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「ウィザード・ルイズ」(2007/11/04 (日) 23:43:21) の最新版変更点
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「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、答えなさいっ!!」
数十回の使い魔召喚に失敗し、ヤケッパチ気味にルイズが叫ぶ。
その、ある意味高望み過ぎる内容に周囲の同級生は「おいおい」と思ったとか思わなかったとか。
だが、神か仏かブリミルにか、彼女の願いは聞き届けられたのだった。
宇宙の果てのどこかにいる神聖で美しく強力な「なにか」の前に、召喚のゲートは開いたのである。
★★★★
異次元空間に浮かぶ壮麗にして典雅なる白亜の城の、丹精に手入れされた中庭。
そこで『世界の守護者』アンゼロットは日課である午後の紅茶の時間を楽しんでいた。
見た目は12歳程度の美少女に見える。
黒いドレスに映えるどこまでも白い肌。月光を束ねて銀糸にしたかのような流れる髪。
同じく銀色の瞳が、世界の行く末を思ってか儚く潤んでいた。
ふうっ―――と小さくため息をつけば、少女の手の中でユラユラと揺れるダージリンティーの水面。
お茶請けは配下のロンギヌス特別茶菓子班が泣きながら焼いたお煎餅。
紅茶にセンベイ合わすなよというツッコミも涼しげに無視して、外見銀髪少女の大年増は優雅にセンベイ食う。
バリンバリンバリバリバリバリバリリッ――ふう、やはり紅茶のお供はノリ煎餅ですわね――ってなカンジで優雅に。
そんな彼女の前に、突然銀色の円盤が現われた。
ここは腐っても、精鋭部隊ロンギヌスが守る正義の砦アンゼロット宮殿。
シナリオの都合でさえなければ簡単に危険な異物や敵の侵入を許す場所では無いのに、その円盤は平然と宮殿の主である少女の側に浮かんでいた。
レベル∞を誇る世界の守護者アンゼロットは、それが使い魔召喚のための次元ポートである事を瞬時に見抜く。
そして煎餅のカケラほども躊躇も見せず、その中にレースで飾られた黒いドレスに包まれた腕を突っ込んだ。グイっと。
「んー、このへんでしょうかねぇー……っと、コレですわ!」
中でグリグリ手を動かして、ズバッと一本釣りで引き抜いたのはピンクの髪の少女。
いきなり空中に現われた腕に襟首を掴まれて見知らぬ場所に釣れて来られた少女は、驚愕と不安であたりをキョロキョロ見回している。
「なななななななに? なんなのよここ? いったい突然何がおこったのよ!?」
「はーい、落ち着いて下さいルイズさん。私は『世界の守護者』アンゼロット。
今から私がするお願いに、ハイかイエスでお返事して下さいね?」
「へっ?」
「ハルケギニアは世界の敵に狙われています。貴女にはこれから、その敵を倒すために戦ってもらわなければいけません」
「ええっ!?」
「とは言え、今のルイズさんのレベルでは少々心もとないので―――」
今度は何も無い空間にズボッと手を突っ込むアンゼロット。
しばらくグリグリして「えいっ」と引き抜けば制服姿の少年が投げ出され、アンゼロットとルイズの頭上を跳び越し、頭から地面に落とされた。
「ってえなぁ! イキナリ授業中になにしやがんだこのクソ年増!」
ヤバい角度で地面に突っ込んだ男の様子に(なんだか知らないけど生きてるのかしらこの人?)と心配するルイズの前で、
素早く立ち直ってアンゼロットに詰め寄るのは柊蓮司。
一見普通の不良学生だが、その正体は色々下がる不幸学生だ。
以前、使命だと言われて学年が2年生から1年生に下がるという理不尽も体験した事がある。
「まぁまぁ落ち着いて下さい柊さん。まずは紅茶でも飲んでお煎餅でも食べて」
