「ゼロと聖石-10」(2007/10/31 (水) 05:07:14) の最新版変更点
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#navi(ゼロと聖石)
ワルド様が必死になって風石の代わりに魔力を使っている。
その姿を見つつ私はティータイムとしゃれ込んでいた。
シエスタは紅茶を淹れたあと、床で『メイソウ』とかいう精神統一法を行っている。
シエスタ曰く、『見えなかったものが見える』そうだ。
視野を切り替えるとかそういったものだろうか?
そんな風に過ごしていると、船員が慌しく走り回る。
事情を聞くと、空賊が現れたみたい。
甲板に上がり、その姿を確認する。
黒塗りの船体、側舷についている二十数門の大砲。
―――これは勝てないわ。アレだけの規模ならメイジ乗っていそうだし。
完全アルテマで吹き飛ばしていいが、それだと…最悪乗っ取られる。
やめよう、聖天使の力を引き出して正気でいられるか分からないし、まだ死にたくも無い。
その数分後、空賊たちが乗り込んできた。
ワルド様のグリフォンはあっという間に空賊のメイジに眠らされる。
私も杖を没収され、シエスタはデルフと盾を没収されていた。
そして、倉庫の一室に押し込められた。
ワルド様は静かに何かを考え、シエスタは相変わらず
狭い船室の中、この空賊たちについて考えていた。
まず、目的。
彼等はマリーガランド号の積荷が硫黄だと聞くと、目を輝かせていた。
今は貴族派が幅を利かせているため、硫黄などの火の秘薬はよく売れる。
それは劣勢の王党派も同じこと。
仮にこの船が貴族派の物だとして、そこまでして硫黄を入手する必要が無い。
本物の空賊だったら硫黄だけ奪って後は証拠隠滅で片がつくはずだ。
結論は一つ。
決まったら即行動。
「シエスタ、船長のところに行くわ。手伝って」
ワルド様が困惑している中、シエスタが鎧の内側に仕込まれた剣を抜き、構える。
私も鉄で出来た東方のオウギという、風を起こす道具を取り出す。
シエスタがドアを蹴破り、それに私が続く。
その音に空賊が武器を構えて襲い掛かってくるが、シエスタの敵ではない。
私はというと、後ろから来る敵に対して、役に立つと思っていなかった魔法を唱える。
「命ささえる大地よ、我を庇護したまえ。止めおけ! ドンムブ!」
通路の狭い船の中では最高に相性のいい魔法、対象をその場から動けなくする。
それを何人も繰り返し、あっという間に封鎖線が出来上がる。
歩く先には倒れ付す空賊、後方にはなすすべも無く見守る空賊。
そんなことを繰り返しながら空賊頭目の前までたどり着く。
「アルビオン王国の貴族とお見受けします。
私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、アンリエッタ姫殿下の命により馳せ参じました」
後ろの空賊たちとワルド様が驚きで目を見開き、シエスタはだから手ごわかったのかみたいな顔をしていた。
頭目は一瞬唖然としていたが、すぐに顔を引き締め、居住まいを正した。
「これは大変な失礼をした。私はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」
今度は私が驚く番であった。
お偉方が一人は乗ってると思ったらまさか総大将方向の人間が乗ってるとは。
我に返えると、ウェールズ皇子がしてやったりの表情をしているのを気づいた。
ニューカッスル城。
アルビオン王国の権力の象徴だった城。
今は砲撃によって煤け、あちこちに瓦礫が落ちている。
「すまないね、騒がしい場所で」
鹵獲されたロイヤル・ソヴリン号が砲撃を続ける。
その巨体はその場にいるだけで威圧を続け、空に君臨していた。
砲撃音と着弾音が響く中、私はウェールズ皇子にアンリエッタ様から預かった手紙を渡す。
それをひとしきり読んだあと、小さな宝箱を取り出し、古ぼけた手紙が渡される。
内容は聞かずとも分かった。
