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「サーヴァント・ARMS-02」(2008/02/26 (火) 01:26:29) の最新版変更点
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「分かった。それなら俺はルイズの使い魔になろう」
使い魔として召喚された事についての説明を聞いた涼のルイズへの返答は、この簡潔な一言だった。
サーヴァント・ARMS:第2話 『異界』マジックワールド
話を聞けば、涼達3人ともここトリステイン魔法学院に運ばれる前に、既に目の前の少女達が契約の儀式を交わしてしまったそうだ。
その証拠として、3人それぞれの左腕に引っかき傷に似たルーンが刻まれている。
ARMSが復活している以上特定のもの――ジャバウォックの爪やナイトの『ミストルテインの槍』といったARMS殺し――
――を除いて傷跡が残る事はありえないのだが、一向に消える事が無い以上、契約の印である特別なものとして認めざる負えないだろう。
なお涼の左腕に刻まれたルーンを見たある教師が不思議そうに首を捻っていた時があったが、その時気絶していた涼は知る由も無い。
「にしてもよ、高槻。お前本当にあのルイズって奴の使い魔やる気か?」
「仕方ないだろ、もう使い魔のルーンってやつを刻まれちゃったんだし・・・それにこの世界でカツミと恵を探すには、それなりのコネとかがあった方がきっと役立つと思うからな」
異邦人どころか異世界人である彼らに、この世界にコネと呼べる物は有る筈も無い。
最初にカツミを追いかけた時はブールメンという大規模な反エグリゴリ組織の助けを借りても途轍もない苦労と労力をかけたのだ。協力者の存在の重要さは嫌というほど理解しているつもりである。
ならばせめて使い魔として涼達を呼び出した少女達とそれなりに友好関係を結び、彼女達のコネを利用させてもらった方が0から始めるよりはよっぽど良い。
なんでも彼女達は貴族、つまりこの世界の支配階級らしいからそれなりの力やコネは持ってるだろうし。
ちなみに、呼び出した少女達と呼び出された涼達のそれぞれの組み合わせはこうだ。
涼(ジャバウォック):『ゼロ』のルイズ
隼人(ナイト):『微熱』のキュルケ
武士(ホワイトラビット):『雪風』のタバサ
行方不明:カツミ、恵
ARMSが復活している理由は不明だが、共振を感じた以上カツミはどうかはともかく恵もこの世界にやってきている可能性は高い。
ちなみにARMSについてはルイズ達に説明していない。
ここが異世界であっても、気軽に話しても良い力ではないのだから。
だから今現在、彼女達が涼達を見る目は『変な格好の平民の使い魔』といったところか。
「でも今頃、父さん達や麻耶が心配してるだろうなぁ・・・」
「ジジイやアルはともかく、キャロルの奴今頃大慌てしてるかもな」
「うちの母さんは・・・どうだろ。全然慌ててないような気がする」
「「まあ、美沙さん(ちゃん)だし」」
「リョウ!何いつまでキュルケの使い魔なんかとお喋りしてるのよ!さっさと寝るわよ!」
「ハヤトー、今日はもう私疲れちゃったから速く寝ましょー」
「・・・寝る時間」
3人が3人、それぞれ主人となった少女に呼ばれて、廊下の端で顔を見合わせる。
今居るのは学院女子寮の廊下、既に就寝時間になって人気の無い石畳の通路に少女達の声はえらく響いた。
「とにかくまずは情報を集めてからカツミ達を探そう。変える方法は後回しだ」
「だな。また3人からのスタートだ、さっさとカツミと恵を見つけて元の世界に返ろうぜ」
「うん。これからも頑張って行こう」
右手を掲げて、3人で打ち鳴らす。
比喩でも何でも無く、言葉通りの意味で再び元の自分達の世界へと戻る為に、少年達は動き出す。
「うわ、る、ルイズ、何脱いでるんだ!?」
「着替えるからじゃないの。じゃあこれ、明日になったら洗濯しといて」
「・・・この世界の女の子って皆こうなのか?」
「ふーん、ハヤトってこうして見ると結構イイ男よね」
「ん?そ、そうか?(目を逸らしつつ)」
