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「サーヴァント・ARMS-03」(2008/02/26 (火) 01:27:24) の最新版変更点
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さて、学院と名前がつく以上、朝食の時間が終われば今度は授業である。
魔法学院の教室は小中高校のような長方形の構造ではなく、1列ごとに段がある大学の講義室に近い。
講義用の教卓と黒板が1番下の段で、階段の様に席が続いているのだ。
涼とルイズが教室に入っていくと、先に教室に来ていた生徒達が一斉に振り向き、そしてクスクスと笑い始める。
食事の時に分かれたキュルケも居た。周りを男子が取り囲んでいる。
容姿から簡単に想像がついたが、案の定クラスではアイドル扱いされているようだ。少し離れた席で腕組みして隼人が静かに座っている。
………違う。居眠りしていた。
その後ろの席には黙って本を読んでいるタバサがいて、その隣に武士が居る。
サーヴァント・ARMS:第3話 『授業』スクールレッスン
その外の生徒は皆、様々な使い魔を連れていた。
フクロウもいればデッカイヘビもいるし、カラスも居れば猫もいる。
中にはバシリスクだの目の玉お化けなバグベアーだの蛸のような人魚のようなスキュアだのとファンタジーど真ん中なのもいた。
もっとも涼達の場合は更にとんでもない物――隕石そっくりな地球外生命体やサイボーグやナノマシンや超能力者や、果てには全長100mを超えそうなだい怪獣(しかも中身は涼自身)や何やらかんやら――
――は嫌って程見てきたので、今更こんな生物見ても大して驚けない。ちょっと夢が無いかもしれないが仕方が無い。
今度は食堂とは違い、ルイズの許しを貰って涼は席に座る事が出来た。
その時ルイズがチラチラと隼人の方を見ていたので、理由はバレバレである。
扉が開いて、教師が入ってきた。
紫色のローブに身を包んで帽子を被った人の良さそうな中年の女性である。カツミの母親――もっとも涼達と同じで血は繋がっていないが――を思い出した。
彼女は教室を見回すと、満足そうに微笑んだ。
「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。
このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
シュヴルーズの視線が涼、隼人、武士の順に移る。
「おやおや、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ。変わった使い魔を召喚したものですね」
「お褒めに預かれて光栄ですわ、ミス・シェヴルーズ」
皮肉を込めてキュルケが答えた。隼人はまだ寝ている。
ルイズは俯いている。涼は教師があまりそういう事言うのは拙いんじゃないか?と思った。
タバサは教師がやってきたのも気にせずまだ読書中である。武士は居心地が悪そうに身じろぎした。
この辺りで誰かから「召喚できないからってその辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」なんて冷やかしが入りそうなものだったが、今回に限って入りはしなかった。
『ゼロ』と呼ばれて落ちこぼれ扱いのルイズだけならともかく、トライアングルクラスの実力者であるキュルケとタバサも召喚したのは同じような平民(?)の少年。
下手すると2人にもケンカを売った事になりかねないから言いたくても言えないのである。
世界が変わろうが、基本的に己より上の実力者相手だと弱腰なのは変わらないという事か。
なんともはや。
「では、授業を始めますよ」
シュヴルーズが杖を振ると、あまりにも唐突に石ころがいくつか現れた。
