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「ゼロの独立愚連隊-02」(2008/03/05 (水) 00:16:26) の最新版変更点
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#navi(ゼロの独立愚連隊)
とぼとぼと中庭を歩く背中が一つ。建物の窓をのぞいたり、渡り廊下の先をぐるりと見回してはため息をついて再び歩き出す。
サモンジである。
昼飯は抜きだ、と怒鳴るルイズを何とかなだめて食事にありつこうとしたが、ルイズは無常にもそのままサモンジをおいて食事に行ってしまった。
集めたゴミがそのままでは収まりがわるいので、とりあえず教室の隅にゴミを寄せて追いかけたが……すでにどこにも見当たらない。
そして現在、食堂を探して歩き回っている最中なのだが、気力が尽きそうである。
「とほほ~、昨日からひどい目に遭ってばっかりだなぁ……実はやっぱり夢だったり、ってオチはないのかなぁ」
そう呟きながら、今歩いている廊下を見渡すとベンチがある。どっこらしょ、という声と共に深く腰を落すと、疲れから体がベンチに沈み込むような間隔さえある。
部屋から持ってきたライフルを杖代わりにもたれ掛かり大きくため息を付く。さっきの授業で本格的にこのトリステイン魔法学院が怪物のうろうろする異郷だと実感して用意してみたが……
レベル1のライフルと技能なしの高速振動剣では心もとないどころか返り討ちだ。サモンジはメック戦士が本業だし、指揮官は後衛が基本である。
(生きるか死ぬの戦場なら昔もそうだけど、食われるってのはいやだなぁ)
何か、こう人生的なご褒美がなければやってられないよ……そう思いながら顔を上げると
ぱたぱたと動く足がスカートの生地を叩いてひらひらとはためいている。長いスカートのすそからちらちら靴下と白い脚が見えるのがすばらしい。ワゴンカートから落ちたパンを拾うために屈むとスカートにお尻の形が浮き上がる。
「め、メイドさんっ!?そんな方向性もあったのか!」
さっそく新しい世界に開眼した。
イワンと『元気系つくす系色気系にホモ、なんて4人組は新しい』なんて言ってたのが馬鹿みたいだ……こりゃ新発見だ」
(黒髪にはロングが似合うって言うけど、これくらいなのもなかなか……髪の綺麗さを目立たせない代わりに、服の造作や細かい仕種にも目が行くからそっちを楽しめるってのも……)
すっかり元気になっておっさんぶりを取り戻している。ニヨニヨしながらそのメイドさんが銀盆の上にワインを並べて運んでいるのを見守る。そのメイドさんが廊下の奥に消えるまで見続けると、今度は別のメイドさんがワゴンカートを押しながらこっちの方へ戻ってくる。
次々に目の前を行き来するメイドさん達を前から後ろから視線でホーミングする……ふと気付き、廊下の奥を覗いてみる。
「ここ食堂だよ!もう着いてたのか。お~い、ルイズちゃーん」
「はい、どうぞ。賄いのシチューで申し訳ないですけど」
「いやいやいや、ありがたいですよ」
ルイズにあっさりと撃墜されたので厨房で余り物をもらう事にした。なんかもう色々タフになってきたなあ、と一人ごちるサモンジ。
しばらくしてシチューを持ってきてくれたメイドさんに手を合わせてシチュー皿を受け取る。いただきますを言うやいなや、早速一口二口と口に運んでいく。
「うっはー、これおいしいですねぇ!………おかわりっ。いや本当においしいですよ、あなたが作ってくれたんですか、え~っと……」
「あ、ははは。私はシエスタです。ミス・ヴァリエールの使い魔になったサモンジさん、でよかったですよね?これを作ったのはコック長のマルトーさんですよ」
そう言ってもう一度シチュー鍋に向かうシエスタ。厨房の中を見回すと、違う鍋の前にいる一人のコックと目が合い、満面の笑みを返される。
何だろうと問い返す前に直ぐに鍋に向き直られる。と、そこにちょうどシエスタがおかわりを持って来た。
「や、ありがとうございます。えっと、あのコックさんがマルトーさん?」
「ええ、そうですよ。マルトーさんは元は「シエスタぁ!面倒見がいいのは構わんが、自分の仕事を忘れてないかぁ」
そこに先ほどのコック―彼がマルトーコック長か―が笑いながらサモンジの横にどっかと腰掛ける。シエスタは、あっと声を上げると慌てて別のテーブルからデザートをワゴンに載せ始める。
「ああすみませんね。私がおかわりまで頼んだもんだから。あんまり責めないで上げてやってください、ほとんど私のせいですから」