「ふふふ、ねえハヤトー、私と一緒のベッドで寝てみない?」
「は、ハア!?」
「・・・・・・えっと・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・おやすみ」
「あ、うん。おやすみなさい(無口な子だなぁ)」
---頑張れ少年達。
ルイズに渡された毛布に包まっていた涼は、学生服姿のままパッチリと目を覚ました。
白い下着が散乱しているのを見て、溜息をつきつつもベッドへと近づく。
「ルイズ、朝だぞ、起きろー」
「はにゃ?そ、そう・・・ってあんた誰?」
「涼だよ、高槻涼。ルイズが俺を召喚したんだろう?」
「ああ、そうね、私が召喚したんだっけ」
ルイズは寝ぼけ眼のまま身体を起こして命令する。
「服」
「ん」
椅子にかけてあった制服を渡した。
ルイズがだるそうながら躊躇い無くネグリジェを脱ぎ始めたから、涼は素早くそっぽを向いた。
「下着」
「いや、それぐらいはさ・・・」
「そこのー、クローゼットのー、1番下の引き出しに入ってる」
「やれやれ・・・」
―――これじゃ使い魔じゃなくて召使いじゃないか?―――
ルイズの方を見ないで気配だけで適当に選んだ下着を投げ渡す。少し衣擦れの音が続いたかと思うと、
「服」
「さっき渡したろ?」
「着せて」
「いやいやいや、そりゃちょっと色々と拙くないか?」
「平民のあんたはしらないでしょうけど、貴族は下僕がいるときは自分で服を着ないのよ」
「召使いどころか下僕かよ・・・」
計画に色々と変更を加えた方が良いかもしれない、と涼は頭痛を覚えながらそう思った。
彼が内心深々と溜息をついてしまっても、それは仕方の無い事だろう。
「「お」」「「あ」」
着替え終わったルイズと涼が部屋に出ると、同じタイミングで別の扉から隼人と彼の主人となった炎のような赤毛の少女が姿を現した。
隼人の方は何故か目の下にくまを作っていたが。
「よう、おはよう隼人・・・えらく眠そうだな」
「まあな・・・色々あったんだよ、俺の方はよぉ」
「そ、そうか」
一晩でかなり消耗した様子の隼人に柄に無く一瞬邪推な事を考えてしまう涼。
なにせ隼人の主人となったキュルケという少女は、一言で言えばスタイル抜群お色気ムンムンな褐色の肌の美少女なのだから。
隼人も高校ではかなりモテていたが実際の中身は硬派で純情な少年である。
そんな彼だ、普段から(多分きっと)色気を振りまいている少女の寝室で2人きりという状況で、普段通り寝れる訳無いだろう。
………実際、涼の想像はドンピシャである。
静かに友情を確認し合っている少年達のすぐ隣では、その主人達が姦しくも廊下の真ん中で舌戦を繰り広げていた。
実にいい迷惑である。
隼人に続いて武士も青い髪の少女と共に現れた。
武士の主人となったタバサという少女はキュルケとは正反対のタイプだ。
まさしく火と氷、水と油に似ているが、実際には2人は親友らしい。
こちらの場合、心なしかキュルケ・隼人ペアとは逆に主人の方が眠たそうだ。
「・・・」
「ほら、髪の毛とかまだ寝癖がついてるよ」
「・・・・・・気にしない」
「いや、気にしないじゃなくて女の子なんだし、髪形整えておいた方が良いよ。ほら」
「「・・・・・・・・」」
―――何だろう、この2人を包むのほほんとした空気は?―――
「何つーか、武士の奴が保母さんか何かに見えるぜ」
「そういえば武士って妹いたからなぁ。その関係じゃないか?」
タバサの髪を梳いてやる武士の手つきは、何故か手馴れた雰囲気を感じさせるのだった。
――――巴武士、スキル『面倒見のいいお兄ちゃん属性』持ち――――
そしてまだ、ルイズとキュルケの口論は続いていた。
朝食の時間だという事で、3組計6人で食堂へと向かった涼達ではあったが。
ルイズ達は普通に席に着き、隼人と武士の席もそれぞれキュルケとタバサが使用人に言って厨房の方で準備させていたので2人はそっちに向かう。
しかし。
「あんたの分は、こっち」
ルイズは涼を伴って食堂に連れてくると床を指差した。
異世界初めての涼が食べる食事は、硬そうなパン2つに具の殆ど無いスープのみ。
………ああ不憫なり。
