な、そもそも召喚出来なければ進級出来ないんだぞ」
そういわれても俺わからんからなー、と両手を後頭部に持って行き口笛を吹き始める。
「……君はそんなに僕を挑発したいのかい?」
ギーシュのこめかみがひくひくと動いてる。べっつにー、と当麻は視線を逸らし、ギーシュの事など興味なさそうに振る舞う。
ブチッ、と何かがちぎれる音が聞こえると、ギーシュは当麻へと薔薇の杖を振り回した。
「き、貴様! 決闘だ! 許さんぞぉぉおおお!」
だからそんなフラグは聞いた事ありませんし立てた覚えもありませーん、と当麻はすたさらこっさと逃げ始めた。
これではいつまでたっても終わらない。ルイズはため息を吐くと、さっさと話を進めようとした。
「で、その使い魔はどこにいるの?」
「ここさ」
当麻を追いかけながら、地面を指差す。しかし、もちろんそこにはいない。
「そう言われてもいないじゃない」
ルイズは再びため息を吐く。なんというか本当に大丈夫なのか、と少し心配してしまう。
そんなルイズの様子に、ギーシュは不適な笑みを浮かべながらも、地面を足で叩いた。すると、モコモコと地面が盛り上がり、茶色の大きな生き物が顔をだした。
先程まで怒り狂った様子から一変、ギーシュは愛くるしい顔をとりながら、その生き物を抱きしめる。
「ヴェルダンデ! 僕の可愛いヴェルダンデ!」
すりすりと頬を、その生き物の頬につける。当麻とルイズは、その光景にただ呆然と見つめている。
「いや、それ何ですか一体」
「それ扱いして困る。大いに困る。僕の可愛い使い魔のヴェルダンデだ」
「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」
ギーシュはルイズの質問を無視して、使い魔に語り続ける。沈黙は肯定というから、おそらくそうなのであろう。
小さな熊ほどある巨大モグラ、それがギーシュの使い魔であった。
「ギーシュってあんな奴なのか?」
当麻は半ば呆れている。こんな奴よく二股できたなーと逆に感心したぐらいだ。
ルイズもこめかみを指でかきながら、
「さ、さぁ……私もわからないわ」
その時、巨大モグラが鼻をひくつかせた。くんくん、とギーシュの元から離れて、ルイズへと近寄る。
「な、何? や、ちょっと!」
主人に似てんなー、と当麻は言いながらも、巨大モグラの行動を見守り続ける。
巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で体の隅々をかぎ始めた。
犬であれば凄い可愛いのだが、今回は巨大モグラである。正直、不気味だ。
「や! ちょっとどこ触ってるの!」
ルイズはさすがに殴り付けるわけにもいかず、顔を真っ赤に染めながらただ逃げようとする。
その際、青少年にとってちょっと刺激だなーと思わせる箇所当麻は見えてしまい、さっと視線を外すが、ルイズは気にかける余裕がない。
「いやぁ、なるほど。動物触れ合いイベントでルイズの好感度アップ&一枚絵突入狙いですか」
「お、いいこと言うな」
当麻とギーシュは戦友が戦場で再開するように、がしっと腕を組み、頷きあう。一瞬で意気投合した二人である。
「何意味不明な事言ってるのよ! さっさと助けなさいよ!」
その言葉に反応したのか、瞬、と一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱き着いてたモグラが吹き飛ばされた。
「誰だッ!」
あ~れ~と言いそうに飛んでいる自分の使い魔を見ながら、ギーシュは薔薇の杖を構え、怒鳴った。
朝もやの中から、一人の長身の貴族が現れた。羽帽子を被っており、凛々しい姿での登場にギーシュはややたじろぐ。
(あれ、そういえばこいつ)
当麻には見覚えがあった。確かアンリエッタがここに来る際――――
「貴様、僕のヴェルダンデに何をするんだ!」
それでもプライドがある。ギーシュはいつでも攻撃をする態勢をとっている。
すると、羽帽子の貴族が突如両手をあげた。敵意がないという証拠である。
「僕は敵じゃない。姫殿下よりきみたちに同行することを命じられてね。お忍びの任務であるため僕個人が指名されたわけだ」
友好的な口調で帽子を取り、一礼をした後、手を差し延べる。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
文句を後一歩の所で吐き出そうとしていたギーシュは、相手のランクを知ってすぐにそれを入れ込んだ。そして、やや不機嫌そうに手を握る。
ワルドはそんなギーシュの様子を見て、首を振った。
「すまない。いくらモグラであろうと婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬ振りは出来なくてね」
「婚約者?」
当麻は思わず口を出してしまった。
「全く……魔法衛士隊の幻獣は化け物か」
「それ、ここでも使われるんだな」
二人ともぐったりと馬に体を預けていた。既に半日以上走りっぱなしで、既に二回も馬を変えている彼らの負担は計り知れない。
ちらっと、当麻は前方の二人を見た。すると、タイミングよくルイズもこちらを向いて来て、二人の目が合った。といっても、ルイズはすぐに視線をワルドの方に戻した為一瞬であったが……