「いやお前煎餅と紅茶の組み合わせはねーだろう普通。まぁもらうけど」
「では紅茶も飲んで落ち着いた所で本題ですが」
「早っ! まだ一口しか飲んでねぇって言うか椅子にも座ってねぇって!」
「使命です。世界の滅びを防ぐために、そこのルイズさんは6レベルまで成長しなければなりません」
柊の剣幕もツッコミも無視して、さっさと使命の説明に入るアンゼロット。馴れた対応だ。
柊の方もそんなアンゼロットには慣れたもので、白いロココ調の上品な椅子をガタガタと引いて、ドカっと行儀悪く座って話を聞く体勢に入った。
「ルイズって言ったか? アンタも座ったらどーだ?」
「えっ、あっ、う……うん」
ちょっと恐い外見の柊に椅子を勧められて、まだ混乱中ながらおずおずと着席するルイズ。
その間にもアンゼロットはマイペースで話を続ける。
「ルイズさんが実戦経験を積み、かつレベルアップしてもらうために柊蓮司さん、
貴方の向かう使命へ彼女を共に連れて行き、そこで一緒に戦ってあげて下さい」
「良いけど、俺とこの子じゃレベルが違いすぎじゃないのか?」
「ご安心を。柊さんが飲んだその紅茶に、ある薬を入れてありますから」
「なっ―――まさか!?」
不吉な言葉に絶句する柊。
以前彼はアンゼロットが紅茶に入れたという薬のせいで、レベルを下げられた事がある。
それなのに同じ手に二度も引っ掛かる人の良さが、彼の良い所だろう。
「柊さんもルイズさんと同じ1レベルになりましたから、頑張ってレベルアップして下さいね」
にこやかに手を振るアンゼロットの笑顔にヤバイと感じて立ち上がろうとする柊だったが、もう遅い。
突然椅子の下に、底も見えない黒い穴が現われる。
柊と、そしてルイズはそのまま侵魔――エミュレイター――と呼ばれる『世界の敵』が跋扈する戦場へと、次元を超えて落下させられた。
「いってらっしゃーい柊さーん♪」
「コノヤロウ覚えてやがれーっ!!」
「きゃー! なんなのよ、なんだっていうのよー!?」
「ちなみに柊さんが私の事を年増呼ばわりしたので敵のレベルはちょっぴり高めでーす♪」
「うわーっ! しっかり恨んでやがったかー!?」
「はわわわーっ!?」
ドップラー効果と共に遠くなって消える二人の声ってゆーか悲鳴。
何度となく世界を救ったウィザード、落ちる男・柊蓮司。
彼は一部事情通の間では『アンゼロットのオモチャ』とも呼ばれているのだった。
★★★★
その日、ゴーレムが学院を襲っていた。
宝物庫まある階に巨大な拳を打ち込むゴーレムは、30メイルはあろうかという巨大な物だ。
「待ちなさい!」
「……なんだい、アンタは?」
誰もが恐れて逃げ出す巨大ゴーレムの前に立ち塞がったのは、ルイズ・フランソワーズ。
3週間ほど前に行方不明になり、先週突如ボロボロの姿で学院に帰ってきた少女だった。
「魔法も使えないメイジが何の用だい? 世をはかなんでアタシのゴーレムに潰されたいってんなら相談に乗ってやるよ?」
「やれるモンならやってみなさいよ、土くれのフーケ」
「ふん、じゃあお望み通りにしてやるさ!」
ゴーレムの拳がルイズを押し潰した―――かに見えた。
だがルイズは平然とその場に立ったままだ。
彼女の手前数センチで止まった巨大な鋼鉄の拳。当然、それはフーケが止めたのではない。
ルイズの周囲に展開された結界・月衣<カグヤ>。
それは世界そのものが持つ法則を無視して、持ち主を一切の物理法則から守る極小の異世界だ。
「わ、私のゴーレムの拳を防いだ!?」
「……魔法の使えないメイジじゃ、ないわよ」
「なんだって?」
「メイジじゃないって言ったのよ!」
月衣の中から背丈ほどもある長剣を引き抜き、構えるルイズ。
それは≪魔剣使い≫である彼女の力、近接戦用対魔法箒・デルフリンガー。
「……って、俺っち箒扱いかよウイザードの嬢ちゃんよぉ」