「はっはっは、俺の料理を褒めてくれた奴の言葉だ。聞かないわけにはいかねぇな」
そう言って自分の仕事は終わった、とばかりにサモンジの横でしゃべり始めるマルトー。一仕事終えての息抜きのつもりだろうが、話の中身の大半は貴族への悪口である。
「だから言ってやったのよ。俺の料理が俺の魔法だ、ってよ。っと、俺ばかり喋っちまったな。サモンジさんよ、あんたも災難だなぁ、勝手に呼び出されて使い魔なんて奴隷にされるなんてよ」
「あは、はっはっは……いや」
やたら相槌を求めてくるのでシチューがさめているのだが、マルトーの話はまだ終わらない。
「あんたの風体からしてトリステインの出身じゃないだろ?どこから来たんだ?仕事は何やってたんだ?」
ようやくこちらに話の主導権がやってくる。とりあえず当たり障りないことから話すことにする。
「そうですねぇ、このトリステインって国自体知らないもんですからどこからってのは答え難いですね。仕事はメック戦士…ま、傭兵ですね。本当は学校で農業の研究したかったんですが、兄が戦死して家を継ぐことになりまして」
「っと、そいつはすまんね。にしても、あんた平民のなのに学校行ってたのか……傭兵でも儲かる家は儲かるんだな。傭兵ってことはもしかして、その変な棒は銃って武器なのか?話には聞いてたけど、鉄の棒みたいって言うには遠いよなぁ」
質問がやまない。兄の話を出せばいい加減話がやむ思ったのだが……半ばやけくそ気味にマルトーと話を続けていると、厨房にシエスタが青い顔で飛び込んでくる。
「た、大変ですサモンジさん!ミス・ヴァリエールが…すぐにヴェストリの広場に、助けてあげてください!」
イベントフラグを逃したように見えても所詮TRPGリプレイキャラ、重要イベントは回避不能である。
ヴェストリの広場とやらに向かう途中にシエスタから聞いた話では、シエスタが貴族の痴話喧嘩のとばっちりで貴族に叱責されていたところを、ルイズが庇ってくれたと言う。
やっぱりそこまで悪い子じゃないんだね、とのんきに答えるサモンジだが、その貴族とルイズが決闘騒ぎになっていると聞いて顔色が変わる。
「決闘って、やっぱり魔法でやるのかい?でもルイズちゃんは…」
だが、シエスタに難癖をつけてきた貴族はルイズまで侮辱するように『ゼロのルイズがメイド如きの名誉を庇うのかい?それならそのメイドの代理決闘者として僕と決闘で互いの名誉を競おうじゃないか』と言い出してきたらしい。
「なんだいそりゃ?ルイズちゃんのプライドを煽って絶対勝てる勝負に持ち込んだわけか。小ずるい奴だなぁ…ようし、私が何とかするよ。まかせておきなさいっ」
そう言ってシエスタに笑いかけるサモンジ。そうしている内に、決闘の場所であるヴェストリの広場に到着する。
中庭になった場所にあるそこは、うわさを聞いた生徒がまばらに、だが大きな輪になって取り囲み、その中央で金髪の貴族とルイズがいた。
ルイズの周囲の地面はあちこちがえぐれており、ルイズの服は汚れ、ところどころ破れてしまっている。あの爆発する魔法に自分を巻き込んだのだろう。
それに対して金髪の貴族は、十分に距離をとった所からバラの造花を振って金属の人形を一体近くに作り出す。
「みっともないなぁ、ゼロのルイズ。僕の美しいワルキューレをそんな無様なウインドカッターで壊すなんて。もしかしてエアハンマーの間違いだったかな?」
その貴族の声に周りの生徒から嘲笑が上がる。その声にきっと顔を上げて目の前の貴族を睨み返すルイズ。
「だまってなさい!あんたみたいに貴族の誇りを忘れた奴に、私を、あのメイドを侮辱する資格なんて、私は認めないっ!そして私はゼロじゃない、ファイヤーボール!」
見当違いの場所で起こる爆発。笑い声を上げる周りの生徒。正直、サモンジには見るに耐えない。罵声に耐えるルイズも、周囲で笑う生徒も、『ゼロ』と罵る金髪の生徒も。
サモンジは近くの塔の壁に背中を預け、肩から提げていたレーザーライフルの安全装置を解除する。まずは低出力モードにしてレーザーポインタ代わりにスコープを使えばまず当たる。。
距離は約80メートル。不安なら気合を入れれば―利用可能経験点を使えば―外すことはない条件。その上レーザーポインタの存在を知らない相手だ。ゆっくりあの杖を狙って……
学園長室では、オスマンとコルベールが広場の様子を監視している。
ギーシュとルイズが決闘騒ぎになっていると聞き、もしやガンダルーヴのルーンを持つかもしれないというルイズの使い魔の実力を見られるかと思い『遠見の鏡』で広場の様子を観察していたのだ。
結局決闘には使い魔は現れず、爆発しか起こせないルイズに、それを哂いながら遊んでいるギーシュという構図である。