「あのね、ほんとは使い魔は、外。あんたは私の特別な計らいで、ゆ『ガツッ!!』~~~~!!」
最後の1文字は、背後から飛んだ鉄拳に遮られた。
ルイズのあんまりと言えばあんまりな行いにいち早く鶏冠に来たのは
当の本人である涼ではなく仲間に対しては情が厚く短気な隼人の方だった。武士も居る。
分かれた涼が気になって一緒に食べないかと誘いに来たのだが・・・
「ふざけんな!人に食わすモン位もっとマシなの出してやれ!」
「~~いい加減にしなさいよ!キュルケの使い魔の平民の癖に何度も何度も・・・!」
「ねえルイズ、幾ら殴ってきたのが色々因縁のある私の所の使い魔なのは置いといても、そんな貧相なの出すなんて酷くないかしら?」
「同感」
キュルケが少し怒りのこもった鋭い視線でルイズを睨んだ。
タバサもいつもより5℃ほど冷たい眼差しでルイズを見た。
隼人がもしまたおかしな事を言ったらもっぺんぶん殴るとばかりに拳を握り締めている。
この面子では1番温和といえる武士も3人よりはマシだが怒ったように眉を寄せてまっすぐルイズを見ている。
頭ごなしに叱られるよりも、無言のプレッシャーの方が効果が高い時もある。
ルイズは俯いて、黙りこくってしまった。
「・・・別に用意してくれたんだから俺はこれで良いよ」
とっても居た堪れないこの場の空気を壊したのは、当の被害者とも言える涼本人の一言だった。
まあ涼自身も思う所は色々あるが、他の生徒達の視線が集まり始めたのが気になってきたので言ったのだが。
「それに昔っからキャンプとかで粗食には慣れてるしさ」
昆虫だって試食済みである。
「まあ次からはもう少しまともなのにしてくれれば俺は別に良いからさ、隼人も武士もキュルケもタバサもそこまで怒らないでくれ、な?」
「・・・ったく、わーったよ。変な所で甘いんだからな、お前ってよ」
「そこが高槻君の良い所なんだけどね」
「へえ、よかったわねルイズ。彼が寛大で」
「・・・・・・・・」
隼人と武士は改めて厨房の方へと朝食を取りに行ったが――――
ルイズの周囲に立ち込める気まずい空気は結局、最後まで涼が貧しい食事を取り終えても完全に霧散する事は無かった。
#navi(サーヴァント・ARMS)
「分かった。それなら俺はルイズの使い魔になろう」
使い魔として召喚された事についての説明を聞いた涼のルイズへの返答は、この簡潔な一言だった。
サーヴァント・ARMS:第2話 『異界』マジックワールド
話を聞けば、涼達3人ともここトリステイン魔法学院に運ばれる前に、既に目の前の少女達が契約の儀式を交わしてしまったそうだ。
その証拠として、3人それぞれの左腕に引っかき傷に似たルーンが刻まれている。
ARMSが復活している以上特定のもの――ジャバウォックの爪やナイトの『ミストルテインの槍』といったARMS殺し――
――を除いて傷跡が残る事はありえないのだが、一向に消える事が無い以上、契約の印である特別なものとして認めざる負えないだろう。
なお涼の左腕に刻まれたルーンを見たある教師が不思議そうに首を捻っていた時があったが、その時気絶していた涼は知る由も無い。
「にしてもよ、高槻。お前本当にあのルイズって奴の使い魔やる気か?」
「仕方ないだろ、もう使い魔のルーンってやつを刻まれちゃったんだし・・・それにこの世界でカツミと恵を探すには、それなりのコネとかがあった方がきっと役立つと思うからな」
異邦人どころか異世界人である彼らに、この世界にコネと呼べる物は有る筈も無い。
最初にカツミを追いかけた時はブールメンという大規模な反エグリゴリ組織の助けを借りても途轍もない苦労と労力をかけたのだ。協力者の存在の重要さは嫌というほど理解しているつもりである。
ならばせめて使い魔として涼達を呼び出した少女達とそれなりに友好関係を結び、彼女達のコネを利用させてもらった方が0から始めるよりはよっぽど良い。
なんでも彼女達は貴族、つまりこの世界の支配階級らしいからそれなりの力やコネは持ってるだろうし。
ちなみに、呼び出した少女達と呼び出された涼達のそれぞれの組み合わせはこうだ。
涼(ジャバウォック):『ゼロ』のルイズ