「私はウィザード! エミュレイターと戦う、夜闇の魔法使い・ナイトウィザードよ!」
ウィザード業界では、魔力を受けて機動する道具は剣でも銃でも盾でも、果ては宇宙船でも箒なのだからしょうがない。
デルフのぼやきは無視して、ルイズは声高々と宣言した。
≪魔器開放≫によって真の力を解放したデルフリンガーが輝く。
魔法構造を崩壊させる≪魔力吸収≫の特殊能力が、刃に触れたものから尽く魔力を奪おうと唸りをあげた。
≪封印されし力≫を解放したルイズの≪虚無の属性≫魔法がその刃に吸収される。
あふれ出るプラーナの力が大地を削って噴き上がり、周囲を黄金の光で照らす。
「ば、ばかな!? なんだいこの力……こんな魔法、わたしは知らない!?」
「受けてみなさい! これが私の召喚した使い魔、世界の守護者から無理矢理与えられた力よ!」
一閃。
ただの一撃で右脇腹から左の肩まで一直線に切り裂かれ、その傷口からボロボロと崩壊してゆくフーケのゴーレム。
自身を構成するための魔力を根こそぎ奪われた結果だった。
「って、召喚してないってゆーかアンタ自分が向こうに召喚されたんじゃんかー!」
「うるさいうるさいうるさーい! エクスプロージョン!」
瞬間、ゴーレムの巨体が大爆発をおこす。
吹き飛ばされたフーケは「あ~れ~」と塀の向こうまで飛ばされていった。
かくしてフーケのたくらみは未然に防がれ、学院の平和はウィザード・ルイズの活躍によって守られた。
「盗賊退治お疲れ様ですルイズさん。ところでまたハルケギニアを揺るがす大事件が」
「ちょ、アンゼロット!? 私は今戦い終わって余韻に浸ってる最中で―――!」
「諦めた方が良いと思うぜ嬢ちゃん。どうせ最後には働かされるんだから」
空間からにょろりと突き出た腕に掴まれて拉致されるルイズとデルフリンガー。
明日はガリアかアルビオンか。アンゼロットにコキ使われるルイズに休息の日は無い。
頑張れルイズ。負けるなルイズ。
いつかハルケギニアを狙う魔王(推定)を倒して、アンゼロットから開放されるその日まで!
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、答えなさいっ!!」
数十回の使い魔召喚に失敗し、ヤケッパチ気味にルイズが叫ぶ。
その、ある意味高望み過ぎる内容に周囲の同級生は「おいおい」と思ったとか思わなかったとか。
だが、神か仏かブリミルにか、彼女の願いは聞き届けられたのだった。
宇宙の果てのどこかにいる神聖で美しく強力な「なにか」の前に、召喚のゲートは開いたのである。
★★★★
異次元空間に浮かぶ壮麗にして典雅なる白亜の城の、丹精に手入れされた中庭。
そこで『世界の守護者』アンゼロットは日課である午後の紅茶の時間を楽しんでいた。
見た目は12歳程度の美少女に見える。
黒いドレスに映えるどこまでも白い肌。月光を束ねて銀糸にしたかのような流れる髪。
同じく銀色の瞳が、世界の行く末を思ってか儚く潤んでいた。
ふうっ―――と小さくため息をつけば、少女の手の中でユラユラと揺れるダージリンティーの水面。
お茶請けは配下のロンギヌス特別茶菓子班が泣きながら焼いたお煎餅。
紅茶にセンベイ合わすなよというツッコミも涼しげに無視して、外見銀髪少女の大年増は優雅にセンベイ食う。
バリンバリンバリバリバリバリバリリッ――ふう、やはり紅茶のお供はノリ煎餅ですわね――ってなカンジで優雅に。
そんな彼女の前に、突然銀色の円盤が現われた。
ここは腐っても、精鋭部隊ロンギヌスが守る正義の砦アンゼロット宮殿。
シナリオの都合でさえなければ簡単に危険な異物や敵の侵入を許す場所では無いのに、その円盤は平然と宮殿の主である少女の側に浮かんでいた。
レベル∞を誇る世界の守護者アンゼロットは、それが使い魔召喚のための次元ポートである事を瞬時に見抜く。