見るべきところもないので、コルベールか誰かを仲裁に向かわせようとした時、コルベールが広場の隅、塔の外壁沿いにいるサモンジを見つけたのである。
「あの使い魔は何をしようとしておるのかのう」
「解りません。しかし…あの構え、銃やボウガンの構えに似ています。それに、構えているあの棒は、あの男が召喚されたときに持っていた物のようですぞ」
その言葉にふむ、と唸るオスマン。
「となれば、あらゆる武器を使いこなすという伝説を確かめるにはちょうどいい、というわけじゃな」
「ええ。最近設立された銃士隊の新型銃でもあの100メイル近い距離では銃の性能限界。しかしあれを当てることができるならば……」
長々とルイズをいたぶっていたギーシュだが、そろそろまずいと思えてきた。ギーシュとてゼロの癖にこちらに食って掛かるルイズは気に入らないが、それでも女の子に暴力を振るうのは好きではない。
だが、ルイズを見れば未だこちらを睨み返してくる。周りの罵声にうっすらの涙を滲ませ、それでも今度こそ成功させると杖を振るう。また爆発。ギーシュのゴーレムのはるか頭上に煙が漂っている。
それでも杖を手放さないルイズに流石にギーシュも可哀想になってくる。降伏を勧めても彼女は認めまい、ワルキューレで少々強引にでも杖を奪うか、そう思い薔薇を象った杖を握る右腕を広げる。
あと2体。合計3体のワルキューレで囲んで杖を奪う。これで終わりだ。
ギーシュは気付いていない。自分の持つ薔薇の杖が、ちらちらと光っていることに。周囲の生徒には気付いた者もいたかもしれないが、ギーシュが新たなゴーレムを作ろうとしている、くらいにしか思っていないだろう。
そして、広場を細い光が一条横切った。
ジリッ、という鋭い音がギーシュの右手から走った。ふと右手の杖を見たギーシュの前にあったのは、薔薇がなくなった茎だけの自分の杖だった。杖が半ばで折れ、薔薇の造花は地面に落ちている。これではもう魔法は使えない。
驚くギーシュと何が起こったかわからないルイズや生徒。そこにサモンジが割って入ってくる。
「はいはいはい!喧嘩は終了、解散、かいさ~ん」
声を張り上げながらルイズの傍にやってきて、ハンカチで顔を拭う。
「や~、遅くなったけど助けに来たよルイズちゃん。怪我はないかな?銃は専門外だけど上手くいってよかったよ」
「な、何よあんた…助けに来たって……それより!誰が助けを求めたのよ!」
サモンジを前にして急に強気に振舞おうとするルイズ。しかし体は疲れ切っているのか座り込んだまま立ち上がらない。
そこに教師たちも余ってきて皆に解散するよう指示を飛ばし始める。
もっと早く来ればいいのに……ウチの部隊に来る援軍はギリギリが間に合わないとか、実は裏切り者だった、とかそんなのばっかだよ、と一人ごちるサモンジの前に二人の生徒がやってくる。
「しばらくぶりね、サモンジさん。どう?ルイズの様子は」「……」
いつぞやのキュルケと、もう一人青い髪の小さな女の子だ。サモンジが何か言う前に早速ルイズがキュルケに噛み付く。それをキュルケが笑いながらあしらう。こっちはもう大丈夫だろうと、サモンジはギーシュの方へ向かう。
「や、君大丈夫かい?一応杖だけを狙ったつもりだけど、指は……うん、大丈夫そうだね」
「あなたは…お前はルイズの使い魔の平民か。なれなれしいぞ、何の用だ!」
ばっと立ち上がるギーシュ。その両肩に手を乗せて顔を近づけるサモンジ。
「いやぁ~、か弱い女の子相手に決闘けしかけて、引っ込みが付かなくなったとこを助けてあげたんだよぉ?ちょっとは感謝しようよ」
にやり、とできるだけ不敵な表情で笑うサモンジ。両肩を掴む手を押し返そうとするギーシュだが、さらにサモンジが畳み掛ける。
「何で君の杖がいきなり折れたか解ったかな?この銃で撃たせてもらったのさ……もちろん、当てようと思えば他の物も狙えたけどね」
その言葉に言葉を詰まらせるギーシュ。要するに、飛び道具での不意打ちなら平民でもメイジを容易に殺せる、それをこの男は実演して見せたのだ。
そして、この距離でようやく解る。この男は、訓練された兵士だ。自分の父や兄弟とはまた違う、貴族として戦う兵士や将ではない。兵士や将として生きる、そんな空気を併せ持って生きている。
「まあまあ、結局決闘の結果は私の乱入で無効試合ってことにしません?なんせ、あなた魔法の使えないルイズちゃんに決闘吹っかけるなんて真似したんですよ。これで負けたら恥ですけど、勝ったとしても……ねえ」
そういわれてしまえば、最早口では勝てない。むしろ、ギーシュとしてはこの決闘をうやむやにできるというのは願ったり適ったりである。