隼人(ナイト):『微熱』のキュルケ
武士(ホワイトラビット):『雪風』のタバサ
行方不明:カツミ、恵
ARMSが復活している理由は不明だが、共振を感じた以上カツミはどうかはともかく恵もこの世界にやってきている可能性は高い。
ちなみにARMSについてはルイズ達に説明していない。
ここが異世界であっても、気軽に話しても良い力ではないのだから。
だから今現在、彼女達が涼達を見る目は『変な格好の平民の使い魔』といったところか。
「でも今頃、父さん達や麻耶が心配してるだろうなぁ・・・」
「ジジイやアルはともかく、キャロルの奴今頃大慌てしてるかもな」
「うちの母さんは・・・どうだろ。全然慌ててないような気がする」
「「まあ、美沙さん(ちゃん)だし」」
「リョウ!何いつまでキュルケの使い魔なんかとお喋りしてるのよ!さっさと寝るわよ!」
「ハヤトー、今日はもう私疲れちゃったから速く寝ましょー」
「・・・寝る時間」
3人が3人、それぞれ主人となった少女に呼ばれて、廊下の端で顔を見合わせる。
今居るのは学院女子寮の廊下、既に就寝時間になって人気の無い石畳の通路に少女達の声はえらく響いた。
「とにかくまずは情報を集めてからカツミ達を探そう。変える方法は後回しだ」
「だな。また3人からのスタートだ、さっさとカツミと恵を見つけて元の世界に返ろうぜ」
「うん。これからも頑張って行こう」
右手を掲げて、3人で打ち鳴らす。
比喩でも何でも無く、言葉通りの意味で再び元の自分達の世界へと戻る為に、少年達は動き出す。
「うわ、る、ルイズ、何脱いでるんだ!?」
「着替えるからじゃないの。じゃあこれ、明日になったら洗濯しといて」
「・・・この世界の女の子って皆こうなのか?」
「ふーん、ハヤトってこうして見ると結構イイ男よね」
「ん?そ、そうか?(目を逸らしつつ)」
「ふふふ、ねえハヤトー、私と一緒のベッドで寝てみない?」
「は、ハア!?」
「・・・・・・えっと・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・おやすみ」
「あ、うん。おやすみなさい(無口な子だなぁ)」
---頑張れ少年達。
ルイズに渡された毛布に包まっていた涼は、学生服姿のままパッチリと目を覚ました。
白い下着が散乱しているのを見て、溜息をつきつつもベッドへと近づく。
「ルイズ、朝だぞ、起きろー」
「はにゃ?そ、そう・・・ってあんた誰?」
「涼だよ、高槻涼。ルイズが俺を召喚したんだろう?」
「ああ、そうね、私が召喚したんだっけ」
ルイズは寝ぼけ眼のまま身体を起こして命令する。
「服」
「ん」
椅子にかけてあった制服を渡した。
ルイズがだるそうながら躊躇い無くネグリジェを脱ぎ始めたから、涼は素早くそっぽを向いた。
「下着」
「いや、それぐらいはさ・・・」
「そこのー、クローゼットのー、1番下の引き出しに入ってる」
「やれやれ・・・」
―――これじゃ使い魔じゃなくて召使いじゃないか?―――
ルイズの方を見ないで気配だけで適当に選んだ下着を投げ渡す。少し衣擦れの音が続いたかと思うと、
「服」
「さっき渡したろ?」
「着せて」
「いやいやいや、そりゃちょっと色々と拙くないか?」
「平民のあんたはしらないでしょうけど、貴族は下僕がいるときは自分で服を着ないのよ」
「召使いどころか下僕かよ・・・」
計画に色々と変更を加えた方が良いかもしれない、と涼は頭痛を覚えながらそう思った。
彼が内心深々と溜息をついてしまっても、それは仕方の無い事だろう。
「「お」」「「あ」」
着替え終わったルイズと涼が部屋に出ると、同じタイミングで別の扉から隼人と彼の主人となった炎のような赤毛の少女が姿を現した。
隼人の方は何故か目の下にくまを作っていたが。
「よう、おはよう隼人・・・えらく眠そうだな」
「まあな・・・色々あったんだよ、俺の方はよぉ」
「そ、そうか」
一晩でかなり消耗した様子の隼人に柄に無く一瞬邪推な事を考えてしまう涼。
なにせ隼人の主人となったキュルケという少女は、一言で言えばスタイル抜群お色気ムンムンな褐色の肌の美少女なのだから。
