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「ゼロのぽややん 外伝?」(2007/10/31 (水) 10:14:33) の最新版変更点
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その日、モット伯はウキウキだった。
どのくらいウキウキかというと、人の目がなければ踊りだしそうな程、ウキウキだった。
王宮の勅使として訪れたトリステイン魔法学院で、予想以上の掘り出し物をお持ち帰り、じゃなくて、買い入れたのだ。
平民の若く美しいメイド。
珍しい黒髪に黒い瞳の少女だ。
レアだ。
メイド服の上からで、実際に確認したわけではないが、巨乳だ。間違いない。
すばらしい、実にすばらしい。
ディモールト・すばらしい!!
「ディモールト?」
魂に浮かんだ言葉に、首を捻るモット伯。
深く考えてはいけない。作者の心の声だ。
とにかくだ、もちろんそのメイドを買い入れたのは、雑用のためだけではない。
夜の相手もさせる気満々だ。
いいぞ、大いに賛成だ。
すでに件のメイドには、湯浴みを命じてある。
今頃は、この扉の向こうで湯上り姿でスタンバっているはずだ。
つまり、扉を開ければ、そこには桃源郷、パラダイスが!
いざ往かん、天国へ!
モット伯が意気揚々と扉に手をかけたその時。
「ちょっと眠ってもらうね♪」
そんな囁きを耳元で聞いて、彼の意識は闇におちた。
……おや?
なにやら、くすぐったくって目が覚めた。
まず最初に目に入ったのは、毎朝、起きる時にかならず見ている、見慣れた天蓋だった。
いつの間に自分の寝室に戻ったのだろう。
モット伯はぼんやりと思いながら、体を起こそうとしたが、動けなくなっていた。
それもそのはず、ベッドの天蓋を支えている四本の柱それぞれに、手足が縛りつけられている。
次に自分の鼻の頭をくすぐる、細い指を見つめた。
横を見ると。
「お・は・よ。って言っても、まだ夜だけどね」
顔の上半分を青い布で隠した男が、クスクスと笑っている。
気がつけば、モット伯はパンツ一丁だった。
「き、貴様!! 一体何のつもりだ!?」
喚き立てるモット伯の口に、青覆面の男が人差し指を乗せる。
「あんまり五月蝿いと、殺すよ」
そんな物騒な言葉を、甘く囁く。
モット伯が固まる。蛇ににらまれた蛙だ。
「あなたが買い入れたメイドだけど、学園に戻してあげてよ」
「なんだ、お前。あの娘の知り合いか」
「質問に答えてほしいな。死にたいの?」
「ふん、脅しか……だが、断る! このジュール・ド・モット、賊に屈するような軟弱な貴族ではない。『波濤』の二つ名は伊達ではないわ!
恐れたか? 恐れおののいたか? ならばさっさとこの戒めを解いて、平身低頭、床に頭を擦りつけるように詫びんか、この無礼者!!」
自分の台詞に酔いしれるモット伯。この男、自分の状況が見えていない。
青覆面の男は、困ったちゃんを見るような生暖かい目でモット伯を見ると、ちょっと考えた。
「……ちなみに、彼女にどんな事をするつもりだったのかな?」
「ふふん、この我輩自慢のテクニックで至上の快楽を与えつつ、あーんな事やこーんな事をして、ゴートゥヘブンする予定に決まっておろうが」
「ふーん。それって」
青覆面の男は隠されていない口元を僅かに吊り上げると、モット伯のむき出しの太股を、触れるか触れないかの絶妙な加減で撫でる。
「あひゃ」
「これよりも、い・い・の・か・な」
「え、ちょ、おま、な、なにを、ら、らめぇ、そこはらめぇ、あーーーーっ!?」
チュンチュン。
鳥のさえずりが聞こえてくる。
とうとう朝になってしまった。
どんな心変わりだろうか、結局、モット伯が現れなかった事を不審に思いつつも、貞操を守れた事にホッと胸を撫で下ろすシエスタ。
徹夜だが仕方ない。
仕事を始めるためにメイド服を身に着ける。
しかし、今回無事だったからといって、次回も無事とは限らない。
正直、貴族とはいえ、あんな好色中年親父に手篭めにされるなど、死んでも嫌だった。
どうせなら。
シエスタは、憧れの人の顔を思い浮かべ、さめざめと泣いた。
別れがつらく、マルトーさんに伝言を頼んではいたが、やはり最後にもう一目会っておくべきだった。
「アオさん……」
「呼んだ?」
ガチャリとドアが開き、青覆面の男が顔を出した。
シエスタが思わず悲鳴を上げそうになるのを、男が素早く手で口を塞いだ。