ふう、と一息ついて考える。学院内での評判は決闘の勝敗の如何に関わらず遺恨が残る物にしかならないだろう。そもそも家の格では向こうが上、遺恨を残すことはできない。
それに、ギーシュ・ド・グラモンは薔薇を名乗る貴族、紳士のつもりである。今までの行いは、自分に相応しい物ではない。冷静になれば、その場限りの面子のために自分がいかに愚かなことをしようとしたかが解る。
「そうだね、使い魔君。君の言うとおりだ…その申し出、ありがたく受けさせてもらおう。それと、この愚かな行いを止めてくれた借りはいつか返すよ。ギーシュ・ド・グラモンの名に賭けて」
そう言って薔薇のなくなった杖を一振りしてルイズ達の方へ向かう。まあ、落ち着いてみればやはりそう悪い人間ではないのだろう。サモンジも安心して一息ついてから後を追う。
変わって再び学園長室。
「………結局、なんだったんじゃ?いったい」
何が起こったかさっぱりわからない。あの使い魔は壁を背に銃らしき物を構えたり下ろしたりし、ようやく構えたかと思えばじっと動かない。いい加減オスマンらが焦れてきた所で遠見の鏡の上に線が浮いた、と思うと銃を下ろして無造作に決闘の場に向かう。
何をしているのかと思ってルイズ達の方へ視点を動かすと、決闘は終わっていた。何度も今の光景を思い返すが、何が起きたか、誰が何をしてこうなったかが解らない。
いや、あの使い魔が何かをしたのは確かだ。持っていたのはあの鉄の棒だからそれを使ったのだろう。しかし、それで何をしたかが解らない。
「銃、ではなかったようですね。火薬の爆発がありませんでした。もしかしたら、マジックアイテムかもしれませんね……そう、あの破壊の杖のような」
「そうか…やはり、例外の使い魔らしく色々と規格外のようじゃな。もうしばらく様子を見ようかの」
そして、その言葉を扉の外で聞いている者がいた。
騒がしい一団が廊下を進む。一番後ろでサモンジの隣を歩くミス・シュヴールズも最早注意するのを諦めたようだ。
決闘騒ぎの主犯格の二人を注意しに来たようだが、ルイズの疲労が激しいので医務室までは着いて来る様子である。
ギーシュの非を認めているのかいないのか良くわからない謝罪と決闘をうやむやにするような言葉に噛み付くルイズ。ルイズに肩を貸しながら笑うキュルケ。無言で着いて来る青い少女(タバサというらしい)。
ライフルでギーシュの杖を狙ったとき。突然左手が、正確には左手の文字が光ったのだ。慌てて手を見ている間に射撃の機会を失って決闘への介入が遅れてしまったが、その後の射撃はひどく正確だった。
この文字については使い魔の契約完了の証と聞いていたが、後で確認してみることにする。やはり、魔法という物は色々と解らないことが多すぎる。
医務室ではルイズに簡単な診察が行われ、特に大したこともないということで夜までベッドで休んでいるようにとのことであった。そしてそのままシュヴールズによる説教タイムに入り、キュルケたちは早々に退散する。
サモンジも退散したいのだが、特にやることも無く、ルイズを放って置くわけにも行かないので、近くの椅子に腰掛けて待つ。
待つ。
待つ。
と、医務室のドアが開かれる。
「し、失礼しますっ!ミス・ヴァリエールがここにいると…」
メイドのシエスタだった。ルイズの見舞いに来たようだが、シュヴールズの説教に決闘の発端(これは微妙にぼかして)と、ルイズが自分を庇って決闘を受けたことなどを説明し、両者の処分を軽減するように頼み始める。
シュヴールズも学生の無茶にあまり付き合いたくなかったのだろう、そういうことなら、と双方に次に処分に値することをすれば容赦はしない、とだけ言って帰っていった。
早速シエスタがルイズに謝りだす。ルイズが笑いながら気にしないようと言おうとして、シエスタが勢い込んで割り込む。そこにさらにギーシュが割り込む。
「いいから気にしな「そんなことありません!私は本当に「…渡すなど配慮に欠ける行動ではあった。しかしそれを必要以上に僕が責めて「私も自分の誇りのためにやっ「それでもっ!私は感動したんで「だから僕は、あえて君に己に非があったと…
そうやって騒ぐルイズたちをサモンジは微笑みながら眺める。まったく、子供は元気だねぇ…ま、喧嘩してるよりは仲良さそうでいいか……そう思いながら、自分の身の上を考える。
「そっか…小隊で動くことが多かったから気にしなかったけど、今って……私一人なんだな…」
暗くなりつつある空に、窓から月が二つ見える。だが、自分が今まで行った星の中でこんな月が見える星はなかった。そして、魔法使いなど聞いた事も無い。