(つーか平気なのかよ)
貴族であるギーシュでさえも既にへばっているというのに、ルイズとワルドはのんびりと話続けている。
しかし、何やらルイズはそんなに楽しくなさそうだと、当麻は感じた。
アンリエッタと話した時の顔を覚えているからこそ、当麻は不思議に感じる。婚約者なのだからもっと喜んでもおかしくはないのだが。
当麻は再びギーシュへと視線を向ける。話しててわかったがこいつはいい奴だ。それが当麻の導いた答えである。
そのギーシュがこちらを見てニヤニヤと笑っている。
「ぷ、ぷぷ。もしかして、きみやきもちを焼いているのかい?」
「……はい?」
当麻はテンションを上げる気もせず、だらけながらもとりあえず会話を成立させようとした。
「だって今前見てたでしょ。二人の様子が気になったんだろ? 悪い事は言わないよ。適わぬ恋を抱いても不幸の元さ」
「あーお前勘違いしてるって」
当麻は一回深くため息を吐いた。
「ただ主人公になれなかった奴の気持ちがちょっとわかっただけさ」
ギーシュはその言葉の意味がわからない様子であったが、当麻はそれ以降視線を外に向けた。
アウレオルス=イザード、そしてステイル・マグヌス。
当麻は知っている。たった一人のヒロインを救おうと主人公になろうとしたが、失敗してしまった人達を。たった一つの主人公というポジションを獲得出来なかった人達の事を。
一人は険悪ながらも当麻と共に戦ったりした。一人は敵対し、命を賭けた戦いにまで発展した。
自分にはわからなかった。勝ち組であるが故に、負け組の気持ちがわからなかった。
だけど今、本当に少しだけだがわかったかもしれない。
ルイズを守る主人公は、彼である気がした。この世界の住人でない当麻が、この世界の主人公にはなってはいけない気がした。
それは不思議と受け入れられた。同じ世界ではない、というのが大きかったかもしれない。
当麻は悩む。
それでも、それでもルイズは言った。
使い魔は主を守らなければならない、と。
たとえ主人公にならないというのがわかっても、あのステイル・マグヌスのように、一人の女の子を守り続ける事が出来るのだろうか?
この幻想殺し一本でそれが出来るのだろうか?
答えは出てこなかった。肯定する確固たる理由が浮かばなかったから……
#navi(とある魔術の使い魔と主)
「なぁ僕の使い魔を連れてっていいかい?」
ギーシュの質問に、当麻とルイズは互いの視線を向けあった。
そういえばギーシュの使い魔って見たことがないな、と両者は思いながらもルイズが応え、当麻が質問をする。
「えぇ、使い魔なんだし別に構わないよ」
「てか使い魔持ってたのか?」
当麻の一言に、ギーシュはムッとなる。
「失礼な、そもそも召喚出来なければ進級出来ないんだぞ」
そういわれても俺わからんからなー、と両手を後頭部に持って行き口笛を吹き始める。
「……君はそんなに僕を挑発したいのかい?」
ギーシュのこめかみがひくひくと動いてる。べっつにー、と当麻は視線を逸らし、ギーシュの事など興味なさそうに振る舞う。
ブチッ、と何かがちぎれる音が聞こえると、ギーシュは当麻へと薔薇の杖を振り回した。
「き、貴様! 決闘だ! 許さんぞぉぉおおお!」
だからそんなフラグは聞いた事ありませんし立てた覚えもありませーん、と当麻はすたさらこっさと逃げ始めた。
これではいつまでたっても終わらない。ルイズはため息を吐くと、さっさと話を進めようとした。
「で、その使い魔はどこにいるの?」
「ここさ」
当麻を追いかけながら、地面を指差す。しかし、もちろんそこにはいない。
「そう言われてもいないじゃない」
ルイズは再びため息を吐く。なんというか本当に大丈夫なのか、と少し心配してしまう。
そんなルイズの様子に、ギーシュは不適な笑みを浮かべながらも、地面を足で叩いた。すると、モコモコと地面が盛り上がり、茶色の大きな生き物が顔をだした。
先程まで怒り狂った様子から一変、ギーシュは愛くるしい顔をとりながら、その生き物を抱きしめる。
「ヴェルダンデ! 僕の可愛いヴェルダンデ!」
すりすりと頬を、その生き物の頬につける。当麻とルイズは、その光景にただ呆然と見つめている。
「いや、それ何ですか一体」
「それ扱いして困る。大いに困る。僕の可愛い使い魔のヴェルダンデだ」
「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」
ギーシュはルイズの質問を無視して、使い魔に語り続ける。沈黙は肯定というから、おそらくそうなのであろう。
小さな熊ほどある巨大モグラ、それがギーシュの使い魔であった。
「ギーシュってあんな奴なのか?」
当麻は半ば呆れている。こんな奴よく二股できたなーと逆に感心したぐらいだ。
ルイズもこめかみを指でかきながら、
「さ、さぁ……私もわからないわ」
その時、巨大モグラが鼻をひくつかせた。くんくん、とギーシュの元から離れて、ルイズへと近寄る。
「な、何? や、ちょっと!」
主人に似てんなー、と当麻は言いながらも、巨大モグラの行動を見守り続ける。
巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で体の隅々をかぎ始めた。