それを懐にしまいこみ、一応亡命を勧めておく。
ウェールズ皇子はそれに対して首を振り、名誉に殉じると言った。
そこまで言われたら、何も言えない。だから、私はウェールズ様に一つだけ魔法をかけておく。
「大気に満ち、木々を揺らす波動。生命の躍動を刻め! リレイズ!」
光がウェールズ皇子を纏い、消える。
部屋を去る直前に、一言だけ言っておく。
「女を泣かせると後が怖いですよ。せいぜいアンリエッタ様を泣かせないように」
「これは手厳しい。忠告として受け取っておくよ」
その直後に、ありがとうと聞こえた気がしたが、聞こえていない。
ウェールズ皇子の独り言など、聞かなかったのだ。
最後の晩餐会で国王の言葉を聞く。
やはり、彼等はここで全員死ぬつもりなのだ。
戦争とはいえ、誰かが死ぬのは悲しい。
「アルテマ、あなたも悲しいの?」
アルテマからの回答は無い。
彼女は必要なときに必要なことだけ告げていくのだから。
それでも、誰かの声が聴きたい瞬間があるから話しかけてみた。
寂しく思った瞬間、聖石が一瞬だけ煌いた。
「ありがとう、アルテマ」
暗い気持ちを払い、戦士の皆と酒を飲んでいるシエスタの元へ向かう。
シエスタがワインをジョッキで一気飲みをしている。
それに負けじとワインをジョッキで飲むおっさん。
そこに私も乱入するのだった。
そして明くる朝。
「頭いたーい、気持ちわるーい、絶対吐く………」
「大丈夫ですか、ルイズ様………うぉぇっぷ」
二人揃って二日酔いになる。
ワルド様に起きたら聖堂に来てくれと言われているのに。
こうなったら仕方が無い。
こんな状況で使う予定じゃなかったのだが、緊急事態だ。仕方が無い。
「天駆ける風、力の根源へと我を導き、そを与えたまえ! エスナ!」
効果があるかどうか疑わしかったが、どうやら効果はあったようだ。
頭痛と吐き気がすぅっと去っていく。
横にいるシエスタにも使わないと、部屋が大変なことになる。
すさまじい速度で詠唱を始めるのだった。
#navi(ゼロと聖石)
#navi(ゼロと聖石)
ワルド様が必死になって風石の代わりに魔力を使っている。
その姿を見つつ私はティータイムとしゃれ込んでいた。
シエスタは紅茶を淹れたあと、床で『メイソウ』とかいう精神統一法を行っている。
シエスタ曰く、『見えなかったものが見える』そうだ。
視野を切り替えるとかそういったものだろうか?
そんな風に過ごしていると、船員が慌しく走り回る。
事情を聞くと、空賊が現れたみたい。
甲板に上がり、その姿を確認する。
黒塗りの船体、側舷についている二十数門の大砲。
―――これは勝てないわ。アレだけの規模ならメイジ乗っていそうだし。
完全アルテマで吹き飛ばしていいが、それだと…最悪乗っ取られる。
やめよう、聖天使の力を引き出して正気でいられるか分からないし、まだ死にたくも無い。
その数分後、空賊たちが乗り込んできた。
ワルド様のグリフォンはあっという間に空賊のメイジに眠らされる。
私も杖を没収され、シエスタはデルフと盾を没収されていた。
そして、倉庫の一室に押し込められた。
ワルド様は静かに何かを考え、シエスタは相変わらず
狭い船室の中、この空賊たちについて考えていた。
まず、目的。
彼等はマリーガランド号の積荷が硫黄だと聞くと、目を輝かせていた。
今は貴族派が幅を利かせているため、硫黄などの火の秘薬はよく売れる。
それは劣勢の王党派も同じこと。
仮にこの船が貴族派の物だとして、そこまでして硫黄を入手する必要が無い。
本物の空賊だったら硫黄だけ奪って後は証拠隠滅で片がつくはずだ。
結論は一つ。
決まったら即行動。
「シエスタ、船長のところに行くわ。手伝って」
ワルド様が困惑している中、シエスタが鎧の内側に仕込まれた剣を抜き、構える。
私も鉄で出来た東方のオウギという、風を起こす道具を取り出す。
シエスタがドアを蹴破り、それに私が続く。
その音に空賊が武器を構えて襲い掛かってくるが、シエスタの敵ではない。
