「ゼロの女帝-00」(2008/07/25 (金) 18:42:47) の最新版変更点
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「全宇宙のどこかにいる私の使い魔よ!
この世で最も強く、賢く、美しい存在よ!
わが呼び声に答え我が元に来たれ!」
例によって例のごとく、幾十回と召喚に失敗しまくるメイジ見習いたる彼女の名は
ルイズ・フランソワ-ズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエ-ル。
もう周囲はもちろん本人も回数を覚えられない位に繰り返された儀式。
しかし、今回は違った。
詠唱が終わると同時に起きた爆発の中に、すらりと背の高い女性が立っていたのだから。
ある意味、彼女の願いはかなえられた。
この世でもっとも強い存在と言って、反論する人間はそう多くないだろう。
この世でもっとも賢い存在と言って、否定できる人間は多分居ない。
この世でもっとも美しい存在というのは個人で差があるが、やはりそれはたいそう美しい。
「おい見ろよ!ありゃあ平民だぜ」
「さすがゼロのルイズだ!平民を召喚しやがった」
本来ならそういった嘲りの声に満たされるであろう空間は、空気が音を伝える事を放棄したのかと思われるほどに沈黙に満ちていた。
何故なら、閉じたままの扇子で口元を覆ったその女性(年齢は分からない 外見は『若奥様』風だがその雰囲気はひどく老齢している)
は何もせず、ただ周囲を見回すだけで物理的なエネルギ-すら感じさせるほどの圧力を振りまいていた。
主である筈のルイズもまた、「コントラクト・サ-ヴァント」どころか近寄ろうと思う事すらかなわない。
そんな中で一人の男が彼女に近寄り、話しかける。
「失礼します、レディ。私はコルベ-ルと申します。
お耳汚しとは存じますが、宜しければレディのおかれた状況についてご説明いたしますので
聞き入れて下されば幸運にございます」
「あら」
妖艶な流し目でコルベ-ルを見やる女性。
「あなた、いきなりなのに随分礼儀正しいのね」
「この場にいる子供達より多少の人生経験を積んでおりますので」
そう、一目で分かる。
本来なら関わってはいけない相手だ。
即座に後ろを向き、全力で逃げ出すべきだ。
しかしそれはかなわない。
責任を持つべき子供たちがいるし、なによりも逃げられない。
逃げようと振り向けば即座に後ろからばっさりだ。どっちもどっちもどっちもどっちも!
いや、逃げようと考えた瞬間頭を粉砕されてしまうに違いない。
もう逃げるとか状況を見るとかそんな事は関係無い。
そんなモノを超越したレベルの相手だと分かる。
卑屈と言われようがなんだろうが彼女の機嫌を損ねない、それしかない。
・
・
・
「ふ-ん、魔法・・・そしてサモン・サ-ヴァントねぇ・・・」
「はい、無礼とは存じておりますが知性を持つ存在を召喚するというのは全く前提にも前例にも無く、故にレディを
いかに扱うか判断しかねる、そんな状況なのです」
話を聞きながら彼女の目は爛々と輝き始める。
彼女を知る者なら即座に回れ右、そして突進!とばかりに後ろも見ずに逃げ出すだろう。
コルベ-ルとやらの話を聞きながら彼女は心の中で自分の『船』に呼びかける・・・よし返事が来た。
この星はぎりぎり自分達の勢力圏内、しかしかなりの辺境だ。
まだ誰も発見していないらしいこの星の生命体はNα-3型、いわゆるア-スノイドと呼ばれるタイプ。
例外はあるにせよ百年は生きられまい。
調整を受けてほぼ不死たる自分達なら死まで見届けても「ちょっと寄り道して遊んでた」で済む程度だろう。
ちらりと自分を召喚したらしい娘を見やる。
ふむ・・・状況はなかなか楽しそうだし、この娘も面白いおもちゃになってくれそうだ。
(まあ西南ちゃん程じゃないだろうけど)
「よろしい!」
彼女が扇子を広げてそう宣言した時、ルイズ嬢の運命は決まった。
本当のパッピ-へ、いわゆる「トゥル-エンド」へと繋がるものの無意味な苦労、無駄な難儀、
避け得るはずの被害、理解し難い理不尽に塗れた、そんな人生を歩む事に。
「ルイズちゃんのサ-ヴァントとやら、立派に勤め上げて見せます!