「落ち着いて、シエスタ。僕だよ」
「その声は……アオさん!? そんな、まさか本当に!?」
感極まったシエスタは、アオに抱きつくと、今度こそ声を上げて泣いた。
落ち着かせるように彼女の頭を撫でる。
「で、でも、なんでアオさんがここに? それにその格好は?」
「君を迎えにきたんだシエスタ。格好は、まあ、気にしないでくれ。ここを去るまでの間だけだから。それと名前も秘密ね。
さ、学院に帰ろう。マルトーさんたちも待っているよ」
「そ、そんな無理です。あの伯爵様がお許しになるはずがありません」
「彼ならOKしたよ」
「嘘!?」
半信半疑で私服に着替えたシエスタは、アオに連れられて、屋敷の玄関までやってきた。
するとそこには、屋敷中のメイドと、顔を赤らめたモット伯が待っていた。
「じゃ、僕らは帰るから」
「は、はい、どうかお気をつけて」
モット伯自らが扉を開け、アオに対して礼を尽くす姿に、シエスタが目を丸くする。
アオが横切ろうとした時、モット伯が、その腕を掴んだ、というか絡みついた。
「次は、次はいつ会えますか?」
中年の親父が、乙女のように瞳を潤ませる姿は、その、なんだ、かなりきつい。
アオはその手をやんわりと解くと、微笑みながら。
「いつでも会えるさ、君がいい子にしていればね。わかったかい?」
モット伯は、アオの手を両手で握り、『はい! はい!』と何度も頷いた。
そして、立ち去るアオの後姿に、ハンカチを振りながら見送ったのだった。
いつまでも、いつまでも。
「い、一体、何があったんですか」
ようやくその姿が見えなくなったところで、シエスタは思い切ってアオに尋ねた。
なんとなく想像はついたが、なにがなんでもアオの口から否定の言葉が聞きたかった。
アオは覆面を外すと、優しく微笑むだけだった。
「君は赤ずきんを知っているかい?」
「知ってるよ、狼に食べられちまうんだろ」
「なら、青ずきんは?」
「青ずきん?」
「青ずきんはね、狼を、
食べちまったのさ」
~ゼロのぽややん外伝~ The アニメ版
青ずきんちゃん
どんとはらい
その日、モット伯はウキウキだった。
どのくらいウキウキかというと、人の目がなければ踊りだしそうな程、ウキウキだった。
王宮の勅使として訪れたトリステイン魔法学院で、予想以上の掘り出し物をお持ち帰り、じゃなくて、買い入れたのだ。
平民の若く美しいメイド。
珍しい黒髪に黒い瞳の少女だ。
レアだ。
メイド服の上からで、実際に確認したわけではないが、巨乳だ。間違いない。
すばらしい、実にすばらしい。
ディモールト・すばらしい!!
「ディモールト?」
魂に浮かんだ言葉に、首を捻るモット伯。
深く考えてはいけない。作者の心の声だ。
とにかくだ、もちろんそのメイドを買い入れたのは、雑用のためだけではない。
夜の相手もさせる気満々だ。
いいぞ、大いに賛成だ。
すでに件のメイドには、湯浴みを命じてある。
今頃は、この扉の向こうで湯上り姿でスタンバっているはずだ。
つまり、扉を開ければ、そこには桃源郷、パラダイスが!
いざ往かん、天国へ!
モット伯が意気揚々と扉に手をかけたその時。
「ちょっと眠ってもらうね♪」
そんな囁きを耳元で聞いて、彼の意識は闇におちた。
……おや?
なにやら、くすぐったくって目が覚めた。
まず最初に目に入ったのは、毎朝、起きる時にかならず見ている、見慣れた天蓋だった。
いつの間に自分の寝室に戻ったのだろう。
モット伯はぼんやりと思いながら、体を起こそうとしたが、動けなくなっていた。
それもそのはず、ベッドの天蓋を支えている四本の柱それぞれに、手足が縛りつけられている。
次に自分の鼻の頭をくすぐる、細い指を見つめた。
横を見ると。
「お・は・よ。って言っても、まだ夜だけどね」
顔の上半分を青い布で隠した男が、クスクスと笑っている。
気がつけば、モット伯はパンツ一丁だった。
「き、貴様!! 一体何のつもりだ!?」
喚き立てるモット伯の口に、青覆面の男が人差し指を乗せる。
「あんまり五月蝿いと、殺すよ」
そんな物騒な言葉を、甘く囁く。
モット伯が固まる。蛇ににらまれた蛙だ。
「あなたが買い入れたメイドだけど、学院に戻してあげてよ」
「なんだ、お前。あの娘の知り合いか」
「質問に答えてほしいな。死にたいの?」
「ふん、脅しか……だが、断る! このジュール・ド・モット、賊に屈するような軟弱な貴族ではない。『波濤』の二つ名は伊達ではないわ!