隼人も高校ではかなりモテていたが実際の中身は硬派で純情な少年である。
そんな彼だ、普段から(多分きっと)色気を振りまいている少女の寝室で2人きりという状況で、普段通り寝れる訳無いだろう。
………実際、涼の想像はドンピシャである。
静かに友情を確認し合っている少年達のすぐ隣では、その主人達が姦しくも廊下の真ん中で舌戦を繰り広げていた。
実にいい迷惑である。
隼人に続いて武士も青い髪の少女と共に現れた。
武士の主人となったタバサという少女はキュルケとは正反対のタイプだ。
まさしく火と氷、水と油に似ているが、実際には2人は親友らしい。
こちらの場合、心なしかキュルケ・隼人ペアとは逆に主人の方が眠たそうだ。
「・・・」
「ほら、髪の毛とかまだ寝癖がついてるよ」
「・・・・・・気にしない」
「いや、気にしないじゃなくて女の子なんだし、髪形整えておいた方が良いよ。ほら」
「「・・・・・・・・」」
―――何だろう、この2人を包むのほほんとした空気は?―――
「何つーか、武士の奴が保母さんか何かに見えるぜ」
「そういえば武士って妹いたからなぁ。その関係じゃないか?」
タバサの髪を梳いてやる武士の手つきは、何故か手馴れた雰囲気を感じさせるのだった。
――――巴武士、スキル『面倒見のいいお兄ちゃん属性』持ち――――
そしてまだ、ルイズとキュルケの口論は続いていた。
朝食の時間だという事で、3組計6人で食堂へと向かった涼達ではあったが。
ルイズ達は普通に席に着き、隼人と武士の席もそれぞれキュルケとタバサが使用人に言って厨房の方で準備させていたので2人はそっちに向かう。
しかし。
「あんたの分は、こっち」
ルイズは涼を伴って食堂に連れてくると床を指差した。
異世界初めての涼が食べる食事は、硬そうなパン2つに具の殆ど無いスープのみ。
………ああ不憫なり。
「あのね、ほんとは使い魔は、外。あんたは私の特別な計らいで、ゆ『ガツッ!!』~~~~!!」
最後の1文字は、背後から飛んだ鉄拳に遮られた。
ルイズのあんまりと言えばあんまりな行いにいち早く鶏冠に来たのは
当の本人である涼ではなく仲間に対しては情が厚く短気な隼人の方だった。武士も居る。
分かれた涼が気になって一緒に食べないかと誘いに来たのだが・・・
「ふざけんな!人に食わすモン位もっとマシなの出してやれ!」
「~~いい加減にしなさいよ!キュルケの使い魔の平民の癖に何度も何度も・・・!」
「ねえルイズ、幾ら殴ってきたのが色々因縁のある私の所の使い魔なのは置いといても、そんな貧相なの出すなんて酷くないかしら?」
「同感」
キュルケが少し怒りのこもった鋭い視線でルイズを睨んだ。
タバサもいつもより5℃ほど冷たい眼差しでルイズを見た。
隼人がもしまたおかしな事を言ったらもっぺんぶん殴るとばかりに拳を握り締めている。
この面子では1番温和といえる武士も3人よりはマシだが怒ったように眉を寄せてまっすぐルイズを見ている。
頭ごなしに叱られるよりも、無言のプレッシャーの方が効果が高い時もある。
ルイズは俯いて、黙りこくってしまった。
「・・・別に用意してくれたんだから俺はこれで良いよ」
とっても居た堪れないこの場の空気を壊したのは、当の被害者とも言える涼本人の一言だった。
まあ涼自身も思う所は色々あるが、他の生徒達の視線が集まり始めたのが気になってきたので言ったのだが。
「それに昔っからキャンプとかで粗食には慣れてるしさ」
昆虫だって試食済みである。
「まあ次からはもう少しまともなのにしてくれれば俺は別に良いからさ、隼人も武士もキュルケもタバサもそこまで怒らないでくれ、な?」
「・・・ったく、わーったよ。変な所で甘いんだからな、お前ってよ」
「そこが高槻君の良い所なんだけどね」
「へえ、よかったわねルイズ。彼が寛大で」
「・・・・・・・・」
隼人と武士は改めて厨房の方へと朝食を取りに行ったが――――
ルイズの周囲に立ち込める気まずい空気は結局、最後まで涼が貧しい食事を取り終えても完全に霧散する事は無かった。
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