気楽そうな、のんきそうな顔で目の前の賑やかな騒ぎを眺めながら、僅かな寂しさをサモンジは飲み込んだ。
#navi(ゼロの独立愚連隊)
#navi(ゼロの独立愚連隊)
とぼとぼと中庭を歩く背中が一つ。建物の窓をのぞいたり、渡り廊下の先をぐるりと見回してはため息をついて再び歩き出す。
サモンジである。
昼飯は抜きだ、と怒鳴るルイズを何とかなだめて食事にありつこうとしたが、ルイズは無常にもそのままサモンジをおいて食事に行ってしまった。集めたゴミがそのままでは収まりがわるいので、とりあえず教室の隅にゴミを寄せて追いかけたが……すでにどこにも見当たらない。
そして現在、食堂を探して歩き回っている最中なのだが、気力が尽きそうである。
「とほほ~、昨日からひどい目に遭ってばっかりだなぁ……実はやっぱり夢だったり、ってオチはないのかなぁ」
そう呟きながら、今歩いている廊下を見渡すとベンチがある。どっこらしょ、という声と共に深く腰を落すと、疲れから体がベンチに沈み込むような間隔さえある。
部屋から持ってきたライフルを杖代わりにもたれ掛かり大きくため息を付く。さっきの授業で本格的にこのトリステイン魔法学院が怪物のうろうろする異郷だと実感して用意してみたが……
レベル1のライフルと技能なしの高速振動剣では心もとないどころか返り討ちだ。サモンジはメック戦士が本業だし、役割は指揮官なので後衛が基本である。
(生きるか死ぬの戦場なら昔もそうだけど、食われるってのはいやだなぁ)
何か、こう人生的なご褒美がなければやってられないよ……そう思いながら顔を上げると、ぱたぱたと動く足がスカートの生地を叩いてひらひらとはためいている。長いスカートのすそからちらちら靴下と白い脚が見えるのがすばらしい。ワゴンカートから落ちたパンを拾うために屈むとスカートにお尻の形が浮き上がる。
「め、メイドさんっ!?そんな方向性もあったのか!」
さっそく新しい世界に開眼した。
「イワンと『元気系つくす系色気系にホモ、なんて4人組は新しい』なんて言ってたのが馬鹿みたいだ……こりゃ新発見のジャンルだなぁ」
(黒髪にはロングが似合うって言うけど、これくらいの長さなのもなかなか……髪の綺麗さを目立たせない代わりに、服の造作や細かい仕種にも目が行くからそっちを楽しめるってのも……)
すっかり元気になっておっさんぶりを取り戻している。ニヨニヨしながらそのメイドさんが銀盆の上にワインを並べて運んでいるのを見守る。そのメイドさんが廊下の奥に消えるまで見続けると、今度は別のメイドさんがワゴンカートを押しながらこっちの方へ戻ってくる。
次々に目の前を行き来するメイドさん達を前から後ろから視線でホーミングする……ふと気付き、廊下の奥を覗いてみる。
「ここ食堂だよ!もう着いてたのか。お~い、ルイズちゃーん」
「はい、どうぞ。賄いのシチューで申し訳ないですけど」
「いやいやいや、ありがたいですよ」
ルイズにあっさりと撃墜されたので厨房で余り物をもらう事にした。なんかもう色々タフになってきたなあ、と一人ごちるサモンジ。しばらくしてシチューを持ってきてくれたメイドさんに手を合わせてシチュー皿を受け取る。いただきますを言うやいなや、早速一口二口と口に運んでいく。
「うっはー、これおいしいですねぇ!………おかわりっ。いや本当においしいですよ、あなたが作ってくれたんですか、え~っと……」
「あ、ははは。私はシエスタです。ミス・ヴァリエールの使い魔になられた……サモンジさん、でよかったですよね?これを作ったのはコック長のマルトーさんですよ」
そう言ってもう一度シチュー鍋に向かうシエスタ。厨房の中を見回すと、違う鍋の前にいる一人のコックと目が合い、満面の笑みを返される。何だろうと問い返す前に直ぐに鍋に向き直られる。と、そこにちょうどシエスタがおかわりを持って来た。
「や、ありがとうございます。えっと、あのコックさんがマルトーさん?」
「ええ、そうですよ。マルトーさんは元は「シエスタぁ!面倒見がいいのは構わんが、自分の仕事を忘れてないかぁ」
そこに先ほどのコック―彼がマルトーコック長か―が笑いながらサモンジの横にどっかと腰掛ける。シエスタは、あっと声を上げると慌てて別のテーブルからデザートをワゴンに載せ始める。
「ああすみませんね。私がおかわりまで頼んだもんだから。あんまり責めないで上げてやってください、ほとんど私のせいですから」
「はっはっは、俺の料理を褒めてくれた奴の言葉だ。聞かないわけにはいかねぇな」