種も仕掛けもありません、とはこの事か。
話す内容はどうも復習的な内容らしく、それぞれの系統の魔法についての説明だった。
この世界の魔法がどんな物か分からない涼達にとってはかなりありがたい。・・・まだ居眠り中の隼人はともかく。
曰く、魔法には四大系統というものに分けられる。つまり火、水、風、土の四つの系統に。
後は失われた系統として5番目に虚無というのがあるとか。最近のファンタジーゲームよりはよっぽど単純だ。
魔法というものはこの世界ではどうやら科学技術のかわりとして重宝しているらしい。
――けどそれだと、ある意味俺らが召喚されたのってとんでもない皮肉だよなあ――
なにせ涼達は最先端の科学技術で生み出され、科学技術(とその他諸々)によって生まれたARMSを体内に宿している身だ。
ま、彼達の在り方にそんな事さっぱり関係ないのだが。
とりあえずこの世界の技術レベルが中世ヨーロッパ並みな理由がなんとなく分かった。
シェヴルーズが再び杖を振ると石ころが光りだして、光が収まるとそれは輝く金属に変貌していた。
キュルケが金だと勘違いし過剰反応を起こしていたがそれは割愛。
ルイズに聞いてみると、いくつ系統を足して魔法を使えるか、その数によって魔法使い――メイジのレベルが決まるんだとか。
そんな風に涼がルイズの話を聞いていると、シェヴルーズに見咎められてルイズがご指名を受けた。
その瞬間、涼は確かに教室中の空気が凍りついたのを感じた。
別にバンダースナッチが室温を-273℃まで低下させた訳ではない。
慌ててキュルケが立ち上がって声を上げた。何でか声が少し震えている。
「先生!」
「なんです?」
「やめておいた方が良いと思いますけど・・・」
「どうしてですか?」
「危険です」
即答だった。生徒の殆どがクラーク達並にぴったり息を合わせて頷いた。どういう事かさっぱり分からないのは涼と武士だけだ。
隼人はやっぱり寝ていた。
しかしキュルケの説得は実らず、ルイズが教卓の元へと向かっていく。
『・・・高槻涼よ、この者達は一体何を恐れているのだ?』
「さあ、俺にもわからん・・・」
相当ろくでもない事が起こると予想・・・どころか確信しているらしい。
前の方の席の生徒は魔法で防壁みたいな壁を作っているし、後ろの方は机の下に隠れて耳を塞いでいる。タバサは武士を連れて教室から出て行った。
――何だか爆発でも起きるみたいな・・・って、爆発?まさか――
気がつくともうルイズが杖を振り下ろそうとしていたので、涼は慌てて立ち上がった――――
次の瞬間、教卓が文字通り『木っ端微塵』に爆発した。
爆風に耐え切れず、防壁は吹き飛ばされた。
その陰に隠れていた生徒もなすすべなく床に叩きつけられた。
驚いた使い魔たちが暴れだした。悲痛な鳴き声。生徒の悲鳴、絶叫、怒号。
阿鼻叫喚、死屍累々―――後者はともかく、文字通りの大パニックである。
そして爆心地に居たルイズとシェヴルーズは爆発をもろに受けて―――
「・・・・・え?」
「こ、これは・・・」
「ふう、間に合って良かった」
―――いなかった。
左右それぞれルイズとシェヴルーズを脇に抱える形で、涼が爆心地から離れた教室の隅に居た。
――すこし久々だったから出来るかどうか判らなかったけど、高速移動が使えて良かった――
少々煤にまみれてはいるが、3人とも怪我は無い。
「何だ!?何が起こった!?」
「だから言ったのよ!あいつにやらせるなって!」
「もう!ヴァリエールは退学にしてくれよ!」
「俺のラッキーがヘビに食われた!ラッキーが!」
「ちくしょう!だから『ゼロ』のルイズにやって欲しくなかったんだ!いつもいつもとんでもない失敗しやがって!」
………もっとも、周囲は反比例して被害甚大だが。
ちなみに最初のセリフはようやく目覚めて状況把握が出来ていない隼人のものである。