そして煎餅のカケラほども躊躇も見せず、その中にレースで飾られた黒いドレスに包まれた腕を突っ込んだ。グイっと。
「んー、このへんでしょうかねぇー……っと、コレですわ!」
中でグリグリ手を動かして、ズバッと一本釣りで引き抜いたのはピンクの髪の少女。
いきなり空中に現われた腕に襟首を掴まれて見知らぬ場所に釣れて来られた少女は、驚愕と不安であたりをキョロキョロ見回している。
「なななななななに? なんなのよここ? いったい突然何がおこったのよ!?」
「はーい、落ち着いて下さいルイズさん。私は『世界の守護者』アンゼロット。
今から私がするお願いに、ハイかイエスでお返事して下さいね?」
「へっ?」
「ハルケギニアは世界の敵に狙われています。貴女にはこれから、その敵を倒すために戦ってもらわなければいけません」
「ええっ!?」
「とは言え、今のルイズさんのレベルでは少々心もとないので―――」
今度は何も無い空間にズボッと手を突っ込むアンゼロット。
しばらくグリグリして「えいっ」と引き抜けば制服姿の少年が投げ出され、アンゼロットとルイズの頭上を跳び越し、頭から地面に落とされた。
「ってえなぁ! イキナリ授業中になにしやがんだこのクソ年増!」
ヤバい角度で地面に突っ込んだ男の様子に(なんだか知らないけど生きてるのかしらこの人?)と心配するルイズの前で、
素早く立ち直ってアンゼロットに詰め寄るのは柊蓮司。
一見普通の不良学生だが、その正体は色々下がる不幸学生だ。
以前、使命だと言われて学年が2年生から1年生に下がるという理不尽も体験した事がある。
「まぁまぁ落ち着いて下さい柊さん。まずは紅茶でも飲んでお煎餅でも食べて」
「いやお前煎餅と紅茶の組み合わせはねーだろう普通。まぁもらうけど」
「では紅茶も飲んで落ち着いた所で本題ですが」
「早っ! まだ一口しか飲んでねぇって言うか椅子にも座ってねぇって!」
「使命です。世界の滅びを防ぐために、そこのルイズさんは6レベルまで成長しなければなりません」
柊の剣幕もツッコミも無視して、さっさと使命の説明に入るアンゼロット。馴れた対応だ。
柊の方もそんなアンゼロットには慣れたもので、白いロココ調の上品な椅子をガタガタと引いて、ドカっと行儀悪く座って話を聞く体勢に入った。
「ルイズって言ったか? アンタも座ったらどーだ?」
「えっ、あっ、う……うん」
ちょっと恐い外見の柊に椅子を勧められて、まだ混乱中ながらおずおずと着席するルイズ。
その間にもアンゼロットはマイペースで話を続ける。
「ルイズさんが実戦経験を積み、かつレベルアップしてもらうために柊蓮司さん、
貴方の向かう使命へ彼女を共に連れて行き、そこで一緒に戦ってあげて下さい」
「良いけど、俺とこの子じゃレベルが違いすぎじゃないのか?」
「ご安心を。柊さんが飲んだその紅茶に、ある薬を入れてありますから」
「なっ―――まさか!?」
不吉な言葉に絶句する柊。
以前彼はアンゼロットが紅茶に入れたという薬のせいで、レベルを下げられた事がある。
それなのに同じ手に二度も引っ掛かるあたりが、彼の人の良い所だろう。
「柊さんもルイズさんと同じ1レベルになりましたから、頑張ってレベルアップして下さいね」
にこやかに手を振るアンゼロットの笑顔にヤバイと感じて立ち上がろうとする柊だったが、もう遅い。
突然椅子の下に、底も見えない黒い穴が現われる。
柊と、そしてルイズはそのまま侵魔――エミュレイター――と呼ばれる『世界の敵』が跋扈する戦場へと、次元を超えて落下させられた。
「いってらっしゃーい柊さーん♪」
「コノヤロウ覚えてやがれーっ!!」
「きゃー! なんなのよ、なんだっていうのよー!?」
「ちなみに柊さんが私の事を年増呼ばわりしたので敵のレベルはちょっぴり高めでーす♪」
「うわーっ! しっかり恨んでやがったかー!?」
「はわわわーっ!?」