そう言って自分の仕事は終わった、とばかりにサモンジの横でしゃべり始めるマルトー。一仕事終えての息抜きのつもりだろうが、話の中身の大半は貴族への悪口である。
「だから言ってやったのよ。俺の料理が俺の魔法だ、ってよ。っと、俺ばかり喋っちまったな。サモンジさんよ、あんたも災難だなぁ、勝手に呼び出されて使い魔なんて奴隷にされるなんてよ」
「あは、はっはっは……いや」
やたら相槌を求めてくるのでなかなかシチューを食べられずさめてきているのだが、マルトーの話はまだ終わらない。
「あんたの風体からしてトリステインの出身じゃないだろ?どこから来たんだ?仕事は何やってたんだ?」
ようやくこちらに話の主導権がやってくる。とりあえず当たり障りないことから話すことにする。
「そうですねぇ、このトリステインって国自体知らないもんですからどこからってのは答え難いですなあ。仕事はメック戦士…ま、傭兵ですね。本当は学校で農業の研究したかったんですが、兄が戦死して家を継ぐことになりましてねぇ」
「っと、そいつはすまんね。にしても、あんた平民のなのに学校行ってたのか……傭兵でも儲かる家は儲かるんだな。傭兵ってことはもしかして、その変な棒は銃って武器なのか?話には聞いてたけど、鉄の棒みたいって言うには遠いよなぁ」
質問がやまない。兄の話を出せばいい加減話がやむ思ったのだが……半ばやけくそ気味にマルトーと話を続けていると、厨房にシエスタが青い顔で飛び込んでくる。
「た、大変ですサモンジさん!ミス・ヴァリエールが…すぐにヴェストリの広場に、助けてあげてください!」
イベントフラグを逃したように見えても所詮TRPGリプレイキャラ、重要イベントは回避不能である。
ヴェストリの広場とやらに向かう途中にシエスタから聞いた話では、シエスタが貴族の痴話喧嘩のとばっちりで貴族に叱責されていたところを、ルイズが庇ってくれたと言う。
やっぱりそこまで悪い子じゃないんだね、とのんきに答えるサモンジだが、その貴族とルイズが決闘騒ぎになっていると聞いて顔色が変わる。
「決闘って、やっぱり魔法でやるのかい?でもルイズちゃんは…」
だが、シエスタに難癖をつけてきた貴族はルイズまで侮辱するように『ゼロのルイズがメイド如きの名誉を庇うのかい?それならそのメイドの代理決闘者として僕と決闘で互いの名誉を競おうじゃないか』などと言い出してきたらしい。
「なんだいそりゃ?ルイズちゃんのプライドを煽って絶対勝てる勝負に持ち込んだわけか。小ずるい奴だなぁ…ようし、私が何とかするよ。まかせておきなさいっ」
そう言ってシエスタに笑いかけるサモンジ。そうしている内に、決闘の場所であるヴェストリの広場に到着する。中庭になった場所にあるその広場は、うわさを聞いた生徒がまばらに、だが大きな輪になって取り囲み、その中央で金髪の貴族とルイズがいた。
ルイズの周囲の地面はあちこちがえぐれており、ルイズの服は汚れ、ところどころ破れてしまっている。あの爆発する魔法に自分を巻き込んだのだろう。それに対して金髪の貴族は、十分に距離をとった所からバラの造花を振って金属の人形を一体近くに作り出す。
「みっともないなぁ、ゼロのルイズ。僕の美しいワルキューレをそんな無様なウインドカッターで壊すなんて。もしかしてエアハンマーの間違いだったかな?」
その貴族の声に周りの生徒から嘲笑が上がる。その声にきっと顔を上げて目の前の貴族を睨み返すルイズ。
「だまってなさい!あんたみたいに貴族の誇りを忘れた奴に、私を、他人を侮辱する資格なんて、私は認めないっ!そして私はゼロじゃない、ファイヤーボール!」
見当違いの場所で起こる爆発。笑い声を上げる周りの生徒。正直、サモンジには見るに耐えない。罵声に耐えるルイズも、周囲で笑う生徒も、『ゼロ』と罵る金髪の生徒も。
サモンジは近くの塔の壁に背中を預け、肩から提げていたレーザーライフルの安全装置を解除する。まずは低出力モードにしてレーザーポインタ代わりにスコープを使えばまず当たる。
距離は約80メートル。不安なら気合を入れれば―利用可能経験点を使えば―外すことはない条件。その上レーザーポインタの存在を知らない相手だ。ゆっくりあの杖を狙って……
学園長室では、オスマンとコルベールが広場の様子を監視している。
ギーシュとルイズが決闘騒ぎになっていると聞き、もしやガンダルーヴのルーンを持つかもしれないというルイズの使い魔の実力を見られるかと思い『遠見の鏡』で広場の様子を観察していたのだ。しかし、結局決闘には使い魔は現れず、爆発しか起こせないルイズに、それを哂いながら遊んでいるギーシュという構図だ。