――あー、もしかして『ゼロ』って、魔法の成功率ゼロだからだったりするのか?――
実はドンピシャな推測を立てた涼がルイズとシェヴルーズを下ろしたその時、キュルケから何が起こったのか聞いた隼人が思わず叫んでいた。
「こんのバッキャロー!!ドジ踏むならもうちょっとマシなドジ踏みやがれ!」
それは隼人の短気な性分と、昨日からのルイズの―特に涼に対しての―横暴とも言える振る舞いに対する悪感情から放たれた言葉だったが。
今回ばかりは、タイミングが悪すぎた。
――隼人、追い討ちをかけないでくれよ――
すぐそっぽを向いたお陰でほんの一瞬だが、ルイズの瞳に浮かんだ涙に気付いた涼は、額を押さえて思わず天を仰いだ。
空は、見えなかったが。
「・・・これって、どう収拾つければいいのかなあ」
「無残無残」
結局教室が破壊されたために授業は中断。
一部の生徒や使い場がパニック性の極度の興奮状態に陥ったので、結局今日の授業はお開きとなった。
他の生徒は昼食を取りに行ってしまったので、今教室に居るのはルイズと涼だけである。罰として教室の片づけを命じられたのである。
隼人や武も手伝おうとしたのだが、シェヴルーズに止められたので渋々キュルケやタバサと共に立ち去った。
これは罰なので、他の人が手を貸すのは矯めにならない、という事だろう。
もっとも結局清掃業者が勧誘したくなりそうな手際の良さでテキパキ教室の後片付けを終わらせたのは涼であって、ルイズは単に机を拭いた程度なのだが。
「これでよし。それじゃあ昼飯食べに行くか、ルイズ」
「・・・・・・・・・・何も言わないの」
「ん?何がだ?」
「だから!魔法に失敗した事よ!」
いきなりルイズは爆発した。物理的ではなく感情的に。
「バカにしたいならすればどーなの!そんな言われた通り黙々とやってないで!言いたい事があればハッキリ言ってみなさいよ!!」
「別にそんな事いきなり言われてもなあ・・・それに俺はルイズの事バカにするつもりなんて、これっぽっちも無いぞ?」
「ありきたりな嘘つかないで!あんたも思ってるんでしょ?貴族なのに、メイジなのに魔法が全然使えないって!
私だってね、好きでいつもいつも失敗してるんじゃないのよ!本も毎日何冊も何冊も読んだ!魔法の練習も勉強も人一倍やってきた!
なのに爆発ばっかり・・・何で・・・何でなのよ―――――・・・・・・」
血を吐くような叫び。
それは努力も実らず、努力を誰にも認めて貰えずにいたルイズの独白。
だが、それは。
「・・・あのさ、ルイズ」
今日この日。その想いは実り始める。
「俺が認めるよ、ルイズの事」
「・・・・・え・・・?」
「だってさ、ルイズは俺を召喚したんだろ。『コントラクト・サーヴァント』って『魔法』で。それならさ、ルイズも魔法が使えたってことじゃないのか」
「でも・・・あんた、平民じゃない」
「んー、まあある意味その通りなんだけどな―――『ただ』の平民じゃないんだよ、これでも」
自画自賛は涼の趣味ではないが、嘘は言っていない。
ただの人間として平穏な人生を送るために、涼達は戦ってきた存在なのだから。
「はぁ?どういう意味よ」
「まあその時がもし来たら教えるからさ、とりあえず元気出せって。きっと昼飯食べたら元気も出るぞ」
「・・・わかったわよ。その前に、厨房に寄るわよ」
「何でだ?」
「・・・あんたの分の食事。申し越しマシなの出してあげるから、か、感謝しなさいよね」
「・・・ああ、サンキュ」
「ところで授業の時にあんた、いつの間にか私とミス・シェヴルーズを抱えてたけどあれって一体どうやったの?」
「ああ、あれか?まあ簡単に言えば俺の中の『力』の1つって感じだな」
先に厨房へと向かうため、食堂の前を通り過ぎた時にその声は聞こえてきた。
「いいだろう!!君に決闘を申し込む!!」
「上等だぁ!!相手んなってやる!!」
『うおおおおおおおおおっっ!!!』