恐れたか? 恐れおののいたか? ならばさっさとこの戒めを解いて、平身低頭、床に頭を擦りつけるように詫びんか、この無礼者!!」
自分の台詞に酔いしれるモット伯。この男、自分の状況が見えていない。
青覆面の男は、困ったちゃんを見るような生暖かい目でモット伯を見ると、ちょっと考えた。
「……ちなみに、彼女にどんな事をするつもりだったのかな?」
「ふふん、この我輩自慢のテクニックで至上の快楽を与えつつ、あーんな事やこーんな事をして、ゴートゥヘブンする予定に決まっておろうが」
「ふーん。それって」
青覆面の男は隠されていない口元を僅かに吊り上げると、モット伯のむき出しの太股を、触れるか触れないかの絶妙な加減で撫でる。
「あひゃ」
「これよりも、い・い・の・か・な」
「え、ちょ、おま、な、なにを、ら、らめぇ、そこはらめぇ、あーーーーっ!?」
チュンチュン。
鳥のさえずりが聞こえてくる。
とうとう朝になってしまった。
どんな心変わりだろうか、結局、モット伯が現れなかった事を不審に思いつつも、貞操を守れた事にホッと胸を撫で下ろすシエスタ。
徹夜だが仕方ない。
仕事を始めるためにメイド服を身に着ける。
しかし、今回無事だったからといって、次回も無事とは限らない。
正直、貴族とはいえ、あんな好色中年親父に手篭めにされるなど、死んでも嫌だった。
どうせなら。
シエスタは、憧れの人の顔を思い浮かべ、さめざめと泣いた。
別れがつらく、マルトーさんに伝言を頼んではいたが、やはり最後にもう一目会っておくべきだった。
「アオさん……」
「呼んだ?」
ガチャリとドアが開き、青覆面の男が顔を出した。
シエスタが思わず悲鳴を上げそうになるのを、男が素早く手で口を塞いだ。
「落ち着いて、シエスタ。僕だよ」
「その声は……アオさん!? そんな、まさか本当に!?」
感極まったシエスタは、アオに抱きつくと、今度こそ声を上げて泣いた。
落ち着かせるように彼女の頭を撫でる。
「で、でも、なんでアオさんがここに? それにその格好は?」
「君を迎えにきたんだシエスタ。格好は、まあ、気にしないでくれ。ここを去るまでの間だけだから。それと名前も秘密ね。
さ、学院に帰ろう。マルトーさんたちも待っているよ」
「そ、そんな無理です。あの伯爵様がお許しになるはずがありません」
「彼ならOKしたよ」
「嘘!?」
半信半疑で私服に着替えたシエスタは、アオに連れられて、屋敷の玄関までやってきた。
するとそこには、屋敷中のメイドと、顔を赤らめたモット伯が待っていた。
「じゃ、僕らは帰るから」
「は、はい、どうかお気をつけて」
モット伯自らが扉を開け、アオに対して礼を尽くす姿に、シエスタが目を丸くする。
アオが横切ろうとした時、モット伯が、その腕を掴んだ、というか絡みついた。
「次は、次はいつ会えますか?」
中年の親父が、乙女のように瞳を潤ませる姿は、その、なんだ、かなりきつい。
アオはその手をやんわりと解くと、微笑みながら。
「いつでも会えるさ、君がいい子にしていればね。わかったかい?」
モット伯は、アオの手を両手で握り、『はい! はい!』と何度も頷いた。
そして、立ち去るアオの後姿に、ハンカチを振りながら見送ったのだった。
いつまでも、いつまでも。
「い、一体、何があったんですか」
ようやくその姿が見えなくなったところで、シエスタは思い切ってアオに尋ねた。
なんとなく想像はついたが、なにがなんでもアオの口から否定の言葉が聞きたかった。
アオは覆面を外すと、優しく微笑むだけだった。
「君は赤ずきんを知っているかい?」
「知ってるよ、狼に食べられちまうんだろ」
「なら、青ずきんは?」
「青ずきん?」
「青ずきんはね、狼を、
食べちまったのさ」
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