見るべきところもないので、コルベールか誰かを仲裁に向かわせようとした時、コルベールが広場の隅、塔の外壁沿いにいるサモンジを見つけたのである。
「あの使い魔は何をしようとしておるのかのう」
「解りません。しかし…あの構え、銃やボウガンの構えに似ています。それに、構えているあの棒は、あの男が召喚されたときに持っていた物のようです。おそらくは銃のような武器と見てよいかと」
その言葉にふむ、と唸るオスマン。
「となれば、あらゆる武器を使いこなすという伝説を確かめるにはちょうどいい、というわけじゃな」
「ええ。最近設立された銃士隊の新型銃でもあの100メイル近い距離では銃の性能限界。しかしあれを当てることができるならば……」
長々とルイズをいたぶっていたギーシュだが、そろそろまずいと思えてきた。ギーシュとてゼロの癖にこちらに食って掛かるルイズは気に入らないが、それでも女の子に暴力を振るうのは好きではない。
だが、ルイズを見れば未だこちらを睨み返してくる。周りの罵声にうっすらの涙を滲ませ、それでも今度こそ成功させると杖を振るう。また爆発。ギーシュのゴーレムのはるか頭上に煙が漂っている。
それでも杖を手放さないルイズに流石にギーシュも可哀想になってくる。降伏を勧めても彼女は認めまい、ワルキューレで少々強引にでも杖を奪うか、そう思い薔薇を象った杖を握る右腕を広げる。
あと2体。合計3体のワルキューレで囲んで杖を奪う。これで終わりだ。
ギーシュは気付いていない。自分の持つ薔薇の杖が、ちらちらと光っていることに。周囲の生徒には気付いた者もいたかもしれないが、ギーシュが新たなゴーレムを作ろうとしている、くらいにしか思っていないだろう。
そして、広場を細い光が一条横切った。
ジリッ、という鋭い音がギーシュの右手から走った。ふと右手の杖を見たギーシュの前にあったのは、薔薇がなくなった茎だけの自分の杖だった。杖が半ばで折れ、薔薇の造花は地面に落ちている。これではもう魔法は使えない。
驚くギーシュと何が起こったかわからないルイズや生徒。そこにサモンジが割って入ってくる。
「はいはいはい!喧嘩は終了、解散、かいさ~ん」
声を張り上げながらルイズの傍にやってきて、ハンカチで顔を拭う。
「や~、遅くなったけど助けに来たよルイズちゃん。怪我はないかな?銃は専門外だけど上手くいってよかったよ」
「な、何よあんた…助けに来たって……それより!誰が助けを求めたのよ!」
サモンジを前にして急に強気に振舞おうとするルイズ。しかし体は疲れ切っているのか座り込んだまま立ち上がらない。
そこに教師たちも余ってきて皆に解散するよう指示を飛ばし始める。
もっと早く来ればいいのに……ウチの部隊に来る援軍はギリギリが間に合わないとか、実は裏切り者だった、とかそんなのばっかだよ、と一人ごちるサモンジの前に二人の生徒がやってくる。
「しばらくぶりね、サモンジさん。どう?ルイズの様子は」「……」
いつぞやのキュルケと、もう一人青い髪の小さな女の子だ。サモンジが何か言う前に早速ルイズがキュルケに噛み付く。それをキュルケが笑いながらあしらう。こっちはもう大丈夫だろうと、サモンジはギーシュの方へ向かう。
「や、君大丈夫かい?一応杖だけを狙ったつもりだけど、指は……うん、大丈夫そうだね」
「あなたは…お前はルイズの使い魔の平民か。なれなれしいぞ、何の用だ!」
ばっと立ち上がるギーシュ。その両肩に手を乗せて顔を近づけるサモンジ。
「いやぁ~、か弱い女の子相手に決闘けしかけて、引っ込みが付かなくなったとこを助けてあげたんだよぉ?ちょっとは感謝しようよ」
にやり、とできるだけ不敵な表情で笑うサモンジ。両肩を掴む手を押し返そうとするギーシュだが、さらにサモンジが畳み掛ける。
「何で君の杖がいきなり折れたか解ったかな?この銃で撃たせてもらったのさ……もちろん、当てようと思えば他の物も狙えたけどね」
その言葉に言葉を詰まらせるギーシュ。要するに、飛び道具での不意打ちなら平民でもメイジを容易に殺せる、それをこの男は実演して見せたのだ。
「まあまあ、結局決闘の結果は私の乱入で無効試合ってことにしません?なんせ、あなた魔法の使えないルイズちゃんに決闘吹っかけるなんて真似したんですよ。これで負けたら恥ですけど、勝ったとしても……ねえ」
そういわれてしまえば、最早口では勝てない。むしろ、ギーシュとしてはこの決闘をうやむやにできるというのは願ったり適ったりである。
ふう、と一息ついて考える。学院内での評判は決闘の勝敗の如何に関わらず遺恨が残る物にしかならないだろう。そもそも家の格では向こうが上、遺恨を残すことはできない。それに、ギーシュ・ド・グラモンは薔薇を名乗る貴族、紳士のつもりである。今までの行いは、自分に相応しい物ではない。冷静になれば、その場限りの面子のために自分がいかに愚かなことをしようとしたかが解る。