「ちょっと、ケンカは良くないよ隼人くーん!!」
「・・・何だコリャ」
「それはこっちのセリフよ」
#navi(サーヴァント・ARMS)
さて、学院と名前がつく以上、朝食の時間が終われば今度は授業である。
魔法学院の教室は小中高校のような長方形の構造ではなく、1列ごとに段がある大学の講義室に近い。
講義用の教卓と黒板が1番下の段で、階段の様に席が続いているのだ。
涼とルイズが教室に入っていくと、先に教室に来ていた生徒達が一斉に振り向き、そしてクスクスと笑い始める。
食事の時に分かれたキュルケも居た。周りを男子が取り囲んでいる。
容姿から簡単に想像がついたが、案の定クラスではアイドル扱いされているようだ。少し離れた席で腕組みして隼人が静かに座っている。
………違う。居眠りしていた。
その後ろの席には黙って本を読んでいるタバサがいて、その隣に武士が居る。
サーヴァント・ARMS:第3話 『授業』スクールレッスン
その外の生徒は皆、様々な使い魔を連れていた。
フクロウもいればデッカイヘビもいるし、カラスも居れば猫もいる。
中にはバシリスクだの目の玉お化けなバグベアーだの蛸のような人魚のようなスキュアだのとファンタジーど真ん中なのもいた。
もっとも涼達の場合は更にとんでもない物――隕石そっくりな地球外生命体やサイボーグやナノマシンや超能力者や、果てには全長100mを超えそうなだい怪獣(しかも中身は涼自身)や何やらかんやら――
――は嫌って程見てきたので、今更こんな生物見ても大して驚けない。ちょっと夢が無いかもしれないが仕方が無い。
今度は食堂とは違い、ルイズの許しを貰って涼は席に座る事が出来た。
その時ルイズがチラチラと隼人の方を見ていたので、理由はバレバレである。
扉が開いて、教師が入ってきた。
紫色のローブに身を包んで帽子を被った人の良さそうな中年の女性である。カツミの母親――もっとも涼達と同じで血は繋がっていないが――を思い出した。
彼女は教室を見回すと、満足そうに微笑んだ。
「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。
このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
シュヴルーズの視線が涼、隼人、武士の順に移る。
「おやおや、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ。変わった使い魔を召喚したものですね」
「お褒めに預かれて光栄ですわ、ミス・シェヴルーズ」
皮肉を込めてキュルケが答えた。隼人はまだ寝ている。
ルイズは俯いている。涼は教師があまりそういう事言うのは拙いんじゃないか?と思った。
タバサは教師がやってきたのも気にせずまだ読書中である。武士は居心地が悪そうに身じろぎした。
この辺りで誰かから「召喚できないからってその辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」なんて冷やかしが入りそうなものだったが、今回に限って入りはしなかった。
『ゼロ』と呼ばれて落ちこぼれ扱いのルイズだけならともかく、トライアングルクラスの実力者であるキュルケとタバサも召喚したのは同じような平民(?)の少年。
下手すると2人にもケンカを売った事になりかねないから言いたくても言えないのである。
世界が変わろうが、基本的に己より上の実力者相手だと弱腰なのは変わらないという事か。
なんともはや。
「では、授業を始めますよ」
シュヴルーズが杖を振ると、あまりにも唐突に石ころがいくつか現れた。
種も仕掛けもありません、とはこの事か。
話す内容はどうも復習的な内容らしく、それぞれの系統の魔法についての説明だった。
この世界の魔法がどんな物か分からない涼達にとってはかなりありがたい。・・・まだ居眠り中の隼人はともかく。