ドップラー効果と共に遠くなって消える二人の声ってゆーか悲鳴。
何度となく世界を救ったウィザード、下がる男・柊蓮司。
彼は一部事情通の間では『アンゼロットのオモチャ』とも呼ばれているのだった。
★★★★
その日、ゴーレムが学院を襲っていた。
宝物庫まある階に巨大な拳を打ち込むゴーレムは、30メイルはあろうかという巨大な物だ。
「待ちなさい!」
「……なんだい、アンタは?」
誰もが恐れて逃げ出す巨大ゴーレムの前に立ち塞がったのは、ルイズ・フランソワーズ。
3週間ほど前に行方不明になり、先週突如ボロボロの姿で学院に帰ってきた少女だった。
「魔法も使えないメイジが何の用だい? 世をはかなんでアタシのゴーレムに潰されたいってんなら相談に乗ってやるよ?」
「やれるモンならやってみなさいよ、土くれのフーケ」
「ふん、じゃあお望み通りにしてやるさ!」
ゴーレムの拳がルイズを押し潰した―――かに見えた。
だがルイズは平然とその場に立ったままだ。
彼女の手前数センチで止まった巨大な鋼鉄の拳。当然、それはフーケが止めたのではない。
ルイズの周囲に展開された結界・月衣<カグヤ>。
それは世界そのものが持つ法則を無視して、持ち主を一切の物理法則から守る極小の異世界だ。
「わ、私のゴーレムの拳を防いだ!?」
「……魔法の使えないメイジじゃ、ないわよ」
「なんだって?」
「メイジじゃないって言ったのよ!」
月衣の中から背丈ほどもある長剣を引き抜き、構えるルイズ。
それは≪魔剣使い≫である彼女の力、近接戦用対魔法箒・デルフリンガー。
「……って、俺っち箒扱いかよウイザードの嬢ちゃんよぉ」
「私はウィザード! エミュレイターと戦う、夜闇の魔法使い・ナイトウィザードよ!」
ウィザード業界では、魔力を受けて機動する道具は剣でも銃でも盾でも、果ては宇宙船でも箒なのだからしょうがない。
デルフのぼやきは無視して、ルイズは声高々と宣言した。
≪魔器開放≫によって真の力を解放したデルフリンガーが輝く。
魔法構造を崩壊させる≪魔力吸収≫の特殊能力が、刃に触れたものから尽く魔力を奪おうと唸りをあげた。
≪封印されし力≫を解放したルイズの≪虚無の属性≫魔法がその刃に吸収される。
あふれ出るプラーナの力が大地を削って噴き上がり、周囲を黄金の光で照らす。
「ば、ばかな!? なんだいこの力……こんな魔法、わたしは知らない!?」
「受けてみなさい! これが私の召喚した使い魔、世界の守護者から無理矢理与えられた力よ!」
一閃。
ただの一撃で右脇腹から左の肩まで一直線に切り裂かれ、その傷口からボロボロと崩壊してゆくフーケのゴーレム。
自身を構成するための魔力を根こそぎ奪われた結果だった。
「って、召喚してないってゆーかアンタ自分が向こうに召喚されたんじゃんかー!」
「うるさいうるさいうるさーい! エクスプロージョン!」
瞬間、ゴーレムの巨体が大爆発をおこす。
吹き飛ばされたフーケは「あ~れ~」と塀の向こうまで飛ばされていった。
かくしてフーケのたくらみは未然に防がれ、学院の平和はウィザード・ルイズの活躍によって守られた。
「盗賊退治お疲れ様ですルイズさん。ところでまたハルケギニアを揺るがす大事件が」
「ちょ、アンゼロット!? 私は今戦い終わって余韻に浸ってる最中で―――!」
「諦めた方が良いと思うぜ嬢ちゃん。どうせ最後には働かされるんだから」
空間からにょろりと突き出た腕に掴まれて拉致されるルイズとデルフリンガー。
明日はガリアかアルビオンか。アンゼロットにコキ使われるルイズに休息の日は無い。
頑張れルイズ。負けるなルイズ。
いつかハルケギニアを狙う魔王(推定)を倒して、アンゼロットから開放されるその日まで!
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