「そうだね、使い魔君。君の言うとおりだ…その申し出、ありがたく受けさせてもらおう。それと、この愚かな行いを止めてくれた借りはいつか返すよ。ギーシュ・ド・グラモンの名に賭けて」
そう言って薔薇のなくなった杖を一振りしてルイズ達の方へ向かう。まあ、落ち着いてみればやはりそう悪い人間ではないのだろう。サモンジも安心して一息ついてから後を追う。
変わって再び学園長室。
「………結局、なんだったんじゃ?いったい」
何が起こったかさっぱりわからない。あの使い魔は壁を背に銃らしき物を構えたり下ろしたりし、ようやく構えたかと思えばじっと動かない。いい加減オスマンらが焦れてきた所で銃を下ろすと無造作に決闘の場に向かう。
何をしているのかと思ってルイズ達の方へ視点を動かすと、いつの間にか決闘は終わっていた。何度も今の光景を思い返すが、何が起きたか、誰が何をしてこうなったかが解らない。
いや、あの使い魔が何かをしたのは確かだ。持っていたのはあの鉄の棒だからそれを使ったのだろう。しかし、それで何をしたかが解らない。
「銃、ではなかったようですね。火薬の爆発がありませんでした。もしかしたら、マジックアイテムかもしれませんね……そう、あの破壊の杖のような」
「そうか…やはり、例外の使い魔らしく色々と規格外のようじゃな。もうしばらく様子を見ようかの」
そして、その言葉を扉の外で聞いている者がいた。
騒がしい一団が廊下を進む。一番後ろでサモンジの隣を歩くミス・シュヴールズも最早注意するのを諦めたようだ。決闘騒ぎの主犯格の二人を注意しに来たようだが、ルイズの疲労が激しいので医務室までは着いて来る様子である。
ギーシュの非を認めているのかいないのか良くわからない謝罪と決闘をうやむやにするような言葉に噛み付くルイズ。ルイズに肩を貸しながら笑うキュルケ。無言で着いて来る青い少女(タバサというらしい)。
ライフルでギーシュの杖を狙ったとき。突然左手が、正確には左手の文字が光ったのだ。慌てて手を見ている間に射撃の機会を失って決闘への介入が遅れてしまったが、その後の射撃はひどく正確だった。この文字については使い魔の契約完了の証と聞いていたが、後で確認してみることにする。やはり、魔法という物は色々と解らないことが多すぎる。
医務室ではルイズに簡単な診察が行われ、特に大したこともないということで夜までベッドで休んでいるようにとのことであった。そしてそのままシュヴールズによる説教タイムに入り、キュルケたちは早々に退散する。
サモンジも退散したいのだが、特にやることも無く、ルイズを放って置くわけにも行かないので近くの椅子に腰掛けて待つ。
待つ。
待つ。
と、医務室のドアが開かれる。
「し、失礼しますっ!ミス・ヴァリエールがここにいると…」
メイドのシエスタだった。ルイズの見舞いに来たようだが、シュヴールズの説教に決闘の発端(これは微妙にぼかして)と、ルイズが自分を庇って決闘を受けたことなどを説明し、両者の処分を軽減するように頼み始める。シュヴールズも学生の無茶にあまり付き合いたくなかったのだろう、そういうことなら、と双方に次に処分に値することをすれば容赦はしない、とだけ言って帰っていった。
早速シエスタがルイズに謝りだす。ルイズが笑いながら気にしないようと言おうとして、シエスタが勢い込んで割り込む。そこにさらにギーシュが割り込む。
「いいから気にしな「そんなことありません!私は本当に「…渡すなど配慮に欠ける行動ではあった。しかしそれを必要以上に僕が責めて「私も自分の誇りのためにやっ「それでもっ!私は感動したんで「だから僕は、あえて君に己に非があったと…
そうやって騒ぐルイズたちをサモンジは微笑みながら眺める。まったく、子供は元気だねぇ…ま、喧嘩してるよりは仲良さそうでいいか……そう思いながら、自分の身の上を考える。
「そっか…小隊で動くことが多かったから気にしなかったけど、今って……私一人なんだな…」
暗くなりつつある空に、窓から月が二つ見える。だが、自分が今まで行った星の中でこんな月が見える星はなかった。そして、魔法使いなど聞いた事も無い。
気楽そうな、のんきそうな顔で目の前の賑やかな騒ぎを眺めながら、僅かな寂しさをサモンジは飲み込んだ。
#navi(ゼロの独立愚連隊)
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