曰く、魔法には四大系統というものに分けられる。つまり火、水、風、土の四つの系統に。
後は失われた系統として5番目に虚無というのがあるとか。最近のファンタジーゲームよりはよっぽど単純だ。
魔法というものはこの世界ではどうやら科学技術のかわりとして重宝しているらしい。
――けどそれだと、ある意味俺らが召喚されたのってとんでもない皮肉だよなあ――
なにせ涼達は最先端の科学技術で生み出され、科学技術(とその他諸々)によって生まれたARMSを体内に宿している身だ。
ま、彼達の在り方にそんな事さっぱり関係ないのだが。
とりあえずこの世界の技術レベルが中世ヨーロッパ並みな理由がなんとなく分かった。
シェヴルーズが再び杖を振ると石ころが光りだして、光が収まるとそれは輝く金属に変貌していた。
キュルケが金だと勘違いし過剰反応を起こしていたがそれは割愛。
ルイズに聞いてみると、いくつ系統を足して魔法を使えるか、その数によって魔法使い――メイジのレベルが決まるんだとか。
そんな風に涼がルイズの話を聞いていると、シェヴルーズに見咎められてルイズがご指名を受けた。
その瞬間、涼は確かに教室中の空気が凍りついたのを感じた。
別にバンダースナッチが室温を-273℃まで低下させた訳ではない。
慌ててキュルケが立ち上がって声を上げた。何でか声が少し震えている。
「先生!」
「なんです?」
「やめておいた方が良いと思いますけど・・・」
「どうしてですか?」
「危険です」
即答だった。生徒の殆どがクラーク達並にぴったり息を合わせて頷いた。どういう事かさっぱり分からないのは涼と武士だけだ。
隼人はやっぱり寝ていた。
しかしキュルケの説得は実らず、ルイズが教卓の元へと向かっていく。
『・・・高槻涼よ、この者達は一体何を恐れているのだ?』
「さあ、俺にもわからん・・・」
相当ろくでもない事が起こると予想・・・どころか確信しているらしい。
前の方の席の生徒は魔法で防壁みたいな壁を作っているし、後ろの方は机の下に隠れて耳を塞いでいる。タバサは武士を連れて教室から出て行った。
――何だか爆発でも起きるみたいな・・・って、爆発?まさか――
気がつくともうルイズが杖を振り下ろそうとしていたので、涼は慌てて立ち上がった――――
次の瞬間、教卓が文字通り『木っ端微塵』に爆発した。
爆風に耐え切れず、防壁は吹き飛ばされた。
その陰に隠れていた生徒もなすすべなく床に叩きつけられた。
驚いた使い魔たちが暴れだした。悲痛な鳴き声。生徒の悲鳴、絶叫、怒号。
阿鼻叫喚、死屍累々―――後者はともかく、文字通りの大パニックである。
そして爆心地に居たルイズとシェヴルーズは爆発をもろに受けて―――
「・・・・・え?」
「こ、これは・・・」
「ふう、間に合って良かった」
―――いなかった。
左右それぞれルイズとシェヴルーズを脇に抱える形で、涼が爆心地から離れた教室の隅に居た。
――すこし久々だったから出来るかどうか判らなかったけど、高速移動が使えて良かった――
少々煤にまみれてはいるが、3人とも怪我は無い。
「何だ!?何が起こった!?」
「だから言ったのよ!あいつにやらせるなって!」
「もう!ヴァリエールは退学にしてくれよ!」
「俺のラッキーがヘビに食われた!ラッキーが!」
「ちくしょう!だから『ゼロ』のルイズにやって欲しくなかったんだ!いつもいつもとんでもない失敗しやがって!」
………もっとも、周囲は反比例して被害甚大だが。
ちなみに最初のセリフはようやく目覚めて状況把握が出来ていない隼人のものである。
――あー、もしかして『ゼロ』って、魔法の成功率ゼロだからだったりするのか?――
実はドンピシャな推測を立てた涼がルイズとシェヴルーズを下ろしたその時、キュルケから何が起こったのか聞いた隼人が思わず叫んでいた。