私はというと、後ろから来る敵に対して、役に立つと思っていなかった魔法を唱える。
「命ささえる大地よ、我を庇護したまえ。止めおけ! ドンムブ!」
通路の狭い船の中では最高に相性のいい魔法、対象をその場から動けなくする。
それを何人も繰り返し、あっという間に封鎖線が出来上がる。
歩く先には倒れ付す空賊、後方にはなすすべも無く見守る空賊。
そんなことを繰り返しながら空賊頭目の前までたどり着く。
「アルビオン王国の貴族とお見受けします。
私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、アンリエッタ姫殿下の命により馳せ参じました」
後ろの空賊たちとワルド様が驚きで目を見開き、シエスタはだから手ごわかったのかみたいな顔をしていた。
頭目は一瞬唖然としていたが、すぐに顔を引き締め、居住まいを正した。
「これは大変な失礼をした。私はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」
今度は私が驚く番であった。
お偉方が一人は乗ってると思ったらまさか総大将方向の人間が乗ってるとは。
我に返えると、ウェールズ皇子がしてやったりの表情をしているのを気づいた。
ニューカッスル城。
アルビオン王国の権力の象徴だった城。
今は砲撃によって煤け、あちこちに瓦礫が落ちている。
「すまないね、騒がしい場所で」
鹵獲されたロイヤル・ソヴリン号が砲撃を続ける。
その巨体はその場にいるだけで威圧を続け、空に君臨していた。
砲撃音と着弾音が響く中、私はウェールズ皇子にアンリエッタ様から預かった手紙を渡す。
それをひとしきり読んだあと、小さな宝箱を取り出し、古ぼけた手紙が渡される。
内容は聞かずとも分かった。
それを懐にしまいこみ、一応亡命を勧めておく。
ウェールズ皇子はそれに対して首を振り、名誉に殉じると言った。
そこまで言われたら、何も言えない。だから、私はウェールズ様に一つだけ魔法をかけておく。
「大気に満ち、木々を揺らす波動。生命の躍動を刻め! リレイズ!」
光がウェールズ皇子を纏い、消える。
部屋を去る直前に、一言だけ言っておく。
「女を泣かせると後が怖いですよ。せいぜいアンリエッタ様を泣かせないように」
「これは手厳しい。忠告として受け取っておくよ」
その直後に、ありがとうと聞こえた気がしたが、聞こえていない。
ウェールズ皇子の独り言など、聞かなかったのだ。
最後の晩餐会で国王の言葉を聞く。
やはり、彼等はここで全員死ぬつもりなのだ。
戦争とはいえ、誰かが死ぬのは悲しい。
「アルテマ、あなたも悲しいの?」
アルテマからの回答は無い。
彼女は必要なときに必要なことだけ告げていくのだから。
それでも、誰かの声が聴きたい瞬間があるから話しかけてみた。
寂しく思った瞬間、聖石が一瞬だけ煌いた。
「ありがとう、アルテマ」
暗い気持ちを払い、戦士の皆と酒を飲んでいるシエスタの元へ向かう。
シエスタがワインをジョッキで一気飲みをしている。
それに負けじとワインをジョッキで飲むおっさん。
そこに私も乱入するのだった。
そして明くる朝。
「頭いたーい、気持ちわるーい、絶対吐く………」
「大丈夫ですか、ルイズ様………うぉぇっぷ」
二人揃って二日酔いになる。
ワルド様に起きたら聖堂に来てくれと言われているのに。
こうなったら仕方が無い。
こんな状況で使う予定じゃなかったのだが、緊急事態だ。仕方が無い。
「天駆ける風、力の根源へと我を導き、そを与えたまえ! エスナ!」
効果があるかどうか疑わしかったが、どうやら効果はあったようだ。
頭痛と吐き気がすぅっと去っていく。
横にいるシエスタにも使わないと、部屋が大変なことになる。
すさまじい速度で詠唱を始めるのだった。
[[外伝へ>ゼロと聖石-外伝 昼下がりの戦い]]
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