犬であれば凄い可愛いのだが、今回は巨大モグラである。正直、不気味だ。
「や! ちょっとどこ触ってるの!」
ルイズはさすがに殴り付けるわけにもいかず、顔を真っ赤に染めながらただ逃げようとする。
その際、青少年にとってちょっと刺激だなーと思わせる箇所当麻は見えてしまい、さっと視線を外すが、ルイズは気にかける余裕がない。
「いやぁ、なるほど。動物触れ合いイベントでルイズの好感度アップ&一枚絵突入狙いですか」
「お、いいこと言うな」
当麻とギーシュは戦友が戦場で再開するように、がしっと腕を組み、頷きあう。一瞬で意気投合した二人である。
「何意味不明な事言ってるのよ! さっさと助けなさいよ!」
その言葉に反応したのか、瞬、と一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱き着いてたモグラが吹き飛ばされた。
「誰だッ!」
あ~れ~と言いそうに飛んでいる自分の使い魔を見ながら、ギーシュは薔薇の杖を構え、怒鳴った。
朝もやの中から、一人の長身の貴族が現れた。羽帽子を被っており、凛々しい姿での登場にギーシュはややたじろぐ。
(あれ、そういえばこいつ)
当麻には見覚えがあった。確かアンリエッタがここに来る際――――
「貴様、僕のヴェルダンデに何をするんだ!」
それでもプライドがある。ギーシュはいつでも攻撃をする態勢をとっている。
すると、羽帽子の貴族が突如両手をあげた。敵意がないという証拠である。
「僕は敵じゃない。姫殿下よりきみたちに同行することを命じられてね。お忍びの任務であるため僕個人が指名されたわけだ」
友好的な口調で帽子を取り、一礼をした後、手を差し延べる。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
文句を後一歩の所で吐き出そうとしていたギーシュは、相手のランクを知ってすぐにそれを入れ込んだ。そして、やや不機嫌そうに手を握る。
ワルドはそんなギーシュの様子を見て、首を振った。
「すまない。いくらモグラであろうと婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬ振りは出来なくてね」
「婚約者?」
当麻は思わず口を出してしまった。
「全く……魔法衛士隊の幻獣は化け物か」
「それ、ここでも使われるんだな」
二人ともぐったりと馬に体を預けていた。既に半日以上走りっぱなしで、既に二回も馬を変えている彼らの負担は計り知れない。
ちらっと、当麻は前方の二人を見た。すると、タイミングよくルイズもこちらを向いて来て、二人の目が合った。といっても、ルイズはすぐに視線をワルドの方に戻した為一瞬であったが……
(つーか平気なのかよ)
貴族であるギーシュでさえも既にへばっているというのに、ルイズとワルドはのんびりと話続けている。
しかし、何やらルイズはそんなに楽しくなさそうだと、当麻は感じた。
アンリエッタと話した時の顔を覚えているからこそ、当麻は不思議に感じる。婚約者なのだからもっと喜んでもおかしくはないのだが。
当麻は再びギーシュへと視線を向ける。話しててわかったがこいつはいい奴だ。それが当麻の導いた答えである。
そのギーシュがこちらを見てニヤニヤと笑っている。
「ぷ、ぷぷ。もしかして、きみやきもちを焼いているのかい?」
「……はい?」
当麻はテンションを上げる気もせず、だらけながらもとりあえず会話を成立させようとした。
「だって今前見てたでしょ。二人の様子が気になったんだろ? 悪い事は言わないよ。適わぬ恋を抱いても不幸の元さ」
「あーお前勘違いしてるって」
当麻は一回深くため息を吐いた。
「ただ主人公になれなかった奴の気持ちがちょっとわかっただけさ」
ギーシュはその言葉の意味がわからない様子であったが、当麻はそれ以降視線を外に向けた。
アウレオルス=イザード、そしてステイル・マグヌス。
当麻は知っている。たった一人のヒロインを救おうと主人公になろうとしたが、失敗してしまった人達を。たった一つの主人公というポジションを獲得出来なかった人達の事を。
一人は険悪ながらも当麻と共に戦ったりした。一人は敵対し、命を賭けた戦いにまで発展した。
自分にはわからなかった。勝ち組であるが故に、負け組の気持ちがわからなかった。
だけど今、本当に少しだけだがわかったかもしれない。
ルイズを守る主人公は、彼である気がした。この世界の住人でない当麻が、この世界の主人公にはなってはいけない気がした。
それは不思議と受け入れられた。同じ世界ではない、というのが大きかったかもしれない。
当麻は悩む。
それでも、それでもルイズは言った。
使い魔は主を守らなければならない、と。
たとえ主人公にならないというのがわかっても、あのステイル・マグヌスのように、一人の女の子を守り続ける事が出来るのだろうか?
この幻想殺し一本でそれが出来るのだろうか?
答えは出てこなかった。肯定する確固たる理由が浮かばなかったから……
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