「こんのバッキャロー!!ドジ踏むならもうちょっとマシなドジ踏みやがれ!」
それは隼人の短気な性分と、昨日からのルイズの―特に涼に対しての―横暴とも言える振る舞いに対する悪感情から放たれた言葉だったが。
今回ばかりは、タイミングが悪すぎた。
――隼人、追い討ちをかけないでくれよ――
すぐそっぽを向いたお陰でほんの一瞬だが、ルイズの瞳に浮かんだ涙に気付いた涼は、額を押さえて思わず天を仰いだ。
空は、見えなかったが。
「・・・これって、どう収拾つければいいのかなあ」
「無残無残」
結局教室が破壊されたために授業は中断。
一部の生徒や使い場がパニック性の極度の興奮状態に陥ったので、結局今日の授業はお開きとなった。
他の生徒は昼食を取りに行ってしまったので、今教室に居るのはルイズと涼だけである。罰として教室の片づけを命じられたのである。
隼人や武も手伝おうとしたのだが、シェヴルーズに止められたので渋々キュルケやタバサと共に立ち去った。
これは罰なので、他の人が手を貸すのは矯めにならない、という事だろう。
もっとも結局清掃業者が勧誘したくなりそうな手際の良さでテキパキ教室の後片付けを終わらせたのは涼であって、ルイズは単に机を拭いた程度なのだが。
「これでよし。それじゃあ昼飯食べに行くか、ルイズ」
「・・・・・・・・・・何も言わないの」
「ん?何がだ?」
「だから!魔法に失敗した事よ!」
いきなりルイズは爆発した。物理的ではなく感情的に。
「バカにしたいならすればどーなの!そんな言われた通り黙々とやってないで!言いたい事があればハッキリ言ってみなさいよ!!」
「別にそんな事いきなり言われてもなあ・・・それに俺はルイズの事バカにするつもりなんて、これっぽっちも無いぞ?」
「ありきたりな嘘つかないで!あんたも思ってるんでしょ?貴族なのに、メイジなのに魔法が全然使えないって!
私だってね、好きでいつもいつも失敗してるんじゃないのよ!本も毎日何冊も何冊も読んだ!魔法の練習も勉強も人一倍やってきた!
なのに爆発ばっかり・・・何で・・・何でなのよ―――――・・・・・・」
血を吐くような叫び。
それは努力も実らず、努力を誰にも認めて貰えずにいたルイズの独白。
だが、それは。
「・・・あのさ、ルイズ」
今日この日。その想いは実り始める。
「俺が認めるよ、ルイズの事」
「・・・・・え・・・?」
「だってさ、ルイズは俺を召喚したんだろ。『コントラクト・サーヴァント』って『魔法』で。それならさ、ルイズも魔法が使えたってことじゃないのか」
「でも・・・あんた、平民じゃない」
「んー、まあある意味その通りなんだけどな―――『ただ』の平民じゃないんだよ、これでも」
自画自賛は涼の趣味ではないが、嘘は言っていない。
ただの人間として平穏な人生を送るために、涼達は戦ってきた存在なのだから。
「はぁ?どういう意味よ」
「まあその時がもし来たら教えるからさ、とりあえず元気出せって。きっと昼飯食べたら元気も出るぞ」
「・・・わかったわよ。その前に、厨房に寄るわよ」
「何でだ?」
「・・・あんたの分の食事。申し越しマシなの出してあげるから、か、感謝しなさいよね」
「・・・ああ、サンキュ」
「ところで授業の時にあんた、いつの間にか私とミス・シェヴルーズを抱えてたけどあれって一体どうやったの?」
「ああ、あれか?まあ簡単に言えば俺の中の『力』の1つって感じだな」
先に厨房へと向かうため、食堂の前を通り過ぎた時にその声は聞こえてきた。
「いいだろう!!君に決闘を申し込む!!」
「上等だぁ!!相手んなってやる!!」
『うおおおおおおおおおっっ!!!』
「ちょっと、ケンカは良くないよ隼人くーん!!」
「・・・何だコリャ」
「それはこっちのセリフよ」
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