全てこの、神木・瀬戸・樹雷にまかせなさい! ほ-っほほほほほほほほ-!」
-「天地無用!」シリーズの神木・瀬戸・樹雷を召喚
#navi(ゼロの女帝)
&setpagename(ゼロの女帝 前章)
明日はトリステイン魔法学校生徒全員によるサ-ヴァント召喚の儀式があるという日。
虚無の日である今日、生徒達はある者はくつろぎ、ある者は予習と準備を行い、そして・・・
ある者は魔法の基礎を記した書物を図書館にて読んでいました。
そんな彼女にかけられたひとつの声。
「よろしいですか、ミス・ヴァリエール」
「コルベ-ル先生・・・」
陰気な表情で教本に穴を開けんばかりに読み込んでいた学園始まって以来の劣等生と
称されるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは
気分を変えたかったのでしょう、教本を閉じて恩師に向かい合う。
「ひとりで唸っていてもどうにもなりません。明日に備えてここはひとつ、補習といきませんか?」
「先生がみてくださるのですか?」
「はい。あなたの魔法の性質や個性を見極めねばなりません。
正直貴方自身が自分でそれを見極めねば、と思い今日まで見守るに留めて来たのですが
流石に明日という日を迎えてそうも言ってられません。
ミス・ヴァリエ-ル。
貴方が宜しければ、ですが」
「嫌も応もありません!是非にお願いします!」
その鬼気迫る表情にかなり引きながらも温厚だけがとりえと陰口を叩かれる教師は
柔らかな笑顔で頷いた。
「失礼とは思いますが、流石に私の研究室でするわけにもいきませんので」
庭に置かれた机と椅子。
そしてコルベ-ルの教卓。
ただそれだけ、という補習場に、ルイズは自らの立場と評価を思い知らされる。
「失敗を正す最善の方法は、失敗の原因を理解する事です。
そしてミス・ヴァリエ-ル。あなたの系統を把握しなければ。
まずは『レビテ-ションを唱えてみてください』 ドン
「次は・・・『フライ』を」 ドドン
「ケホン、それでは『錬金』を」 ドカン
「ケ、ケホ・・・じゃあ・・・ ドドン
「次はより魔力を、気合を込めた『フライ』を」
「魔力ですか?それに何の意味が」
「貴方の爆発が『ただの失敗』なのか『なにか別の要素で爆発してしまう』のかを見るためです」
どっかん
どっかぁん
どんどんどどん
ちゅど-ん
「・・・次は系統別に唱えてみましょう。まずは風を。
大抵の術の呪文は暗記されてますね」
当然だ。何時の日か、自由自在に魔法を使えるようになった時の為に大抵の呪文は
頭の中にある。
「『エア・ハンマ-』を」 ちゅどん
「・・・・・・『エア・ニ-ドル』」 どっかん
真っ黒焦げになりながら、手元の紙に色々と書き込むコルベ-ル。
「ここまでにしましょうか」
「せ、せんせえ!何かわかりましたか!」
愉快な髪型になりながら必死の形相で、掴みかからんばかりにコルベ-ルに詰め寄るルイズ。
しかし、残念そうな表情で首を左右に振る教師。
「・・・・・・・・」
絶望の極み、といった表情で肩を落とし、とぼとぼ、という擬音が聞こえてきそうな
雰囲気で自室へと戻っていくルイズ。
後片付けをしながら、彼女を見送るコルベ-ルは、しかし内心で彼女に喉も枯れ果てよ、と言わんばかりに謝罪をしていた。
(ミス・ルイズの魔法は・・・『火』でも『水』でも『風』でもない。
もちろん『土』でもない。
ならばおそらく・・・)
許して欲しい、ミス・ルイズ。
私は教師失格だ。
貴方の能力適正を把握しながら、貴方をより良く導こうとはしない。
貴方はわたしを恨むだろう
憎み、呪い、無能教師と蔑むだろう
しかし・・・貴方の能力は他の誰でもない、貴方自身にとって危険なのだ
わたしは貴方を、その特性から遠ざけ、歪め、貶めるように貴方を指導していくつもりだ
戦乱の世ならまだしも、平和な世において貴方の術は、多分貴方をよくない道へと誘うだろう
ならば無能メイジとして・・・王宮で官僚あたりになって生きていくのがおそらく最も平穏なのだろう
許して欲しい、などとは言わない
理解してくれ、などと贅沢は請わない
ただ・・・
いつか・・・
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